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Accounting, Tax and M&A

会計、税務、M&A等の話題についての分析、雑感、というか趣味の備忘録です。もちろんインサイダーではありませんので、全て開示情報と報道に基づくもので、推測を含みます。暇なときに更新しますので、頻度は低いです。ご了承下さい。


ちょっと遅くなりましたが、米国スターバックス本社(米Starbucks)によるスターバックスコーヒージャパン(スタバ)のTOBが完了しており、米Starbucksの連結決算に反映されていますので、確認しておきます。

ちなみに本件の全体像については、強制的二段階TOBということで過去のブログに纏めており、今回は会計処理部分の答え合わせ的な位置付けです。
http://ameblo.jp/heuko/entry-11930790201.html

・・・

1.決算とTOBのタイミング

本件の二段階TOBについては、1st stepが2014年10月31日に終了、2nd stepが2014年12月29日に終了しています。

米Starbucksは9月が決算月となっており、2014年10月~12月は2015年9月期の第1四半期ということになります。しかし、米Starbucksの第1四半期は2014年12月28日までとされており、TOBが完了する12月29日は第2四半期の初日になるそうです(詳細確認してませんが、weeklyの決算になっているんですかね?)。

ですので、現在公表されている2015/9期Q1決算では、1st stepが終了した段階の状況となっています(2nd stepでの取得分はまだ非支配持分の状態)。1st step終了によりスタバは米Starbucksの79%保有子会社となり、同日から連結が開始されたようです。


2.既存持分と非支配持分の公正価値評価額

米国会計基準においては、子会社化に際して既存持分を公正価値評価するのに加え、非支配持分も公正価値で認識しますが、ここは非常に面白いです。

まず非支配持分(持分21%)から行きましょう。こちらはこの後2nd step TOBとスクイーズアウトの手続きを経て親会社持分になるところですが、これについてはmarket approachを採用し、実質的にTOB価格=市場株価での公正価値評価としているようです。

非支配持分は411百万ドルとなっており、買収日の為替(1ドル108.13円)で換算するとちょうど1株1,465円くらいになります。

一方、既存持分(持分39.5%)については、income approachとmarket approachの平均値を採用したとのことです。つまり、同じスタバ株式の公正価値なのですが、非支配持分とは評価方法が異なるというわけです。

さらに、market approachはサザビーからの取得価額と一般株主からの取得価額から類推される評価額を採用したそうです。なので同じmarket approach部分でも非支配持分とは異なる評価をしています。

この既存持分の公正価値は577百万ドルと開示されており、1株当りに直すと1,095円になります。

サザビーからの取得単価965円と一般株主からの取得単価1,465円で単純平均だと1,215円(加重平均だと1,138円)、またincome approach(DCF評価)については買収公表時の資料にてレンジが852~1,086円で平均が969円でした。そしてこの1,215円と969円を平均すると1,092円なので、(開示資料には記載ありませんが)概ねこんな感じの評価なのでしょうか。

(前回のブログでは加重平均1,138円説に触れつつも、市場株価1,465円説を推していたので、お恥ずかしい限りです。この特殊な環境下では市場株価と言えどもLv1の公正価値ではない、ということなんですかね。)


3.スタバ買収の会計処理と段階取得利益

最後に会計処理の中身です。

既存持分については時価577百万ドルで段階取得利益は391百万ドル(税前)となっています。(前回のブログでは公正価値766百万ドルで段階取得利益577百万ドルと予想していましたので、公正価値が動いた分ということで違和感はありません)

スタバ連結開始に際しての株式価値総額は、既存持分577+TOB取得分507+非支配持分411の合計1,495百万ドルで、PPAによる無形資産への配分が323百万ドル、Goodwill(非償却暖簾)への配分が816百万ドルです。

無形資産を税効果後換算すると、投資差額は全体で1,022百万ドル程度ということになります。

この無形資産の太宗(305百万ドル)を占めるのがreacquired rightsです。(これも前回ブログで指摘した通りですが)米国親会社よりStarbucks商標の日本における独占使用権を得ている契約について、(公正価値ではなく)契約の残存期間分の価値のみで評価し、残存期間(6.4年)で償却することになります。

