マジすか学園3☆#10ー9☆
全速力で、大通りをひた走る小歌舞伎。
気がつけば、ディーヴァ隊員たちが、すぐ後ろまで迫って来ていた。
ちらと背中越しに見る。
(そろそろ、いいかな)
小歌舞伎はニヤリと笑うと、急停止し、振り返った。右腕を真横に伸ばしてー。
瞬間。
先頭をきって走っていた隊員に悲劇が待っていた。
小歌舞伎の右腕が、隊員の首にきれいにおさまる。カウンターの右ラリアート。
ぐえっというヒキガエルをつぶしたような声を発し、地上と平行になる身体。隊員は、そのまま、受け身もとれず、地面に背中をしたたかに打ちつけられてしまった。
「うわぁ、大漁、大漁」
思わぬ迎撃に驚く隊員たちを見すえる小歌舞伎。
雑魚がしっかりと釣れた。これだけ離れていれば、大歌舞伎の闘いの邪魔にはならないだろう。
「あれ!?ちょっと、増えてない?」
当初、追いかけてきたのは十人程だったのだが、いまは、二十人強に増えていた。
「…、なーんて、ビビる小歌舞伎さんだと思ったら大間違いだよ」
威圧的に凶器を振りかざし、じりじりと迫るディーヴァの隊員たち。
「おかしなカッコしやがって」
「今頃、姉貴とやらも、くたばっとるやろ」「小鷹狩さんは『最硬』やからな」「お前も、同じ運命や」
「姉貴を…、歌舞伎シスターズを…なめるなああああ!」
吠えると同時にー
ジャンプ一番。
大歌舞伎を侮辱したディーヴァ隊員の胸のあたりに、小歌舞伎のドロップキックが決まった。吹き飛ぶ隊員に対し、アスファルトの地面にしっかり受け身をとる小歌舞伎。
(大人数相手に組み技は愚策、打撃中心で…いく)
「らあああああ!」
小歌舞伎は、殴りかかってくる隊員の胸元に逆水平チョップをきめる。
「ああああああ!」
奇声を飛ばし、威嚇する。
修行の成果により、プロレス技のキレも増し、確実にひとり、またひとり、倒していっていた。
残り、三分の一程度になったところで、
「あんま、調子のんなや!」
いきなり
死角から振り下ろされた鉄パイプが、小歌舞伎の頭を襲った。
崩れ落ちる。
(あ…、姉貴…)
「…、小歌舞伎?」
嫌な予感が、大歌舞伎の頭をよぎった。しかし、すぐに振り払う。
「なんや、さっきの奴のことか?そんなことより、自分の心配したらどうや?」
確かにー
文字通り、鉄壁の防御(ディフェンス)をほこるディーヴァの将軍、小鷹狩ユウカ相手に大歌舞伎の通常の攻めはまったく効いていなかった。
さらには変幻自在の攻撃(オフェンス)を繰り出してくる相棒、隻眼の鷹“マサムネ”を手足のように操る。
頭上からの攻撃を避けるのは、いくら喧嘩慣れしていても難しい。それが、音もなく迫る。
そして、攻撃した後、手の届かない空へと消える。完璧なヒット&アウェイ。
人間ふたりを相手にする以上に、始末におえなかった。
全身、傷だらけの大歌舞伎の額から流れる血が、頬を伝い、落ちる。
「…、(やっかい…だねぇ)」
「はよ、終わらせて、前田、潰しに行こか」
宙を舞う“マサムネ”に話しかけると、ユウカは初めて、パンチを放ってきた。硬い拳。
受け流すことの出来ないパンチが、大歌舞伎の顔面にヒットする。
何発も。
「くそっ!防御特化型(タイプ)かと思ったら、いいパンチ持ってるじゃねーか」
「そっちは、最初から口先ばっかりやな」
「口先だけじゃねぇさ…」
大歌舞伎が弾かれるように、地を蹴る。
右、左と、掌底突きを繰り出す。
気の力により、鋼鉄のように硬くなった肉体に、大歌舞伎の掌底突きでは、痛みを与えることはなかった。
痛みは感じないが、目の前でぶんぶんと飛び回るハエは鬱陶しいものだ。
