#15ー3☆
十階
鬼神の如き前田の奮闘も、次から次と現れる紫の壁に阻まれ、思うように前には進めない。体力は、既に限界。気力のみが前田を支えていた。
峯岸が、敵の木刀を奪い、応戦する。しかし、木刀にひるむ者はおらず、苦戦を強いられていた。
マナツはというと、先程の須田との対戦によるダメージが大きく、特に発勁が致命的な損傷だった。
「元特攻隊長さんも、こんなもんかよ!」
「弱い弱い!」
「うちの隊長とやったら、ボコボコじゃね?」
三番隊の隊員が、口々に、マナツを罵る。
そういえば、隊長の姿が見えない。ブラッディー(血まみれ)メアリーと呼ばれる三番隊、隊長ー平田リカコの姿がー。
「どきなさい!」
マナツが、目の前の隊員を見えない拳で葬り去る。かろうじて。
そのときー
室内の喧騒をかき消すように
階段を駆け上がる数十の足音とともに、なだれ込んでくる一団があった。
それは、追い討ちをかけるような紫の塊。
アンダーガールズ三番隊の、残りのメンバーだった。増援。室内には、100人を超える紫の特攻服の群れ。奇声。叫声。
きりがない。
エンドレス。
前田の気力も、尽き、アンダーガールズに、いいように殴られはじめた。
峯岸も木刀を奪い返され、逆に滅多うちにされる。
「万事休すか…」
マナツが舌打ちした。
前田、峯岸、マナツの三人は、さながら紫の大波に押し潰される小舟のようであった。
(もう少し…、もう少しなのに…)
前田は、いまにも倒れそうだった。
雲間から顔を出した月明かりが、広く大きな窓から差し込んできたのは、さ迷う小舟を希望へと導く灯台の光なのかー
「前田!マジ女のてっぺんってのは、そんなもんだったのかよ!」
よく響く声。全員の動きが、一瞬止まる。
紫の一団の後ろのほうに
マジ女の制服。
全員の目線が、入り口の扉にいる、少女に注がれる。
「あのときの…」
マナツは、憶えていた。ファミレスの駐車場の闘いにて、マジすか女学園のサドと共にアンダーガールズ隊員を、ことごとく蹴散らしていた小さな戦士のことを。
もちろん、前田も憶えていた。
マジすか女学園二年
松井ジュリナのことを。
「松井…」
華麗な身のこなしで、目の前の敵をたたき伏せるジュリナ。
(もう、おれがいないところで誰かが傷つくのは嫌なんだよ!
全部とる!欲しいものは全部!
てっぺんも、そして…
あのひとも…)
ジュリナの右の拳が閃いた。紫の特攻服が、吹き飛ぶ。
「マジだぜ!」
司令室ー
十階モニターを見つめる大矢マサナとネズミ。
(間に合ったっスね…)
ネズミが心の中で笑う。
「彼女が、あなたの“切り札”というわけですか…」
「いずれ、前田を倒して、てっぺんをとる女っスよ」
「松井…ジュリナ」
大矢マサナが、研究対象を見るような眼差しで、観察を始めた。今後の戦局を大きく変えるかもしれない…。
キョウトは、複雑な胸中を顔には出さず、同じようにモニターを眺めていた。
ジュリナの快刀乱麻の闘いぶりをー。
鬼神の如き前田の奮闘も、次から次と現れる紫の壁に阻まれ、思うように前には進めない。体力は、既に限界。気力のみが前田を支えていた。
峯岸が、敵の木刀を奪い、応戦する。しかし、木刀にひるむ者はおらず、苦戦を強いられていた。
マナツはというと、先程の須田との対戦によるダメージが大きく、特に発勁が致命的な損傷だった。
「元特攻隊長さんも、こんなもんかよ!」
「弱い弱い!」
「うちの隊長とやったら、ボコボコじゃね?」
三番隊の隊員が、口々に、マナツを罵る。
そういえば、隊長の姿が見えない。ブラッディー(血まみれ)メアリーと呼ばれる三番隊、隊長ー平田リカコの姿がー。
「どきなさい!」
マナツが、目の前の隊員を見えない拳で葬り去る。かろうじて。
そのときー
室内の喧騒をかき消すように
階段を駆け上がる数十の足音とともに、なだれ込んでくる一団があった。
それは、追い討ちをかけるような紫の塊。
アンダーガールズ三番隊の、残りのメンバーだった。増援。室内には、100人を超える紫の特攻服の群れ。奇声。叫声。
きりがない。
エンドレス。
前田の気力も、尽き、アンダーガールズに、いいように殴られはじめた。
峯岸も木刀を奪い返され、逆に滅多うちにされる。
「万事休すか…」
マナツが舌打ちした。
前田、峯岸、マナツの三人は、さながら紫の大波に押し潰される小舟のようであった。
(もう少し…、もう少しなのに…)
前田は、いまにも倒れそうだった。
雲間から顔を出した月明かりが、広く大きな窓から差し込んできたのは、さ迷う小舟を希望へと導く灯台の光なのかー
「前田!マジ女のてっぺんってのは、そんなもんだったのかよ!」
よく響く声。全員の動きが、一瞬止まる。
紫の一団の後ろのほうに
マジ女の制服。
全員の目線が、入り口の扉にいる、少女に注がれる。
「あのときの…」
マナツは、憶えていた。ファミレスの駐車場の闘いにて、マジすか女学園のサドと共にアンダーガールズ隊員を、ことごとく蹴散らしていた小さな戦士のことを。
もちろん、前田も憶えていた。
マジすか女学園二年
松井ジュリナのことを。
「松井…」
華麗な身のこなしで、目の前の敵をたたき伏せるジュリナ。
(もう、おれがいないところで誰かが傷つくのは嫌なんだよ!