・・・

ということで、今回はここまでです。

尚、まだ買収直後の四半期決算であり、今後、公正価値評価の見直し等による変動の可能性があります。

伊藤忠商事(伊藤忠)が中国・台湾食品事業会社の頂新(在ケイマン持株会社)を持分法投資から非連結出資に切り替え、600億円の再評価益を認識するそうです。

また同時に出資パートナーのアサヒも評価益140億円を認識します。

この再評価益の金額はちょっと疑問なところもあり、現時点で調べたところを纏めておきます。答え合わせは決算発表又は有報に期待します。

・・・

1.現在の出資スキーム(2010年再編)

伊藤忠は2008年に頂新の株式20%を取得していました。取得価額は有報の注記からおそらく679億円です。

その後、2010年11月頃にアサヒビール(アサヒ)との再編を行います。

具体的には、国内に共同持株会社シーエフアイ(CFI)を設立し、伊藤忠は頂新株式20%を拠出(或いは現金拠出と株式譲渡)、アサヒは435億円を拠出しました。

そしてCFIが頂新の第三者割当増資435億円を引受け、出資比率を25.2%に引き上げました。

更に、アサヒが保有していた康師傅飲品社の株式の一部を435億円で頂新に売却し、アサヒの拠出した資金がぐるっと回って帰ってきた形になります。

尚、CFIへの出資比率は伊藤忠74.1%、アサヒ25.9%で、頂新に対する間接持分は伊藤忠18.7%、アサヒ6.5%です。

つまり、アサヒの拠出した435億円が頂新の6.5%相当の価値なので、伊藤忠保有の頂新株の時価は1,243億円だったことになります。

これを合計すると1,678億円です。

一方、今回の開示によればCFIの資本金は839億円だったようで、おそらく払込資本の半分は準備金に組み入れていたでしょうから、これを倍にするとピッタリ1,678億円になり、うまく整合しました。


2.2010年再編時の伊藤忠の会計・税務上の取扱い

上記の再編は、税務上、伊藤忠は株式譲渡益を認識していると思われます。

現金で出資した上で株式譲渡を行っていた場合は勿論ですが、仮に現物出資だったとしても適格要件は満たせず、いずれにせよ課税ディールになります。

時価1,243億円に対して出資額679億円だとすると、売却益564億円、税額で231億円(税率41%)です。これはけっこうなインパクトですね。

一方、連結会計上はどうでしょう。

有報によれば、みなし売却益が税効果後で19億円だったようです。

当時は米国会計基準を採用していましたので、持分法投資の一時差異には通常の41%の税率で税資産を計上していたと思われ、上記の課税インパクトがそのままPLヒットしているわけではないと思います。

税効果後で19億円ということは、税前にすると32億円です。

みなし売却というのは、頂新への出資比率が20%から18.7%に1.3%低下したこと意味するわけですが、その希薄化の対価として、アサヒの出資485億円×18.7%=81億円を得た計算になります。

81億円を得て32億円の利益ですから、1.3%相当の売却原価は49億円になります。

ここから逆算すると、伊藤忠の保有していた20%の持分法投資の簿価は747億円だったことがわかります(出資額679億円に持分法利益が積み上がっていたとして、違和感のない水準です)。

纏めるとこんな感じです。

 ①みなし売却対価:81億円(485億×18.7%)
 ②みなし売却益 :32億円(19億円の税前換算)
 ③みなし売却原価:49億円(①-②)
 ④再編前連結簿価:747億円(③÷1.3%×20%)

そして再編後の簿価は779億円(みなし売却益32億円を加算)になります。


3.今回の再編スキームと各社の会計・税務インパクト

今回の再編は、伊藤忠が保有する全CFI株式にCFIに1,619億円で自己株取得させ、同時に(前後関係は不明ですが)、CFIから頂新株式18.7%(ここはやや正確ではないかも知れません)を取得します。

つまり、頂新への出資を間接から直接に切り替えるわけです。

それにより出資比率が20%未満となり、持分法を停止して非連結出資になるわけです。

一方、アサヒは持分法投資だったCFIが100%子会社になるということで、段階取得による時価評価益を認識するというわけです。

但し、伊藤忠がCFIから頂新株を取得する対価の金額は開示されていません。1,619億円と同額なのかも知れませんが、CFIにおける譲渡益課税を勘案すれば、CFIの時価と頂新の時価は一致しないわけで、1,619億円よりも高い金額になっているのでは?という気もします。

