Accounting, Tax and M&A -9ページ目

Accounting, Tax and M&A

会計、税務、M&A等の話題についての分析、雑感、というか趣味の備忘録です。もちろんインサイダーではありませんので、全て開示情報と報道に基づくもので、推測を含みます。暇なときに更新しますので、頻度は低いです。ご了承下さい。


久しぶりにソフトバンクの話題です。

ソフトバンクがソフトバンクモバイルを含むグループ4社を合併させるそうです。

ソフトバンクウォッチャーとしては、この合併の意味するところがとても気になります。


1.合併の概要

まず、合併の概要から。

合併するのはソフトバンクモバイル(以下SBM)、ソフトバンクBB、ソフトバンクテレコム、ワイモバイルの4社で、効力発生日は2015年4月1日。存続会社はSBMです。

そもそもソフトバンクは持株会社で、日本の携帯事業の中核となる会社がSBMです。この会社は英ボーダフォンから買収した際のスキームにより、モバイルテック、BBモバイルという中間持株会社を経由してソフトバンクが議決権を100%保有しています。

また、ワイモバイルは旧イー・アクセスで、ソフトバンクが株式の99.68%を保有していますが、議決権は1/3しか保有していないという例のスキームの会社ですね。

その結果、合併後のSBMはBBモバイルが75.81%、ソフトバンク本体が24.18%、旧ワイモバイルの少数株主が0.01%保有するという形になります。


2.SBMの連結納税はどうなる?

ソフトバンクの有報によれば、ソフトバンク自身ではなく、中間持株会社のBBモバイルを連結親法人とする連結納税が採用されています。そしてSBMの株式(優先株を含む)は全てBBモバイルが保有していますのでSBMはこの連結納税グループに加入しています。

一方、他の会社に株式の全てを保有される会社は連結親法人になれませんので、BBモバイルには、ソフトバンクグループ(主にモバイルテック)以外の株主が存在することになります。

BBモバイルは2006年のボーダフォン買収時のSPCですが、その際、ヤフー及び英ボーダフォンに第一種優先株、LBOローンレンダーであるみずほ信託銀行に第二種優先株が発行されています。

なので、議決権はソフトバンクが(モバイルテック経由で)100%保有していますが、議決権のない優先株が存在しているわけです。

しかし、ソフトバンクのプレスリリースを追っていくと、英ボーダフォンの保有する第一種優先株は2010年11月に、ヤフーの保有する第一種優先株は2011年1月にソフトバンクが全て買い取っているように思われます。

また、第二種優先株はSBMのLBOローンが返済された場合に取得条項が発動される仕組みとなっていたところ、2011年7月にLBOローンのリファイナンス(通常のコーポレートローンへの借換え)が行われていますので、(明示的には確認できませんが)第二種優先株はBBモバイルが自己株として取得/消却されたのではないかと思います。

しかし、そうすると、2011年の時点でBBモバイルの全株式はソフトバンクに間接的に保有されることとなり、連結納税を続けられなくなっているはずです。

といことで、何故今でもBBモバイルが連結親法人を続けられているのか、よくわかりません。。

但し、少なくとも今回の合併により、SBMにはBBモバイル以外と完全支配関係のない株主が現れることになりますので、BBモバイルの連結納税グループを離脱することになると思われます。(その他の連結子法人が存在するのか(=連結納税が解消になるのか)は調べていません)


3.SBM及びBBモバイルの税務ポジションは?

