Accounting, Tax and M&A -7ページ目

Accounting, Tax and M&A

会計、税務、M&A等の話題についての分析、雑感、というか趣味の備忘録です。もちろんインサイダーではありませんので、全て開示情報と報道に基づくもので、推測を含みます。暇なときに更新しますので、頻度は低いです。ご了承下さい。


IBM租税回避事件シリーズの続きです。

高裁判決でも国側が敗訴したわけですが(詳細は前回エントリー)、その判決の分析を踏まえ、思い切って私自身が本事案を132条によって否認するロジックを構築してみましたので、披露してみます。

ポイントは、自己株取得による株式譲渡損失の計上ではなく、日本再編プロジェクトによる日本IBM株式簿価のステップアップを否認する、というものです。

・・・

1.132条の解釈について

【主張ポイント】

■132条の「不当」とは経済合理性を欠く場合であり、租税回避の意図は要件ではない。

■同条は、経済合理性を欠く行為又は計算の結果として直ちに法人税が減少している場合のみならず、経済合理性を欠く行為又は計算の結果に直接的に起因して、将来に法人税の減少を招く場合にも適用されると解するべき。

(解説)

後者が重要です。

つまり、経済合理性を欠く行為によって資産の簿価が非課税でステップアップし、将来、その資産を売却した際の譲渡益が減少することになる場合に、資産の売却ではなく、当初の行為を132条による否認対象にしようということです。

同条は同族会社である内国法人の「行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるとき」に税務署長に行為計算の否認を認めると規定しています。同条の文理上、法人税の負担を不当に減少させる「結果」となることが求められるのであって、その行為計算によって「直ちに」法人税が減少することまでは要件とされておらず、また、そのように解しないと、将来に不当な法人税の減少を招くこととなる、現在の経済合理性を欠く行為又は計算を容認することとなり不合理と言えるのではないでしょうか。

もちろん、徒に132条の適用範囲を拡大することには慎重になる必要はありますが。


2.日本再編プロジェクトの経済合理性の有無

【主張ポイント】

■日本再編プロジェクト(中間持株会社APHの買収、APHへの融資・増資、日本IBM株式のAPHへの譲渡)は、日本における源泉税圧縮を主たる目的とした一連の行為であり、その主目的及び敢えて複雑なステップを採用している点に照らし、一体として経済合理性を欠く。

■更に、当該一連の行為は、有限会社というハイブリッドエンティティを利用することで、日本及び米国の双方において非課税となる形で、本邦における日本IBM株式の簿価のみをステップアップさせる結果となっている。

(解説)

日本再編プロジェクトの目的については、IBM側は4点挙げており、いずれが主目的というのは客観的に立証するのは難しいかも知れませんが、金額的インパクトやそもそも中間持株会社設置だけならよりシンプルなトランザクションも可能だったはず(日本IBM株式の現物出資等)という当りを主張し、源泉税圧縮が主目的であり不当(経済合理性を欠く)と言いたいところです。もちろん、132条の適用上、必ずしも租税回避目的は要件ではありませんが、経済合理性を欠くことを説明する上での重要な要素ではあるでしょう。

その上で、源泉税自体を否認するか、というのはまた別問題ですが。


3.自己株取得による株式譲渡損の計上について

【主張ポイント】

■日本再編プロジェクトとその後の自己株取得は、必ずしも一連/一体の行為ではないという点は認める。

■株主還元策として経済合理性を有する自己株取得ではあるが、これによる株式譲渡損失の計上は、経済合理性を欠く日本再編プロジェクトによって日米において税負担を伴わずに株式簿価がステップアップしたことに直接的に起因するものであることから、法人税の負担が減少しており、且つ、当該減少は不当であると認められる。

■従い、当該日本再編プロジェクトによるIBM株式簿価のステップアップを132条により否認する。

(解説)

自己株取得による譲渡損計上まで当初から狙った/仕組んだ一連の租税回避行為という主張は、地裁判決でも見た通り税制改正の経緯からしても難しいですし、おそらく事実とも異なると思われ、控訴審においては国側も主張を取り下げたところです。

