マジすか学園F☆#1ー6☆
「トドメや!」
上西が、鋼鉄製の付け爪、長さ10センチ強の“鉄の爪”の付いた右手を空に掲げ、跪いたままの前田に対し、勢いよく振りおろした。
ブシュっという音と共に、鮮血が飛び散る。
しかし、前田に、痛みはなかった。
それは、意識がないためでも、痺れ薬が効いているからでもなく、間一髪のところで、跪く前田を抱きかかえるようにする何者かによって、防がれたためだった。
目測を誤った“鉄の爪”は、その何者かの背中側から、左肩口を貫いていた。眉を微かにひそめる上西。
朦朧とした意識のなか、前田が、口の中で、つぶやく。
「……どうして?」
「敦子…、大丈夫…か…?」
左肩の痛みを堪え、笑みを見せる“少女”。
前田の傷をみてとり、怒りが沸騰するまま、
「てめぇ…、おれの敦子に…、何してくれてんだよ!」
振り返り様に、その“少女”は、右の拳を、上西に向け、放った。
何故…ここに…?
前田は、その疑問を打ち消すように、一瞬の後、その“少女”の名を叫んだ。
東京──
スーパーマーケット裏の
バックヤード。
詩(死)の宣告を終えたブラックの闘い方は、いつもの彼女らしからぬものへと変わっていた。
あえて、死角(スキ)をつくり、その死角を狙ってきた攻撃を、逆にカウンターで狙い打つというカヲルの戦術。
そのため、死角に入り込む攻撃をやめ、あらゆる場所から、ブラックは、ランダムに攻め始めていた。
ただ、がむしゃらに、何の計算もなく、拳を振るい続ける。
「すぐに、対応してくるところは、さすが、“伝説のラッパッパ”と言えますね。ですが、防御の上からでは、あまり、意味がありませんよ」
カヲルは、ブラックの素早い攻撃に、とくに表情を変えず、さらに言いつのる。
「わたしも、なかなか、良い動体視力(め)を、持っていますから。このままだと、シブヤさん同様、あっさり倒せそうで、少し、つまらないですね」
それに対し、
ブラックも、感情をおもてに出すことなく、語る。
「喧嘩は、思い通りにはいかないものだ…、驕りは、必ず、致命的な隙を生む。わたしは、それを、ある闘いで知った…」
ある少女たちとの闘いを想起するブラック。
「…ひとりひとりの実力は、あの時点では、取るに足らないものだった…、」
しかし─、と続ける、
「諦めない心…、闘う姿勢…、仲間を想う犠牲の精神…、すべてが、“マジ”だった…」
大阪──
【エリアK】
「学ラン!」
前田に、そう呼ばれた少女は、傷だらけの制服の背中で応える。視線は、愛する者を傷つけた憎き敵を捉えたままー。
前田の窮地を救ったのは、学ランだった。
睨み据える。
残念なことに、
放った拳は、上西の長い爪を施された手のひらに、包まれていた。
「なんや、死に損ないか…、パンチに、ちから入っとらんで」
「るっせーよ!」
学ランが、拳を、振りほどきつつ、蹴りを打ち込む。
しかしー。
“上西”の蹴りのほうが、
学ランよりも疾く、鋭く、頭を打ち抜いた。ハイキック。
防御することも出来ず、地面をすべる学ラン。
動くことも出来ず、その情景を見つめる前田。唇を強く、噛み締める。
「ここまで、来れたことは、褒めてやるわ…、けど、“ここまで”やったな」
上西が、退屈そうに呟く。
「お前も、前田のように、痺れ薬で、動けへんようにしたるわ」
そう言って、
上西の“鉄の爪”が、高く煌めいたとき、何かが、すごい勢いで飛んできた。
キン、という音と共に、小指の爪が剥がれ落ちる。傍らには、折りたたまれた扇子が、転がっていた。
「なんや!?」
あれあれー、という声が、港湾地帯に響く。
「誰かと思ったら、そこにいるのは、卑怯極まりないディーヴァの将軍さんじゃないですかー、勝手に、うちらのこと、賞金首にしておいて、まさか、お忘れじゃないですよねー」