SBMはもちろん上場会社ではありませんが、上場親会社であるソフトバンクの発行している社債に保証を差し入れていることから、ソフトバンクのIFRSベースの有価証券報告書において、上場会社並みの詳細な情報開示がなされています。

これは今回合併で消滅するソフトバンクテレコムも同様です。

ちなみにソフトバンクの有報は全435ページで、その内、SBMが81ページ、ソフトバンクテレコムが89ページを占めている状況です。

これは日本基準時代には求められていませんでしたので、おそらく会計/開示担当者は相当大変でしょう。この開示事務の負担軽減も今回の合併の目的の1つでは?と思ってしまいますね。

何はともあれグループの中核会社であるSBMの財務情報等が詳細に開示されているわけですから、ちょっと覗いてみましょう。

まず税前利益と法人税等です。

2014/3期は税前利益4,650億円に法人税等▲1,783億円、2013/3期は税前4,640億円に法人税等▲1,728億円です(実効税率は38%程度)。尚、連単倍率は99.9%以上で、ほぼ単体=連結です。

ソフトバンク連結全体での税前利益が2014/3期9,324億円(ガンホー、ウィルコムの時価評価益を除くと6,785億円)、2013/3期7,155億円ですので、グループ全体の60%~70%くらいの利益をSBMが稼いでいることになります。(2014/3期はまだスプリントの税前利益の影響は軽微)

法人税もしっかり負担していますね。

税効果の注記を見ても、繰越欠損金はないようですし、税務上の所得と会計上の税前利益にも特に大きな差異はなさそうです。

また、関連当事者との取引を見ると、BBモバイルへの法人税の支払いというのが、2014/3期1,224億円、2013/3期1,236億円と記載されています。

連結納税においては、国への税金の支払いは連結親法人が行い、連結グループ内の法人税の負担は親法人と子法人の間で精算されますので、関連当事者との取引に親会社との法人税の精算が含まれているのでしょう。

また、連結納税の対象になるのは国税部分だけですので、この時で言えば法人税と復興税で合計28%分です。税前利益との割り算で26%程度ですので、違和感ない感じです。

つまり、SBMの所得はほぼ全額が日本国内で課税される所得で、ちゃんと納税していることがはっきりわかりますね。

また、税務ポジションとは関係ありませんが、SBMからソフトバンクへのブランド使用料の支払いというのもあります。金額はこの2期で398億円、365億円で、ちょうど同社の売上高の2.3%~2.4%くらいに設定されているような感じです。(日本国内とはいえ、連結納税グループ内の取引ではありませんので、ちゃんと合理的な水準である必要は当然あります。)

一方で、BBモバイルの税務ポジションについては開示がないのでよくわかりません。

ただ、SBMからBBモバイルへの貸付金残高が2014/3末で3,490億円あります。これはボーダフォン買収直後のリファイナンス(2006年11月)でSBM自身がLBOローンの借入(1.45兆円)を行い、そこからBBモバイルに貸付けを行い、BBモバイルがブリッジローン(1.17兆円)の返済を行ったという取引に起因しているものと思います。

残高はこの2012/3期には8,000億円程度あったと思われ、この2年間で4,500億円程度返済が進んでいます。BBモバイルの金利負担は2014/3期111億円、2013/3期221億円でした。

これまでもかなりの金利負担があったと思いますが、この赤字はSBMの所得と連結納税で通算することで消化していたでしょうから、BBモバイルに法人税の繰越欠損金はないものと考えられます。

そして金利負担もかなり減ってきたので、SBMが連結から離脱しても悪影響は小さいと判断したのかも知れません。


4.合併の税務上の取扱い

最後に簡単に確認しておきます。

今回の合併はいずれもソフトバンクによる支配関係(50%超の株式保有)がある中での合併ですので、①合併の対価が株式のみで、②ソフトバンクによる支配関係の継続が見込まれ、③被合併法人3社の事業及び従業者の継続が見込まれれば適格になります。

この点、合併の開示資料から①は満たされているようですし、もちろん②も③も問題なく満たすでしょうから、あまり議論はなさそうに思います。ちなみに3社以上の会社が同時に合併する場合の適格要件の判定方法については、国税庁HPに文書回答事例がありますが、今回はこれを検討するまでもないでしょう。