なので、今回の否認対象の行為は、自己株取得ではなく、あくまで日本再編プロジェクトです。

もちろん、経済合理性を欠く日本再編プロジェクトであっても、課税を伴って簿価がステップアップしていたのであれば、その後の株式譲渡損失の計上で法人税が減少しているとは言えません。ですので、経済合理性を欠くという点(=不当)と、非課税でのステップアップであったという点(=法人税の減少)、両方の指摘が必要かと思います。

ちなみにこう否認した場合、課税当局の実際の否認内容とは異なり、一時差異(期間損益否認)ではなく永久差異(流出否認)になります。

・・・

ということで、今回はここまでです。

まあ、突っ込みどころ満載かも知れませんが、頭の体操としては面白いかな?




(追記)

文章だと分かりにくいので、高裁判決と否認ロジック案の比較を図解してみました。

■高裁判決


■否認ロジック案


さてさて。



地裁に続き納税者勝訴となったIBM事件の控訴審判決について、漸く判決文を読みましたので纏めておきます。

本件についての一連の事実関係/課税関係と、地裁判決の見どころは過去に纏めた通りなので、今回は控訴審判決に絞った内容にさせて頂きます。

・・・

まず細かいところですが、前提事実のところで、2004年に発効した新日米租税条約においては50%超親子間の配当の源泉税が免税となった点について補足されていました。

この点は前回記事でも触れていましたが、ここだけを見ると、配当の源泉税セーブを目的とした日本再編プロジェクトの意義が実質的にかなり薄れていたということではあります。

ということで、ここからが本題です。(判決文からの抜粋は『』で示しています)


1.当局主張内容の変更

国側は、地裁において主張していた①中間持株会社(APH)設立に正当な事業目的がない、②APHへの融資が独立当事者間の取引と異なる、③本件一連の行為(日本再編プロジェクト(APHの取得、APHへの融資・増資、日本IBM株式の譲渡)と日本IBMによる自己株取得)に租税回避の意図が認められる、という3点の内、①と③を撤回しています。

国側の説明によれば、『本件一連の行為の不当性を強調するあまり,上記①及び③の各評価根拠事実の主張をしたが,これを撤回する』とのことです。(②は維持)

そして新たに、132条の解釈、本件一連の行為が経済合理性を欠く、本件一連の行為を容認することは租税負担の公平維持という132条の趣旨に反する、という3点を主張していますので、以下、これらの点について、当局主張、IBM側反論、裁判所判断を各々整理していきます。


2.132条の解釈について

まず、132条(同族会社の行為計算否認)における不当性の解釈についてです。

【当局主張】

『法人税法132条1項の文理解釈及び改正経緯からすれば,同項の適用に当たり,同族会社に租税回避の意図があることは要件ではな』く、『同族会社の行為又は計算が経済的合理性を欠く場合をいい,当該行為又は計算が,独立当事者間の通常の取引とは異なり,それによって当該同族会社の益金が減少し,又は損金が増加する結果となる場合には,特段の事情がない限り,経済的合理性を欠くというべき』。

つまり、租税回避の意図の有無は関係なく、「不当」=「経済合理性を欠く場合」≧「独立当事者間取引と異なる取引」という主張です。

【日本IBM反論】

132条の不当性は経済合理性を欠く場合で、これは『当該行為又は計算が異常ないし変則的であり,かつ,租税回避以外に正当な理由ないし事業目的が存在しないと認められる場合』であり、当局の主張によって『「独立当事者間の通常の取引と異なる」ことを主張立証しさえすれば,具体的な意味で「経済的合理性を欠く」ことを主張立証する必要がなくなるというのであれば,税務署長は,「純粋経済人の行為又は計算として不合理,不自然なもの」という不当性を基礎付ける事実の立証負担なしに不当性を認定し得ることになる』と反論します。

【裁判所判断】

この点、裁判所は当局側の主張を全面的に認めています。

まずは、『当該行為又は計算が経済的合理性を欠くというためには,租税回避以外に正当な理由ないし事業目的が存在しないと認められること,すなわち,専ら租税回避目的と認められることを常に要求し,当該目的がなければ同項の適用対象とならないと解することは,同項の文理だけでなく上記の改正(※)の経緯にも合致しない』としています。(※昭和40年改正)