「歌舞伎シスターズ、参上!です」
大歌舞伎が、右肩を、小歌舞伎に支えられながら、共に、あらわれた。二人とも、ディーヴァとの闘いにより、自慢の歌舞伎風衣装もボロボロになるくらい、傷だらけだった。
「お前ら…、生きてたか?」
「何とか、突破してきたよ…、学ラン、あんたひとりに、いい格好させられないからねぇ」
「おれひとりで、十分…と、言いてぇとこだが…、敦子も心配だ…、痺れ薬で、動けないらしい…、だから、ここは、三人で、一気にこの野郎、ぶっ飛ばしちまおうぜ!」
三人の表情が一瞬、緩む。安堵感が満ちる。
「死に損ないが、二人、増えたところで、何も変わらんわ」
突然あらわれた二人に対し、
吐き捨てるようにつぶやく上西。
「なめんじゃないよ!」
大歌舞伎が、掌底を突きだす。
が、上西の身体に届く前に、破壊力抜群の蹴りによって、弾きとばされる。
骨の髄にまで、響く威力。
「姉貴!」
「そいつの“蹴り”に、気をつけろ!」
学ランが、立ち上がりながら、注意を促す。
ぅあああああ!と、小歌舞伎が、助走もとらず、ドロップキックを繰り出した。
それすらも、上西の爆発的な蹴りが、あっさりと、うち落とす。鋼鉄の脚力。
「雑魚が、何匹あつまっても、雑魚に変わりないわ」
と、そこへ。
「あづ姐ぇえええええええええ!」
砲弾のように、肉の塊が、飛び込んできた。勢いあまって、地面を転がり続ける。
やはり、皆と同様、傷だらけで血まみれの鬼塚だるまだった。
「だるま…、いま、敦子は、やつが使った痺れ薬とやらで動けねー、だから、まずは、こいつをぶっ飛ばすんだ」
「言われんでも…、うおおおおおお!」
だるまが、突進する。
呼応するかのように、学ランと歌舞伎シスターズも、向かっていく。
それを、跪いて、ただ、見つめることしかできない前田。
自分のために、こんなところまで─。
危険を冒し─。
傷だらけになりながら─。
(みんな…、こんな、自分勝手な…わたしのために…)
念じる。祈る。血を吐くような想い。
(………、動け…、)
と。
上西の“蹴り”が、乱れ飛ぶ。何人がかりでも、意に介さず、闘い続ける“鉄の女”上西。
あっという間に、地に叩き伏せられる四人。
それでも、
しゃがみ込む前田を、上西から守るように、立ち上がる。
誓いあった約束。
四人は、前田に、背中を向けたまま─
「敦子…、お前に会ったらさ、一発、ぶん殴ってやろうと思ってたけどよ…、そんな姿見ちまったら、もう、殴れねーよ…、だから…、勝手に、学校『退学する(やめる)』なんて、言わねーでくれよ…、一緒に、東京帰ろうぜ!」
そう言って、学ランが、右の拳を強く握りしめる。
「前田…、お前には、“借り”がありすぎるんだよ…、借りっぱなしは、性に合わないし…、これから、少しずつでも、ちゃんと、返していくからさ…、一緒に、東京帰るよ!」
そう言って、大歌舞伎が、掌を開き、構える。
「前田の姉貴…、姉貴が、いなかったら、わたしたちは、いまでも、路地裏で、くすぶったまま…、“クズ”と呼ばれ続けてたと思います。そんなとき、救い出してくれたのが、姉貴でした…、みんなで、一緒に、帰りましょう!」
そう言って、小歌舞伎が、両腕をあげる。
「あつ姐…、おれは…、あつ姐に逢(お)うて、“マジ”っちゅうもんを、教わりました…、最高の友達(ダチ)や仲間と出会えました…、いつも、あつ姐に頼ってもうてばっかですけど、たまには、おれたちに、頼ってみてください…、あつ姐は、“ひとり”やないんですから…、
せやから…、一緒に、帰って、手羽先、いっぱい喰べましょう!」
そう言って、だるまが、長い髪をかきあげる。
直後。
前田が必死に見つめるなか、四人は、叫び声をあげながら、地を蹴り、走り出す。最大の障害であり、最後の砦である、ディーヴァ将軍、上西ケイに向かって─