ということで、この観点では特に面白い再編ではなさそうです。

・・・

今回はここまでです。





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工作機械メーカー大手のDMG森精機が独DMG Mori Seiki AGをTOBにより子会社化し、同時にIFRSを任意適用するようです。

両社の資本業務提携の経緯を見ると、

2009年に森精機(当時)と独ギルデマイスター(当時)が資本提携(5%持合い)。

2011年に森精機が株式追加取得によりギルデマイスターを持分法化。

2013年に両社社名変更。更にお互いの保有比率を24.3%、9.6%に拡大。

そして2020年までの経営統合を目指す中、親子関係になることを選んだようです。

ということで、会計中心にどんなディールか見てみました。

以下、名前が紛らわしいので、DMG森精機を「DMG森」、独DMG Mori Seiki AGを「独AG」にします。


1.TOBの概要

DMG森は現在独AGを24.9%保有して持分法を適用しており、今般、TOBにより子会社化するとのことです。

TOB取得株数の上限はなし(最大100%)、下限は50%+1株ということで、かなり幅があります。

TOB単価は27.5ユーロ。取得する株数は20百万株~60百万株、為替を135円としてTOB総額は751億円~2,926億円になります。(資金調達は全額銀行借入)

DMG森は年間の純利益が100億円、純資産が1,500億円程度の会社ですので、このTOBは相当のインパクトがあります。

ちなみに独AGは純利益90百万ユーロ、純資産1,100百万ユーロ程度の会社なので、この両社はかなり似たような規模の会社のようです。

尚、独AGの案件公表前の株価は25.7ユーロですが(あまりTOBのプレミアムはありません)、1月11日時点の23.2ユーロから10日間程上昇し続けています。ちょっと気になりますね。


2.子会社化による時価評価益

さて、DMG森は持分法投資である独AGが子会社になりますので、段階取得による時価評価益が計上されます(IFRSも日本基準も同様)。

DMG森の有報を見ても独AGの連結簿価が開示されていませんので、推測してみましょう。

まず単体での取得原価は有報によると361億円です。2009年の5%の取得価額が不明ですが、2011年の追加出資額が199億円、2013年の追加出資額が147億円なので、そんな感じでしょうか。

これに独AGの2012/12期~2014/9期までの純利益持分から配当持分を差し引くとざっくり50億円程度なので、連結上の簿価は415億円と仮定します。

保有株数は19百万株、株価は案件公表前の1月21日時点で25.7ユーロでしたので、為替を135円とすると時価は660億円でした。(ちなみに案件公表により28.5ユーロくらいまで跳ね上がっています)

実際にはTOB終了時の時価次第ですが、TOB価格は27.5ユーロなので、一応これで計算すると時価712億円。

なので、段階取得による時価評価益は250~300億円程度になると思います(税効果考慮前)。

DMG森の年間の純利益が100億円程度ですから、その倍以上の評価益が計上されることになります。


3.投資差額(暖簾)

次にDMG森が抱える投資差額(暖簾)を見てみます。

100%取得ベースで考えると、TOB取得分と既存持分の時価を合計した取得総額は2,926億円になります。

一方、2014/9時点の独AGの純資産(親会社帰属)1,118百万ユーロからBS上の暖簾140百万ユーロを控除すると正味の純資産は978百万ユーロ、円換算で1,321億円になります。

従い、投資差額は1,605億円になり、これが無形資産や暖簾に配分されます。

日本基準だと最大20年償却でも年間80億円の償却負担(税後)ですから、IFRSに移行する意義は大きそうです。

尚、50%+1株取得の場合は投資差額803億円ですね。

ちなみにIR資料では、50%+1株取得の場合、新会社のプロフォーマ純資産が2,200億円とされています。

DMG森の純資産は1,500億円で、買収資金は借入するので本来自己資本は増加しませんが、50%+1株取得の場合、非支配持分が700億円程度発生するので、確かにこれを純資産に含めれば2,200億円くらいでしょうか。

