本日、民主党の代表を選ぶ臨時党大会が開催され、野田、赤松、原口、鹿野の4候補者の中から、野田候補が民主党の代表に再選されました。1年前の代表選挙は、菅代表(当時)の残りの任期を務めるための代表を選ぶ選挙でしたので、野田代表は、今回の正式の代表選挙で初めて、民主党の党員・サポーター、地方議員及び国会議員の皆んなの参加によって選ばれた代表となったのです。

 野田代表は、代表に選出された後の挨拶で、「前回の代表選挙の後に『ノーサイドにしましょう、もう。』と言ってチームワークの良い民主党を目指したが、結果的に多くの仲間が離れて行った。今回は、民主党を、一人一人の素晴らしい能力が生かされる戦闘集団に変えるようにしていきたい。」と言っていました。正に、崖っぷちに立たされた民主党にとって、党をどのようにまとめていくのか、野田代表にとって極めて重要な課題となります。

 ところで、野田代表の政策に関しては、私にとって心配な色々な問題があると思っています。今回の代表選挙においては、多くの有権者が「毎年毎年、総理大臣を替えるのは良くない」という理由で野田代表に投票していましたが、その理由で選ばれたにもかかわらず、政策について野田候補に全て委任されたとか、野田候補が掲げた政策がすべて支持されたとか考えてしまわれると困ったことになります。以下に、そのような心配がある主要な政策について見てみたいと思います。

第1は、「原発稼働ゼロ」についてです。党のエネルギー環境調査会の報告書や政府のエネルギー・環境会議の革新的エネルギー環境戦略で「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」との政策意思を示したことについて、19日の閣議では、この政策意思に対して「柔軟性をもって不断の検証と見直しを行いながら遂行する」と決定しました。この閣議決定が、「2030年代の原発稼働ゼロ」を後退させることにつながるのではないかと懸念されます。

第2は、TPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加についてです。代表選挙の野田候補の政策の中では、TPPに関しては、「国益の確保を大前提として、TPPと、日中韓FTA、東アジア経済連携協定(RCEP)を同時並行して推進」との方針を示しています。TPPに無条件で参加することを示してはいませんが、「国益の確保」が具体的にどんなことなのか、代表選挙を通じて何ら示されていません。私としては、TPP交渉への参加そのものに反対するものではありませんが、TPPへの参加は慎重に判断すべきだと考えています。

第3は、外交・安全保障政策についてです。その一は、「集団的自衛権(自国は武力攻撃を受けていないにも拘らず、他国が受けた武力攻撃を自国に対する武力攻撃とみなして、自衛権に基づく武力行使を認める権利)の行使」問題です。数か月前に、政府の国家戦略会議の「フロンティア分科会」が、集団的自衛権の行使を容認する報告を出しました。これに対して、野田総理は、あくまでも、「有識者から成る勉強会での報告書に過ぎない」という趣旨の言い訳をしていますが、彼の著書では、「集団的自衛権の行使を認めるべし」としています。

「集団的自衛権の行使」については、これまで一貫して、「憲法(第9条)解釈上、認められない」との政府見解が示されてきたもので、もし認めるのであれば、憲法を改正するのが本来あるべき筋なのです。換言すれば、憲法改正を通じて、国民の合意を形成すべき問題です。今行われている自民党の総裁選挙に出馬している5人の候補者が、そろって、「集団的自衛権の行使」を容認することを主張していますので、選ばれた自民党総裁と野田総理が結託すると大変なことになりそうです。

外交・安全保障問題に関するその二は、オスプレイの配備問題です。これまで、「まず、配備ありき」で物事が進められてきた印象があります。その証拠に、これからの総理大臣を選ぶこととなる民主党代表選挙の当日に、在日米軍はオスプレイの試験飛行を行い、そのことに日本政府は何らの異議も唱えませんでした。民主党代表選挙の候補者の中には、明確にオスプレイの日本配備を問題視していた人がいたにもかかわらず、です。

オスプレイの配備に関しては、その安全性の確保は当然として、米国内ではオスプレイの運用を法的にチェックする枠組みが整っているにもかかわらず、我が国内では、そうした国内法が整備されておらず、仮に整備されていたとしても、その国内法が在日米軍に適用されないという問題があります。これらを解決しない限り、誰が、どのような権限に基づいて、どのような判断をすることが可能か、そして、誰が、どのような責任を有するのか不明確です。こうした問題に真正面から取組まなければ、国民は納得しないのではないでしょうか。

外交・安全保障問題に関するその三は、領土問題です。この問題について詳しく触れることはここではできませんが、竹島、尖閣諸島、北方領土については、単に「領土問題」に止まらず、「歴史認識問題」や「戦後処理問題」でもあります。そうした認識を野田総理が持っているのか心配です。自民党総裁候補者と同様、単純に「毅然として対処する」とか「不退転の決意で臨む」とか言っていればよい問題ではないことを認識しなければならないと考えます。