今朝、夏休みと言えば怪談です…だなんて書きましたが…
あれから考えたのですが…やはり夏休みと言えば、怪談ですw
もちろん僕自身が実際に体験した実話を基にした、完全オリジナルの怪談です!
自己責任でどうぞ♪
以下本編です。
『怪談 栗林の廃墟』
僕がまだ小学生だった頃の事。
当時、僕が暮らして居た市営住宅の裏手に、栗林が有った。
その頃の僕は、秋になると、わざわざ自転車で月寒公園や羊ヶ丘の森林へ行き、栗拾いをする事があった。
その日、友人の住む家に遊びに行く途中、家の近所にある栗林の栗の木から落ちた大きな栗の毬が、道まで広がって居るのを見て胸が高鳴った。
それまでは意識した事もなかったのだけれど、こんな近くに
恐らく今までも永い間、毎年こんな風に沢山の栗が成って居たんだろうなぁ~と。
友人と遊び終え、一旦家に帰ると、もう既に陽は傾きかけて居たが
母に『近所の栗林で栗拾いをして来る。』と言ってスーパーのビニール袋を持ち、再び出掛けた。
その栗林には柵はなく、誰でも容易に立ち入る事が出来た。
僕は早速、栗林の中にある細い砂利道を歩きながら、道に落ちた毬玉の中から出来るだけ大きな物を選び出し、靴底で踏んで引き裂き、丸々と膨らんだ栗の実を、スーパーのビニール袋に集めて行った。
道に落ちている目ぼしい栗の毬を全て開き終え、木を見上げると、高い所にまだ沢山の実が成って居るのが見えた。
僕は、道端に落ちている大きめの木の枝をブーメランの要領で回転を加えながら、木の上に成って居る栗の毬塊に向けて投げた。
何度か投げて居ると少しずつコツが掴めて来て、結構高い所に成って居る栗の毬塊に命中させる事が出来る様になった。
何度かに一回は、大きな毬が落ちて来た。
夕陽が山に沈んで辺りは暗くなって来たので、あと一つだけ毬を落としたら帰る、そう決めて枝を投げると…
『こら、栗泥棒!』
いつの間にか僕の背後に、今の僕と同じ位の四十代半ばと思われるおばさんが立って居た。
栗林の道を十数メートル歩いた所には、確かに赤い屋根の古い家があった。
しかし誰も住んで居る様子はなかったし、日頃からこの栗林は子供達がセミ捕りをしたり、走り回ったりして居た。
とにかく僕には、泥棒をして居ると言う自覚はなかったが、生まれて初めて『泥棒!』と言われた事に対して、甚だショックを受けていた。
僕は、半ベソをかきながら『ごめんなさい!もうしません、拾った栗も返します!』と言った。
すると、おばさんはニッコリ笑って『いいのよいいのよ、柵も何もないから、栗の木のある雑木林にしか見えなかったのね。』と言ってくれた。
僕は、『本当に助かった~』と心の中で思って、胸を撫で下ろした。
おばさんは、何だか嬉しそうに
僕を、これまで誰も住んで居ない物だとばかり思っていた家の玄関まで招き入れ、『ちょっと待っててね』と言うと
台所へ行き、コップに炭酸飲料を注いで、玄関まで持って来てくれた。
おばさんはニコニコして、僕がコップに注がれた炭酸飲料を飲み干すのを眺めながら
『また栗の実を拾いに来ていいからね。でも、今度はちゃんとおばさんの所に来て、断ってから採ってね。』と言う様な事を言った。
辺りは、もうすっかり暗くなってしまったが、僕は栗の実で一杯になったスーパーのビニール袋を手に、とても楽しい気持ちで家に帰った。
家に帰父と母に、栗林で起きた出来事を話した。
母は、怒らなかったが、やれやれと呆れた様な顔をして
『今度一緒に謝りに行かなきゃね。』と言って居た。
次の日、学校から帰ると、お菓子を買い、母と二人で栗林に向かった。
栗林に入り、やや曲りくねった道を十数メートル行くと、その家はあった。
…
ただ、僕が昨日来た時とは全く違って居て、屋根の色も赤と言うよりは赤褐色に錆び切って居て
全ての窓には、木の板が打ち付けられて居た。
母は
きっと、この家の近所に栗林の持ち主が住んで居て
僕が栗を拾って居て『ドロボー!』と言われた事で動揺し、本当は別の家の玄関に招かれたのを、僕が勝手に今まさに目の前にある廃墟だと勘違いしてしまったんだろう、と判断していた。
僕も、もしかしたら、あれは僕自身が動揺した事による、勘違いだったのかも知れない…という結論に落ち着いた。
暫くして、道路を隔てて栗林の向かいに住んで居る僕の同級生が、脚を骨折して近所の整形外科に入院した。
ある日、僕は当時住んでいた市営住宅の近所にあった、二条ストア内に入って居た玩具屋のテツシンドウへ行き、プラモデルを買って、骨折した同級生のお見舞いに行った。
ベッドには、骨折した友人が横になり、傍には食品カメラマンをして居る彼の父が居た。
僕が同級生の住む家のすぐ向かいの栗林であった出来事を話すと…
僕の話を静かに聴いて居た同級生の父は
最初は、ちょっと驚いた様な顔をしてから何かを思い出した様に、少し寂しそうな遠い目をして…
あの栗林の持ち主について色んな思い出噺を話してくれた。
その頃、まだ同級生の父親が高校生ぐらいだった頃の事…
栗林の持ち主が、ある出来事を切っ掛けに、東京に引っ越して行ってしまった事。
その出来事というのは…
栗林の持ち主は、20年程前まで、奥さんと、当時小学生だった息子と、家族三人で栗林の中にある赤い(赤かった)屋根の家で、幸せそうに暮らして居た事。
ある時、夫婦は
病気だったか交通事故によって息子さんを亡くしてしまった事。
奥さんは、息子さんを亡くしてから、次第に痩せ細って行き…
ある日、自宅の『栗の木』に縄を掛けて首を吊り、自殺してしまった事…
そんな事を話してくれた。
僕は、赤い屋根の家に住んでいたおばさんの、何処か愛おしそうな…とてもやさしい笑顔を思い出し
どんなに息子さんの事を愛して居たのか…
そんな事を思いながら、とても切なく哀しい気持ちになり、思わず泣いてしまった。
あの頃、栗林だった土地に、今では既に栗の木はなく、向かいに住んで居た同級生も、何処かへ引っ越して行った様で、どこへ行ったのか皆目、見当のつけようもない。
たまに車で、あの栗林の有った辺りを通り掛かると、いつも昨日の出来事のように、鮮明に
息子さんの大切な命を失ったおばさんが、恐らく自分の息子の面影に重ね合わせて僕に向けてくれたのであろう
とても優しい、とても美しい笑顔を思い出し
心が暖かくなって行くのを感じるのです。
さて、少し長くなりましたが、このお話はこれでおしまいです。
この日記が面白かった!または癒された!って思った方は、是非ランキングバナーを押してね♪
にほんブログ村



