ちなみに独AGが保有するDMG森株式(13百万株、時価180億円)は、買収によって自己株式(非支配株主帰属部分は非支配持分)という扱いになることにも注意が必要です。


4.TOBを踏まえた株価の妥当性

本日、DMG森の株価は1,369円から1,508円に上昇しました。本件が好感されたようですね。

この水準の妥当性をEV/EBITDAで見てみます。

まずEBITDAは直近期でDMG森208億円+独AG261億円で合計469億円です。

Net Debtは、DMG森355億円+独AG▲481億円+両社のNCI170億円+TOB借入2,214億円(100%取得ベース)で合計2,258億円。

これにDMG森の時価総額1,810億円(1,508円ベース。但し独AG保有のDMG森株式を除く)を合わせるとEVで4,069億円。

なので、EV/EBITDAで8.7倍です。

適当な試算ですが、まああまり違和感のない感じですかね。

・・・

ということで、今回はここまでです。

コメダ珈琲の㈱コメダが上場準備と報道されています。

Business Journalの記事がちょっとアレという話も聞きますので、ちょっと見てみました。

1.コメダの買収/上場経緯

同社の沿革を見ると、1968年に創業、2008年4月にアドバンテッジパートナーズ(AP)系のファンドに買収されます(株式78%保有)。

その後、2013年2月にAPがMBKパートナーズ系のファンドに売却します(他の株主も売却し、コメダ株式100%取得した模様)。

ちなみにMBKの買収ビークルだった㈱MBKP3は2013年6月にコメダを吸収合併しています。LBOのDebtをプッシュダウンしたようですが、この辺の詳細は後ほど。

そして今回、MBKのExitに向け上場を企図している、ということのようです。


2.コメダの財務情報

コメダは非上場会社ですが、フランチャイズ契約に係る法規制に従って法定開示書類を開示しており、その中に(かなり簡単にですが)5期分のBS、PLが掲載されています。

直近3期(2012/2期⇒2013/2期⇒2014/2期の推移)でこんな感じです。

全店売上:309億⇒360億⇒421億円
売上高:90億⇒111億⇒160億円
営業利益:23億⇒29億⇒34億円
営業利益率:25.2%⇒26.4%⇒21.5%
経常利益:20億⇒26億⇒14億円

総資産:275億⇒250億⇒514億円
総負債:193億⇒166億⇒378億円
純資産:82億⇒84億⇒136億円

(はい、表じゃなくて見難くてすいません)

営業利益は右肩上がりです。一方、経常利益は2014/2期に大きく減少します。

これはMBKP3との合併によりプッシュダウンされたLBOローンに係る金利負担と思われます(アレンジメントフィーも入ってるかも)。その証拠に、営業外損益の推移は▲3億⇒▲3億⇒▲20億円となっています。

同様に、負債を見ると2014/2期に212億円も急増していますので、ここにLBOローンが計上されていそうです。

一方、総資産も2014/2期に264億円急増しています。こちらはMBK買収時の暖簾ですね。

次にこのLBOローンや暖簾の金額について検証してみます。


3.MBK買収による財務インパクト

MBKが2013/2にコメダを買収した際の買収価額は、Debt込みの企業価値ベースで430億円とされています(報道ベース)。

一方、当時コメダの12%株主だったポッカの開示によれば、ポッカはコメダ株式簿価6億円で売却益が34億円とのこと。つまり売却価額は12%相当で40億円ということです。

これを100%換算すると、株式価値ベースで330億円だったということになります。つまり、企業価値430億円との差額で100億円程度がコメダの既存のDebtと思われます。(ちなみに、2012/2期から2013/2期に掛けて固定負債が112億円減少し、流動負債が85億円増加していますので、長期借入金の返済期限が近付いていたのかな、という感じです)