ここは適当に仮定を置く前提で、各当事者の会計・税務インパクトを見てみます。


(1)伊藤忠

まず伊藤忠ですが、実は、開示されている評価益600億円というのがちょっとしっくり来ません。

開示資料にてCFIの直近3期の業績が公表されているのですが、2012/3期から2014/3期の純利益が各々32億、38億、53億円です。

一方、伊藤忠の取込損益は24億、27億、43億です。また2015/3期Q3は33億円。ここから配当受領分を差し引くと累計で100億円程度と思われます。(ちなみに2012/3末から2014/3末のCFIの連結純資産は1,732億円から1,969億円に増加しており、純利益/配当の動きと一致しませんが、おそらくは為替換算調整勘定(TA)の影響ではないかと思われ、TA部分は持分法適用停止時にPLにリサイクルされますので、持分法投資簿価の変動には含めていません)

すると、再編時の持分法簿価779億円にこの100億円を乗せると、再編前簿価が879億円になります。これに対して売却価額が1,619億円ですので、売却益は税前740億円になります。

税務上はどうでしょう。

今回CFIは資本金を取り崩して資本剰余金にし、これを原資に自己株を取得します。ただ、元々設立時点から保有している株式ですので、伊藤忠のCFI株式の税務上の簿価と、CFIの税務上の1株当り資本金等の額は一致しているはずです。

つまり、この自己株取得では伊藤忠に株式譲渡益は発生せず、利益部分はみなし配当として実質非課税になります。

更に、2010年再編時に計上した税資産約200億については、売却予定がないということでおそらくIFRS移行時に取崩し済みではないかと想像します。(実質的にPLを傷めず、うまくやった感じはしますね)

とすると、伊藤忠の連結PL上は、税前=税後で740億円になります。

会社側の開示600億円とはかなり差が出てしまいました。。

正直、原因がよくわかっておらず謎です。

考えられるとすれば、頂新への出資についてTAヘッジを行っていた、IFRS初度適用によって持分法簿価が膨らんでいた、或いは今回の再編に際して中国で源泉課税が生じる等、といった感じでしょうか。

今後の伊藤忠の決算/有報等の開示で何か判明することを期待しつつ、ここではこの辺に留めておきます。


(2)CFI

CFIは伊藤忠から自己株式を1,619億円で取得するとともに、伊藤忠に頂新株18.7%を譲渡します。但し、上述の通り、伊藤忠への譲渡対価は明らかにされていません。

伊藤忠持分でCFIの時価が1,619億円だとすると、CFIにおいては頂新株の譲渡に際して譲渡益課税が発生するわけですから、CFIの価値はその税効果分を差し引いた後の金額と考えるべきかと思います。

つまり、逆算すると、頂新株の時価は1,831億円、税効果は▲212億円(譲渡益588億円(時価1,831億円-簿価1,243億円)×税率36%)で差引CFIの時価は1,619億円という計算です。

ここは勘ですが、もし頂新の譲渡価額が1,831億円だとすると、CFIでは212億円の税負担が発生することになります。


(3)アサヒ

最後にアサヒです。

アサヒは2010年に435億円を出資してCFIを持分法投資としています。

その後の持分変動は伊藤忠100億円とすると35億円程度と思われます。但し、アサヒは日本基準を採用しており、暖簾相当の償却費を追加で検討する必要があります。

今回の再編での会計処理は、CFIが連結子会社になるということで既存持分の時価評価益(段階取得利益)を計上するというものです。

CFI株式の時価は、伊藤忠の74.%で1,619億円なので、アサヒ持分25.9%だと567億円になります。

これで140億円の利益だということは、会計簿価は427億円ということになります。当初の出資額が435億、その後の持分変動(償却除く)が35億なので、暖簾償却が累計▲43億円程度あったということでしょうかね。(詳細は確認できませんが。)

また、100%子会社化になるということで、CFIへの投資に係る一時差異については、売却等の予定がなく税負債は認識しないものと思います。

CFIが継続保有する頂新株(非連結出資)は改めて時価で認識し、一時差異には税負債を計上するものと思いますが、その税効果計上後のCFIの時価が567億円だということかと思います。(アサヒが連結納税を採用しているかどうかは有報に開示がなく不明なので、取り敢えず時価評価課税もない前提で考えておきます。)

尚、上述の通りCFIにおいて▲200億円規模の税負担が発生しますが、アサヒは子会社化によってCFIを再評価して連結開始ですので、この税負担もアサヒの連結PLには影響しません(正確には、CFI株式の時価そのものに反映されるということですかね)。

