ミックスプラン信仰にだまされるな その② | 池上秀司のブログ

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ファイナンシャルプランニングに関することを中心に、好き勝手に書きます。

前回に引き続き、日経電子版に掲載されている住宅ローンに関する記事について触れていきます。以下を考えてみましょう。


住宅ローンで迷ったら 金利や期間に「二刀流」


FPの深田晶恵氏は変動金利の上昇リスクに配慮し、返済期間の違う固定金利特約型2本を組み合わせる方法を提案する。


ほとほと呆れるのですが、固定金利特約型は固定金利特約期間が終了すると深田さんがダメだダメだといっている変動金利になります。ですから、なんの対策にもなっていません。Cというグラフではあっさり再度固定金利特約を選択するとしていますが、そうしない可能性も十分あるというのにそれを無視している時点で都合がよすぎます。

さらにいうと、3,000万円を2,000万円・30年と1,000万円・15年に分けて借り入れるとしていますが、返済期間を短くするということは元金返済が進みます。1,000万円を30年と15年で当初1年の償還表を作ってみました(以下参照)。



30年返済でも15年返済でも1回目の利息は同額です。つまり、30年より15年で返済額が増えますが、その増える分は全て元金返済ということ。ですから、元金返済が増える=借入残高の減少が進む=変動金利の将来の金利上昇リスクは小さくなります。

借入当初に15年返済にして高額な返済額を負担できるなら、変動金利(0.875%)よりも割高な1.4%という10年固定金利を使わず、変動金利で少しでも元金返済を促進しておけば将来の金利上昇の影響は小さくできます(以下償還表は15年返済の変動金利)。変動金利にすれば返済額が少なくなるので繰上返済の原資も労せず作れます。



どうせ10年固定を選んだところで11年目からは最初から変動金利を選んだ場合と同じ金利プラン(変動金利)になります。11年目以降金利引き下げ幅が減って、当初から変動金利を選んだ場合よりも割高な金利を使うことも考えられます。「変動金利が危険」といいながら、11年目以降は最初から変動金利を選んだ場合よりも割高な変動金利になるプランを平然と勧めているのですから理解ができません。

それこそ、11年目以降が2.6%なんて程度で済むと考えるなら、変動金利一本で徹底的に元金返済を進めるというプランは十分選択肢に入ります。あくまで参考ですが、深田さんのプランの当初の返済額が約13万円。変動金利0.875%で3,000万円・21年返済にすると当初の返済額は13万円程度。返済額は同じ位なのに、1年後の借入残高に50万円近くもの差が出ます。元金返済の多い借入当初にたくさん返済できるなら、こういうプランも提案する価値はあります。

将来の金利上昇リスクは10年固定で借り入れても11年目以降に発生するのですから変動金利も10年固定も同じこと。今後10年以内に金利がどうなるのかという判断によって選ぶべき金利タイプは自ずと決まってきます。10年固定も結構ですが変動金利でもOK。少なくとも今の時代に変動金利が提案できないのは実力がないかただの偏見です。深田さんは明らかに顧客利益を無視して過去の自分の過ちを隠蔽し、現在の論調を正当化することだけを考えています。

深田さんは元金返済がたくさんできるというのに割高な金利を使うという非合理的なプランを勧めています。総返済額の比較をして自分のプランの優位性をアピールしていますが、なんの工夫もない早く返せば利息が減るという当たり前のことを強調しているだけのことです。異なる金利プランの比較が必要ですが、変動金利の優位性を提示することは一生しないでしょう。

私は以前、高田さん同様深田さんとも同じ誌面に登場したことがあります(日経マネー)。やはり固定vs変動というような記事に仕上がってしまいましたが、私の主張が正しかったというのは事実が証明しています。そのときと同じ失敗をしているというのは、文末の【参考記事】をご参照ください。それこそ、彼女は昨年5月の金利上昇で「変動金利は危険です。今すぐ固定に変えましょう」と大騒ぎしたのに、その後金利が低下したらシレっとしています。過去からなにも学んでいません。

繰り返しになりますが、住宅ローンは金利や返済額で判断するのではなく、利息、元金、借入残高まで含めて考えるものです。それができない(それをしようとしない)人間は資格を取っただけで専門家面するのを止めておとなしくするべきです。

いつまでもこういう人達を採用している新聞の購読料が一番無駄ですから、購読を止めてそのお金で繰上返済をしましょう。新聞の記事より確実に利益につながります。

【参考記事】
どこがおかしいか
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