2013/2期のコメダの純資産は84億円ですから、株式の買収価額330億円との差額の暖簾は246億円になります。ちょうどBSの動きと合ってますね。

また、ちょっとググったところのコメダの決算公告によれば、2014/2期の純資産136億円の内訳は、資本金1億円、資本剰余金145億円、利益剰余金▲10億円です。

MBKがSPCに払い込んだ資本金・資本準備金を取り崩して資本剰余金に振り替えたのでしょうから、払い込んだ総額は146億円と思われます(配当してなければ)。

ですので、SPCの資金調達330億円の内、MBKの資本拠出が146億円、残りは184億円はLBOローンでしょう。これが合併によりコメダにプッシュダウンされたわけですので、こちらもBSの負債の動きと合ってますね。

結果、コメダの有利子負債総額は284億円程度、ということになります。

ということで、資産サイドに暖簾、負債サイドに借入金がどーんと計上される、典型的なLBO型BSです。


4.コメダのValuation

ここはもう深入りしませんが、一応、EV/EBITDAで見てみましょう。

冒頭の記事では「経常利益14億円で企業価値430億円でEBITDAマルチプル30倍」とありますが本当でしょうか?

直近2014/2期の営業利益で34億円です。経常利益との差は明らかにLBOローンの金利なので、当然利払い前の営業利益からスタートすべきでしょう。

減価償却費は冒頭の記事によれば無視できるらしいのですが、暖簾を除いても固定資産は200億円程度あります。加盟店舗数が順調に増えている中で固定資産の規模は変わっていないので、多少の設備投資と減価償却はあるんでしょうかね?

あまりフランチャイズビジネスのBSを勉強もせずアレですが、ざっくり減価償却費5億円としましょう。

そして更に重要なのは、暖簾の償却費も販管費に計上されてるはずだということです。日本基準でしょうから。おそらくこれが営業利益率が下がってる理由だと思われます。

暖簾246億円を20年償却したとして年間12億円(買収後ちょうど1年分計上されたはず)。

これらを加算するとEBITDAは51億円。MBK買収時の企業価値430億円でもEV/EBITDAで8.4倍ということになります。

もちろん、買収時点の2013/2期では営業利益29億円、減価償却5億円とするとEBITDA34億円、マルチプル12.6倍だったわけで、決して安値買いではない印象です。

これって、この1年の実質的な(暖簾償却前の)営業利益はかなり増加したってことなんでしょうか。

ということで、今回はここまでです。

久々のブログ更新。

11月に出ていたヤフー事件の東京高裁判決です。

既に税務雑誌でも触れられている通り、高裁判決は、組織再編税制の趣旨・目的に反するということに加え、N氏のIDCS副社長就任の目的について積極的に言及されているようですが、他にも色々と面白い点もあり、簡単に纏めておきます。以下、高裁判決からの引用は『』で示します。

(事実関係や地裁判決の内容は前にブログで整理していますので今回は省略)

・・・

1.前提事実や条文の解釈の変更はほとんどなし

まず、本件の前提となる事実関係の認定や組織再編税制及び包括否認規定の趣旨・目的等の解釈については地裁判決からほとんど変更はないようです。

強いて挙げると、東京高裁は同族会社の行為計算否認規定である法132条に係る最高裁昭和53年判決に触れ、『法132条の2は、上記(ii)判示のとおり、税負担減少効果を容認することが組織再編税制の趣旨・目的又は当該個別規定の趣旨・目的に反することが明らかであるものに限り租税回避行為に当たるとして否認できる旨の規定であると解釈すべきであり、そのような解釈は「客観的、合理的基準」に従って、否認すべき権限を税務署長に与えているものと解することができるのであるから、上記規定が税務署長に包括的、一般的、白地的に課税処分権限を与えたものであるとは認められず、最高裁昭和53年判決の上記判示を考慮しても、法132条の2の規定に係る上記解釈が憲法に反するものとは認められない。』としています。


