近々、確定申告が始まります。私と税制、税務行政との係わりは深かったのですが、最近、中国税理士政治連盟の新年号に「税制改正の思い出」と題する私の小文が掲載されましたので、その主要部分をご紹介します。税制で社会が変わることをお伝えしたいと思います。

《「税制改正の思い出」の第1は、08年税制改正で実現した「ふるさと納税」の創設です。「ふるさと納税」については、15年度税制改正でも制度の拡充が目指されています。

「ふるさと納税」制度は、西川・福井県知事が06年10月に「故郷寄付金控除」の導入を提言してその発案者と言われており、政府でも、07年5月、菅義偉総務相(当時)が外遊先のパリで「ふるさと納税」制度の創設の意向を表明したとマスコミに報じられました。

しかしながら、実は、「ふるさと納税」の提案は、その前の06年の春以来、私が行っていたのです。そのことを示す私の「今日の一言」の関係部分を改めてご紹介致します。


『 06年4月25日付「今日の一言」

 今日私が提案した議員立法事項は、2つありましたが、ここでは、そのうち(勉強会仲間の)多くのメンバーが興味を示してくれた「納税先指定による納税法案」をご紹介したいと思います。

 この法案の趣旨は、地方の住民税の納税額の2割相当額は、各人が指定する地方公共団体に納税することができることとし、自分の出身地である地方公共団体や、気に入った地方公共団体を支援することができるようにしようというものです。』


その上で、この「今日の一言」の中で、「納税先指定による納税法案」の骨子を紹介しました。

 また、06年7月18日付「今日の一言」では、次のように記しています。

 『「納税先指定による納税法案」の議員立法の骨子の当初案は、(4月25日に)既にご紹介した通りなのですが、その後、衆議院法制局とも協議をして、理論的問題を克服するため、その仕組みを「住民税の納税者が地方自治体に寄附を行った場合、その納税者が収めるべき住民税額の2割を上限として、その寄付について税額控除(税金を減額することです)を認める。」というものに改めました。

(具体的提案:省略)

  この法案ができれば、例えば、故郷に残した両親の生活支援も間接的にできると思います。ただし、この法案が提出されることについては、多分、沢山の住民税を得ている大都市の地方公共団体からは反対されるのではないかと思いますが、各地方公共団体が、納税先指定を受けるため魅力ある地方作りをするよう、お互いに競争していくのではないかとも期待されます。皆さんのご意見も戴ければ幸いです。』


その第2は、特殊支配同族会社(実質一人オーナー会社)課税の廃止です。06年度の税制改正により、「実質一人オーナー会社の役員給与の給与所得控除額相当額の損金不算入制度」が創設されましたが、税政連の先生方と共闘し、その廃止を実現させたことです。


そもそも、この制度は、創設に当たって十分な議論も経ておらず、「06年5月の会社法改正の施行を契機として、租税回避を目的とする法人成りを防止しようという観点」(06、2、21衆・財金委での谷垣財務相(当時)答弁)に基づき創設すると説明されました。


税政盟では、十分な議論無く制度が導入されたことに問題意識を持つとともに、課税の実態も、創設時の当局説明とは異なり、既設会社への適用例がほとんどであって広範な課税強化になっていました。このような実態を踏まえ、課税の在り方についてもっと根本的な議論をすべきとして、私が中心となって民主党のマニフェストで「廃止」を打ち出し、民主党政権下で廃止したのです。


その第3は、09年度税制改正での中小企業の事業承継税制の創設です。08年5月に、中小企業の事業承継を円滑に進めることを目的として「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」が成立し、この法律に基づき、09年4月より、「相続税の納税猶予制度」及び「贈与税の納税猶予制度」から成る「事業承継税制」が施行されました。


この事業承継税制は、私の地元の税制に詳しい企業経営者から、私が00年に衆議院議員に初当選して以来、ずっとその創設の必要性を訴えられていたものです。私も、その方の創設への熱意に共鳴して、創設の必要性を国会議員として訴えてきました。


09年度にようやく事業承継税制が実現したのですが、その方からは、その制度の使い勝手の悪さを指摘され続けてきました。民主党政権下になってからは、私も、政府税調の委員として、制度の改善を主張してきました(その一部が15年から改善)。》

(了)