これはその通りだと思います。

更に、法人の諸活動は『必ずしも単一の目的や理由によって行われるとは限らないから,同族会社の行為又は計算が,租税回避以外に正当な理由ないし事業目的が存在しないと認められるという要件の存否の判断は,極めて複雑で決め手に乏しいものとな』ってしまう、また、独立当事者間取引と異なる取引が経済合理性を欠く場合に含まれるとの解釈は、経済合理性を欠く場合の『客観的、合理的基準をより具体化するもの』として容認しています。

まあ、学問的なところはともかくとして、実務的な感覚からするとこの辺はさほど重要ではなく、「正当な事業目的がない≒租税回避目的が強い≒独立当事者間と異なる」というケースがほとんどなのではないかという印象ではあります。


3.本件一連の行為が経済合理性を欠くか否か

改めてですが、本件一連の行為というのは、日本再編プロジェクト((APHの取得、APHへの融資・増資、日本IBM株式の譲渡)による中間持株会社の設置と、日本IBMによる自己株取得を含む一連の取引です。

【当局主張】

本件一連の取引により『日本国内で負担する源泉所得税額を大幅に圧縮することができたもので,本件一連の行為が本件税額圧縮の実現の目的で行われたことは明らか』、また本件の融資については『めぼしい資産を持たず,収益力の乏しい借主に対し,無担保で約1兆8000億円もの巨額の融資をすることは経済的に極めて不合理,不自然』、日本IBM株式譲渡価額は米IBMが起用した第三者評価に基づく言い値で決まっており、独立当事者間取引の場合に比して『取得価額の決定過程が不自然であるのは,被控訴人がb社(ひいてはa社)の支配下にある同族会社であったからであり,本件株式購入は,独立当事者間の通常の取引とは明らかに異なっており,経済的合理性を欠く』としています。

「めぼしい資産も持たず」って、日本IBM株式がありますけど、、、

また、その後行われた自己株取得についても『本件株式購入の取得価額をそのまま本件各譲渡における譲渡価額として引き継いでいることは,本件各譲渡が,独立当事者間の通常の取引とは異なったものであり,経済的合理性を欠くことを裏付ける』と主張しています。

そして、このように纏めています。

本件一連の行為は、源泉税圧縮の『実現のために一体的に行われたものであり,その結果,被控訴人は,本件税額圧縮を実現しただけでなく,本件各譲渡により巨額の有価証券譲渡に係る譲渡損失額を計上し,法人税の負担が減少したのである。このような結果は,本件一連の行為を構成する個々の行為を一体的に行ったからこそ得られたものであり,各行為は互いに他の行為の前提となっているから,本件一連の行為を一体として行わなければ意味がないものである。そのため,本件一連の行為が独立当事者間の通常の取引と異なり全体として経済的合理性を欠くのであれば,本件一連の行為を構成する本件各譲渡を容認した場合には,被控訴人の法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるというべきである。』

つまり、ややトリッキーですが、本件一連の行為が株式譲渡損の計上を狙った一連の租税回避行為であるとの主張は撤回したものの、本件一連の行為は源泉税圧縮を目的とした一体の取引であり、全体として経済合理性を欠くので、本件一連の行為の結果として発生した株式譲渡損による法人税の減少は不当だ、という主張になるわけです。

更に、本件一連の行為を個別的に見ても、いずれも同族関係だからこをなし得たもので、独立当事者間の通常の取引とは異なり経済合理性を欠くと主張しています。

【裁判所判断】

ここは日本IBMの反論を省略して、裁判所判断に行きます。

まず重要なのは、日本再編プロジェクトは、日本IBMから米国への『利益還元に係る日本の源泉所得税の負担を軽減すること,すなわち,控訴人が主張する本件税額圧縮の実現も重要な目的として,a社(※米国IBM)が決定した計画に従って実施されたものであることが明らかである。(なお,上記認定は,本件税額圧縮という目的の当不当を評価するものではない。)』というところです。

