ベルシステム24が再上場を果たしました。
上場に係る有価証券届出書を見ているとけっこう色々面白いので、ベインと伊藤忠の動きを中心に纏めてみます。
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1. 再上場に至るまでの投資ストラクチャー変遷
ベインがベルシステム24(以下、ベル)を買収したのは2009年末ですが(買収の主体は香港のBain Capital Bellsystem Hong Kong Limited.以下、Bain HK)、その後、伊藤忠の出資参画、そして再上場を果たすまでに4回の合併を含むストラクチャー変更が行われています。
届出書でもある程度丁寧に記載がありますが、これを網羅して1枚の絵に纏めてみたのがこちらです。

全17ステップ。これ、かなりの力作です。
Bain HKが日本にSPCを設立し、そこにベルを保有する既存SPCの株式を売却することを何度か行っています。
おそらくこれは、株式譲渡に際してLBOローンをリファイナンスすることで、再度ベルのレバレッジを効かせ、ベインは一部投資回収を図っているものと思います。尚、Bain HKで生じるキャピタルゲイン課税(いわゆる事業譲渡類似株式の譲渡)は日香租税協定により免税になります。
ということで、この図からもわかる通り、今回上場した㈱ベルシステム24ホールディングスという会社は、ベインが2014/6に設立した㈱BCJ-15という法人のようですね。これは2014/10に伊藤忠に49.9%売却する際に設立されたビークルですが、この当りの詳細を見てみましょう。
2. ベインのリファイナンスと伊藤忠の出資参画ストラクチャー(2014/10)
伊藤忠は2014年10月に出資参画し、ベル持分の49.9%を取得し、持分法投資としています。
この際、ベインはリファイナンスによる投資回収を同時に行っていますので、この時の再編ストラクチャーを整理します。
先ほどの図から該当部分を抜き出してみました。

具体的には以下の通りです。
・2014/6、Bain HKがBCJ15を設立
・2014/6、BCJ15がBCJ16を設立
・2014/10、BCJ16がBCJ7(ベルの持株会社)を株式買収
・2014/10、伊藤忠が増資引受によりBCJ15に出資
尚、図では端折りましたが、2014/9にみずほ、MUFJ、SMBC等からリファイナンス資金の借入を行っています。借入主体は明示されていませんが、間違いなくBCJ16と思われます。
Bain HKと伊藤忠が拠出した資金は合計490億円(内、伊藤忠は49.9%で245億円)、また銀行借入が800億円なので、合計1,290億円の資金調達を行ったことになります。
この内、Bain HKのBCJ7株式譲渡対価として826億円、既存借入の返済に550億円程度が充てられています(足らず枚はおそらく手元現金を使用)。
ベルの連結財務諸表を見ると、この取引はBain HK支配下の取引として、簿価引継ぎの処理がなされています。従い、BCJ7株式譲渡対価の826億円は「支配株主への分配」として資本取引になっています。
ベインは、245億円を拠出する一方で826億円を回収しましたので、net580億円の投資回収ですね。
ここら辺をベルのBSをイメージして図解しました。

まさにリファイナンスによりDebtを膨らませ、株主資本からの回収に回したところがよくわかります。この過程で伊藤忠が出資参画したというわけです。
ちなみに資産サイドは、そのほとんどがのれん(Goodwill)です。
具体的なBSの数値で見ると、上場前の2015/8末で、総資産1,309億円、その内、現金が72億円、のれんが971億円です。
前述のとおりこのリファイナンスは共通支配下の取引として簿価引継ぎされていますので、こののれんの金額は過年度から変わっていません。
ベルは上場に際してIFRSを適用しましたが、のれんの金額はIFRS初度適用時の日本基準における簿価をそのまま引継いでいるものと思われ、特に無形資産等は認識していないようです。
やや話がそれてしまいましたが、ついでに連結財務諸表の話題でいくと、2014/2末のベル連結財務諸表を見ると、資本金がゼロ円になっています。
これは、2014/2時点では現在の親会社であるBCJ15がまだ存在していなかったわけですが、あたかもBCJ15が存在していたかの如く連結財務諸表を作成している為です。
その結果、資本金や資本剰余金の金額はゼロで、いわゆる払込資本については「その他の資本の構成要素」という勘定科目で535億円が計上されています。
面白いですねぇ。
3. ベル再上場のValuationと伊藤忠の投資採算
ここはあまり深追いしませんが、再上場に係る売出と新株発行はこんな感じです。

大半はベインが売り出しますが、伊藤忠も一部売却するようです。
おそらく売却しないと議決権比率が高く、過半はないとはいえIFRS上連結が必要になる可能性が高く、持分法を維持するためには議決権比率40%程度までは売却する必要があったのだと思われます。
ということで、上場後のベルの発行済み株式総数は75百万株、本日(12/10)の株価1,330円で計算すると時価総額993億円です。
ここにnet Debtを加算するとEV1,713億円、今期の調整後予想EBITDA129億円で割ると、EV/EBITDAで13.3倍。十分過ぎる評価でしょうかね。
表に纏めてるとこんな感じです。

で、最後に伊藤忠に投資採算を見ておきましょう。
この表の通りなのですが、出資額245億円に対し、上場時の売出での回収が72億円(単体売却益38億円)、そして継続保有持分の時価が399億円(含み益189億円)です。

投資から約1年で投資額がざっと2倍になった感じですね。
なかなかのリターンではないでしょうか。
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ということで、今回はここまでです。