全部とる!欲しいものは全部!
てっぺんも、そして…
あのひとも…)
ジュリナの右の拳が閃いた。紫の特攻服が、吹き飛ぶ。
「マジだぜ!」
司令室ー
十階モニターを見つめる大矢マサナとネズミ。
(間に合ったっスね…)
ネズミが心の中で笑う。
「彼女が、あなたの“切り札”というわけですか…」
「いずれ、前田を倒して、てっぺんをとる女っスよ」
「松井…ジュリナ」
大矢マサナが、研究対象を見るような眼差しで、観察を始めた。今後の戦局を大きく変えるかもしれない…。
キョウトは、複雑な胸中を顔には出さず、同じようにモニターを眺めていた。
ジュリナの快刀乱麻の闘いぶりをー。
#15ー2☆
二階
チームホルモンと二番隊が、入り乱れて闘いを繰り広げるなかー
階段の傍では、バンジーと二番隊、隊長ー古川アイリとの死闘が、行われていた。死闘と呼ぶにはあまりにかけ離れた、一方的な虐殺…。
「ククク…、話にならねーな」
アイリが鼻先で笑う。全くの無傷で。
対するバンジーは、殴られ続けて、ボロボロになっていた。明白な実力差。だが、目は死んでいなかった。
「まだ…拳は握れんぞ…」
息も絶え絶えな
バンジーが、左の拳をアイリに掲げて見せる。まだ、やれるという意思表示だ。
「クク…、まぁ、おれは、殴れるなら、何でもいいんだけどな」
相手の意思や実力は関係ない。ただ、殴れればいい。狂える獅子の狂気。
「うああああ!」
気合いを振り絞るように
叫び声をあげ
バンジーは、玉砕覚悟で、突っ込んでいった。
その場に、ヲタが来たときには、もう…。
血まみれで、ちから尽きているバンジーと、血まみれで、薄笑いを浮かべ、その様子を見下ろしているアイリがいた。返り血を浴びたー。
「バンジー!」
倒れ伏しているバンジーを抱えおこすヲタ。
目をおおいたくなるような凄惨さ。
「ヲタ…、すまねー…、一発も…入れられなかった…」
「くっ…」
泣き出しそうになるのを堪えるヲタ。
「でも…、お前なら…、やれる…きっと…、昔から…お前は…、何かを期待させる…」
「わかった…」
頷くヲタ。
「ヲタ…、おれのなかでは…、いつだって…、お前がエースなんだぜ…」
そう言って、バンジーは、意識を失った。
「ククク、次の獲物はお前か?」
「古川アイリ…、お前は、やっちゃいけねーことをしやがった…。おれが…こんなに頭にきたのは…初めてだ」
ヲタの顔つきが、いつもと違っていた。深い哀しみのなかに、強い闘志を秘めたようなー。
「ムクチ!バンジーを頼む!アキチャ、ウナギ!フォローしろ!誰も近づけるな!」
チームホルモンのリーダーであるヲタが、素早く、指示を出す。
ムクチ、アキチャ、ウナギの行動は、迅速だった。
「タイマンだ!誰も手を出すな!」
ヲタは、アイリに向けて、右の拳をつきつけた。
ヲタの表情は、死さえも覚悟したもののように見えた。
#15ー1☆
十階へと続く階段ー
「十階の守護者、親衛隊十人衆の木崎ユリアは、ニューヨークに行ってるはずですから…」
走りながら
マナツが、前田と峯岸に説明する。
「ということは、十階で、だるまたちを救出して、このくだらないゲームも終了ということで良さそうだな」
意気あがる峯岸に対し、前田は、冷静だった。
「まだ、何があるかわからない。気を引き締めていこう」
「同感です。総参謀の大矢が、このまま、すんなりと人質を返すとは思えません」
「この悪趣味なゲームの首謀者ってやつだな」
そいつだけは、許せない。許すことはできない。
三人は、十階の扉の前に立つ。ついにー。
扉には
鍵がかかっていた。案の定。
九階で手に入れた鍵を使いー
重々しい扉を開く。
ガチャリ
