◆サッカー選手 1試合で全力疾走する距離は一体どれくらい? | 和久井秀俊オフィシャルブログ「海外サッカー選手のホンネ」Powered by Ameba

◆サッカー選手 1試合で全力疾走する距離は一体どれくらい?

和久井です。

前回、「◆サッカー選手 シーズン中に持久力は向上するのか?」でトレーニングスケジュールの組み方まで考えてきました。

今回は、実際のトレーニングプログラムを見ながら1日のトレーニングプログラムについて考えていきましょう。

今回もサッカーに関連した傷害や病因などの研究を目的とした、FIFAが設立した医学評価研究センターの調査結果を参考にします。(要約)

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1回のトレーニングを構成する場合、はじめに、ウォーミングアップを行う。ウォーミングアップで運動をはじめる準備をし、ボディコントロールがうまく出来るようにする。

次に、個人でボールスキルトレーニング(非常に低い運動強度)をある程度行った後、より強度の高い少人数グループ(例:3対3、4対4、5対2、6対4)で練習し、さらに大人数グループ(チームの人数により、おそらく7対7か8対8までの大きさ)で練習する。

ゲームの形式を制限し、選手が走って考えなければならないようにする。これは選手の「ゲーム・インテリジェンス」を培うのに役立つとともに、ほとんど何もしないでその辺に立っているだけの選手をできるだけ少なくする効果もある。

ゲーム形式の制限には、技術的なもの(例:利き足でない方の足でトラップ・アンド・パスする、必ず足の外側でパスする)、戦術的なもの(例:オフェンスの際、アタッカーはゴールに背中を向けてプレーする。これはミッドフィールダーに前に出てゴールにシュートすることを教えるもの)、フィットネスに関するもの(例:ツータッチでゲームをスピードアップさせる、パスしたら方向を問わず10メートル走る)がある。コーチングの本や講習から、ゲーム形式のバリエーションはほとんど無限に得られる。

コーチが選択するドリルや少人数グループのゲームはどのようなものでもよく、選択したものを、重視するフィットネス、技術、戦術の組み合わせに合わせて修正すればよい。例えば、強度の低いトレーニングとして、フィールドの半分で6対6とゴールキーパー2人の練習を制限なしで15分ほど行ってもよい(全体を通じて技術的・戦術的指導を行う)。

強度高めのトレーニングとしては、フィールドの中央に20メートルのゾーンを区切る。アタック側6人対ディフェンス側5人がフィールドの一端でプレーし、残り1人は反対側の端にいる。ディフェンス側がボールを取ったら、反対側で待つチームメイトに直接パスし、アタック側は1人を残し全員がミッドフィールドを全力疾走し、反対側の端でプレーする。このように、プレー禁止ゾーンの前後を往復しながらゲームが続く(このゲームは「ノー・ミッドフィールド」または「ディープ・ゲーム」とも呼ばれる)。この強度高めのゲームを10分ほど行う。
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練習メニューがイメージがしにくい方のために、下に図を設けました。ぜひ、参考にしてみてください。


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最後に、非常に高い強度のトレーニングとして、ディフェンス側がボールを取ってミッドフィールド越しにパスした場合、チーム全員が新たなアタック区域におり、かつ相手チームの1人以上(残らなければならない1人を除く)が取り残されている間にゴールが決まった場合は2点(またはゴールにシュートした場合は1点)を与える。この非常に高い強度のゲームを5分ほど行う。期分けの概念に従い、トレーニング量(プレー時間)はゲームごとに減らしているが、強度は上げている。

チームの年齢と目標によっては、この一連のゲームの後にミニサッカーを行ってもよく、その後にスキルトレーニングを行い、最後にクールダウンを行う。より競技力の高いチームの場合は、休憩後に上記のルーティンを繰り返してもよく、その後にもっと簡単なミニサッカーを行い、スキルトレーニングを行ってから、クールダウンを行う。

ノー・ミッドフィールドゲームに、さらに手を加えることもできる。フィールドの反対側への移動を加速するには、ミッドフィールドを短くすれば(10メートル)、全力疾走する距離が短くなり、スピードアップする。より長い距離を走らせる(そして正確なロングパスをさせる)には、ミッドフィールドを30メートルか40メートルに延長する。もちろん、それ以外にも技術的または戦術的な制限を付ければ、ゲームをさらに激しくすることができる。ゲームに付ける制限は1つである必要はない。制限のない11対11の練習試合は、フィットネストレーニングとしては好ましくない。

サッカーの試合で典型的なポゼッションは、4人で3回以下のパスを回すというものであるから、ボールにたくさん触れさせて全般的な戦術を教えるには、ミニサッカー(4対4)が非常に良い。