しかし、1つ疑問があります。

今回、アサヒはCFIを子会社にするわけですが、CFIは所詮持株会社に過ぎないわけで、アサヒ連結グループの経済実態としては頂新株の持分法適用停止(非連結出資化)ですよね。

持分法の非連結出資化は、日本基準においてはIFRSと異なり、時価評価を行うイベントにはなりません。

形式的にみればCFIの子会社化なのでしょうけど、本当にそれで時価評価を行うべきなのか、少々悩ましい気もします。

この点はIFRSでも議論になっていて、例えばIFRS10号で連結区分が変更になる場合は時価評価となっているところ、その子会社が「事業」に当たらない場合は対象外とする改正が予定されているところですね(たしか)。

・・・

ということで、今回はここまでです。

要は共同保有から直接保有に切り替えただけで、両社にこんなインパクトが発生するんですね。

未解決のところがけっこうありますので、何か判れば追記します。

米国投資ファンドのベインが雪国まいたけをTOBにより買収するようです。

粉飾決算からの創業経営者の辞任。そして今回のTOBでは取引銀行が創業家に対する融資に係る担保権の実行によって雪国まいたけ株式を取得した上でTOBに応募するという、話題満載の買収劇です。

その辺の話題は、日経等の記事でもよく纏められていますし、偶然見つけたこの新潟大学齋藤達弘教授の88ページもの論考にも詳しく纏めてあります(これ、一読の価値ありです)。
http://www.econ.niigata-u.ac.jp/~tsaito/WP_No163.pdf
(※リンク未貼付)

ということで、今回はそういった話題はさておき、会計・税務を中心に整理しておきます。

・・・

1.買収スキーム

一応おさらいです。

今回、雪国まいたけに対してTOBを行うのは㈱BCJ-22です。その100%親会社が㈱BCJ-21で、更にその株主は海外のベイン系のファンドになります。

TOB単価は245円(買収公表前の2/20時点株価207円に対して18.4%のプレミアム)で取得対象は全株式&新株予約権。発行済み株式総数は自己株を除いて35.6百万株、買収価額は87億円です。

第四銀行を中心とする銀行団が担保の実行によって18.1百万株(51%)の株式を創業家から取得し、元々の保有株と併せ18.5百万株をTOBに応募して売却します(応募契約あり)。TOB成立の下限が18.5百万株になっていますので、いずれにせよこれを下回ることはありません。

また、1.8百万株を保有する5%株主の大和ハウスも応募契約を締結しており、合計20.2百万株の応募は確定しています。

TOB後、全株取得条項付種類株式を活用してスクイーズアウトした上で、100%親子となったBCJ-22と雪国まいたけは合併する予定です。(雪国まいたけは上場廃止)

尚、BCJ-22の買収資金は、全額、BCJ-21からの出資金で調達されます。つまり、いわゆるLBOではない案件です。おそらく、既に雪国まいたけは多額の有利子負債を抱えており、更にレバレッジを高めることは難しかったのでしょうかね。


2.ValuationとDCF

その有利子負債の水準ですが、2014/3末でグロス285億円、ネット275億円、2014/12末でグロス278億円、ネット249億円という感じです。

TOB価格ベースでの株式価値が87億円ですので、2014/12末のnet debtを足すと企業価値で336億円になります。

EBITDAは2014/3期39億円(営業利益20億、減価償却19億)、2015/3期の会社予想で41億円(営業利益22億、減価償却費は前年程度と仮定)。ざっと40億円とするとマルチプル8.4倍くらいになります。

このマルチプル自体はさほど高い感じはしません。

もちろん財務リスクがかなり高い状況なわけで(2014/3末の短期借入は196億円。2013/3期には財務コベナンツにも抵触していた模様)、それを踏まえれば十分な水準かも知れません。

DCF評価におけるプロジェクション(2015/3~2019/3期)はこんな感じです(表/グラフじゃなくてすいません)。

 営業利益:24億⇒25億⇒25億⇒25億⇒24億
 FCF   :31億⇒29億⇒29億⇒30億⇒23億
 割引率 :5.3%~5.9%

ほとんど利益成長は織り込んでいません。

また、資金繰りの厳しさからか設備投資は抑え気味かと思われます。(実績では、2014/3期は減価償却19億に対して投資CFは▲3億のみ、2015/3期もQ3累計で▲3億のみ)