上西が、鋼鉄製の付け爪、長さ10センチ強の“鉄の爪”の付いた右手を空に掲げ、跪いたままの前田に対し、勢いよく振りおろした。
ブシュっという音と共に、鮮血が飛び散る。
しかし、前田に、痛みはなかった。
それは、意識がないためでも、痺れ薬が効いているからでもなく、間一髪のところで、跪く前田を抱きかかえるようにする何者かによって、防がれたためだった。
目測を誤った“鉄の爪”は、その何者かの背中側から、左肩口を貫いていた。眉を微かにひそめる上西。
朦朧とした意識のなか、前田が、口の中で、つぶやく。
「……どうして?」
「敦子…、大丈夫…か…?」
左肩の痛みを堪え、笑みを見せる“少女”。
前田の傷をみてとり、怒りが沸騰するまま、
「てめぇ…、おれの敦子に…、何してくれてんだよ!」
振り返り様に、その“少女”は、右の拳を、上西に向け、放った。
何故…ここに…?
前田は、その疑問を打ち消すように、一瞬の後、その“少女”の名を叫んだ。
東京──
スーパーマーケット裏の
バックヤード。
詩(死)の宣告を終えたブラックの闘い方は、いつもの彼女らしからぬものへと変わっていた。
あえて、死角(スキ)をつくり、その死角を狙ってきた攻撃を、逆にカウンターで狙い打つというカヲルの戦術。
そのため、死角に入り込む攻撃をやめ、あらゆる場所から、ブラックは、ランダムに攻め始めていた。
ただ、がむしゃらに、何の計算もなく、拳を振るい続ける。
「すぐに、対応してくるところは、さすが、“伝説のラッパッパ”と言えますね。ですが、防御の上からでは、あまり、意味がありませんよ」
カヲルは、ブラックの素早い攻撃に、とくに表情を変えず、さらに言いつのる。
「わたしも、なかなか、良い動体視力(め)を、持っていますから。このままだと、シブヤさん同様、あっさり倒せそうで、少し、つまらないですね」
それに対し、
ブラックも、感情をおもてに出すことなく、語る。
「喧嘩は、思い通りにはいかないものだ…、驕りは、必ず、致命的な隙を生む。わたしは、それを、ある闘いで知った…」
ある少女たちとの闘いを想起するブラック。
「…ひとりひとりの実力は、あの時点では、取るに足らないものだった…、」
しかし─、と続ける、
「諦めない心…、闘う姿勢…、仲間を想う犠牲の精神…、すべてが、“マジ”だった…」
大阪──
【エリアK】
「学ラン!」
前田に、そう呼ばれた少女は、傷だらけの制服の背中で応える。視線は、愛する者を傷つけた憎き敵を捉えたままー。
前田の窮地を救ったのは、学ランだった。
睨み据える。
残念なことに、
放った拳は、上西の長い爪を施された手のひらに、包まれていた。
「なんや、死に損ないか…、パンチに、ちから入っとらんで」
「るっせーよ!」
学ランが、拳を、振りほどきつつ、蹴りを打ち込む。
しかしー。
“上西”の蹴りのほうが、
学ランよりも疾く、鋭く、頭を打ち抜いた。ハイキック。
防御することも出来ず、地面をすべる学ラン。
動くことも出来ず、その情景を見つめる前田。唇を強く、噛み締める。
「ここまで、来れたことは、褒めてやるわ…、けど、“ここまで”やったな」
上西が、退屈そうに呟く。
「お前も、前田のように、痺れ薬で、動けへんようにしたるわ」
そう言って、
上西の“鉄の爪”が、高く煌めいたとき、何かが、すごい勢いで飛んできた。
キン、という音と共に、小指の爪が剥がれ落ちる。傍らには、折りたたまれた扇子が、転がっていた。
「なんや!?」
あれあれー、という声が、港湾地帯に響く。
「誰かと思ったら、そこにいるのは、卑怯極まりないディーヴァの将軍さんじゃないですかー、勝手に、うちらのこと、賞金首にしておいて、まさか、お忘れじゃないですよねー」
「歌舞伎シスターズ、参上!です」