この点は日本IBMも認めていますし、また、裁判所として、源泉税圧縮という目的自体の当不当を評価するものではない、と。

そして、この日本再編プロジェクトと自己株取得が『一体的に行われたことを認めるに足りる証拠はない』としています。

長くなるので若干意訳すると、「源泉税圧縮は日本再編プロジェクトによって中間持株会社設置した後、配当でも自己株取得でもどちらでも享受できたので、必ずしも自己株取得である必要はなく、従い、日本再編プロジェクトと自己株取得が一連の取引とは言えない」ということです。

これを裏付ける事実が何点か認定されていますが、実際に米国IBMと日本IBMの間で、配当と自己株取得をどのように組み合わせるかについて、日本における配当源泉税の控除とのタイミングや、日本における実務慣行、旧商法における制約等を踏まえて議論されていたようです。

そして、配当と自己株取得の『いずれの方法によっても,a社(※日本IBM)(直接はb社(※米国WT))が負担する日本の源泉徴収税額は同じように軽減されることを前提とした上で,その資金需要の必要性や資金効率の改善という観点から,c社(※日本IBM)からの利益の還元が,いかなる時期,規模,方法によることが望ましいかを判断していたことが明らか』としています。

以上から、本件一連の取引(日本再編プロジェクトと自己株取得)は源泉税圧縮という共通目的のために一体的に行われたおは認められず、『全体として経済的合理性を欠くかどうかを判断することが相当であるということはでき』ず、自己株取得が『それ自体で経済的合理性を欠くものと認められるかどうか』を判断すべきとしています。

更に、日本再編プロジェクトの各取引が個別に見ても経済合理性を欠くという当局主張については、『主張自体失当というほかない』と切捨てています。


3-2.自己株取得自体が経済合理性を欠くか否か

【裁判所判断】

ここも裁判所の判断だけにします。

まず、2002年、2005年の自己株取得について当初の決議から事後的に修正が加えられた点に係る当局の主張に対して『最終的に行われた取引の確定に至るまでの譲渡価額や譲渡株式数の修正等の事情は,独立当事者間の通常の取引とは異なる取引がされた可能性を示唆する事情にはなり得るとしても,それ自体では,最終的に行われた取引が,独立当事者間の通常の取引とは異なる取引であることを基礎付ける評価根拠事実にはなり得ない』としています。

まあ、そうでしょうね。

また、当初の日本IBM株式譲渡算定時のDCF評価の前提より実績が下ブレしているにも拘わらず、これと同一の価格で自己株取得行われている点が独立当事者間取引とは異なるとの当局主張については、『c社(※日本IBM)は本件各譲渡により自己株式取得をする度に取得した自己株式を直ちに消却していたから,1株当たりの価値が上昇する要素もあったといえること,c社が非上場会社であって容易に参照できる市場株価が存在しないこと,c社のような大規模に事業を行う企業(前提事実1(2))の株式価値を専門業者に依頼して算定するには高額の費用を要すると認められること(弁論の全趣旨)といった事情に照らせば』、独立当事者間の通常の取引と異なるとまでは認められないとしています。

更に、『本件各譲渡が独立当事者間の通常の取引と異なると主張しているのにもかかわらず,独立当事者間の通常の取引であれば,どのような譲渡価額で各譲渡がされたはずであるのかについて,何ら具体的な主張立証をしていない』と当局側に指摘しています。

なるほど、取引価格がオカシイというなら、いくらが合理的だったのかを示せ、ということですか。これはなかなか難しいところでしょうけれど。


4.本件一連の行為を容認することは租税負担の公平維持という132条の趣旨に反するか否か

【当局主張】

ここではやや感情論的な主張がなされています。

本件の譲渡損失は、みなし配当等の規定を『形式的に当てはめた結果算出されたものであり,被控訴人が実際に行った営業活動によって生じた損失ではなく,法律の規定により計算上発生した見せかけの損失である』。

また、日本IBMグループは『日本における個人,法人の税負担により整備されたインフラ等を前提に事業活動を行い,平成20年12月連結期から平成23年12月連結期までの間に,日本国内において約5006億円もの利益を上げたにもかかわらず,本件一連の行為により被控訴人に発生した約3995億円の有価証券譲渡に係る譲渡損失額を計上して,法人税の負担を軽減させた。』これは,IBMグループが『応分の税負担を拒否したに等しく』、これを容認することは132条の税負担の公平という趣旨に反するとしています。