更に、現在繰越欠損金が残っており(後述の通り、54億円程度と思料)、これが期限切れとなるのが2019/3末とのこと。

この前提でFCF年間30億円程度ということですので、非常にざっくり言うと、営業利益25億円、法人税▲3億円(支払利息と欠損金の損金算入制限を踏まえ)、減価償却費18億円、設備投資▲10億円くらいのイメージでしょうかね。

ちなみにこのプロジェクションでDCF計算をして企業価値336億円から逆算すると、永続価値の前提となる最終年度FCFは15億円くらいになります。

これは、営業利益25億円、法人税▲10億円(繰越欠損金消滅後)、減価償却費と設備投資は同額とすると15億円なので、そういう感じと思われます。

全く成長を織り込まないDCFというのも、ちょっとアレですかねぇ。


3.会計インパクト

株式買収価額87億円に対し、2014/12末の株主資本は29億円。投資差額(暖簾)は58億円になります。

BCJ-22と雪国まいたけは合併しますので、どちらが存続会社になるかわかりませんが、BCJ-22が存続の場合はこの暖簾が会社のBSに計上されることになります。一方、雪国まいたけが存続の場合はこの暖簾は単体BSには計上されず、連結決算上のみ認識する形になると思われます。

いわゆるLBOではありませんので、合併に際してdebt push downが起きたり、自己株となって資本が毀損する、といったことにはなりませんね。

2014/3末の税効果の注記を見ると、繰越欠損金に係る税資産20億円で実効税率37.6%なので、繰越欠損金の残高は54億円程度と思われます。(厳密には、同社は連結納税を採用しており、法人税と地方税でズレてそうですが、あまり重要性はないかと)

評価性引当は▲6億円程度なので、けっこうしっかり税資産を計上しています。

上記のDCFの前提で、営業利益25億円、支払利息▲6億円(有利子負債250億円×利率2.3%程度)として課税所得19億円です。

今回の税制改正も踏まえると、今期は所得の80%まで、来期以降65%~50%という使用制限が生じますので、その前提で2019/3期までに欠損金を控除できる金額を計算すると59億円になります。

丁度、繰越欠損金全額をギリギリ消化できるか、というくらいですね。


4.税務上の取扱い

さて、最後に税務の取扱いです。

まず雪国まいたけがBCJ-22の100%子会社になった時点で、同社の連結納税グループは解消されます。(合併後に再度連結納税を採用するのかは不明)

そして、合併については100%親子関係となってからの合併ですので、基本的に適格合併になるものと思われます。

但し、グループ内適格合併ですので、繰越欠損金の引継ぎに制限が生じる可能性があります。引継ぎが認められないと、DCFのプロジェクションが大きく変わってしまいます。

この点、支配関係発生後5年経過の要件は勿論満たせませんし、BCJ-22は事業のないSPCですので、いわゆるみなし共同事業要件も満たせません。

すると、可能性があるのは時価純資産超過額の特例の適用です。

これは、例えば雪国まいたけの時価純資産が、簿価純資産+繰越欠損金の金額を上回っている場合、合併せずとも自社の含み益によって繰越欠損金の消化が可能だったはずということで、欠損金の引継ぎ制限が掛からなくなる特例です。

この時価純資産特例については、いわゆる営業権の含み益も含めることができると言われています。

今回のケースでは、買収価額=時価87億円、簿価純資産29億円、暖簾58億円ですので、暖簾(営業権)が繰越欠損金54億円を上回っているということで、この特例を使えるということなのでしょうかね。

元々ハイレバレッジな会社ということで、合併によってdebt push downを行うLBOでもなく、繰越欠損金の引継ぎを危うくしてまで合併を行う理由がちょっとよくわかりませんが、まあ、欠損金は問題なしという結論なのでしょうね。


・・・

ということで、今回は以上です。


今回は、子会社が保有する親会社株式を売却した場合の、親会社連結財務諸表上の取扱いについて。

Twitterを見ていて気になったので、ちょっと調べてみました。


1.日本基準

まず日本基準です。

自己株式会計基準に明確に記載されています。

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15. 連結子会社が保有する親会社株式は、親会社が保有している自己株式と合わせ、純資産の部の株主資本に対する控除項目として表示する。株主資本から控除する金額は親会社株式の親会社持分相当額とし、非支配株主持分から控除する金額は非支配株主持分相当額とする。

16. 連結子会社における親会社株式の売却損益(内部取引によるものを除いた親会社持分相当額)の会計処理は、親会社における自己株式処分差額の会計処理(第9 項及び第10 項参照)と同様とする。非支配株主持分相当額は非支配株主に帰属する当期純利益に加減する。

