○○ はじめに ○○
もし「翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件」を未読で、そのうち読みたいな~と思っている方は、この先は読むのをやめて、また他のあらすじ・感想・ネタバレページも見ずに、早く作品を読むことをお勧めします。
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麻耶雄嵩さんの作品を読むのはこれで4作目になります。

 

今までこの作品は購入していても敢えて読むのを後回しにしていました。

 

好きな物は後に食べると同じ心境でしょうか。

 

さて読んだ感想は、麻耶ワールドの始まりを感じました。

 

ですが麻耶ワールド全開ではない・・デビュー作なので当たり前なんですけどね。
なんと言うか・・従来のミステリーを引きずり、そしてミステリーファンや今までのミステリー作品に遠慮しているようにも感じました。

 

しかしデビュー作からぶっ飛んだトリックやひねりすぎた展開は、この頃から麻耶ワールド及び麻耶理論はすでに存在していることを示しているので、なぜかホッとしました。

 

個人的に1番ぶっ飛んだのはメルカトル鮎がいきなり死んでしまったことです。

 

私はこれは何かのトリックだと信じ、そのうちひょっこり現れると思っていましたが・・さすが我らが麻耶さんはそんな期待は全く無視ですね(笑)

 

私の場合、メルカトル鮎を最初に知ったのは麻耶さんの作品の「 」でした。そこでは謎の多い不思議な人物として登場してきて、しかも全てを見通しているような聡明さを感じました。

 

そんな彼が90歳のおばあちゃんに殺されるとは・・メルカトル鮎は「ひさ=絹代=アナスタシア皇女」を見抜いていたと思いますので、見抜いていてなお殺された事が腑に落ちません。

 

ちなみにもしこの作品を麻耶さんの作品の中で1番最初に読んだら、メルカトル鮎のことも、物語のひねりとして変な探偵が出てきてソッコーで死んだな~としか思わないのもしれません。

 

麻耶ワールドらしいのはもう一人の名探偵 木更津に2度も推理に失敗させていることでしょうか。

 

そしてノーマークだった香月が名探偵だったことでしょう。

読者目線で見ると木更津はとってもお茶目でかわいい奴なんですけどすね。

 

そしてインターネット上で”ありえない殺人や密室トリックは何か”というネタで必ずあがる「2人同時に首をはねて、瞬時に一人の首が別の首を切られた体に乗ったことで神経がつながり、そのまま動き出す」というのはこの作品で出てくるんですね。

 

これはトリックというよりただの木更津の妄想でしたが(笑)

 

それにしてもこんな解釈を思いつく木更津は山に篭った甲斐があったということですね!

 

麻耶理論万歳!!

 

なおこの物語の特徴として文章や登場人物たちのセリフが難解でした。

 

歴史、宗教、文学、音楽などの知識を登場人物たちは当たり前のように会話の中に盛り込んできます。しかも行間を読めと言わんばかりに断片的な会話があったりします。特に香月(笑)
 
そして見立て殺人でエラリー・クイーンの国名シリーズは全く分からず、特に裸=スペイン岬は他のネタバレサイトを見るまで理解不能でした。

 

霧越邸殺人事件 」や「重力ピエロ 」でも記述しましたが、登場人物が博学なのは、作者が博学だからであって、その知識を登場人物に語らせているわけです。

 

そこで麻耶さんが博学なのは分かりましたが、この物語の会話は今まで読んだ中で(「ドグラ・マグラ 」以外では)一番難解な気がしまします。

 

綾辻さんや伊坂さんとは違い、私が今まで読んだ麻耶さんの作品では上記のようなことは全く思わなかったんですが・・デビュー作という事で気合が入ったのでしょうか。

 

さて今回も麻耶ワールドを堪能したわけですが、次はどの麻耶ワールドを読もうか悩んでいます。

 

今はまだ思いつきませんが、きっと何ヶ月後には何か麻耶さんの作品を読んでいるのではないでしょうか。そのくらい麻耶ワールドにどっぷりハマッた私です(笑)。

 

(個人的評価)
麻耶ワールド       ☆☆☆
麻耶理論          ☆☆☆☆
メルカトルの存在意味 ☆☆
木更津の面白さ    ☆☆☆