大歌舞伎が、右肩を、小歌舞伎に支えられながら、共に、あらわれた。二人とも、ディーヴァとの闘いにより、自慢の歌舞伎風衣装もボロボロになるくらい、傷だらけだった。
「お前ら…、生きてたか?」
「何とか、突破してきたよ…、学ラン、あんたひとりに、いい格好させられないからねぇ」
「おれひとりで、十分…と、言いてぇとこだが…、敦子も心配だ…、痺れ薬で、動けないらしい…、だから、ここは、三人で、一気にこの野郎、ぶっ飛ばしちまおうぜ!」
三人の表情が一瞬、緩む。安堵感が満ちる。
「死に損ないが、二人、増えたところで、何も変わらんわ」
突然あらわれた二人に対し、
吐き捨てるようにつぶやく上西。
「なめんじゃないよ!」
大歌舞伎が、掌底を突きだす。
が、上西の身体に届く前に、破壊力抜群の蹴りによって、弾きとばされる。
骨の髄にまで、響く威力。
「姉貴!」
「そいつの“蹴り”に、気をつけろ!」
学ランが、立ち上がりながら、注意を促す。
ぅあああああ!と、小歌舞伎が、助走もとらず、ドロップキックを繰り出した。
それすらも、上西の爆発的な蹴りが、あっさりと、うち落とす。鋼鉄の脚力。
「雑魚が、何匹あつまっても、雑魚に変わりないわ」
と、そこへ。
「あづ姐ぇえええええええええ!」
砲弾のように、肉の塊が、飛び込んできた。勢いあまって、地面を転がり続ける。
やはり、皆と同様、傷だらけで血まみれの鬼塚だるまだった。
「だるま…、いま、敦子は、やつが使った痺れ薬とやらで動けねー、だから、まずは、こいつをぶっ飛ばすんだ」
「言われんでも…、うおおおおおお!」
だるまが、突進する。
呼応するかのように、学ランと歌舞伎シスターズも、向かっていく。
それを、跪いて、ただ、見つめることしかできない前田。
自分のために、こんなところまで─。
危険を冒し─。
傷だらけになりながら─。
(みんな…、こんな、自分勝手な…わたしのために…)
念じる。祈る。血を吐くような想い。
(………、動け…、)
と。
上西の“蹴り”が、乱れ飛ぶ。何人がかりでも、意に介さず、闘い続ける“鉄の女”上西。
あっという間に、地に叩き伏せられる四人。
それでも、
しゃがみ込む前田を、上西から守るように、立ち上がる。
誓いあった約束。
四人は、前田に、背中を向けたまま─
「敦子…、お前に会ったらさ、一発、ぶん殴ってやろうと思ってたけどよ…、そんな姿見ちまったら、もう、殴れねーよ…、だから…、勝手に、学校『退学する(やめる)』なんて、言わねーでくれよ…、一緒に、東京帰ろうぜ!」
そう言って、学ランが、右の拳を強く握りしめる。
「前田…、お前には、“借り”がありすぎるんだよ…、借りっぱなしは、性に合わないし…、これから、少しずつでも、ちゃんと、返していくからさ…、一緒に、東京帰るよ!」
そう言って、大歌舞伎が、掌を開き、構える。
「前田の姉貴…、姉貴が、いなかったら、わたしたちは、いまでも、路地裏で、くすぶったまま…、“クズ”と呼ばれ続けてたと思います。そんなとき、救い出してくれたのが、姉貴でした…、みんなで、一緒に、帰りましょう!」
そう言って、小歌舞伎が、両腕をあげる。
「あつ姐…、おれは…、あつ姐に逢(お)うて、“マジ”っちゅうもんを、教わりました…、最高の友達(ダチ)や仲間と出会えました…、いつも、あつ姐に頼ってもうてばっかですけど、たまには、おれたちに、頼ってみてください…、あつ姐は、“ひとり”やないんですから…、
せやから…、一緒に、帰って、手羽先、いっぱい喰べましょう!」
そう言って、だるまが、長い髪をかきあげる。
直後。
前田が必死に見つめるなか、四人は、叫び声をあげながら、地を蹴り、走り出す。最大の障害であり、最後の砦である、ディーヴァ将軍、上西ケイに向かって─
マジすか学園3(ネタバレ?)