ユウカが、硬い腕で、うるさそうに、大歌舞伎の掌底を払う。
よろける大歌舞伎。
(…早々と使いたくなかったが、出し惜しみしてるときじゃねーな)
歯をくいしばり、右腕に、ちからを込める。
大歌舞伎の右腕の筋肉が異様に盛り上がった。
「うちらが…、大阪(こんなところ)まで、手ぶらでやって来たとでも思ってんのか…?」
「ん?なんや、土産でも持ってきてくれたんか?」
その問いかけに、獰猛な笑みをもって答える大歌舞伎。
「あぁ、その通りさ…、冥土の土産、持っていきやがれ!」
右腕を思い切り後方に引き絞る。弓を射るように強く。
そして、ユウカの水月(みぞおち)めがけて、掌底を思い切りぶち込んだ。
「ぐ…、ぐほっ!」
ユウカは、呻き声をもらし、吹き飛んだ。数回、地面に身体を打ちつけ、転がっていく。倒れたまま、驚きと憎しみの表情を大歌舞伎に向ける。
「あんまり、使いたくはなかったんだがな…」
大歌舞伎の右腕が、だらりと下に伸びていた。左腕で、右肩をおさえている。
『連獅子』ー
一瞬の間に、同じ箇所に掌底突きを“二発”繰り出す技。一度で、通常の掌底突きの倍以上のダメージを相手に与えることが出来る。しかし、関節や筋繊維に負担が掛かりすぎるため、自分へのダメージも大きい。
水月を押さえ、よろよろと立ち上がるユウカ。
勝負はまだ決していない。通常ならば、一発で決まる急所と衝撃のはずなのに。
「効いたわ…、でも、その技は、あまりにも代償が大きすぎるんと違…、ん?何、笑っとるんや?」
「嬉しいんだよ、仲間のために闘える、こんな嬉しいことはねーよ…、ここで、絶対にお前を倒す…、前田のところへは行かせねー!
一発で決まらないなら何発でも…ぶっ放すだけだ、勝つためなら、腕一本くらいくれてやる!」
一転して、大歌舞伎は、刃のように鋭い視線を投げかける。
「“階段”…、のぼらせてもらうよ」
気がつけば、ディーヴァ隊員たちが、すぐ後ろまで迫って来ていた。
ちらと背中越しに見る。
(そろそろ、いいかな)
小歌舞伎はニヤリと笑うと、急停止し、振り返った。右腕を真横に伸ばしてー。
瞬間。
先頭をきって走っていた隊員に悲劇が待っていた。
小歌舞伎の右腕が、隊員の首にきれいにおさまる。カウンターの右ラリアート。
ぐえっというヒキガエルをつぶしたような声を発し、地上と平行になる身体。隊員は、そのまま、受け身もとれず、地面に背中をしたたかに打ちつけられてしまった。
「うわぁ、大漁、大漁」
思わぬ迎撃に驚く隊員たちを見すえる小歌舞伎。
雑魚がしっかりと釣れた。これだけ離れていれば、大歌舞伎の闘いの邪魔にはならないだろう。
「あれ!?ちょっと、増えてない?」
当初、追いかけてきたのは十人程だったのだが、いまは、二十人強に増えていた。
「…、なーんて、ビビる小歌舞伎さんだと思ったら大間違いだよ」
威圧的に凶器を振りかざし、じりじりと迫るディーヴァの隊員たち。
「おかしなカッコしやがって」
「今頃、姉貴とやらも、くたばっとるやろ」「小鷹狩さんは『最硬』やからな」「お前も、同じ運命や」
「姉貴を…、歌舞伎シスターズを…なめるなああああ!」
吠えると同時にー
ジャンプ一番。
大歌舞伎を侮辱したディーヴァ隊員の胸のあたりに、小歌舞伎のドロップキックが決まった。吹き飛ぶ隊員に対し、アスファルトの地面にしっかり受け身をとる小歌舞伎。
(大人数相手に組み技は愚策、打撃中心で…いく)
「らあああああ!」
小歌舞伎は、殴りかかってくる隊員の胸元に逆水平チョップをきめる。
