◆サッカー選手 オーバートレーニングを見分ける方法とは?
和久井です。
超回復について以前「◆超回復 サッカートレーニングプログラムに必要な3要素とは?」で回復についての重要性を考えましたが、今回はその「超回復」のメカニズムを見ていきたいと思います。
今回もサッカーに関連した傷害や病因などの研究を目的とした、FIFAが設立した医学評価研究センターの調査結果を参考にします。(要約)
-------------------------------------------------------
すべてのトレーニングプログラムで最も重要な要素の1つは、トレーニングに対する適応が休息期間中に起こるということ。すぐれたトレーニングプログラムとは、良質な運動と良質な休息期間のバランスをとることに尽きる。
十分な過負荷がかかるように運動を行うと、回復過程には、貯蔵エネルギーの再補充、筋肉の構造的損傷の修復のほか、筋肉より長い回復時間がかかりがちな神経系の回復が起こり運動効果に繋がる。
以後のトレーニング時に中枢神経系がまだ疲労状態にあると、神経細胞の反応が遅くなり、動員される筋線維の数が少なくなり、筋肉運動の協調性が低下する。
サッカーとは異なる激しい持久運動(長距離走)を行うと、糖質の貯蔵量が運動前のレベルに回復するには2日もかかることがある。断続的に激しいランニングを行った場合のグリコーゲンの再補充は、24時間以内に完了させることができる。
筋肉の再合成速度は激しい運動の36時間後に運動前のレベルに戻る。このことから、この筋肉内の回復過程が完了するには36時間もの時間が必要となることがわかる。
しかし、これはトレーニングの間隔をきっちり36時間空けなければならないということではない。トレーニングの目的(筋力、パワー、または有酸素運動)は毎回異なるため、回復は特定のトレーニングで使われた特定の筋肉とエネルギー産生系のみに起こる。
激しいレジスタンストレーニングや有酸素性トレーニングの後は、筋肉痛が起こるのが普通である。筋肉痛は運動直後に現れて数時間継続することもあり(急性筋肉痛)、トレーニングの数時間後や数日後になって現れることもある(この現象は「遅発性筋肉痛」(DOMS)と呼ばれる)。DOMSは筋細胞の構造的損傷(主に伸長性収縮時に起こる)の結果であるように思われ、痛みを誘発するのみならず、筋肉のグリコーゲンの再合成速度を遅らせることも認められている。
しかし、トレーニングプログラムの初期にはDOMSが必要である。DOMSによりトレーニングに対する反応(筋肉が分解され、より高いレベルに合わせて再構築される)が最大化され、また、痛みは以後のトレーニングでやがて軽減するからである。筋肉痛は有酸素性の持久力トレーニングよりも、レジスタンストレーニング(短時間の急激な運動)やパワートレーニングの後の方が強い傾向がある。レジスタンストレーニングにはかなりの伸長性筋収縮が必要であるため、筋線維が損傷を受ける。
これら以外にも、運動後の回復期間中には数多くの適応が体内で起こり、この過程は「代償」と呼ばれる。身体をトレーニング前の状態に回復させる過程が代償であるとすれば、トレーニング前の状態を上回るレベルに回復させる過程は超代償である。
激しいトレーニングとトレーニングの間の回復を促進するため、強度の低い有酸素性トレーニングをプログラムに組み入れることもある。この軽い運動は「積極的回復」と呼ばれ、筋肉中の血流量を増加させることにより、回復過程を妨げる残留老廃物を効率的に除去し、回復過程を促進するものである。
回復の原則が守られない場合は、使いすぎ障害や軽度のウイルス感染症がおこったり、オーバーリーチング症候群やオーバートレーニング症候群が起こったりすることがある。
筋損傷の程度は、筋肉痛や、疲労の早期発現、筋痛、筋硬結、正常値を超える血中乳酸濃度として表れる。
オーバートレーニングの症状には、睡眠障害、嘔気、正常範囲を超える心拍数・血圧がある。パフォーマンス低下のほか、オーバートレーニングのよい指標となるものは、一定の運動に対する心拍数の変化である。
