東芝が不適切会計問題で揺れています。
まだ第三者委員会の報告書も出ていませんし、顛末は不明ですが、これがいわゆる粉飾決算(仮装経理)だった場合の法人税の取扱いを確認してみましょう。
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1.法人税法における仮装経理の取扱い
まず制度の確認です。
通常、過年度の確定申告による所得/納税額が過大だった場合、納税者は更正の請求を行い、更正を受けることで過大に支払っていた法人税の還付を受けることが出来ます(又は繰越欠損金が増加)。
尚、更正の請求の期限は5年です。
ところが、仮装経理の場合は、いわゆる粉飾決算の防止等の観点から、主に以下2点の特例が定められています。
(1)税務署長の更正留保権
(法129①)
これは、納税者が仮装経理について修正の経理を行い、且つ、これに係る確定申告を提出するまで、税務署長に更正をしないことができる権限を与えるものです。
「修正の経理」というのは、過年度遡及会計基準に従い、過去の誤謬を修正する、又は重要性が低い場合は前期損益修正を当年度の損益として確定決算において受け入れることを指します。
これがなされない限り、納税者が更正の請求を行っても、税務署長は更正を留保(拒否)できるというわけです(一応、あくまで「できる」規定です)。
(2)過大納付額の還付制限及び繰越控除
(法135①②、法70)
これは、仮装経理による過年度の過大納税額の還付について更正された場合でも、すぐには還付を受けさせないという特例です。
この場合、還付を受けることのできる金額は更正の日の属する事業年度の前年度の法人税額の範囲に限定され、また、その後5年間は各事業年度の法人税額から未還付の過大納付額を控除することが認められます。
そして、5年経過時点でも未還付の過大納付額が残っている場合、その時点で残額が還付されることになります。
その他、清算された場合はその時点で還付を受けられる等の特例もありますが、要するに、仮装経理を行った場合は、修正の経理を行わないと更正が受けられない(かも知れない)、且つ、更正を受けても最大5年間は還付を受けられない(かも知れない)、ということになるようです。
2.東芝のタックスポジションと不適切経理の取扱い
さて、では東芝の場合はどうでしょう。
まだ不適切経理の詳細は不明ではありますが、現時点の報道からすると、1,700億円~2,000億円程度の不適切経理があり、その内容は経営陣が粉飾の指示に近いことを行っているとのことで、粉飾決算(仮装経理)に当たることになると思われます。
この金額が累積の利益剰余金への影響?なのかよくわかりませんが、いずれにせよ、金額規模からして過年度決算の修正を行うことになるでしょう。
その後、法人税について更正の請求を行うことになると思われます。
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では、東芝のタックスポジションはどうなっているのでしょう。
この点、東芝の財務諸表(2014/3期時点)を見ると、連結/単体ともにかなりの金額の繰越欠損金を抱えているようです。
【2014/3期末の繰越欠損金に係る税資産】
連結決算:2,011億円(単純税前換算5,650億円)
単体決算:981億円(単純税前換算2,756億円)
同社は連結納税を採用しており、単純に税前に割り戻しても繰越欠損金の金額にはなりませんが(法人税と地方税で繰越欠損金額が異なる)、大凡の規模感は掴めます。
連結決算では東芝は米国会計基準を適用しており、法人税等の注記も充実していますが、連結決算ベースでは、法人税の繰越欠損金は4,641億円、地方税の繰越欠損金は6,791億円だそうです。もちろんこれには連結納税外の子会社や海外の子会社も含まれますが、上記の単純税前換算値と規模感は合っています。
そして、その半分くらいが東芝単体決算の繰越欠損金で、過去の決算を見ると2012/3期と2009/3期に発生した欠損金が大きいようです。
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単体決算における法人税等(current tax)については、2013/3期、2014/3期で74億円、56億円の還付ポジションになっています。
一方、単体税前利益に、受取配当金及び交際費に係る永久差異項目の調整、及び、繰欠と有価証券評価差額を除く一時差異の増減を加味して単体の課税所得を試算すると、2013/3期、2014/3期で200億円、500億円程度になります。
にも拘わらず法人税が還付ポジションになっているのは、連結納税子法人の所得も加味した結果、国に対する納付(欠損金控除制限80%)よりも、子法人所得による繰越欠損金消化(=子法人から受け取る法人税)の方が大きい、ということでしょうか。
いずれにせよ、東芝連結納税グループとしての法人税の納付額はさほど大きくないように思われます。連結決算での法人税の納付額は、CF計算書にて2013/3期、2014/3期で487億円、510億円と記載されていますが、これはおそらく連結納税グループ外の法人による納付額が大半と思われます。
なので、過年度の修正の経理を行った上で更正の請求をしても、その大半は繰越欠損金の増加、ということになりそうです。
多少なりとも法人税を納付していた部分については、前期(今回の場合は2015/3期でしょうか)納付額の範囲で還付を受けるとともに、今後5年の繰越控除の対象になると思われる一方、繰越欠損金が増加する部分は、(それによってその後の欠損金の控除が増加していた場合(いわゆる反射的更正)を除き)更正が留保されることもなく、通常の繰越欠損金としての扱いを受けるものと思われます。
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ということで、今回はここまです。
仮装経理の取扱いは実務で触れたことがなく、ちょっと調べてみた程度なので、間違っていたらすいません(ご指摘下さい。。)