9. 自己株式処分差益は、その他資本剰余金に計上する。
10. 自己株式処分差損は、その他資本剰余金から減額する。
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ということで、例えば80%子会社が親会社株式簿価100を保有し、これを150で売却した場合の連結上の仕訳イメージはこんな感じです。(法人税等は省略)

【売却前BS(純資産)】
 非支配株主持分▲20
 自己株式▲80

【売却仕訳】
(借)現金150
(貸)自己株式80
   資本剰余金40
   非支配株主持分20
   株式売却益10
(借)非支配株主帰属利益10
(貸)非支配株主持分10

【連結PL】
 株式売却益10
 当期純利益10
 内、非支配株主帰属利益10
 内、親会社株主帰属利益0


子会社が親会社株式を外部売却するということは、親会社持分部分については実質的に自己株の処分(≒新株発行)であり、自己株式処分差損益は資本剰余金として処理されます。

ここは全く違和感ありません。

一方、非支配株主持分部分は、いわば、非支配株主が親会社株主に対して親会社株式を売却し、それによって非支配持分となる現金が払い込まれたことを意味します。

日本基準では、この売却益が非支配株主に帰属する利益として連結PLに残る形になっています。

同基準は平成25年9月の企業結合会計基準等の改正による修正を反映した内容と注記されており、基本的な連結概念としては経済的単一体説を取り込んだはずなのですが、この連結グループの株主間(親会社株主と非支配株主)の取引に係る損益が連結PLに残るという、非常に違和感のある処理になっています。

ただ、親会社説という立場で考えるにしても、そもそも非支配株主帰属の利益だけを連結PLに残すというのは、やっぱり不思議な感じもするんですよね。

尚、持分法適用関連会社が投資元企業の株式を保有している場合も同様の処理となります。持分法は一行連結、という考え方からきている印象ですね。

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17. 持分法の適用対象となっている子会社及び関連会社が親会社株式等(子会社においては親会社株式、関連会社においては当該会社に対して持分法を適用する投資会社の株式)を保有する場合は、親会社等(子会社においては親会社、関連会社においては当該会社に対して持分法を適用する投資会社)の持分相当額を自己株式として純資産の部の株主資本から控除し、当該会社に対する投資勘定を同額減額する。

18. 持分法の適用対象となっている子会社及び関連会社における親会社株式等の売却損益(内部取引によるものを除いた親会社等の持分相当額)は、親会社における自己株式処分差額の会計処理(第9 項及び第10 項参照)と同様とし、また、当該会社に対する投資勘定を同額加減する
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また、同適用指針にて、法人税関係もこれに含めて処理される旨が明記されています。

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16. 自己株式等会計基準第 16 項及び第18 項に会計処理を定めている連結子会社における親会社株式の売却損益及び持分法の適用対象となっている子会社及び関連会社における親会社株式等(子会社においては親会社株式、関連会社においては当該会社に対して持分法を適用する投資会社の株式)の売却損益は、関連する法人税、住民税及び事業税を控除後のものとする。
---


2.IFRS

IFRSにおいても、親会社及び子会社が保有する親会社株式は自己株式として取り扱われます(IAS32号par.33)。

しかし、子会社が親会社株式を売却した際の、非支配株主帰属部分の処理について明確に規定したところは見当たりません。

KPMGのガイダンスで100%子会社が親会社株式を売却する設例はありましたが、そこについては日本基準と同様ですので、あまり参考になりませんでした。

一方、同ガイダンスで、持分法投資先の保有する投資元企業株式の取扱いについて、以下のような記載がありました。

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7.3.470.10 An associate may have an investment in its investor. The carrying amount of the associate under the equity method will include the investor's share of the associate's investment in the investor's own shares. [IAS 1.79, 32.33]

7.3.470.20 In our view, the investor is not required to make any adjustment in respect of treasury shares held by an associate. We do not believe that the investor should reclassify this portion of the carrying amount of the investment in the associate as a deduction from equity. Similarly, if dividends are declared on these equity instruments, then no adjustment should be made to the entity's share of the associate's profit during the year. We believe that the lack of control over an associate, and also the definition of a group (i.e. a parent and all its subsidiaries (see 2.1.50.10)), distinguishes these from cases in which treasury shares are held by a subsidiary. Information about own equity instruments held by associates should be disclosed in the notes to the financial statements. [IAS 27.4, 32.33]
---