オーバートレーニング状態では、体調がよい時に比べて心拍数の反応率が高くなる。運動強度の高いトレーニング目標の心拍数を維持しにくくなってきているとコーチまたは選手が認識した場合は、直ちにトレーニング負荷を低下または除去するように注意しなければならない。
また、朝起きた直後の安静時心拍数が連続して低下または上昇することは、感染またはオーバー
トレーニングの危険信号である。オーバートレーニングの症状は個人差が大きく、自覚症状が多いため、万人に当てはまるものではない。
上記諸症状のいずれかが認められる場合は、トレーニング強度が高すぎるか、トレーニングとトレーニングの間の回復期間が不十分であることを示す兆候と考えるべきである。
オーバートレーニング状態にある選手は感染症にかかりやすくなる。コーチは選手にときどき体調を尋ねる必要がある。「よく眠れているか?」、「起きた時に疲れがとれているか?」、「一晩中眠らなかったんじゃないか?」。サッカーのようなスポーツでは、休息を必要とする選手が本当のことを言わない可能性がある。トレーニングを何日も休むと、他の選手より出場時間を減らされてしまうのではないかと恐れているからだ。
オーバートレーニングの治療は、トレーニング強度を大幅に低下させるか、完全に休息するかであるが、オーバートレーニングの最善の治療法は予防である。
・十分な回復はトレーニングプログラムに必須の部分である。
・低強度、中強度、高強度の運動を組み合わせる。
・高強度のトレーニングを連続して多数回行わないようにする。
・高強度のトレーニングの後は低~中強度のトレーニングを行うようにする。
・十分な糖質を確実に摂取する。
・回復過程を促進するため、低強度の有酸素性トレーニング(「再生トレーニング」と呼ばれることもある)をプログラムに組み入れトレーニングの種類、継続時間、強度を記入するトレーニング日誌を選手につけさせる。また、その日に食べた物、運動中の気分も記入する。トレーニングの困難度を1~10の尺度で評価する。
バランスのとれた低脂肪・高複合炭水化物の食事を摂る。
・トレーニング負荷は徐々に上げる。
・トレーニングとトレーニングの間に十分な回復期間を設ける。
・十分な休息をとる。
・夜は十分な睡眠をとる。
・高強度のトレーニングと低強度のトレーニングを交互に行う。さまざまな運動を行う。
「超代償」を誘発するには、トレーニングプログラムに十分な多様性をもつトレーニングと十分な休息期間を交互に組み入れる必要がある。
-------------------------------------------------------
超回復を促す上で、強度→回数と継続時間を過負荷と回復を考えてプログラムを作成した上でトレーニングを行っていくことが大切です。トレーニング後、基本的にその回復には36時間を要するものの、目的や使われた筋肉、また損傷程度には個人差があるため、選手や監督者それぞれが意識してオーバートレーニングを予防することが重要だということがわかります。
また回復は、完全に休息する消極的回復と、クロストレーニングを含めたランニングなど強度の低い有酸素性トレーニングである積極的回復によって、筋肉中の血流量を増加させて回復を促す方法があります。これはトレーニング中も同様で、激しいトレーニング後にゆっくりとランニングをすることにより回復を促します。
信号は選手の身体から、筋硬結や正常値を超える血中乳酸濃度、急性筋肉痛や遅発性筋肉痛として発せられ、後に睡眠障害、嘔気、正常範囲を超える心拍数・血圧値、パフォーマンス低下が起こり、最終的に怪我(使いすぎ障害)や軽度のウイルス感染症を引き起こすようです。
様々な予防策が挙げられていますが、起床時に安静時心拍数を計測し記録したり、トレーニング中もハートレートモニター(心拍計)などを利用して心拍数を計測したり、監督者が常日頃から選手の体調の管理を行うことが傷害発生率を下げ、超回復を促し、フィットネスの向上に繋がりますね。
◆サッカー 選手の怪我の頻度は?
◆サッカー選手 ヘディングが脳に与える影響は?
◆サッカー選手 傷害発生率を下げる最も効果的な方法とは?
◆サッカー選手 怪我が多い選手の特徴とは?
◆子供の足の怪我 サッカーというスポーツ
◆プロサッカー選手になるために適した身体とは?