【裁判所判断】

裁判所はこれもバッサリ切り捨てます。

譲渡損失が生じたのは『本件各譲渡に法人税法の規定を適用した結果であって,これをもって見せかけの損失であるという控訴人の主張は,その故に直ちにその計上を否定すべきというものであれば,法律上の根拠を欠くものであって採用の余地はない。』

更に『控訴人の主張は,本件一連の行為を対象として「不当」性の判断をすべきものとしている点及び「不当」性の判断について経済的合理性を欠くと認められるかどうかという客観的,合理的基準に依拠しない点において既に失当であって,これを採用することはできない』としています。

まあ当局の気持ちはわかりますが、やむを得ないところかと。

・・・

ということで、今回はここまでです。

国側は上告しているようですが、さてどうなりますかね。

ちなみに今回の裁判所の判断の中で、平成22年改正について2箇所で言及されています(自己株取得予定株式の取得の場合のみなし配当益金不算入の不適用と、完全支配関係がある法人との間の自己株取得における株式譲渡損の不計上)。

このIBM事件を受けて税法改正まで至ったのだから、、という点を敢えて強調しているような印象を受けました。


ソフトバンク(SB)が子会社のガンホーの行う自己株TOBに応じて同社を持分法化するようです。

ということで会計・税務処理について確認しておきます。


1.ガンホー子会社化時の会計処理

まずは、SBがガンホーを子会社化した際の会計処理のおさらいです。

元々、SBはガンホー株の33.6%を保有していましたが、2013/3末に子会社のソフトバンクモバイル(SBM)が6.4%分をTOBで取得するとともに、孫社長と弟の保有する合同会社ハーティスとの間の議決権行使契約による議決権18.5%により、SBの議決権は58.5%となり、ガンホーを子会社としました。

SBの経済的持分は直接・間接で40%ですが、直接持分は3月末時点の株価396.5円で子会社化に伴う再評価益1,501億円を計上し、また間接分はTOB価格の340円(総額250億円)で取得した結果、子会社化時の連結簿価は1,786億円(平均単価388円)となりました。

その後の2年間の連結簿価の推移を試算してみます。

ガンホー100%ベースで、

①2013/12期純利益547億円
②2014/12期純利益620億円
③ゲームタイトル償却費2年分△322億円(税後)
④配当2年分63億円
⑤2013/12期Q1純利益123億円
⑥2015/12期Q1純利益151億円

以上より、①+②+③-④-⑤+⑥=810億円、SB持分40%で324億円の増加になります。

とすると、SB持分で2015/3期末連結簿価は2,110億円(単価458円)程度と推定されます。


2.ガンホー持分法化の会計処理

今回、SB本体が188百万株の自己株TOBに応募し、また、ハーティスとの議決権行使契約の一部を解消します。その結果、SBグループの議決権はSB本体20.8%、SBM7.7%、ハーティス11.8%の合計40.2%になります。

IFRS上の判定はけっこう微妙なところがありそうですが、これによってSBのガンホーへの支配が喪失され、会計上、再評価益を計上することになります。

自己株TOBに応募する188百万株はTOB単価425円で800億円相当、継続保有の273百万株は4月27日終値455円で試算すると1,240億円相当、合計で2,040億円になります。

SBの開示資料によれば、これに伴う再評価損益は2015/3末連結簿価ベースで△104億円とのことなので、逆算すると、連結簿価は2,144億円(単価465円)ということになります。

上記の試算結果と34億円ズレましたが、まあそれくらいの水準ということですね。

尚、実際にはSBが支配を喪失するのはTOBの決済が行われる6月末と思われますので、再評価を行う株価もその時の水準ということになります。

ちなみに今回のTOB価格は市場株価に対してディスカウント価格になっており、ガンホーはTOB価格の妥当性についてプルータスからフェアネスオピニオンを取得しているようです。

プルータスによれば不確実性の高いスマホゲーム業界の評価にはDCF法は適当ではなく、市場株価法が採用されたそうです。ディスカウントについては、大株主が売却する際にはよくある現象ですかね。