「ああああああ!」
奇声を飛ばし、威嚇する。
修行の成果により、プロレス技のキレも増し、確実にひとり、またひとり、倒していっていた。
残り、三分の一程度になったところで、
「あんま、調子のんなや!」
いきなり
死角から振り下ろされた鉄パイプが、小歌舞伎の頭を襲った。
崩れ落ちる。
(あ…、姉貴…)
「…、小歌舞伎?」
嫌な予感が、大歌舞伎の頭をよぎった。しかし、すぐに振り払う。
「なんや、さっきの奴のことか?そんなことより、自分の心配したらどうや?」
確かにー
文字通り、鉄壁の防御(ディフェンス)をほこるディーヴァの将軍、小鷹狩ユウカ相手に大歌舞伎の通常の攻めはまったく効いていなかった。
さらには変幻自在の攻撃(オフェンス)を繰り出してくる相棒、隻眼の鷹“マサムネ”を手足のように操る。
頭上からの攻撃を避けるのは、いくら喧嘩慣れしていても難しい。それが、音もなく迫る。
そして、攻撃した後、手の届かない空へと消える。完璧なヒット&アウェイ。
人間ふたりを相手にする以上に、始末におえなかった。
全身、傷だらけの大歌舞伎の額から流れる血が、頬を伝い、落ちる。
「…、(やっかい…だねぇ)」
「はよ、終わらせて、前田、潰しに行こか」
宙を舞う“マサムネ”に話しかけると、ユウカは初めて、パンチを放ってきた。硬い拳。
受け流すことの出来ないパンチが、大歌舞伎の顔面にヒットする。
何発も。
「くそっ!防御特化型(タイプ)かと思ったら、いいパンチ持ってるじゃねーか」
「そっちは、最初から口先ばっかりやな」
「口先だけじゃねぇさ…」
大歌舞伎が弾かれるように、地を蹴る。
右、左と、掌底突きを繰り出す。
気の力により、鋼鉄のように硬くなった肉体に、大歌舞伎の掌底突きでは、痛みを与えることはなかった。
痛みは感じないが、目の前でぶんぶんと飛び回るハエは鬱陶しいものだ。
ユウカが、硬い腕で、うるさそうに、大歌舞伎の掌底を払う。
よろける大歌舞伎。
(…早々と使いたくなかったが、出し惜しみしてるときじゃねーな)
歯をくいしばり、右腕に、ちからを込める。
大歌舞伎の右腕の筋肉が異様に盛り上がった。
「うちらが…、大阪(こんなところ)まで、手ぶらでやって来たとでも思ってんのか…?」
「ん?なんや、土産でも持ってきてくれたんか?」
その問いかけに、獰猛な笑みをもって答える大歌舞伎。
「あぁ、その通りさ…、冥土の土産、持っていきやがれ!」
右腕を思い切り後方に引き絞る。弓を射るように強く。
そして、ユウカの水月(みぞおち)めがけて、掌底を思い切りぶち込んだ。
「ぐ…、ぐほっ!」
ユウカは、呻き声をもらし、吹き飛んだ。数回、地面に身体を打ちつけ、転がっていく。倒れたまま、驚きと憎しみの表情を大歌舞伎に向ける。
「あんまり、使いたくはなかったんだがな…」
大歌舞伎の右腕が、だらりと下に伸びていた。左腕で、右肩をおさえている。
『連獅子』ー
一瞬の間に、同じ箇所に掌底突きを“二発”繰り出す技。一度で、通常の掌底突きの倍以上のダメージを相手に与えることが出来る。しかし、関節や筋繊維に負担が掛かりすぎるため、自分へのダメージも大きい。
水月を押さえ、よろよろと立ち上がるユウカ。
勝負はまだ決していない。通常ならば、一発で決まる急所と衝撃のはずなのに。
「効いたわ…、でも、その技は、あまりにも代償が大きすぎるんと違…、ん?何、笑っとるんや?」
「嬉しいんだよ、仲間のために闘える、こんな嬉しいことはねーよ…、ここで、絶対にお前を倒す…、前田のところへは行かせねー!
