会場となる「LIVE GATE」の場所をチェックしておこうと思い、とりあえず開場の1時間半ほど前に到着したが、地下に続く階段にはもう行列が出来ている。なるべく前の方をキープしたかったので、そのまま待つことにした。私が腰をかけた位置からは、エレベーター前でVRAINのメンバーがプロモーション・ビデオを撮影している様子がはっきり見えた。
※その時の映像がこれ→http://
予定より30分ほど押して開場し、開演時刻になると、ステージを遮るカーテンの横からちびらりの女性シンガーと男性ギタリストが出てきて、前説を行う。この後も二人は幕間のたびに登場し、出演バンドのシンガーを交えながらテレビの歌番組のような楽しい掛け合いを披露した。このような趣向はメタルのイベントとしてはひじょうに珍しいけれど、ライブ活動やアルバム制作などの裏話なども聞けて得した気分になれた。
トップ・バッターは仙台から来たASRA。バンド名の通り、インドの古代神話をコンセプトにしたエキゾチックで変則的なメタルを追求する5人組だ。ちなみにこのイベントに出演したバンドは、どれもシンガーが女性でツイン・ギターという編成だった。
DISK UNIONで特典のDVD-R目当てに買ったアルバム『AHURA MASTER -MARGA-』は、プロダクションの弱さに加え、ヴォーカルの弱さも相まって、独自の世界観を消化し切れていない印象を受けた。しかしライヴでは、じつにオーセンティックなパワー・メタルを聞かせる。音源ではどこか“内向き”な感じがしたものの、MCは意外と饒舌だし、シンガーの表情も豊かだ。
ただ、声の細さは変わらず。どちらかというと、バラード・ナンバーやヘヴィネスを強調したスロー・テンポな曲の方が声に合っている気がする。
続いてLOUD'N'PROUD。このイベントで唯一の男性シンガーのバンド……と思いきや、シンガーは女性だった。失礼しました。でもどう見てもホスト風のイケメン男子としか思えない。
曲調は80年代の「ジャパメタ」の流れを汲む王道スタイルだが、やはりSHOW-YAというよりも44MAGNUMやANTHEMなどに近い雰囲気だ(この辺はよく知らないので正確な喩えじゃないかもしれないけど)。
そしてVRAIN。前任ギタリストNODOICHIの脱退や、栃木県在住のシンガー兼キーボーディストHIROの被災などといったトラブルが重なり、活動休止を余儀なくされていたが、なんと2名のギタリストを迎えて復活を果たした。その第1弾となる前月のライブは、残念ながら仕事の都合で観に行けなかっただけに期待が高まる。
シンセサイザーを導入したサウンドに加え、中世ヨーロッパの貴族と宇宙人が合体したようスタイリッシュなコスチュームで、サイバーパンク的な世界観を体現する自称「ネオ・ドラマティック・サイバー・ハード・ロック」。
ところがHIROのMCは、なぜかこの日にかぎって栃木弁。近未来的な衣装とのギャップが可愛い。
ただ、のっけから新曲2連発、その後もアルバムの後半に入っているマニアックな曲ばかりが続き、『EMERALD』や『SOARING REFRAIN』のような派手なナンバーを期待していた自分にとっては少々肩透かしだった。
おまけにこの日は音の分離が悪く、シンセは元より目玉となるツイン・ギターも視覚的なインパクトに留まっていた。イベント全体を通して機材トラブルも多かったらしく、次回やるときは会場を替えたほうがいいかも。
次は、個人的にはVRAINと並ぶ本日のメイン・アクトMARY'S BLOOD(「マリーズ・ブラッド」ではなく「メアリー・ブラッド」と発音する)。VRAINのTシャツを着て最前列を陣取っていた観客たちが、幕間にいそいそとMARY'S BLOODのTシャツに着替えていた。
女性メンバーを中心に構成される所謂「嬢メタル」は、音楽性は元よりヴィジュアル面も重視するバンドが多いけれど、その中でもMARY'S BLOODは最たるものだろう。メンバー5人全員がアイドルのような美形揃い。それも同じ系統の美女ばかりではなく、ギャル系、妹系、パンク系、癒し系、男前女子と5人それぞれキャラが立っている。加えてコスチュームも、白を基調に統一しながら各々のキャラクターに合わせてコーディネートされており、徹底したイメージ戦略が伺える。
音楽面に関しては、前出のVRAINのようなテクニカル志向とは対極に、シンプルなアレンジで攻める。メタル・バンドにとっては誉め言葉にならないかもしれないが、パンク・ロックに通じる勢いもあり、ライブ向けのサウンドと言える(ちなみに1stシングルの曲は『SAVE THE QUEEN』というが、とくにSEX PISTOLSを意識したわけではないとのこと)。
またMCも控えめで、儀式のような緊張感を演出する。そんな中、シンガーEYEの「女性の強さや人間の尊厳について歌っている」という発言が胸を打った。
ただ、この日は新曲がメインで、音源化されている曲は先述の『SAVE THE QUEEN』と『BLOOD』の2曲しか演奏されなかった。新曲のお披露目はサプライズとしては面白いかもしれないが、元よりライブハウスの劣悪な音環境で曲の良さを十全に伝えきることはできず、盛り上がりに欠ける内容であったことは否めない。私としては、いつもCDで聴き慣れている曲が、ライブではどのような表情を見せるのか……というのが楽しみだっただけに、VRAINと同様、不完全燃焼に終わった感がある。
トリを務めるのは、主催者のちびらり。コミック・バンドのような名前とは裏腹に、正攻法のパワー・メタルで迫る。幕間のトークによると加圧トレーニングで鍛えているというだけあって、とにかくヴォーカルの声量が半端ではない。
ファンたちもグッズの団扇を振り上げてそれに応える。この団扇には歌詞のサビの部分が印刷されていて、一見の客でもシンガロングに加われるように工夫されている。それを読むかぎり、ジャパネスク志向の語彙が陰陽座に通じる世界観もあるけれど、曲調自体はよりキャッチーで気持ち良く首を振れる。
この日はVRAINの新作シングル(ちなみに特典としてメンバー全員のサインが入ったフライヤーが貰えた)やMARY'S BLOODのメンバー全員サイン入りCDなど出費が嵩んだため、あいにく持ち合わせがなくなってしまったが、いずれ音源を入手してしっかり聴き込んでみたいと思わせる逸材であった。