3.自己株TOBの税務上の取扱いと税効果会計

さて、今回SBはガンホーの自己株TOBに応募し、単体会計上は780億円の売却益を計上するそうですが、これの税務上の取扱いを検討します。

まず、SB単体のガンホー株式簿価は、売却対価800億円、売却益780億円なので、売却株の簿価で20億円ということになります。これを逆算すると株式簿価は全体で41億円、簿価単価は11円ということになります。

次に、ガンホーの財務諸表を見ると、資本金と資本準備金が合計で107億円。自己株控除前の発行済株式総数1152百万株で割ると1株当りの資本金等の額は9円と試算されます(税務上の資本金等と会計上の資本金・資本準備金は必ずしも一致しませんが、細かい過去の検証は省略)。

その結果、TOB単価425円の内、416円は税務上配当と見做されます。2015年度の税制改正を踏まえても、SBの保有するガンホー株は関連法人株式に該当し、100%非課税の扱いになります。

みなし配当の総額は783億円になりますので、会計上の売却益のほぼ全額が非課税ということになります。

SBMがTOBに応募した場合、元々TOBで取得しているため簿価は高いものの、みなし配当が全額非課税にはなりませんので、SB単体が自己株TOBに応募した方が有利だったものと思われます。

一方で、連結会計上の話税効果ですが、SBグループの継続保有分については、連結簿価と税務簿価にかなりの投資の一時差異が生じます。この投資の一時差異に対し、持分法投資になるの原則として税負債を計上する必要があるように思います。

連結簿価は再評価後で1,240億円、税務簿価はSB20億円とSBM250億円合計で270億円なので、1,000億円近くの一時差異です。しかも、ガンホーは今回の自己株TOBで剰余金の大半を使っており配当税率というわけには行きません(且つ、配当の場合でも非課税割合は50%のみ)。

1,000億円に税率33%で税負債を計上すると▲330億円の費用が再評価時にPL認識されるはずですが、これはSBの開示資料には含まれていないように思われ、今後確認したいところです。


4.ガンホーの株価推移について

さて、最後に本題とは関係ありませんが、ガンホーの株価推移について少々。


(ヤフーファイナンスより一部加工)

上記の通り、SBがガンホーを子会社化し会計上時価評価を行った2013年3月末の株価は396.5円でした。

その後、短期的にガンホー株は急騰し、2013年5月14日終値は1,550円となりました。この時点ではSB持分時価で7,166億円(含み益5,380億円)もあったことになります。

しかし、その後は株価は下落基調となり、2015年4月27日には455円になっていたわけです。

結果として、SBとしてはほぼ連結簿価と同水準で一部現金化、継続保有部分は持分法化となりましたが、SBのガンホー子会社化が1カ月ズレいていたら、会計上の評価損益は大変なことになっていた感じですね。

・・・

ということで、今回はここまでです。

昨日、カッパ・クリエイトホールディングス(カッパ)が122億円という巨額の減損損失を公表しましたが、親会社コロワイドの会計上の影響をちょっとだけ見ておきます。

・・・

カッパといえば、2014年12月にコロワイドがTOB&第三者割当増資で子会社化したところですが(案件の全体像については以前ブログに纏めた通り)、コロワイドの四半期報告書(2014年12月)に買収の会計処理について開示がありました。

取得日は12月4日(TOB決済&増資払い込み)で、会計上のみなし取得日は11月末。

買収価額は総額265億円(内、3億円はアドバイザリー費用)。

取得した株式は25百万株(単価1,048円)で、増資後発行済株式(除く自己株)48.5百万株の約51.5%になります。

そして、まだ暫定的な処理ですが、暖簾の金額は213億円とのことです。

つまり、暖簾を除くカッパの時価純資産評価はコロワイド持分で51億円(265億-213億)、カッパ100%ベースで100億円ということになります。

一方、同じ2014年11月末時点のカッパの連結財務諸表上の株主資本は149億円。更にここに増資による払込88億円が加わりますので、簿価純資産は237億円ということになります。

従い、コロワイドはカッパを買収した時点において、簿価純資産237億円に対して時価純資産100億円、137億円も純資産が毀損していると評価していたことになります。(尚、カッパは税資産のほぼ全額に評価性引当を計上しており、評価損の影響は税前≒税後かと思われます)