2.法人税の「不当」な減少に該当するか

さて、ここが本題ですが、高裁判決は、本件が法132条の2の法人税の「不当」な減少に当たるという結論は地裁と同様ですが、地裁判決の総合勘案部分を全て差し替えており、判示の内容は異なります。

高裁の判示内容を整理するとこんな感じになります(『』部分以外は意訳です)。

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・本件では規模要件は満たせないが、特定役員引継要件を満たせば欠損金の引継ぎが可能。特定役員引継要件は『双方の経営者が共同して合併後の事業に参画しており、経営面からみて、合併後も共同で事業が営まれていると評価できるための指標として定められたものと解すべき』。

・特定役員引継要件を満たすにはN氏のIDCS副社長就任が必要だが、就任したの特定資本関係発生の2ヶ月前。N氏のIDCSにおける職務内容は本件買収・合併の準備又はその後の事業計画に係る業務に限られ、IDCSの業務活動に関与したとは認められないし、N氏は非常勤で代表権も部下も役員報酬もない。更に、N氏が副社長に就任せずともソフトバンク/ヤフーはIDCSに十分な影響力を行使して本件買収・合併を進めることが出来た。

・ソフトバンクにとっては本件は450億円の資金調達手段だったが、その内200億円が繰越欠損金の価値であり、450億円の価値を実現するために特定役員引継要件を満たす必要性が極めて高かった。

・当初から未処理欠損金を余すことなく処理することが1つの目的とされ、その通り実行された。

・税務ストラクチャー上の理由からN氏が副社長に就任したことを示す関係者のメールがあり、また国税当局によるソフトバンクの税務室長からの聴取書に「ヤフーのN社長が旧IDCSの副社長になったのは、私のアドバイスがあったのは確かです」との記載がある。

以上を総合すると、N氏の副社長就任は『控訴人の法人税の負担を減少させるという税務上の効果を発生させること以外に、事業上の必要があるとは認められず、経済的行動としていかにも不自然・不合理なものと認めざるを得ないのであって、本件副社長就任の目的は、専ら施行令122条7項5号の要件を満たして、法57条3項の適用を回避し、同条2項により未処理欠損金額を引き継ぐことで、控訴人の法人税の負担を減少させるという税務上の効果を発生させることにあったものと認められる』。

『仮に上記目的以外の事業上の目的が全くないとはいえないものと認定する余地があるとしても、その主たる目的が、施行令112条7項5号の要件を満たして、法57条3項の適用を回避し、同条2項により未処理欠損金額を引き継ぐことで、控訴人の法人税の負担を減少させるという税務上の効果を発生させることにあったことが明らか』

『これらの点を総合すれば,N氏が本件買収時にIDCSの役員であり、本件合併時にその取締役副社長であることによっても、本件合併において、双方の経営者が共同して合併後の事業に参画しており、経営の面からみて、合併後も共同で事業が営まれているとは認められず、IDCSの上記未処理欠損金を控訴人の欠損金とみなしてその損金に算入することは,法57条3項及び施行令112条7項5号が設けられた趣旨・目的に反することが明らかである』

-----------

確かにN氏の副社長就任の「目的」をかなり意識しているのが高裁判決の特徴のようです。

行為計算否認の適用は「目的」ではなく「結果」次第ではありますが、目的がどうだったのかを検討するのは国税当局や裁判官の心証といったところからもやはり重要なのでしょう。

ただ、「主たる目的」といった文言も出てきますが、主目的が別にあればセーフなのか?という疑問もあります。

また、繰越欠損金の金額の大きさはそれ自体が問題視されているわけではなさそうですし、税務補償条項を盛り込んだ差入書の存在については特に触れられておらず、この辺りは地裁判決より妥当な内容かなという印象です。