室内は、かなりの広さだった。1フロアーぶち抜きの奥行き。しかし、前田たちの眼前には、床が見えないほどの…紫色。
「なんだ…こいつら?」鼻白む峯岸。
「やはり…」
と、マナツ。
そこにはー
アンダーガールズ三番隊のメンバー、約50名が壁となって、立ちふさがっていた。三番隊は、最凶最悪のアンダーガールズのなかでも、特に気性が荒いメンバーが揃っている。
「おせーんだよ!」
「待ちくたびれたぜ!」「あんまり、暇だったんで、お前らのお友達と遊ばせてもらったよ」
紫の特攻服で、よく見えないが、奥のほうで、何かが、横たわっていた。
前田が、いち早く、その存在に気づく。
そこには、だるま、学ラン、大歌舞伎、小歌舞伎の四人が、全身を縄で縛られ、鉄パイプや木刀で、幾度も殴られたであろう姿が、あった。意識は虚ろだった。
「だるまあああああああ!!!」
前田の豹変ぶりに驚くマナツと峯岸。あの沈着冷静な前田がー。こんな前田を見るのは初めてだった。
我を忘れ
鬼神のように、アンダーガールズに殴りかかる前田。疲労や負傷などは、微塵も感じさせない。
マナツ、峯岸も後に続いた。
「あつ…姐…」
意識朦朧の だるまは、前田の声は聞こえたようだが、未だ、夢と現実の狭間にいた。学ランと歌舞伎シスターズも同様に意識は薄弱だった。
ようやく
手の届くところまで、辿り着いた前田たち。だがー
その距離はー
見た目とは違いー
あまりにも遠いものだった。
「十階の守護者、親衛隊十人衆の木崎ユリアは、ニューヨークに行ってるはずですから…」
走りながら
マナツが、前田と峯岸に説明する。
「ということは、十階で、だるまたちを救出して、このくだらないゲームも終了ということで良さそうだな」
意気あがる峯岸に対し、前田は、冷静だった。
「まだ、何があるかわからない。気を引き締めていこう」
「同感です。総参謀の大矢が、このまま、すんなりと人質を返すとは思えません」
「この悪趣味なゲームの首謀者ってやつだな」
そいつだけは、許せない。許すことはできない。
三人は、十階の扉の前に立つ。ついにー。
扉には
鍵がかかっていた。案の定。
九階で手に入れた鍵を使いー
重々しい扉を開く。
ガチャリ
室内は、かなりの広さだった。1フロアーぶち抜きの奥行き。しかし、前田たちの眼前には、床が見えないほどの…紫色。
「なんだ…こいつら?」鼻白む峯岸。
「やはり…」
と、マナツ。
そこにはー
アンダーガールズ三番隊のメンバー、約50名が壁となって、立ちふさがっていた。三番隊は、最凶最悪のアンダーガールズのなかでも、特に気性が荒いメンバーが揃っている。
「おせーんだよ!」
「待ちくたびれたぜ!」「あんまり、暇だったんで、お前らのお友達と遊ばせてもらったよ」
紫の特攻服で、よく見えないが、奥のほうで、何かが、横たわっていた。
前田が、いち早く、その存在に気づく。
そこには、だるま、学ラン、大歌舞伎、小歌舞伎の四人が、全身を縄で縛られ、鉄パイプや木刀で、幾度も殴られたであろう姿が、あった。意識は虚ろだった。
「だるまあああああああ!!!」
前田の豹変ぶりに驚くマナツと峯岸。あの沈着冷静な前田がー。こんな前田を見るのは初めてだった。
我を忘れ
鬼神のように、アンダーガールズに殴りかかる前田。疲労や負傷などは、微塵も感じさせない。
マナツ、峯岸も後に続いた。
「あつ…姐…」
意識朦朧の だるまは、前田の声は聞こえたようだが、未だ、夢と現実の狭間にいた。学ランと歌舞伎シスターズも同様に意識は薄弱だった。
ようやく
手の届くところまで、辿り着いた前田たち。だがー
その距離はー
見た目とは違いー
あまりにも遠いものだった。