ちゅ、ちゅりーーーーーーー!
予告に出てましたねー(〃∇〃)
ラジオで、やすすに、直訴した甲斐があったねw
高柳「直訴は必ず報われる」
まぁ、チョイ役だけど、
ちゅりが、嬉しそうなので、
よかったかな\(^o^)/
今週の話も
ネタバレ的な部分
多かったね(*´・ω・)(・ω・`*)ネー
伏線というか、
モロバレ的な(>_<)
やっぱり、あの子は
裏があるんだねー
ダースも薄々勘づいてる描写あったし
腕輪も調整されてるみたいだし
謎のパズルの最後の破片(かけら)は…
かけら…カケラ…
あと、七つの子を、口ずさんでた所長は、
パルの母親を暗示してるのかな
七歳で、生き別れたとか
まぁ、ネタバレといえば、
ノブナガは、もう、一話からバレバレで、
全く、登場のインパクトなかったなー(T▽T;)
せっかくのキャスティングが残念!
さて、
これから、最終回に向け
ハブとマングースが仲間になって
脱走する話になるのかなー
まだ、何か、見所が欲しいなо(ж>▽<)y ☆
ケイタが生きてるとか、ベタすぎる(。>0<。)
ぱるるが言うには
10話から面白くなるらしい笑っ
楽しみにしよう!
実は、まだ、
あっちゃん卒業ショックを
引きずってる
かつ☆でした(〃∇〃)
マジすか学園F☆#1ー5☆
【エリアK】
潮風の吹きつけるなか、
前田の猛攻が続く。
常に、全力の前田に対し、
上西からの反撃は、ほとんどなかった。
前田の拳を、受けたり、躱したり─。
どこか、何かを隠しているような、そんな闘いぶりだった。
「最初から、とばしすぎなんやないか?」上西がからかうように、「そんなんやと、すぐに、バテるで」
それに、と、つけ加える。
「もうすぐ、制限時間(リミット)や…、この無理ゲーの」
「────?」
「もともと、クリアできるような“ゲーム”やない…、最後に、少しは、将軍らしいとこ、見せよか」
空気が変わる。
前田の肌が、ざわつく。
ビュオっと、風を切り裂く音が、聞こえたときには、もう、前田は、地面に倒れこんでいた。
急に、視界が、横倒しになったあと、腹部を焼けるような痛みが襲った。
「くっ…」
『鉄の女』
上西ケイの“蹴り”が放たれたのだ。
『鉄の女』と呼ばれる由縁は、敵味方誰に対しても、容赦なく、非情であるところ、また、切れ味鋭い“鉄の爪”を持つところ、
そして─
あとひとつは、
“鋼鉄の脚”といわれるほどの爆発的な脚(キック)力を持つためだった。
前田でさえも、見切ることのできない、予備動作のほとんどない鋭い蹴り。
注意深く、上西を見据え、腹部をおさえながら、よろよろと立ち上がる前田。
立ち上がったところに、またしても、上西が、風を切り裂く。
今度は、前田の腕によるブロックの上から、全身に響くほどのダメージを与えるミドルキックが襲う。
吹き飛ばされ、再び、倒れ込む前田。
本来のスピードや身体のキレも、度重なるダメージによって、鈍く、重くなっていた。息切れ。
「いままでも、組織に逆らった数多くのチームが、潰れていったわ…、巷で強い、強い言われとったそれらのチームの頭でさえ、何人も、何十人も、ことごとく、倒れていった…、総帥に辿りつく前にな!」
倒れている前田に、情け容赦のない蹴りが、飛ぶ。道端に転がる空き缶のように、前田の身体が跳ねる。