一発で決まらないなら何発でも…ぶっ放すだけだ、勝つためなら、腕一本くらいくれてやる!」
一転して、大歌舞伎は、刃のように鋭い視線を投げかける。
「“階段”…、のぼらせてもらうよ」
マジすか学園3☆#10ー8☆
両腕をクロスして、顔面をガードするチームホルモンたち。
吉田アカリの真空の斬撃が、その腕を無惨にも切り裂いていった。
「くっ…、なぁ、バンジー、日本刀使うなんて、ちぃっとばかし、チートなんじゃねーか?」
「くだらねぇダジャレは完全スルーとして…、ディーヴァにいまさら銃刀法持ち出しても仕方ないだろ…、それに鞘の中身が刀とは限らない…」
「どういう意味だ?」
「いまだかつて…、奴の刀身を見た者はいない…、つまり…、誰にも見切られたことのない…太刀筋ってことだ」
【エリアE】
ビルに挟まれた狭い路地。
前方と後方から、ディーヴァの隊員が、十名程で壁をつくっている。前門の虎、後門の狼。いや、あるいは、四面楚歌か。
背中合わせで前後の敵を牽制する歌舞伎シスターズ。
「姉貴、囲まれていてはこちらが不利、前方を強行突破し、広い大通りに出る手前で…」
手短にささやく小歌舞伎。
「了解!しっかり、ついて来いよ!」
大歌舞伎が地面を強く踏みしめ、前方の集団に突っ込んでいった。突破口を切り開くために。
叫声を響かせて。
数に勝る余裕からか、虚をつかれた格好のディーヴァ隊員たち。
大歌舞伎の掌底突きを胸部にまともに受けてしまう。一瞬、呼吸が止まる。
ぐらりとその隊員が崩れ落ちた。壁に穴があく。
後背の敵が迫るより早く、一気に、歌舞伎シスターズの二人はディーヴァの群を駆け抜けた。
「待てや!」「逃がすな!」
大通りに出る手前で、身を翻す二人。けっして、あきらめたわけではない。
「誰が逃げるって?」
向かってくる敵を嬉しそうに迎えうつかのごとく、掌底を放つ。
「もう、あんな思いはしたくないんだよ!二度とな!仲間が闘っているのに、ただ、手をこまねいて、見てるだけなんて無様な真似はな!」
先日の新宿でのアンダーガールズによる死のゲーム。大歌舞伎たちは、ただ、前田が傷つき、闘い続けるのを見ていることしか出来なかった。
そんな思いは、二度と、したくない。
狭い路地裏、悠々と各個撃破していく二人。ひとりひとりでは、歌舞伎シスターズの相手にならなかった。
「これはこれは、見過ごせん場面やな」
大通りのほうから声がかかる。
振り返る歌舞伎シスターズのふたり。
「姉貴、あの特攻服は…」
「待ってたよ…、雑魚ばっかりで飽き飽きしてたとこさ」
「その言葉が“はったり”やないと、ええんやけどな。うちの隊員らを雑魚呼ばわりするんやから、しっかり、楽しませてくれるんやろなぁ?」
銀灰色(グレイ)の特攻服。
ディーヴァ十二将のひとりー
小鷹狩ユウカ。
左腕には鉄製の手甲。
「こいつは、わたしに任せろ。お前は、先に行け!」
「姉貴!?」
「前田を頼む」
大歌舞伎に背中をぐいと押され、後ろ髪を引かれる思いで、小歌舞伎は、大通りをひた走り、その場を離れた。
ユウカは残った隊員に、小歌舞伎を追うよう、指示を出す。
「遅かれ早かれ、うちの隊員にやられるだけや」
「小歌舞伎を…、いや、歌舞伎シスターズをなめるなよ」
踏み込む。
真っ直ぐに立ちはだかるユウカの腹部に、大歌舞伎が掌底を打ち放った。
バシッという衝撃音と共に、弾き返される右腕。
「なっ!?」
鉄板を叩いた感触。
「てめぇ、その左腕の手甲と同じように、鎧でも着込んでるのか?」
「そんなわけないやろ」
呆れた様子で笑いとばすユウカ。
今度は、顔面に掌底を打ちこむ。
「痛(つ)ッ!」
またも弾かれる拳。
(なんなんだ…、この身体は…)
「うちの身体は鋼鉄。鍛え方が違うんや」
気功の一種なのだが、大歌舞伎の知識にはないものだった。
十二将の中でも最強の硬度をほこる肉体を持つ。『最硬』の将軍。
大歌舞伎は、掌底から蹴りに切り替え、ユウカの足や首など、いろいろな部分を攻める。
しかし、すべて弾き飛ばされるだけだった。
思わず、天を仰ぐ。
澄み渡った青空に、黒い影。
突然
大歌舞伎の背中に激痛が走った。制服が裂け、血が飛び散る。
「くっ!」
上空から、鷹の爪の一撃。
攻撃を終えた片目の鷹は、ユウカの左腕にのる。
「うちの相棒“マサムネ”や…、能ある鷹はなんとやらって言うやろ」
「ちっ!そんな爪を隠してやがったか…」
未知の敵を前に、未だかつてない闘いに身を投じることになるだろうと直感で実感する大歌舞伎だった。
マジすか学園3☆#10ー7☆
「何なんだよ!この遭遇(エンカウント)率は、クソゲーか?」
