久しぶりにソフトバンクの話題です。
ソフトバンクがソフトバンクモバイルを含むグループ4社を合併させるそうです。
ソフトバンクウォッチャーとしては、この合併の意味するところがとても気になります。
1.合併の概要
まず、合併の概要から。
合併するのはソフトバンクモバイル(以下SBM)、ソフトバンクBB、ソフトバンクテレコム、ワイモバイルの4社で、効力発生日は2015年4月1日。存続会社はSBMです。
そもそもソフトバンクは持株会社で、日本の携帯事業の中核となる会社がSBMです。この会社は英ボーダフォンから買収した際のスキームにより、モバイルテック、BBモバイルという中間持株会社を経由してソフトバンクが議決権を100%保有しています。
また、ワイモバイルは旧イー・アクセスで、ソフトバンクが株式の99.68%を保有していますが、議決権は1/3しか保有していないという例のスキームの会社ですね。
その結果、合併後のSBMはBBモバイルが75.81%、ソフトバンク本体が24.18%、旧ワイモバイルの少数株主が0.01%保有するという形になります。
2.SBMの連結納税はどうなる?
ソフトバンクの有報によれば、ソフトバンク自身ではなく、中間持株会社のBBモバイルを連結親法人とする連結納税が採用されています。そしてSBMの株式(優先株を含む)は全てBBモバイルが保有していますのでSBMはこの連結納税グループに加入しています。
一方、他の会社に株式の全てを保有される会社は連結親法人になれませんので、BBモバイルには、ソフトバンクグループ(主にモバイルテック)以外の株主が存在することになります。
BBモバイルは2006年のボーダフォン買収時のSPCですが、その際、ヤフー及び英ボーダフォンに第一種優先株、LBOローンレンダーであるみずほ信託銀行に第二種優先株が発行されています。
なので、議決権はソフトバンクが(モバイルテック経由で)100%保有していますが、議決権のない優先株が存在しているわけです。
しかし、ソフトバンクのプレスリリースを追っていくと、英ボーダフォンの保有する第一種優先株は2010年11月に、ヤフーの保有する第一種優先株は2011年1月にソフトバンクが全て買い取っているように思われます。
また、第二種優先株はSBMのLBOローンが返済された場合に取得条項が発動される仕組みとなっていたところ、2011年7月にLBOローンのリファイナンス(通常のコーポレートローンへの借換え)が行われていますので、(明示的には確認できませんが)第二種優先株はBBモバイルが自己株として取得/消却されたのではないかと思います。
しかし、そうすると、2011年の時点でBBモバイルの全株式はソフトバンクに間接的に保有されることとなり、連結納税を続けられなくなっているはずです。
といことで、何故今でもBBモバイルが連結親法人を続けられているのか、よくわかりません。。
但し、少なくとも今回の合併により、SBMにはBBモバイル以外と完全支配関係のない株主が現れることになりますので、BBモバイルの連結納税グループを離脱することになると思われます。(その他の連結子法人が存在するのか(=連結納税が解消になるのか)は調べていません)
3.SBM及びBBモバイルの税務ポジションは?
SBMはもちろん上場会社ではありませんが、上場親会社であるソフトバンクの発行している社債に保証を差し入れていることから、ソフトバンクのIFRSベースの有価証券報告書において、上場会社並みの詳細な情報開示がなされています。
これは今回合併で消滅するソフトバンクテレコムも同様です。
ちなみにソフトバンクの有報は全435ページで、その内、SBMが81ページ、ソフトバンクテレコムが89ページを占めている状況です。
これは日本基準時代には求められていませんでしたので、おそらく会計/開示担当者は相当大変でしょう。この開示事務の負担軽減も今回の合併の目的の1つでは?と思ってしまいますね。
何はともあれグループの中核会社であるSBMの財務情報等が詳細に開示されているわけですから、ちょっと覗いてみましょう。
まず税前利益と法人税等です。
2014/3期は税前利益4,650億円に法人税等▲1,783億円、2013/3期は税前4,640億円に法人税等▲1,728億円です(実効税率は38%程度)。尚、連単倍率は99.9%以上で、ほぼ単体=連結です。
ソフトバンク連結全体での税前利益が2014/3期9,324億円(ガンホー、ウィルコムの時価評価益を除くと6,785億円)、2013/3期7,155億円ですので、グループ全体の60%~70%くらいの利益をSBMが稼いでいることになります。(2014/3期はまだスプリントの税前利益の影響は軽微)
法人税もしっかり負担していますね。
税効果の注記を見ても、繰越欠損金はないようですし、税務上の所得と会計上の税前利益にも特に大きな差異はなさそうです。
また、関連当事者との取引を見ると、BBモバイルへの法人税の支払いというのが、2014/3期1,224億円、2013/3期1,236億円と記載されています。
連結納税においては、国への税金の支払いは連結親法人が行い、連結グループ内の法人税の負担は親法人と子法人の間で精算されますので、関連当事者との取引に親会社との法人税の精算が含まれているのでしょう。
また、連結納税の対象になるのは国税部分だけですので、この時で言えば法人税と復興税で合計28%分です。税前利益との割り算で26%程度ですので、違和感ない感じです。
つまり、SBMの所得はほぼ全額が日本国内で課税される所得で、ちゃんと納税していることがはっきりわかりますね。
また、税務ポジションとは関係ありませんが、SBMからソフトバンクへのブランド使用料の支払いというのもあります。金額はこの2期で398億円、365億円で、ちょうど同社の売上高の2.3%~2.4%くらいに設定されているような感じです。(日本国内とはいえ、連結納税グループ内の取引ではありませんので、ちゃんと合理的な水準である必要は当然あります。)
一方で、BBモバイルの税務ポジションについては開示がないのでよくわかりません。
ただ、SBMからBBモバイルへの貸付金残高が2014/3末で3,490億円あります。これはボーダフォン買収直後のリファイナンス(2006年11月)でSBM自身がLBOローンの借入(1.45兆円)を行い、そこからBBモバイルに貸付けを行い、BBモバイルがブリッジローン(1.17兆円)の返済を行ったという取引に起因しているものと思います。
残高はこの2012/3期には8,000億円程度あったと思われ、この2年間で4,500億円程度返済が進んでいます。BBモバイルの金利負担は2014/3期111億円、2013/3期221億円でした。
これまでもかなりの金利負担があったと思いますが、この赤字はSBMの所得と連結納税で通算することで消化していたでしょうから、BBモバイルに法人税の繰越欠損金はないものと考えられます。
そして金利負担もかなり減ってきたので、SBMが連結から離脱しても悪影響は小さいと判断したのかも知れません。
4.合併の税務上の取扱い
最後に簡単に確認しておきます。
今回の合併はいずれもソフトバンクによる支配関係(50%超の株式保有)がある中での合併ですので、①合併の対価が株式のみで、②ソフトバンクによる支配関係の継続が見込まれ、③被合併法人3社の事業及び従業者の継続が見込まれれば適格になります。
この点、合併の開示資料から①は満たされているようですし、もちろん②も③も問題なく満たすでしょうから、あまり議論はなさそうに思います。ちなみに3社以上の会社が同時に合併する場合の適格要件の判定方法については、国税庁HPに文書回答事例がありますが、今回はこれを検討するまでもないでしょう。
ということで、この観点では特に面白い再編ではなさそうです。
・・・
今回はここまでです。
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