本日(17日)、BSフジの「プライムニュース」に出演しました。「プライムニュース」は、毎週月曜日から金曜日まで、午後8時から9時55分までの生放送で、重要なニュースについてワンテーマを基本として徹底的に解説と討論をする番組です。本日のテーマは「日本の原子力政策のあるべき姿」でした。見逃した方は、放送日の中二日後からダイジェスト版(http//www.bsfuji.tv/primenews/)で2週間公開されますので、ご覧になってください。
本日のゲストは、私の他に、前産経新聞パリ支局長の山口昌子さんと21世紀政策研究所・研究主幹の澤昭裕さんでした。特に、山口さんは、福島第1原発事故の1年後である今年3月に、フランスの原発政策について本を書かれておられ、本日の番組では、「もっとフランスの原発政策を参考にすべき」との立場で、日本とフランスの原発政策の違いについて説明をされていました。以下、本日討論したことの主なものについて、その概略を質疑応答方式(答の部分は、私の発言部分です。)でご紹介したいと思います。
1、原発に依存しない社会の実現「3原則」
(問)政府は、9月14日に決定した「革新的エネルギー・環境戦略」において、「2030年代に原発稼働ゼロ」と言いながら、島根原発3号機や大間原発の新規建設を認めている。「3原則」の1つである「原発の運転40年制限」を適用すると「2030年代に原発稼働ゼロ」にはならない。矛盾しているのではないか。
(答)枝野経済産業大臣の説明によれば、「島根や大間は工事開始の許認可手続きが終わっており、それを途中で変える制度がない。」ということで、「工事を続けるか否かは電力事業者の判断である。」と言っている。しかし、国策として「2030年代に原発稼働ゼロ」を決めるならば、そのために必要な法制度も国の責任として整えるべきである。私が世話人を務め、民主党有志議員が参加している「脱原発ロードマップを考える会」は、そうした法制度も提案している。
2、「原発ゼロ」と「使用済み核燃料の再処理継続」との関係
(問)政府は「2030年代に原発稼働ゼロ」と言いながら、なかなか進展しない「核燃料サイクル」が前提となっている「使用済み核燃料の再処理」を継続することを決めた。「2030年代に原発稼働ゼロ」なら、「使用済み核燃料の再処理」は必要ないのではないか。
(答)民主党「脱原発ロードマップを考える会」は、「遅くとも2025年までのできる限り早い時期に脱原発」として、「使用済み核燃料の再処理」も中止することとしている。政府は、これまで「再処理」を前提として色々な約束をしてきた青森県などの地方自治体や、核不拡散や原子力の平和利用という国際責務との関係を考えて、直ちに「再処理中止」と言えなかったのではないか。ただし、政府は、新たに、再処理による「廃棄物の減容」や「有害度の提言」を言い出して、「再処理」の正当化を目論んでいるようだ。
3、フランスとドイツのエネルギー政策と電気料金
(問)フランスは、国際的なエネルギー危機を踏まえ、エネルギーの独立性(他の国に頼らないで電気等のエネルギーを確保する)を実現するために原子力発電を拡大してきた。その結果として、他の国より安い電気料金になっている。他方で、ドイツは、脱原発を目指して再生可能エネルギーを拡大してきたが、電気料金が高騰して国民から大きな不満が出ている。再生可能エネルギーによる発電コストを考えると、日本で、脱原発はできるのか。
(答)確かに、政府のコスト検証委員会が出した電気料金では原発は低かったが、「事故リスク」のコストは、保険方式による算定ではなく相互扶助方式による算定で、低く評価されている。保険方式でやれば、「事故リスク」コストは100倍にも1000倍にもなり、その分、政府から隠れた補助金が出ているようなものである。また、2030年時点の試算では、電気料金は、原発ゼロのケースは現在の2倍くらいであるが、原発維持(原発依存度20%から25%)のケースでも現在の1,5倍から1,8倍くらいになっている。
4、日本とフランスの原子力安全行政の相違
(問)フランスでは、ASN(原子力安全局)やIRSN(放射線防護原子力安全研究所)が高い独立性と専門性をもって、原子力発電の安全性を監視・規制している。日本の原子力安全行政は、フランスよりも独立性や専門性に劣るのではないか。
(答)日本の新しい「原子力規制委員会」は、我が国の法制度の下では、最も独立性の高い組織形態をとっている。また、原子力規制員会の下に、専門性の高い審議会として「放射線審議会」、「原子炉安全専門審査会」等が置かれている。フランスの組織がどれだけ独立性、専門性が高いか詳しく知らないが、遜色はないと思う。後は、そのポストについている人たちの意識が問題と思う。
5、原発プラントの輸出と「原発稼働ゼロ」との関係
(問)政府は、一方で「原発稼働ゼロ」と言いながら、原発プラント輸出を推進しようとしている。また、日本の日立製作所(ジェネラル・エレクトリック社と事業統合)、東芝(ウェスティング・ハウス社を子会社化)と三菱重工(アレバ社と合弁会社保有)の原発プラント輸出企業は世界でも有数であるにもかかわらず、日本国内で「原発稼働ゼロ」を決めるのは矛盾ではないか。
(答)それぞれの国のエネルギー政策、原子力発電政策については、我が国が関与できるものではない。その上で、それぞれの国が判断した結果として、原発プラントとして日本企業を利用することはあり得ることであろう。他方、三菱重工などは、既に世界でも有数の再生可能エネルギー事業者になっている。仮に、それらの企業が原発事業から再生可能エネルギー事業に重点を移しても、十分やっていけるのではないか。
6、提言
(問)「新たな原子力政策推進のために」どのようなことが必要と考えるか、その提言をして欲しい。
(答)「(原発稼働)ゼロ」の実現のための明確な工程を示そう!」。「原発稼働ゼロ」は、簡単な道ではない。故に、政府は明確な工程表を作って工程を示し、政府は必要なあらゆる政策資源を投入し、事業者は明確な投資計画を作り、電力利用者(生産者、消費者等)は所要の対応策を講じていく必要があると考える。
(了)