マジすか学園3☆#10ー7☆
「何なんだよ!この遭遇(エンカウント)率は、クソゲーか?」
行く先々で、ディーヴァの隊員と出くわす、いつものジャージ姿の面々。苦言をもらすヲタ率いるチームホルモンも、たぶんに漏れず“エリア”に乗り込んできていた。
前田を捜しに来たはずが、逆に、敵に追われ、逃げまわっているという現状を嘆く。
「仕方ねーだろ!思いっきり、敵のふところなんだから!それに、よく見りゃ、監視カメラがそこら中に設置されてるぜ」
ヲタのくだらない“ボヤき”にも、走りながら応えるバンジー。
「ザ・監視社会ってやつかよ!?おれたちが“エリア”に潜り込んだのって、モロバレだったりするのか?」
「この歓迎の仕方は間違いねーな。なんだか奴らの目の色が普通と違う気もするが」
バンジーの言うように、チームホルモンたちが“エリア”に侵入したことはディーヴァの本部に筒抜けだった。
それにより、さらなる指令が隊員たちに追加されていたことまでは、チームホルモンが知るよしもない。
「ぐえぇ、時差ボケで吐きそう…、ちょっと休もうぜ」
ウナギが立ち止まり、口元を手で覆う。それに気づき、全員が足を止める。
「国内線で時差ボケはないだろ!食べすぎじゃね!?」
アキチャの鋭いツッコミが飛ぶ。
「見つけたで!賞金首や!」
五人の前方に、またしても、ディーヴァの隊員が十名ほどあらわれた。
「賞金…首?」
「何っ!?いつから、おれたち、お尋ね者になっちまったんだ?」
ぐてーっとなっていたウナギも一発で目を覚ます。その姿を横目にアキチャは言う。
「日頃の行いだったりして」
「ひとり100万、しめて500万やな」
新たなる指令ー『前田の仲間を潰せ!』
“エリア”の監視カメラにとらえた画像を添付し、隊員すべてに追加の賞金首の情報が送られていた。ディーヴァはマジ女と戦争するため、生徒の情報はある程度、収集していた。前田の仲間ということは周知。
ムクチが、他の四人を制す格好で、
「みんな、下がって。ここは、わたしの出番…、ディーヴァだけに。ディーヴァん…ディヴァん…、デバン…」
「ムクチでいてくれ」
冷静に諭すバンジー。
「おらぁ!」「いただきや!」「もろたでー!」
問答無用を絵に描いたように、五人に襲いかかるディーヴァ隊員とまがまがしい鉄パイプや木刀といった凶器。
「逃げまわってばっかもいられねぇ!いくぜ!」
ヲタが意を決し、叫ぶ。
RPGのキャラクターのように闘いを重ねる毎に経験値を増やし、強さのレベルを上げてきた五人。特にヲタは、もう、『へたれ』とは呼べない。名実ともに、チームホルモンのリーダーとしての格が備わっていた。
難なく、初撃をかわし、右の拳を打ち込む。
凶器を持っているとはいえ、十人程度では、いまのチームホルモンにとっては、もののかずではなかった。
あっという間に、この場を制圧する五人。
「おれたちを倒したきゃ、“将軍”くらいつれてきやがれ!」
大言壮語しながら、最後のひとりをウナギが蹴りとばした。
「…呼んだか?」
気安い様子で、長く黒い髪を風になびかせ、銀灰色(グレイ)の特攻服の少女があらわれた。純和風の面もち。全身に妖気のようなものがまとわりついている。
五人との距離、約六メートル。
「ほんとに来るんじゃねーよ!」
左腕に日本刀のようなものを携えている。漆黒の鞘に漆黒の柄。長さは二メートルにも及ぶ。
「あいつ…、噂では、チンピラ何十人も半殺しにして、鑑別に行ってたはず…」
バンジーが過去の記憶を手繰り寄せる。
「出てきたんや…、お前ら、全員、ぶった斬るために…」
マジ女との戦争のため、ディーヴァ総帥が警察上層部に働きかけ、超法規的措置を行使し、復帰を果たしていたのだった。組織の権力は、警察関係や政治家、実業家にも及ぶ。持ちつ持たれつの裏社会。
「将軍のひとり、吉田アカリ…、十二将の中で、最も恐ろしい…、『最恐』と呼ばれている奴だ」
「よぅ知っとるなぁ…」
薄ら笑いを浮かべ、右手を漆黒の柄にかけた。
瞬間。
「ぐあっ!」
バンジーのジャージが、真横に裂けた。血飛沫が鮮やかに舞う。
全く、右手が動いた様子がみえない。空気を切り裂く音と刀身を鞘に戻したような、キンという音だけが響いた。
居合い。目にも止まらぬ抜き手。
「バンジー!」
ヲタたちには
何が起こったのかわからなかった。
「い…、居合いだ…、気をつけろ…、カマイタチに…」
胸元をおさえるバンジー。
距離は関係なかった。遠目からでも、真空の衝撃波(カマイタチ)が飛んでくる。
うかつに動けないヲタたち。
「来ないなら…、こっちからいくで…」
まるで、古いつき合いのように気安く言う。口の端をつりあげ。
一瞬。
今度は、バンジー以外の四人を凶悪な斬撃が襲った。