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ご注意ください。
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麻耶雄嵩さんの本も読むのもこれで12作目になります。
寡作な作家と言われるだけあり、未読の本も少なくなってきました。
今までは麻耶さんの本は読みたい順に読んできましたが、これからは古い順に読もうと思いました。そこで現在未読で一番古い作品の「あいにくの雨で」を読み始めました。
読み終わった感想は1990年代後半の麻耶ワールドと言いましょうか・・救いがない終わり方の物語です。
ただ私が思うに、他の作品と比べて実世界を微妙に歪ませた世界観がこの作品にはなく、世界観はあくまで現実の世界に則しています。
ただし登場人物の名前は変に歪めていて、世界は歪んでいないのに名前は変なので、違和感があります。
救いがないラストと書いたのは、事件としては烏兎が解決するも彼らの日常に大きく影を落としながらも、普通の生活をしていかなければならない烏兎たちを思うと読者にモヤモヤしたものを残す後味の悪いものだと思うからです。
麻耶ワールドらしいといえばそれまではですが。
途中が本格ミステリー小説っぽかったため、そこは麻耶ワールドらしくないとも思いました。
なお麻耶さんの作品には珍しくこの物語の主人公の烏兎は友達想いの好感の持てるキャラクターでしたね。
このあたりも麻耶ワールドらしくないところでした(笑)。
ちなみに麻耶さんの本も12冊目になると、普通に物語が終わるはずもないと思い、矢的が犯人だと示されても、「どうせ更なるどんでん返しがあるんでしょ?」と思っていたらその通りでした。
トリックの面ではロープを使ってフックに死体の服を引っ掛けて運んだらその痕跡は残ってバレバレだと思うんですが。
作中でも「証拠があれば警察が回収している」と言われていたしのに、服の糸くずは偽装だから分からなかったにしても、ロープの痕跡は分からなかったのでしょうか。
ラストの告白で獅子丸自身が「ロープを使うなんて下の下だよ」と言っているのは麻耶さん自身へのツッコミでしょうか。
私の中でこの物語の最大の謎は獅子丸の父親が雪の塔の密室をどうやって作ったんでしょうか。獅子丸のセリフで「親父は雪が止んでから、県道を“塔”へ歩いていったんだ」とありますが意味が分かりませんでした。
という事でこの作品においては麻耶理論は弱かった、または私には理解できなかったことが残念です。
両作品でも高校が舞台で、高校内で権力闘争をする生徒が出てきます。また会長派(生徒会)と反会長派(対抗勢力)などの派閥も出てきます。
何にしても私にしてみれば殺人事件に関係している、していないにかかわらず、生徒会の権力闘争の描写は正直面白いと思えないです。そしてこの物語では事件にはほとんど関係ないと思えるので、生徒会の描写の必要があったのかとすら思います。
共通点の二つ目としては、「化石少女」の方が極端ですか、高校生が簡単に人を殺していきます。
そして高校生が殺人をする理由が軽々しいことです。
現実の殺人も、殺人者は大した理由なく殺すものなのかもしれませんが、こんな理由で殺されたのではたまりませんね。
このあたりは麻耶ワールドらしいところではあるのですが。
さてここからはどうでもいいツッコミをしていきます。
だからといって物語の関連性は私には全く感じられませんが・・何か隠れた関連性があったのでしょうか?
次に麻耶さんは生徒会の役員をやっていたとか、生徒会に何か思い入でもあるのでしょうね。
私は生徒会とは無縁な高校生活だったので生徒会の実態というものが想像できませんが、現実に高校では生徒同士の権力闘争があるのでしょうか。
現役高校生で生徒会をやっている人たちに話を聞いてみたいです。
また登場人物の名前では上述しましたが、あまりにも名前が特徴的すぎて逆に分かりにくいです。
もっとも敢えて実在の名前とかぶる事のない名前を選んでいるのかもしれませんね。
それにしても熊野とかいて「ゆや」と読むのは初めて知りました。能の曲らしいですね。勉強になります。
今回は物語の中盤は興味が薄れて読むのが遅くなりましたが、ラストは一気に引き込まれる展開で面白かったです。
麻耶さんもあまりひねらない、そしてぶっ飛ばない新本格っぽい作品が書けるんだと思いました。
(個人的評価)
面白さ ☆☆☆
麻耶ワールド ☆☆☆
途中の展開 ☆
登場人物 ☆☆☆