行く先々で、ディーヴァの隊員と出くわす、いつものジャージ姿の面々。苦言をもらすヲタ率いるチームホルモンも、たぶんに漏れず“エリア”に乗り込んできていた。
前田を捜しに来たはずが、逆に、敵に追われ、逃げまわっているという現状を嘆く。
「仕方ねーだろ!思いっきり、敵のふところなんだから!それに、よく見りゃ、監視カメラがそこら中に設置されてるぜ」
ヲタのくだらない“ボヤき”にも、走りながら応えるバンジー。
「ザ・監視社会ってやつかよ!?おれたちが“エリア”に潜り込んだのって、モロバレだったりするのか?」
「この歓迎の仕方は間違いねーな。なんだか奴らの目の色が普通と違う気もするが」
バンジーの言うように、チームホルモンたちが“エリア”に侵入したことはディーヴァの本部に筒抜けだった。
それにより、さらなる指令が隊員たちに追加されていたことまでは、チームホルモンが知るよしもない。
「ぐえぇ、時差ボケで吐きそう…、ちょっと休もうぜ」
ウナギが立ち止まり、口元を手で覆う。それに気づき、全員が足を止める。
「国内線で時差ボケはないだろ!食べすぎじゃね!?」
アキチャの鋭いツッコミが飛ぶ。
「見つけたで!賞金首や!」
五人の前方に、またしても、ディーヴァの隊員が十名ほどあらわれた。
「賞金…首?」
「何っ!?いつから、おれたち、お尋ね者になっちまったんだ?」
ぐてーっとなっていたウナギも一発で目を覚ます。その姿を横目にアキチャは言う。
「日頃の行いだったりして」
「ひとり100万、しめて500万やな」
新たなる指令ー『前田の仲間を潰せ!』
“エリア”の監視カメラにとらえた画像を添付し、隊員すべてに追加の賞金首の情報が送られていた。ディーヴァはマジ女と戦争するため、生徒の情報はある程度、収集していた。前田の仲間ということは周知。
ムクチが、他の四人を制す格好で、
「みんな、下がって。ここは、わたしの出番…、ディーヴァだけに。ディーヴァん…ディヴァん…、デバン…」
「ムクチでいてくれ」
冷静に諭すバンジー。
「おらぁ!」「いただきや!」「もろたでー!」
問答無用を絵に描いたように、五人に襲いかかるディーヴァ隊員とまがまがしい鉄パイプや木刀といった凶器。
「逃げまわってばっかもいられねぇ!いくぜ!」
ヲタが意を決し、叫ぶ。
RPGのキャラクターのように闘いを重ねる毎に経験値を増やし、強さのレベルを上げてきた五人。特にヲタは、もう、『へたれ』とは呼べない。名実ともに、チームホルモンのリーダーとしての格が備わっていた。
難なく、初撃をかわし、右の拳を打ち込む。
凶器を持っているとはいえ、十人程度では、いまのチームホルモンにとっては、もののかずではなかった。
あっという間に、この場を制圧する五人。
「おれたちを倒したきゃ、“将軍”くらいつれてきやがれ!」
大言壮語しながら、最後のひとりをウナギが蹴りとばした。
「…呼んだか?」
気安い様子で、長く黒い髪を風になびかせ、銀灰色(グレイ)の特攻服の少女があらわれた。純和風の面もち。全身に妖気のようなものがまとわりついている。
五人との距離、約六メートル。
「ほんとに来るんじゃねーよ!」
左腕に日本刀のようなものを携えている。漆黒の鞘に漆黒の柄。長さは二メートルにも及ぶ。
「あいつ…、噂では、チンピラ何十人も半殺しにして、鑑別に行ってたはず…」
バンジーが過去の記憶を手繰り寄せる。
「出てきたんや…、お前ら、全員、ぶった斬るために…」
マジ女との戦争のため、ディーヴァ総帥が警察上層部に働きかけ、超法規的措置を行使し、復帰を果たしていたのだった。組織の権力は、警察関係や政治家、実業家にも及ぶ。持ちつ持たれつの裏社会。
「将軍のひとり、吉田アカリ…、十二将の中で、最も恐ろしい…、『最恐』と呼ばれている奴だ」
「よぅ知っとるなぁ…」
薄ら笑いを浮かべ、右手を漆黒の柄にかけた。
瞬間。
「ぐあっ!」
バンジーのジャージが、真横に裂けた。血飛沫が鮮やかに舞う。
全く、右手が動いた様子がみえない。空気を切り裂く音と刀身を鞘に戻したような、キンという音だけが響いた。
居合い。目にも止まらぬ抜き手。
「バンジー!」
ヲタたちには
何が起こったのかわからなかった。
「い…、居合いだ…、気をつけろ…、カマイタチに…」
胸元をおさえるバンジー。
距離は関係なかった。遠目からでも、真空の衝撃波(カマイタチ)が飛んでくる。
うかつに動けないヲタたち。
「来ないなら…、こっちからいくで…」
まるで、古いつき合いのように気安く言う。口の端をつりあげ。
一瞬。
今度は、バンジー以外の四人を凶悪な斬撃が襲った。