「うちを倒せないようじゃ、総帥の前に立つことも無理や…、それに、お前には、絶対、総帥は倒せん!甘ちゃんのお前じゃ、絶対にな!」
はっきりと上西が言い切る。
甘さを認識させるように。
そのとき、
急速に、身体に、痺れるような感覚を覚える前田。
ダメージとは、違う感覚。
「どうしたんや?まるで、“痺れ薬が効いてきた”みたいな顔して」
上西から、下卑た笑いがもれる。
全身に、力が入らない前田。
上西の“鉄の爪”に仕込まれた薬が、効いてきたのだった。
制限時間。
「負け…ない…、負けられない…」
立ち上がろうとする前田。
しかし、すぐに、崩れ落ちる。
「やっぱり、お前も偽者やったか…」
諦めの色が、さらに濃く、上西の瞳を塗りつぶす。絶望の灰色。
「所詮、ひとりのちからなんて、こんなもんや…、みじめなドン・キホーテやったな…、【エリア】(ここ)は、『やるかやられるか』やない…、『やるしかない』とこなんや…」
どんな手段を用いようが─。
前田の全身を覆う虚脱感。目眩を振り払うように、
「う…ああああああああああっ!」
絶叫する。
拳を、地面に叩きつけるようにして、立ち上がった。ふらつく。
「よう、立ったな…、でも、それまで、や」
残された意識を、強制的に刈り取るような、激しい蹴りが、無防備の前田に、乱れ飛ぶ。
血を吐き、呼吸すらままならない前田。
上西の“希み”は、果たされなかった。
儚い期待は、またしても裏切られた。
(フェイクの救世主じゃ…、誰も、救われへんねん…)
最早、
前田は、瀕死にあえいでいるだけであった。跪き、頭を垂れる。拳に、ちからが入らない。
(そう…、わたしひとりの…ちから、なんて…、)
前田の脳裏を、走馬灯のように、巡る過去の記憶。
喧嘩ばかりしてきたけど、そこには、いつも、親友(ダチ)や仲間がいた。つらいとき、苦しいとき、けっして、“ひとり”じゃなかった。
いつだって─
なのに─
(わたしは…、いつの間にか…、みんなと…はぐれて、しまったんだな…、ひとりじゃ…、何も出来ないのに…、勝手に飛び出して…、
こうなるのも…、自業自得か…)
自嘲気味に、笑う。
(みなみ…、わたしの“マジ”は…、間違ってたのかな…)
見上げると、上西の“鉄の爪”が、迫っていた。
「トドメや!」
前田は、何も出来ないまま、呆然と、その動きを見ていた。
ただ─
見ていた──
潮風の吹きつけるなか、
前田の猛攻が続く。
常に、全力の前田に対し、
上西からの反撃は、ほとんどなかった。
前田の拳を、受けたり、躱したり─。
どこか、何かを隠しているような、そんな闘いぶりだった。
「最初から、とばしすぎなんやないか?」上西がからかうように、「そんなんやと、すぐに、バテるで」
それに、と、つけ加える。
「もうすぐ、制限時間(リミット)や…、この無理ゲーの」
「────?」
「もともと、クリアできるような“ゲーム”やない…、最後に、少しは、将軍らしいとこ、見せよか」
空気が変わる。
前田の肌が、ざわつく。
ビュオっと、風を切り裂く音が、聞こえたときには、もう、前田は、地面に倒れこんでいた。
急に、視界が、横倒しになったあと、腹部を焼けるような痛みが襲った。
「くっ…」
『鉄の女』
上西ケイの“蹴り”が放たれたのだ。
『鉄の女』と呼ばれる由縁は、敵味方誰に対しても、容赦なく、非情であるところ、また、切れ味鋭い“鉄の爪”を持つところ、