◆最適なトレーニング時間
超回復について以前「◆超回復 サッカートレーニングプログラムに必要な3要素とは?」で回復についての重要性を考えましたが、今回はその「超回復」のメカニズムを見ていきたいと思います。
今回もサッカーに関連した傷害や病因などの研究を目的とした、FIFAが設立した医学評価研究センターの調査結果を参考にします。(要約)
-------------------------------------------------------
すべてのトレーニングプログラムで最も重要な要素の1つは、トレーニングに対する適応が休息期間中に起こるということ。すぐれたトレーニングプログラムとは、良質な運動と良質な休息期間のバランスをとることに尽きる。
十分な過負荷がかかるように運動を行うと、回復過程には、貯蔵エネルギーの再補充、筋肉の構造的損傷の修復のほか、筋肉より長い回復時間がかかりがちな神経系の回復が起こり運動効果に繋がる。
以後のトレーニング時に中枢神経系がまだ疲労状態にあると、神経細胞の反応が遅くなり、動員される筋線維の数が少なくなり、筋肉運動の協調性が低下する。
サッカーとは異なる激しい持久運動(長距離走)を行うと、糖質の貯蔵量が運動前のレベルに回復するには2日もかかることがある。断続的に激しいランニングを行った場合のグリコーゲンの再補充は、24時間以内に完了させることができる。
筋肉の再合成速度は激しい運動の36時間後に運動前のレベルに戻る。このことから、この筋肉内の回復過程が完了するには36時間もの時間が必要となることがわかる。
しかし、これはトレーニングの間隔をきっちり36時間空けなければならないということではない。トレーニングの目的(筋力、パワー、または有酸素運動)は毎回異なるため、回復は特定のトレーニングで使われた特定の筋肉とエネルギー産生系のみに起こる。
激しいレジスタンストレーニングや有酸素性トレーニングの後は、筋肉痛が起こるのが普通である。筋肉痛は運動直後に現れて数時間継続することもあり(急性筋肉痛)、トレーニングの数時間後や数日後になって現れることもある(この現象は「遅発性筋肉痛」(DOMS)と呼ばれる)。DOMSは筋細胞の構造的損傷(主に伸長性収縮時に起こる)の結果であるように思われ、痛みを誘発するのみならず、筋肉のグリコーゲンの再合成速度を遅らせることも認められている。
しかし、トレーニングプログラムの初期にはDOMSが必要である。DOMSによりトレーニングに対する反応(筋肉が分解され、より高いレベルに合わせて再構築される)が最大化され、また、痛みは以後のトレーニングでやがて軽減するからである。筋肉痛は有酸素性の持久力トレーニングよりも、レジスタンストレーニング(短時間の急激な運動)やパワートレーニングの後の方が強い傾向がある。レジスタンストレーニングにはかなりの伸長性筋収縮が必要であるため、筋線維が損傷を受ける。
これら以外にも、運動後の回復期間中には数多くの適応が体内で起こり、この過程は「代償」と呼ばれる。身体をトレーニング前の状態に回復させる過程が代償であるとすれば、トレーニング前の状態を上回るレベルに回復させる過程は超代償である。
激しいトレーニングとトレーニングの間の回復を促進するため、強度の低い有酸素性トレーニングをプログラムに組み入れることもある。この軽い運動は「積極的回復」と呼ばれ、筋肉中の血流量を増加させることにより、回復過程を妨げる残留老廃物を効率的に除去し、回復過程を促進するものである。
回復の原則が守られない場合は、使いすぎ障害や軽度のウイルス感染症がおこったり、オーバーリーチング症候群やオーバートレーニング症候群が起こったりすることがある。
筋損傷の程度は、筋肉痛や、疲労の早期発現、筋痛、筋硬結、正常値を超える血中乳酸濃度として表れる。
オーバートレーニングの症状には、睡眠障害、嘔気、正常範囲を超える心拍数・血圧がある。パフォーマンス低下のほか、オーバートレーニングのよい指標となるものは、一定の運動に対する心拍数の変化である。
オーバートレーニング状態では、体調がよい時に比べて心拍数の反応率が高くなる。運動強度の高いトレーニング目標の心拍数を維持しにくくなってきているとコーチまたは選手が認識した場合は、直ちにトレーニング負荷を低下または除去するように注意しなければならない。
