綾辻行人さんの作品はこれで4作目になります。
やはりインターネットでミステリー小説と調べると、綾辻行人さんの作品は必ずヒットするのでどの小説を読もうか考えた時に、館シリーズはあえて外して本格ミステリーを読もうと思い、この本を選びました。
感想は、よく言えば幻想的、悪く言えばミステリーとホラーと耽美のどっちつかずな感じの不思議な物語という印象です。
超常的な何かが存在しているように思わせて、トリックはフェアなミステリー的なものです。
それにしても便乗殺人であったとは驚きました。
それにいきなり彰君が出てきて謎解きをするのもなかなか斬新です。そのせいで語り手の鈴藤は良くも悪くも雰囲気を壊さない空気でした。
この物語ではいろいろ偶然が多すぎです。
そしてそれが物語に重要な意味があるかと思えば、そのほとんどが意味があったのかどうかすら物語の中で示されていませんので、何事にも回答を欲しがる私にはやや消化不良です。
物語でも登場人物と屋敷にあるもの名前について何か本人と符合するものがあるとしきり語られていますが、そのほとんど偶然と片づけられているのはいいですが・・深月にそっくりな美月くらいは設定で使われると思っていましたらこれもなんの言及もなく終わっています。
美月の息子の彰君が「母にそっくりな深月」とさらりと言っているので、たぶん本当に偶然似ていただけと思われます。
煙草盆が壊れる、カトレヤが枯れる、絵が額から落ちる、カインのステンドグラスが割れるは屋敷が人の心を映す鏡だから、犯人の心の中の次なるターゲット(殺される者)を屋敷の中の物にタイミングよく反映させた??
と訳のわからないことが数多く残されたまま終わりますが、綾辻さんが小説ならではのありえない設定をあえて盛り込んで、謎は謎のままにしたのでしょう。
ちなみにガラスの十字の亀裂は、槍中が「十」が「X」になり、ギリシャ文字の「カイ」と読め、「甲斐」が犯人だと示している・・とブチ上げた時は、無理やり感がすごくて電車で読んでいたのですが思わず笑ってしまいました。これは槍中の解釈として記述されていますが、真実はどうなんでしょうか・・
ところで見立て殺人の題材として北原白秋の「雨」が出てきますが、雨ってそんなに有名でしたっけ?
物語の中で当たり前のようにみんな知っているように進むので、全く知らない私が異常なのか不安になりました。そこでどんな歌か検索して聞いてみましたが・・やっぱり私の知らない歌でした。
同じ北原白秋の「あめふり」はさすがに私でも知っている歌でしたが。
そして同じく西條八十の「かなりや」も知りませんでした。
私は同じ日本人として、日本の文化について知らなさ過ぎて恥ずかしい思いです。
私がこの物語に入ったら、槍中や鈴藤とは会話が成立する気がしません。そしてたぶん彩夏のような何も知らない、話をわかりやすくするための疑問を呈するキャラになることでしょう。
巻頭に「もう一人の中村青司氏に捧ぐ」とあったのですが、これは物語の中の白須賀秀一郎のことを指しているのか・・と思ってインターネットで調べたら、綾辻さんの奥様の昔のペンネームらしいですね。
奥様に小説を捧げるとは、粋なことをしますね。
(個人的評価)
トリック ☆☆☆☆
雰囲気 ☆☆☆☆
面白さ ☆☆☆
訳の分からなさ ☆☆☆☆☆