マクドナルドが食の安全問題に端を発して苦境に喘いでいます。
月次セールスレポートを見てもショッキングな数字が並んでいるわけですが、せっかくなので業績・タックスポジション等を少し分析してみました。
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1.売上高・営業利益推移と回帰分析
まずは日本マクドナルドの売上高と営業利益の推移を見てみます。
売上高については、PL上の売上高ではなく直営店とフランチャイズ店の売上高を合計した全店売上高(システムワイドセールス)をベースとし、2012年の第1四半期から2015年第2四半期までの四半期毎の推移をグラフにしてみました。
2013年の下期当りから売上高の減少傾向が顕著になり、1300億円前後をキープしていたのが、直近2四半期では800億円台になりました。営業利益も直近4四半期連続で赤字です。
このグラフを見ると、全店売上と営業利益の相関がかなり強そうなので、回帰分析をしてみました。
ちなみに日本マクドナルドは米国マクドナルドにロイヤリティ(ブランド使用料)として全店売上高の3%を支払っていましたが、2014年7月以降、1.5%に減免しているようです。なので一旦、ロイヤリティを3%として再計算した上での分析にしました。
すると、こんな感じです。
つまり、日本マクドナルドは限界利益率35%、固定費409億円ということです(ロイヤリティを1.5%にすると限界利益率は36.5%)。
そして、決定係数が0.92とかなり強い相関になっています。これって、マクドナルド以外も外食業界だとこんな感じなんでしょうかね?
ここからすると、損益分岐売上高(BES)は1,170億円(ロイヤリティ見直し後1,120億円)ということになります。直近の売上高900億円程度だと約80億円の営業赤字という計算です。
2.タックスポジションと株主資本
さて、次にタックスポジションです。
日本マクドナルドは2014年度(2014/12期)で▲218億円の当期純損失を計上しました。営業赤字▲67億円に、減損損失▲78億円、上海関連損失▲23億円等により税前赤字▲185億円、そして繰延税金資産の取崩し等により法人税費用も▲36億円という状況でした。減価償却費104億円で、EBITDAはかろうじて黒字というところです。
税効果の注記を見ると、過年度にはなかった繰越欠損金に係る税資産が40億円、次いで減損損失が35億円となっています。これらを税前に割り戻すと、繰越欠損金111億円、減損による一時差異97億円となります。
そして2015年度第2四半期(2015/6期)では、営業赤字で▲183億円。減損損失▲35億円等もあり、▲262億円の当期純損失になりました。もちろんEBITDAも赤字です。
これにより、おそらく繰越欠損金は200億円程度増加して約320億円、更に減損による一時差異も膨らんでそうです。
尚、税資産のほとんど全額の評価性引当金を計上しています。
これだけの損失を計上していますが、2015/6末時点で日本マクドナルドの株主資本はまだ1,172億円残っています(内、利益剰余金537億円)。前期末からは300億円減少していますが。
有利子負債については、前期末時点ではほとんど借入はなくリース債務を差し引いても233億円の現金超過でしたが、2015/6末では約219億円の長期借入を行っており、net有利子負債10億円という状況になりました。
まさに純損失≒FCF分、現金が流出したということでしょうか。
BS的にはまだまだ余裕ありますが、仮に今の業績が続くと3年くらいで債務超過です。
回復の兆しも見えませんし、そろそろGC注記についても意識し始めないと?
3.株価の状況
こんな苦境の日本マクドナルドですが、株式時価総額は本日時点で3,521億円もあります(株価2,648円)。
5年間の株価推移を見てみます。
特に2013年以降、大きく下げている感じはありません。
株主優待に支えられた株価という話はよく聞きますが、この業績でもまだ3,521億円の時価総額とは、恐れ入りました。。
しかし、有報の開示を見ると、株主優待費用といっても年間10億円です。この程度の優待でこの株価、、、なんですね。
ちなみに、日経平均株価の動きと比較してみると、さすがに2014年中頃からかなりパフォーマンスに差はついているようでした。
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ということで、今回はここまでです。
個人的には、アイコンチキンのソルト&レモンの復活が鍵だと思っています、社長。