連結グループは親会社と支配する子会社という定義であり、関連会社に対する支配はないことから、子会社が保有する親会社株式の処理とは切り離して考えるべきとの立場です。日本基準とは異なる取り扱いですね。

IFRS上、必ずしも明確ではないのでしょうけど、経済的単一体説に基づく処理として、個人的には非常に納得感があります。

逆に、ここから考えると、子会社が保有する親会社株式の場合は、非支配株主と親会社株主の取引となる部分も資本取引として処理すべきと考えられるものと思います。

上の設例だと、こうなります。

【売却仕訳】
(借)現金150
(貸)自己株式80
   資本剰余金40
   非支配株主持分30

【連結PL】
 なし

うん、やはりこの方がしっくりきます。

尚、関連する法人税等も資本取引に含めるのは日本基準と同様のようです。

---
7.3.460.10 In consolidated financial statements, treasury share accounting applies to own equity instruments that are held by a consolidated subsidiary. [IAS 32.33]

7.3.460.40 See 7.3.480 for a discussion of the presentation of any surplus or deficit on the sale of treasury shares. Any current or deferred tax on the transactions should also be recognised in equity (see 3.13.400).
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ということで、今回はここまでです。


丸紅が資源権益やガビロンの暖簾の巨額減損を発表しました。

これを機に、改めてガビロンについて開示資料を分析してみましたので、簡単に纏めておきます。


1.ガビロン買収の概要

丸紅がガビロンを買収を完了したのは2013年7月。

丸紅が議決権100%を保有する米国持株会社Gavilon Agriculture Holdings Co.(GAH)を経由してGavilon Holdings LLC(Gavilon)を買収した形になっています。

買収価額は2,702百万ドル、関連費用を含めた円貨で2,745億円です。その内、GAHがJBICに発行した優先株で600億円を調達しており(連結財務諸表上、非支配株主持分)、残りを丸紅が負担したものと思われます。

Gavilon買収に係る投資差額を見てみます。

14/3期末の暫定的なPPAの結果では無形資産490億円、税負債▲245億円、暖簾1,220億円(合計1,464億円)でしたが、14/9期時点ではこれを修正し、無形資産695億円、税負債▲295億円、暖簾1,066億円(合計1,466億円)となっています。

同時の記者会見でも1500億円程度と説明されてましたので、ちょうどそれくらいです。

税負債が全て無形資産見合いのものか不明ですが、PPAの修正で変動しているのがほとんど無形資産と税負債だけですので、おそらく大半は無形資産見合いのものと思われます。なので、PPAを修正しても投資差額合計はほとんど動いていません。

ちなみに米国税務には明るくありませんが、無形資産に対して税負債を認識しているということは、LLCの買収ではありますが、税務簿価はstep upしていない、ということなんでしょうかね。


2.暖簾の減損

今回の発表によれば、Gavilonに係る暖簾の減損額は約▲500億円です。暖簾総額の半分くらいですね。

無形資産に税負債を認識しているということからすると、税務上は無形資産や暖簾を認識していないのだと思われますので、この減損には税効果はなく、税前=税後で▲500億円でしょうか。(ちょっと自信ありませんが)

本邦においてGAH株式の評価損を税務上認識できれば日本で税効果があるかも知れませんが、出資額2,100億円程度の内500億円が毀損したくらいでは、税務上の評価損は認識できないものと思われます。

また、公表資料によれば、業績下方修正額の▲1,100億円(税後)は、当期純利益も親会社帰属額も同一となっています。つまり、この損失による非支配株主帰属分はないということです。

ですので、Gavilonの減損も全額丸紅帰属だと思われます。JBICの優先株は、非支配株主持分に区分しているにも拘わらず、この損失は負担しないのですね。優先株の詳細は開示されていませんが、おそらくGavilonの利益に対する持分はなく、残余財産分配時には元本+優先配当を支払うような内容なのでしょう。(但し、IFRS上資本の定義を満たしているはずなので、JBICに償還請求権なし)。

しかし、まだ買収から1年半くらいしか経ってない中でのスピード減損ですね。

頑張れば減損テストを乗り切れなくもなかったように思います。むしろ、資源権益の巨額減損に乗じて落としにいったような気もしてしまいます(完全に勘です)。


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ということで、今回はここまでです。

かなり適当に書いてますので、間違いを見つけたら適宜訂正します。。