そして─
あとひとつは、
“鋼鉄の脚”といわれるほどの爆発的な脚(キック)力を持つためだった。
前田でさえも、見切ることのできない、予備動作のほとんどない鋭い蹴り。
注意深く、上西を見据え、腹部をおさえながら、よろよろと立ち上がる前田。
立ち上がったところに、またしても、上西が、風を切り裂く。
今度は、前田の腕によるブロックの上から、全身に響くほどのダメージを与えるミドルキックが襲う。
吹き飛ばされ、再び、倒れ込む前田。
本来のスピードや身体のキレも、度重なるダメージによって、鈍く、重くなっていた。息切れ。
「いままでも、組織に逆らった数多くのチームが、潰れていったわ…、巷で強い、強い言われとったそれらのチームの頭でさえ、何人も、何十人も、ことごとく、倒れていった…、総帥に辿りつく前にな!」
倒れている前田に、情け容赦のない蹴りが、飛ぶ。道端に転がる空き缶のように、前田の身体が跳ねる。
「うちを倒せないようじゃ、総帥の前に立つことも無理や…、それに、お前には、絶対、総帥は倒せん!甘ちゃんのお前じゃ、絶対にな!」
はっきりと上西が言い切る。
甘さを認識させるように。
そのとき、
急速に、身体に、痺れるような感覚を覚える前田。
ダメージとは、違う感覚。
「どうしたんや?まるで、“痺れ薬が効いてきた”みたいな顔して」
上西から、下卑た笑いがもれる。
全身に、力が入らない前田。
上西の“鉄の爪”に仕込まれた薬が、効いてきたのだった。
制限時間。
「負け…ない…、負けられない…」
立ち上がろうとする前田。
しかし、すぐに、崩れ落ちる。
「やっぱり、お前も偽者やったか…」
諦めの色が、さらに濃く、上西の瞳を塗りつぶす。絶望の灰色。
「所詮、ひとりのちからなんて、こんなもんや…、みじめなドン・キホーテやったな…、【エリア】(ここ)は、『やるかやられるか』やない…、『やるしかない』とこなんや…」
どんな手段を用いようが─。
前田の全身を覆う虚脱感。目眩を振り払うように、
「う…ああああああああああっ!」
絶叫する。
拳を、地面に叩きつけるようにして、立ち上がった。ふらつく。
「よう、立ったな…、でも、それまで、や」
残された意識を、強制的に刈り取るような、激しい蹴りが、無防備の前田に、乱れ飛ぶ。
血を吐き、呼吸すらままならない前田。
上西の“希み”は、果たされなかった。
儚い期待は、またしても裏切られた。
(フェイクの救世主じゃ…、誰も、救われへんねん…)
最早、
前田は、瀕死にあえいでいるだけであった。跪き、頭を垂れる。拳に、ちからが入らない。
(そう…、わたしひとりの…ちから、なんて…、)
前田の脳裏を、走馬灯のように、巡る過去の記憶。
喧嘩ばかりしてきたけど、そこには、いつも、親友(ダチ)や仲間がいた。つらいとき、苦しいとき、けっして、“ひとり”じゃなかった。
いつだって─
なのに─
(わたしは…、いつの間にか…、みんなと…はぐれて、しまったんだな…、ひとりじゃ…、何も出来ないのに…、勝手に飛び出して…、
こうなるのも…、自業自得か…)
自嘲気味に、笑う。
(みなみ…、わたしの“マジ”は…、間違ってたのかな…)
見上げると、上西の“鉄の爪”が、迫っていた。
「トドメや!」
前田は、何も出来ないまま、呆然と、その動きを見ていた。
ただ─
見ていた──