今回発表した減損損失が122億円ですので、ほぼこれを買収時のPPAに織り込んでいたわけです。

なるほど、なので昨日のコロワイドの開示でも、カッパにおける減損のコロワイドに与える業績影響について、『既に計画に織り込んでおり軽微であると考えておりますが、今後修正が必要と判断した場合には、速やかに開示いたします』という説明だったわけです。

一方のカッパの開示では、コロワイドの子会社になり、『新体制のもと「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、コロワイドグループで採用している厳格な投資評価及び業績管理手法を採用した結果』として減損が発生したとしています。

これまでの会計処理の妥当性は??という気がしなくもありません。

しかも、コロワイドは12月の買収時点(遅くとも1月末の決算短信公表時点)で既にカッパの固定資産の減損を反映させていたわけで、カッパでの減損の公表が4月末というのはちょっと遅すぎません?とも思います。

もちろん、固定資産の減損は回収可能価額の話で、時価評価とは別物ではありますが。。

・・・

ということで、短いですが今回はここまでです。

ファミリーマート(ファミマ)とユニーグループホールディングス(ユニーGHD)が経営統合に向けて協議を開始したようです。

統合は2016年9月を目指すということでまだ先になりますが、なかなか面白い再編なので、ファミマを持分法適用している伊藤忠商事(伊藤忠)も含め、会計・税務等を中心に確認します。

・・・

1.統合ストラクチャー

3月10日の公表資料によれば、対等な精神での経営統合ということですが、具体的には以下のステップで統合されます。

①ファミマがユニーGHDを吸収合併(ファミマが存続法人)

②ファミマがコンビニ事業を旧ユニーGHD100%子会社のサークルKサンクス(CKS)に分割(CKSが承継法人)

結果、持株会社の下に、コンビニ事業会社(ファミマ事業+CKS)と総合スーパー事業会社(ユニー)等がぶら下がる形になります。


2.Valuationの簡単比較

統合インパクトを見る前に、ファミマとユニーの業績(2015/2期)とValuation(4月15日時点)を簡単に比較しておきます。

■ファミマ:EBITDA 724億円、株主資本2,727億円、時価総額5,221億円、net Debt▲257億円、EV 4,964億円、PBR 1.9、EV/EBITDA 6.9

■ユニーGHD:EBITDA 591億円、株主資本2,926億円、時価総額1,657億円、net Debt2,994億円、EV 4,650億円、PBR 0.6、EV/EBITDA 7.9

けっこう面白いのですが、両社のEVは同規模ながら、ファミマは無借金、ユニーGHDはハイレバレッジ(net debt/EBITDAで5倍)の為、時価総額ではファミマがユニーGHDの3倍ほどになっています。

またEV/EBITDAではユニーGHDの方が高い評価になっている一方、PBRではユニーGHDの評価が著しく低い結果になっています。

これって要するに、ユニーGHDは投下資本に対する利益率が低い、ということです。

例えば「EBITDA/(株主資本+net Debt)」で簿価ベースの投下資本利益率を出すと、ファミマ30.2%に対しユニーGHDは9.8%しかありません。

同じような規模のEBITDAを稼いでいて、企業価値ベースでの評価も同程度ながら、それに要する投下資本が小さいファミマは株式価値が純資産を上回り、投下資本の大きいユニーGHDは株式価値が純資産を下回っている、という感じです。

逆に言えば、市場株価はそれなりにフェアな水準かな、とも思います。


3.統合に係る会計インパクト

この経営統合は、時価総額の差からして、会計上は「ファミマがユニーGHDを買収した」ものとして会計処理されることになります。

一方で、統合比率はまだ発表されていません。(投資家にとって最も重要な情報がない中での統合発表というのは問題だと思いますが、まあ、それはさておき)