また、朝起きた直後の安静時心拍数が連続して低下または上昇することは、感染またはオーバー
トレーニングの危険信号である。オーバートレーニングの症状は個人差が大きく、自覚症状が多いため、万人に当てはまるものではない。
上記諸症状のいずれかが認められる場合は、トレーニング強度が高すぎるか、トレーニングとトレーニングの間の回復期間が不十分であることを示す兆候と考えるべきである。
オーバートレーニング状態にある選手は感染症にかかりやすくなる。コーチは選手にときどき体調を尋ねる必要がある。「よく眠れているか?」、「起きた時に疲れがとれているか?」、「一晩中眠らなかったんじゃないか?」。サッカーのようなスポーツでは、休息を必要とする選手が本当のことを言わない可能性がある。トレーニングを何日も休むと、他の選手より出場時間を減らされてしまうのではないかと恐れているからだ。
オーバートレーニングの治療は、トレーニング強度を大幅に低下させるか、完全に休息するかであるが、オーバートレーニングの最善の治療法は予防である。
・十分な回復はトレーニングプログラムに必須の部分である。
・低強度、中強度、高強度の運動を組み合わせる。
・高強度のトレーニングを連続して多数回行わないようにする。
・高強度のトレーニングの後は低~中強度のトレーニングを行うようにする。
・十分な糖質を確実に摂取する。
・回復過程を促進するため、低強度の有酸素性トレーニング(「再生トレーニング」と呼ばれることもある)をプログラムに組み入れトレーニングの種類、継続時間、強度を記入するトレーニング日誌を選手につけさせる。また、その日に食べた物、運動中の気分も記入する。トレーニングの困難度を1~10の尺度で評価する。
バランスのとれた低脂肪・高複合炭水化物の食事を摂る。
・トレーニング負荷は徐々に上げる。
・トレーニングとトレーニングの間に十分な回復期間を設ける。
・十分な休息をとる。
・夜は十分な睡眠をとる。
・高強度のトレーニングと低強度のトレーニングを交互に行う。さまざまな運動を行う。
「超代償」を誘発するには、トレーニングプログラムに十分な多様性をもつトレーニングと十分な休息期間を交互に組み入れる必要がある。
-------------------------------------------------------
超回復を促す上で、強度→回数と継続時間を過負荷と回復を考えてプログラムを作成した上でトレーニングを行っていくことが大切です。トレーニング後、基本的にその回復には36時間を要するものの、目的や使われた筋肉、また損傷程度には個人差があるため、選手や監督者それぞれが意識してオーバートレーニングを予防することが重要だということがわかります。
また回復は、完全に休息する消極的回復と、クロストレーニングを含めたランニングなど強度の低い有酸素性トレーニングである積極的回復によって、筋肉中の血流量を増加させて回復を促す方法があります。これはトレーニング中も同様で、激しいトレーニング後にゆっくりとランニングをすることにより回復を促します。
信号は選手の身体から、筋硬結や正常値を超える血中乳酸濃度、急性筋肉痛や遅発性筋肉痛として発せられ、後に睡眠障害、嘔気、正常範囲を超える心拍数・血圧値、パフォーマンス低下が起こり、最終的に怪我(使いすぎ障害)や軽度のウイルス感染症を引き起こすようです。
様々な予防策が挙げられていますが、起床時に安静時心拍数を計測し記録したり、トレーニング中もハートレートモニター(心拍計)などを利用して心拍数を計測したり、監督者が常日頃から選手の体調の管理を行うことが傷害発生率を下げ、超回復を促し、フィットネスの向上に繋がりますね。
◆サッカー 選手の怪我の頻度は?
◆サッカー選手 ヘディングが脳に与える影響は?
◆サッカー選手 傷害発生率を下げる最も効果的な方法とは?
◆サッカー選手 怪我が多い選手の特徴とは?
◆子供の足の怪我 サッカーというスポーツ
◆プロサッカー選手になるために適した身体とは?
◆最適なトレーニング時間