サッカー選手は高い強度で「かつ」長時間トレーニングできると思うのは誤りである。

強度は継続時間と反比例の関係にある。すなわち、強度が高い運動をするほど、その強度を維持できる時間は短くなる。休息をとらず、または低強度の日を設けずに、長時間かつ高強度でトレーニングしようとすることは、使いすぎ損傷につながり、場合によってはオーバートレーニングとなる。

選手はトレーニングにより短期間でピークの状態に達することもできるが、最終的なフィットネスレベルは低く、そのフィットネスを維持できる期間も短い。しかし、フィットネスを徐々に向上させれば、最終的なフィットネスレベルは高くなり、そのレベルを維持できる期間も長くなる。

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ランニング(全力疾走ではない)速度の向上は、ウォーキングでトレーニングをすれば、ウォーキングが向上する。ジョギングをすれば、ジョギングをする能力に加えて、ウォーキングをする能力も向上する。スピードをだんだん上げて(しかし全力疾走のスピードではなく)トレーニングをすれば、そのスピードとそれ以下のスピードのフィットネスが向上する。

だから、ペースは速いが全力のペースではない90メートル反復走が好ましいのである。というのも、男子プロ選手が1試合で走る距離(10,000メートル )のうち、全力疾走するのはわずか800~1,000メートルにすぎず、約9,000メートルはそれより低いスピードで走るからである。

強度の高いトレーニングはどの程度の頻度で行わなければならないのだろうか。フィットネスの維持に関する章を思い出そう。強度こそが重要な要素である。しかし、頻度はどの程度とすべきなのか。

トレーニングの専門家の意見は、1週間に連日でなく3日のトレーニング日を設ける必要があるというものが大部分である。試合は強度の高いトレーニングとみなすべきである。週に1回試合を行うという場合は、強度の高いトレーニングの日をあと2日設ける必要があるということである。試合を2回行うという場合は、強度の高いトレーニングの日をあと1日設ける。ユースチームは週に2回トレーニングをし、週末に1~2回の試合を行う場合が多い。試合はトレーニング刺激とみなされるので、強度の高いトレーニングを3回とするには、毎回のトレーニングに強度の高い運動を入れなければならない。

では、1回のトレーニングのうち、どの程度を強度の高いトレーニングに充てるべきなのだろうか。トレーニングの研究者によると、そのスポーツに特異的なトレーニング(ウォーミングアップやクールダウンなどではないトレーニング)の3分の1以下を、強度の高いトレーニングに充てるべきということである。例えば、ウォーミングアップと補足的運動が終わった後、サッカーのトレーニングを90分間行う計画であるとする。コーチはそのトレーニングを低強度、中強度、高強度の部分に分けるであろう。しかし、高強度の運動を1つながりの30分間に詰め込んでしまうと、選手は疲れてしまい、最後の10~15分間はなすべき高強度の運動ができない。

このため、トレーニング時間を半分に分ける(45分×2回)。そして、約15~20分を低強度の運動(ボールスキル、少人数グループの運動)に充てる。次に、前述の選択肢を使って強度を上げた運動を約15分行い、その次にその日の計画で最も強度の高い運動を15分行う。そうしたら5分ほど休憩し、また低強度から繰り返す。高強度の運動は、30分を1回行うよりも、15分を2回行った方がはるかに有効である。

強度を上げる上記以外の重要な方法というのは、ランニングの生理学的要求は、走るスピードにかかわらず、ボールをコントロールしていると10~15%増加する。したがって、強度を上げるにはボールを追加すればよい。選手がボールをコントロールする機会が多くなるほど、運動強度が上がるからである。それゆえ、ミニサッカーはこの目的に最も合った形式のトレーニングである。

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以前、◆超回復 サッカートレーニングプログラムに必要な3要素とは?でも書いたように、トレーニングスケジュールやトレーニングプログラムを考える上で、この3要素が非常に大切になりますね。

今日では、自チームや他チームの分析も含めて試合データを取ることが当たり前のようになってきました。チームのボール保持率やセットプレーの数、選手のパスやコントロール成功率、シュートを打った場所、その方向、枠内外、アシストや走行距離、スピードなどなど、様々な視点からデータを分析するようになりました。

これにより、トレーニングでも大きな変化を与えています。

男子プロ選手が1試合で走る距離は約10,000メートル 。そののうち、全力疾走するのはわずか800~1,000メートル。約9,000メートルはそれより低いスピードで走っています。

スピードをだんだん上げて(しかし全力疾走のスピードではなく)トレーニングをすれば、そのスピードとそれ以下のスピードのフィットネスが向上するため、トレーニングにはペースは速いが全力のペースではない90メートル反復走が時に好ましいようです。

このように選手の走るスピードと距離を取っても、データが新たなトレーニングを作り出し、それによって選手の怪我の予防をしたり、効率的且つ効果的な練習ができるというわけです。

3要素や調査結果、そしてそれぞれのチームや選手自身のデータに基づいてトレーニングプログラムを作成することも大切なようですね。


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