市場株価の比率に対してユニーGHD側に多少のプレミアムを乗せる形になるのかも知れませんが、取り敢えず株価ベースの統合を前提に見てみます。

その場合、ファミマは旧ユニーGHD株主に対して時価1,657億円相当の新株を交付することになります。

一方で取得する純資産は2,926億円(内、のれん60億円を除くと2,866億円)です。

つまり、差引1,209億円が負の暖簾となり、ファミマにおいて一括利益認識されます。

仕訳はこんなイメージです。

(借)
 諸資産 2,866億
(貸)
 資本金等1,657億
 一括利益1,209億

すごいインパクトです。

ちなみにこの前提だと、統合会社は時価総額6,877億円、純資産5,593億円、PBR1.2になります。


4.税務上の取扱い

次にこの再編の税務上の取扱いを見てみますが、改めて、再編のステップは以下の通りです。

①ファミマがユニーGHDを吸収合併(ファミマが存続法人)
②ファミマがコンビニ事業をCKSに分割(CKSが承継法人)

まず、①の合併の適格判定です。

①はファミマとユニーGHDの支配関係のないグループ外合併なので、共同事業要件を検討します。

ポイントとしては、両社の事業関連性が挙げられます。この点、ユニーGHDはあくまで持株会社で事業は行っていませんが、コンビニ等の小売事業に対する経営指導を行っているということで、おそらくファミマとの事業関連性要件を満たすものと思います。

次に、事業継続要件と従業者引継要件ですが、これが求められるのはあくまで消滅会社であるユニーGHDのみです。ファミマについては、その後の会社分割で主たる事業を切り出しますので事業の継続が見込まれませんが、これは合併の適格要件には抵触しないものと思います。

また、規模要件については、ユニーが持株会社の為、売上高や従業者数の規模は全く異なりますが、両社の資本金がファミマ166億円、ユニーGHD222億円ということで1:5の範囲内なので、これも大丈夫です。

その他、株式交付要件等もおそらくクリアするでしょうから、この合併は共同事業要件を満たす適格合併になるものと思います。要するに税務上は課税なしの簿価引継ぎです。

次に、②の会社分割ですが、こちらは①の合併後、100%親子間での会社分割になりますので、基本的に適格要件を満たすものと思われます。(含み損制限等の観点でみなし共同事業要件の検討が必要な可能性もありますが、取り敢えず省略)

ということで、この一連の再編は税務上は適格で課税繰延べになりそうです。


5.伊藤忠のインパクト

さて、最後にファミマを持分法投資としている伊藤忠についてです。

現在、伊藤忠はファミマの36.9%(35百万株)、ユニーGHDの3.0%(7百万株)を保有する株主になっています。

ファミマ株式については、1998年に伊藤忠が子会社のファミリーコーポレーション(FC)経由で1,350億円で取得した後(29.9百万株)、2005/3期に451億円の減損損失を計上、2009年9月にFCから伊藤忠に843億円で譲渡されています。

そして2014年7月から12月に市場取引にて5.1百万株を224億円程度で追加取得し、現在に至っています。

現在の伊藤忠のファミマ株の連結上の簿価は不明ですが、当初取得額1,350億円、減損451億円、追加取得224億円、そして資料上遡れた2002/2~2015/2の持分利益から受取配当を控除した累計506億円を加味し、1,629億円と試算してみました。

かなりいい加減な試算ですが。。

ファミマの純資産2,727億円に対する持分36.9%で1,006億円ですので、これに対しては623億円の投資差額が計上されている計算になります。また、株価ベースでの時価は1,926億円です。

これがユニーGHDと統合されるとどうでしょう。

市場株価ベースの比率で統合される前提とすると、時価総額比率でユニー1.0:ファミマ3.15で、伊藤忠の統合会社出資比率は28.7%になります([1.0×3%+3.15×36.9%]÷4.15)。

引き続き持分法適用ですので、ファミマ株については持分変動利益(みなし売却益)が計上されます。

①減少持分(売却原価)は、簿価1,629億円×減少比率8.2%÷保有比率36.9%=360億円。

②増加持分(売却対価)は、増加純資産2,866億円×取得比率28.7%=841億円。

結果、②-①で売却益は税前481億円と試算されます。

これまたすごいインパクトですね。

ちなみにファミマがユニー株価に20%プレミアムを付けて統合したとすると、伊藤忠の持分比率は27.6%、持分変動利益は394億円になります。

様々な変動要素があるので何とも言えませんが、ざっくり400~500億円くらいの利益になる感じかと思われます。

・・・

ということで、今回はここまでです。

統合に向けた協議がどう進んでいくか、楽しみですね。