******* 注意 *******
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これで麻耶雄嵩さんの作品を読むのは何作目になるのでしょうか・・たぶん15作品目だと思います。
もっとも学生は読者のほぼ全員が経験してなじみもありますし、他の職業は麻耶さん自身が経験してないとなかなかリアルに書けないというのもあるのかもしれません。
そして麻耶さんはご自身の出身地を舞台にした作品を書きたかったんだろうなと思います。
ちょうど伊賀忍者ゆかりの地で松尾芭蕉の生誕の地ですから、題材としては恵まれてますからね。
この本は2018年に発売で麻耶さんの作品の中では新しい部類の単行本でした。
そして同じく比較的新しい2012年発売の「化石少女」が同じく学校モノで女子高生が主役ですが、私の中の印象はだいぶ違いました。
当ブログの「化石少女」での感想は「麻耶ワールドも凝ってきたな~」でしたが、この作品は「麻耶ワールドもかなり洗練されたな~」です。
特にブッ飛んだトリックや世界観があった訳でもなく、女子高生が探偵となり事件を推理するというものなので、私の中での麻耶ワールドのイメージからするとやや物足りないです。
しかし決してつまらないわけではなく面白かったです。
「化石少女」の主人公の構図が”赤点ホームズと腹黒ワトソン”でした。
それに対しこの物語は、あおがももとずっといっしょにいたいがため、ももをワトソン役にしたかったが、最終的には”二人で一人の名探偵”になる道を選びます。
(この時のあおの心の声はけっこうエグい、というか腹黒いものがあります(笑)。)
といってもこれはあおの視点です。
ももの視点、もしくはももの目標はとにかく名探偵になるということで、その目標には必ずしもあおを必要としていない・・というところが麻耶ワールドらしいと言えばらしいです。
もっとも高校一年のももは、探偵なるというのは夢でありますが、あおに比べて探偵としての意識、心構え、推理等が格段に未熟、もっと言えばリアリティのない直感に頼った子どもの発想です。
なのでももがもう少し大人になり現実を受け入れたときに、あおのワトソンに収まるか、はたまた探偵の道を捨てるのか・・もしくはあおを超える名探偵に成長するのか・・そしてその時のももにとってあおはどんな存在になっているのか・・それは神(麻耶さん)のみぞ知るといったところでしょう。
ここからどうでもいいツッコミをします。
最初の「伊賀の里殺人事件」で名古屋在住の正樹が、名古屋に”芭蕉ランド”の建設を計画しているとありましたが、実現したら絶対にコケるでしょう。
正樹は芭蕉を愛しているし、伊賀市出身のももにも俳句愛がありますが、私の出身の愛知県人はみんなが芭蕉愛、俳句愛を持っているわけではないので(笑)。
なにせレゴランドが危ないと言うのに、さらに〇〇ランドみたいなのはもう十分です・・と架空のお話にツッコミを入れてしまいました。
次に過去のミステリー小説の大家をネタしてるのはいいのでしょうか(笑)。
アガサ・クリスティや夢野久作や小栗虫太郎を褒めているようで実はネタにしている気がします。大倉燁子は美人と表現してますが。
しかし小栗虫太郎は探偵の法水麟太郎を「神様仏様法水様」と言っていたりするので、麻耶さんなりの敬意の表し方なのかもしれません。
最後に、もともと麻耶さんの作品の特徴であったと思いますが、探偵役が犯人は誰かを指摘しただけで終わる、犯行の動機は明かされない、その後犯人はどうなったかも明らかにされないものが多い気がしますが・・気のせいでしょうか・・
この作品もそうですが、そういうスタンスなのでしょう。
現実には犯行動機なんて犯人本人にしか分からないことですし、逮捕された後のことを知ることも少ないので、そのへんはリアリティがあります(笑)。
シリーズ化できそうな題材なので次が出たらぜひ読みたいですね。
(個人的評価)
麻耶ワールド ☆☆
麻耶理論 ☆
面白さ ☆☆☆
あおの腹黒さ ☆☆☆