そして、更に高裁判決はこう続きます。

『仮に、施行令112条7項5号の特定役員引継要件を充足する特定役員への就任については、原則として法132条の2所定の「これを容認した場合には、(中略)法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に該当せず、上記就任が経済的行動として不自然・不合理であって、仮装的又は名目的な場合に限り、例外的に同条所定の「これを容認した場合には、(中略)法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に該当する旨の見解を採用する余地があるとしても、上記に判示するところによれば、N氏の副社長就任は、控訴人の法人税の負担を減少させるという税務上の効果を発生させること以外に、事業上の必要が認められず、経済的行動として不自然・不合理なものであって、(中略)名目的な就任と認められるのであるから、仮に、上記見解を採ったとしても、(中略)前判示の判断を左右するには足りないのである。』

要するに、個別否認規定である特定役員引継要件について包括否認規定を適用するのは、経済的行動として不自然・不合理で、仮装的又は名目的な場合に限られるという見解を採用したとしても、本件の副社長就任は経済的行動として不自然・不合理で名目的なものだから、いずれにせよ包括否認の対象になるということです。

この辺は地裁判決より一歩踏み込んだ感じですね。

そういう見解を本当に採用して頂いた方がよかった気もしますが。「仮に」と言われても困りますね。


3.副社長就任が包括否認対象の「行為」となるか

この点についても、高裁は地裁の判断を覆しています。

東京地裁は、N氏の副社長就任はヤフーの行為と同視できるとした国側主張を採用することが出来ないとした上で、それでも法132条の2で否認できる行為は、更正を受ける法人の行為に限られず、副社長に就任したIDCSの行為も含まれると判示していました。

東京高裁はこの地裁の判示を覆します。

『N氏の本件副社長就任は、控訴人においてこれを了承しており、控訴人の意思に基づくものと認められるばかりでなく、控訴人がこれを了承しなければ、 IDCSがN氏に対して本件副社長就任を求めることはなく、N氏も本件副社長就任を承諾することはなかったものと認められるのであって、これらの認定を左右するに足りる証拠はなく、法132条の2の適用において、本件副社長就任は、控訴人の行為とも認められる』

結論は同じですが、やはり高裁の方が一歩踏み込んでいますね。

・・・

さて、今回はここまでです。

ヤフーは最高裁に上告しているようですので、引き続き楽しみに待ちたいと思います。


ノジマが携帯販売代理店大手のアイティーエックス(ITX)を買収するようです。

ITXは元々オリンパスが親会社でしたが(2011年3月の株式交換により100%子会社化)、その後、2012年9月に日本産業パートナーズ系のファンドが設立したアイジェイホールディングス(IJH)によって買収されます。

そして今回、2015年3月にノジマが100%株式買収するようです。

なかなか面白いので、2012年の再編から整理してみたいと思います。

・・・

1.日本産業パートナーズによる買収(2012年9月)

(1)ストラクチャー

この時のストラクチャーは以下の通りです。

①オリンパスがSPC(新ITX)を新設
②新ITXに旧ITXが会社分割により全事業を分割(100%グループ内)
③オリンパスが新ITX株式100%を日本産業パートナーズの設立したIJHに売却(2012年9月)
④IJHがSPCを吸収合併(2012年12月)

当時の開示資料を見ると、2012年3月期で、旧ITXの売上高2294億円、営業利益57億円について会社全体と分割対象が同額となっており、全事業の分割であることがわかります。

一方、総資産は会社全体1001億円に対して分割対象751億円、総負債も会社全体624億円に対して分割対象は384億円でした(純資産はいずれも377億円)。

このカラクリは、旧ITXの決算公告を見ると、総資産の内、現預金が218億円、総負債の内、借入金が219億円でしたので、これらの現預金/借入金を分割対象から除いたものと思われます。

なので、実質的に全部分割ということです。

株式買収の対価は530億円。純資産は377億円ですが、決算公告によればこの中にはのれん191億円が含まれていますので、これを除く純資産は176億円。従い、のれんは363億円になります。

