池上秀司のブログ

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ファイナンシャルプランニングに関することを中心に、好き勝手に書きます。

プレジデントオンラインで経済ジャーナリストの荻原博子さんによる記事が公開されました。2ページ目に変動金利に関する誤認があります。

金利上昇で住宅ローンがブクブク膨らんでいく…荻原博子が「投資より確実」という"繰り上げ返済"驚きの効果

誤認箇所は以下です。

>契約の半年後に金利が1%上がって1.3%になったら、差額の約1万円はどうなるかといえば、「未払い利息」ということで元金に繰り入れられていきます。

「差額の1万円」とか「元金に繰り入れられていきます」というのは誤認をしているからこその表現で、なにをいっているのかわかりません

2,000万円・0.3%(年)・35年返済の場合、月々の返済額は50,169円になります。当初1年間金利が上がらなかった場合の利息と元金の内訳は以下の通りです。

 



本題です。半年後(7回目から)金利が1%上がったらどうなるでしょうか。その時点の残高(19,728,817円)に金利(1.3%÷12)をかけて利息を計算します。利息は21,373円になります(0.3%のままだと4,932円)。返済額は5年ルールがあるので50,169円のまま。その返済額から利息を引いた額を元金に充当します(28,796円)。5年ルールがあると返済額が上がらないので利息が増える分、元金充当額が当初の予定(45,237円)より減ります。返済のしくみはこの通りですので、1%上がった程度で未払い利息は発生しません




では、未払い利息とはなんでしょうか。全国銀行協会のWebサイトには以下の記載があります。

変動金利住宅ローンの未払利息とは?

>未払利息は、変動金利型の住宅ローンで発生する可能性があります。急激な金利上昇が起きた時に、毎月支払うべき利息の金額が返済額よりも多くなってしまうと未払利息が発生します。

半年後(7回目)に金利が3.3%になった場合で考えてみます。該当月の利息を計算すると、19,728,817円×3.3%÷12=54,254円となり、返済額の50,169円を超えます。この超えた分の4,085円(下図オレンジ部分)が未払い利息です。




該当記事の編集部の作った図では利息額は返済額を超えておらず、元金返済もしています。未払い利息が出ている状況では返済額はすべて利息であり、元金へは充当されません。記事と全国銀行協会の図を見比べると違いがよくわかります(比較図筆者作成)。

 



>5年後には住宅ローン残高が減るどころか、元金は約2050万円と、当初借りた額よりも50万円も増えているという、納得できない状況になる可能性があるということです。

これも誤認です。利息はあくまでも利息であり元金とは区別されます。利息が元金に上乗せされることはなく、記事のような納得できない状況にはなりません。

荻原博子さんは経済ジャーナリストを名乗られていますが、そもそも経済の常識で考えて変動金利がいきなり1%も上がるのでしょうか。そこが一番肝心で、それこそ3%も上がるというのは可能性だからゼロではないというだけの話で考える必要がないというのは、以下変動金利の変遷を見れば明らかです。




私は金融機関の研修で、「プロの仕事とは不安の解消や問題の解決」といっています。最近の金利情勢により不安な方がいるからといって、「住宅ローンがブクブク増えていく」という文言を使い、誤認でさらに不安を煽るのは大人の仕事としていかがなものでしょうか。

 

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1月3日12:00追記

プレジデントオンラインへ問い合わせをしたところ、記事が大幅に修正されましたが、以下が誤認です。

 

>返済内訳には利息の占める割合が徐々に増えていきます

 

金利が変わったときに利息は瞬間的に増えますが、その後は元金返済に伴い、利息の占める割合は徐々に減っていきます

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昨年7月31日の日銀金融政策決定会合で、金融政策の方針を「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.25%程度で推移するよう促す」としたことで、その後、住宅ローンの変動金利が上がりました。

 



変動金利で借り入れ中、多くの銀行では金利の見直しは年2回。要項では以下の記載を拝見します。

>4月1日と10月1日に金利を見直し、それぞれ6月と12月の約定日の翌日から新利率を適用する

この規定によって、12月の約定日の翌日=1月の返済から新利率での返済が始まる方が多くいらっしゃいます。それと併せて考えたいのが「5年ルール」です。5年ルールとは、

>変動金利(元利均等返済)で借入れしている場合、返済額は5年間一定

というものです。

金利と返済額の見直しが同時期であれば金利上昇がわかりやすいのですが、5年ルールが採用されているため、金利が見直されても返済額が変わらず、金利上昇が返済にどのように影響するのが理解しにくいと思います。そこで、本稿では具体的に解説します。

6,000万円・変動金利0.5%・35年返済で借り入れた場合、返済額は155,751円となります。半年ごとに金利の見直しがありますが、金利が変化してもこの返済額が5年間続きます。

借入から4年半経過し、55ヶ月目に金利が0.15%上昇して0.65%になった場合を考えます。金利が上がっても5年ルールがあるので、返済額は従前のまま155,751円です。では、何が変わるかというと利息です。利息の計算式は

その時点の借入残高 × 金利

です。55回目の利息を計算するので、54回目が終わった残高を確認すると52,860,907円。それに0.65%を掛けて、この金利は年間の金利(年利)なので、月の金利(月利)を計算するために12で割ります。計算結果は28,663円。これが55ヶ月目の利息です。

52,860,907円 × 0.65% ÷ 12ヶ月 = 28,663円

元金充当額は返済額から利息を単純に引くだけですので、127,118円(155,751円 ー 28,663円)となります。借入残高も54回目の借入残高から55回目の元金充当額を引く単純な引き算。52,860,907円 ー 127,118円 = 52,733,789円。以降もこの繰り返しです。利息を計算して、元金充当額と借入残高の引き算をしていきます。以下償還表でご確認ください。

 



もし、55回目の金利が上がらなかった場合の比較は以下の通り。返済額は変わらず、6,608円利息が増え、6,608円元金充当額が減ります。

 



そして、60回目の返済が終わると、5年ルールで返済額の見直しとなります。特段難しいことはありません。60回目が終わった残高52,097,164円・金利0.65%・30年返済で返済額を計算すると159,321円となるので、120回目までの5年間はその額で返済します。

私は企業研修の際、以下のようなスライドを使っています。



お弁当を選ぶとき、値段だけが掲示されているのと、お弁当の写真が掲示されているのでは、お客様の心理は異なります。写真が掲示されている方がわかりやすいですよね。このように「中身がわかる」ということの効果は、お弁当も住宅ローンも同じです。住宅ローンは金利だけでなく、返済額の中身である利息や元金充当額、借入残高まで考えることが大切です。

中身の確認には償還表が必要ですが、エクセルで簡単に作れます。以下の動画をご参考に作成してみてください。自分で作ってみることで、どのセルとどのセルが関係しているか、どういう計算方法かを知ることで理解がより深まります。

 


 

いつもご購読ありがとうございます。

 

本ブログの運用も長くなり、最近では投稿の回数も著しく減りました。ブログを始めた頃と情報発信の環境が変わってきたこともあり、一度、本ブログをリセットし、新しい情報発信を模索したいと考えております。

 

そこで、過去の投稿を近日中に非公開といたしますので、何卒、よろしくお願いいたします。