こののれんは、その後のIJHによる新ITXの合併により、合併会社の単体BSに計上されたはずですね。


(2)税務上の取扱い

この時の会社分割は、分割法人(旧ITX)と分割承継法人(新ITX)についてオリンパスによる完全支配関係の継続が見込まれず、また新ITXは新設SPCで事業がないので、適格要件を満たさず、非適格分割に該当するものと思われます。

ですので、会計上ののれん363億円と書きましたが、実際には税務上ものれん(資産調整勘定)が360億円程度認識されたのではないかと思います。従い、その後の新ITXにおいて償却による節税効果を享受しているはずです(IJHによる合併は親子間の適格合併で、この償却について特に制限は生じないものと思われます)

5年償却とすると年間70億円程度になります。ちょうどITXの経常利益(のれん償却前)と見合うくらいでしょうか。それもあってか、2014年3月期は経常利益=純利益57億円で、税負担がPLに出ていません。

逆に旧ITXでは事業譲渡益課税が生じるわけですが、決算公告によれば繰越欠損金が100億円程度あったと思われ(税資産から逆算)、これを有効活用したということでしょうかね。


(3)ファンドの投資額

この再編は産活法に基づく経営資源再活用計画の認定を受けていたようです。

その恩典は登録免許税の減免ですが、その資料から、日本産業パートナーズの出資額は167億円だったことがわかります。

買収価額は530億円でしたので、LBOローンが363億円ということになります。このローンは合併によりITXにプッシュダウンされたわけです。


2.ノジマによる買収(2015年3月)

(1)ストラクチャー

ようやく本題ですが、今回のノジマの発表によればストラクチャーは以下の通りです。

①ノジマが買収目的のSPCを設立
②SPCがITX(IJHが合併後に商号変更)の株式を100%買収

ここまでしか記載はありませんが、おそらくSPCとITXは合併させるのではないかと思います。

株式買収価額は513億円、買収費用3億円、ローンの借り換えを含む企業価値ベースで最大850億円とのこと。この全額がノジマ連結ベースで借入金として調達するようです。(2012年の再編では企業価値ベースで530億円でしたので、けっこう価値が上昇しています)

ITXの純資産は2013/3末で172億円、2014/3末で163億円です。(ここからも、日本産業パートナーズの出資額が167億円程度だったことが裏付けられます)

この純資産には既存ののれん残高が300億円程度含まれているものと思われますので、これを除いた純資産は▲140億円くらいになります。

とすると、ノジマの認識するのれんは650億円程度になるということでしょうか。

ノジマは2014/9期末で連結総資産843億円、連結純資産326億円ですので、ここにITXの総資産/負債約1,000億円(内、のれん650億円、借入金850億円)が加わるわけで、とんでもないインパクトです。

尚、ノジマは連結納税を採用していませんし、仮にSPCとITXが合併するとしても適格合併でしょうから、税務的には特段の論点はなさそうです。


(2)日本産業パートナーズの投資採算

さて、上述の通り、ファンドの初期投資額は167億円と思われます。

株主には、日本産業第三号投資事業有限責任組合(48%)の他、在アイルランド、ケイマンのファンド(51%)や個人7名(1%)が含まれていますが、これらを纏めてファンド株主として投資採算を見てみます。

2014年3月期は、ITXの当期純利益が57億円あるにも拘わらず純資産は8億円減少しています。つまり配当等によって65億円程度、ファンド株主への分配が行われたものと思います(実際、A種B種株式への配当が行われている模様。資本金の減少も行われていることから(84億円⇒10億円)、株主分配をし易くしていることも伺えます。)

そして2015年3月に513億円でExitしたとすると、IRRは67%。けっこうしっかり稼いだ感じです。(これに加え2015年3月期分の利益も何らかの方法で分配するのかも知れません)

買収価額から逆算すると借換えが必要となるITXのLBOローンの残高は334億円ですので、当初LBOローン363億円からしても、あまり違和感のない水準ですね。

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ということで今回はここまでです。