今年の春にTBS系列で放映されていたTVアニメ『Aチャンネル』のイベント『AチャンネルFes!~みんなで仲良くAしましょ!~』に行ってきた。
日曜日なので本来は何の気兼ねもなく観に行けるはずなのだが、あいにく仕事が入ってしまった。休日出勤を免れた代わりに、翌日は朝4時に起床してこの日の分の作業を片づけなければならない。終電を気にしながら観るライブほど興冷めなものはないが、チケット代を無駄にしなかっただけでも幸いとすべきだろう。
原作は、女子高生の何気ない日常をスタイリッシュな絵柄と独特のユーモアで活写した、いわゆる“萌え系”の4コマ漫画である。主要なキャラクターは教師を除けばほぼ女子で占められており、若干百合的なニュアンスもあるため、個人的には気に入っていた(とはいえ、単行本が出たら買うというていどで、さほど熱心なファンではないことをお断りしておく)。
しかし、私自身が流行に疎いということもあるだろうけれど、巷で評判になっているという話は寡聞にして知らない。深夜帯とは言えTVアニメ化されるという情報を、TwitterのTL上で目にした時には、デマかと思ったくらいだ。しかも、てっきりローカル局でひっそり流れるものと高を括っていたら、TBS系列で全国放送されており、うっかり第1話を見逃してしまったという体たらくである(繰り返すが公式サイトをチェックするほど熱心なファンではない)。
その上、今回のイベントの会場は、なんと日本青年館である。見逃した第1話をチェックするためDVD第1巻を買うと、特典として先行予約のサイトにアクセスできた。マイナー(と言い切ってしまっていいのかわからないが)なアニメのイベントを、これほど大きな会場で開催するというのが珍しいのと、本格的なアニメ・イベントに参加したことがなかった(石丸電気のミニ・ライブなら何度かあるが)ため、貴重な機会だと判断し応募してみることにした。
抽選には通ったものの、席は2階の真ん中ら辺。これじゃあ先行予約の意味ないじゃん、と思いきや、蓋を開けてみれば満員であった。実際のところ、私は『Aチャンネル』を見くびりすぎていたのかもしれない。
さて、当日は秋葉原で途中下車し、メッセージ・ペーパー特典目当ての百合漫画を計2万円ほど買い込んだ。同人コーナーを横目に見ると、ほぼ『まどマギ』一色であるが(森永みるくが描いたのもあった。買わなかったけど)、『Aチャンネル』の二次創作もいくつか出ていた。TVアニメ化を受けて、やはりそれなりに認知はされているようだ。
会場に着いたのは開場30分前であった。そこにはすでに『Aチャンネル』のTシャツやタオル、バッジなどの公式グッズを身につけた観客が大勢待機しており、洋楽ロック・バンドの来日公演のような熱気が漂っていた。グループで来ている人たちも目につく。『Aチャンネル』の私設ファンクラブのようなものがあるのだろうか。
開演時間を10分ほどすぎると、今回のイベントの司会者であるニッポン放送の男性アナウンサーが登場した。客席にどよめきが走るも、リハーサルが長引いているため、これからさらに開演が“押す”のだという。終電のことが頭を占領し、気もそぞろである。
けっきょく本来の開演時間である18時より30分ほどすぎてから、本編スタート。司会者の挨拶の後、ステージ中央からせり上がってくる形で河野マリナが登場し、アニメのオープニング・テーマ『MOURNING ARCH』を熱唱する。この曲を生で聴けただけでも仕事を後回しにして来た甲斐があったと思えるほどの名曲で、爽やかさと切なさが絶妙の配合でブレンドされたメロディーに会場のボルテージもマックスに達した。
続いて、声優陣の中から男性を除く6人の女性が全員登場し、河野を交えてクイズを行う。アニメのシーンをピックアップし、一部分に修正をかけた上で、その隠されている部分をあてるというものだ。正確な回答をするよりも、むしろ回答者の“ボケ”を楽しむといったノリ。ようは初回限定版DVDに特典映像として収録されている特別番組『Aチャンネル+』の拡張版といったところだ。録画もしていたので後日何らかの形でソフト化されるものと思われる。
次に河野が退場し、声優のみで2種類のゲームを行う。まずは作品の中から各キャラクターの印象的な1コマを取り上げ、当該キャラクターを演じる声優が、他の声優がつけた台詞の中からベストとワーストを選んで演じる。それが一通り終わると、声優が3人ずつの2チームに分かれ、各々が作ったカルタを取るというゲーム。
こうした趣向からもわかるとおり、このイベントは『Aチャンネル』という作品より、むしろ声優ありきのようである。実際、声優たちのトークも作品の魅力や印象に残ったシーンなどに言及することはなく、もっぱら楽屋オチに終始していた。また、原作者である黒田bbやアニメ監督の小野学らの出演もなかった(客席にはいたらしいが)。
そう考えると、今回の満員御礼も声優の人気によるものなのかもしれない。なるほど『Aチャンネル』の女性声優陣は、いずれもアイドルとしてもじゅうぶん通用するほどのルックスとキャラクターを備えている。
とはいえ声優ファンの方々には申し訳ないが、私にとって声優はあくまでも裏方であり、水樹奈々クラスの大物を除けば特に関心の対象ではない。顔と名前すら一致しないくらいである。あくまでも「作品」のファン(とはいっても先述のとおりあくまでもライト・ユーザーだが)である私としては、会場の熱気がどこかアウェイなものに感じられたのが正直なところだ。
もっとも、退屈だったわけではけっしてない。イベントの最後を締めるのは、やはり音楽。取り分け『Aチャンネル』は、なんと全13話の各エピソードごとに異なった劇中歌を設け、4名の主要キャラクターがソロで、あるいは複数名で歌うという豪華な試みに挑戦している。それもいかにもなアニソン調だけでなく、演歌、テクノとバラエティに富む。
イベントでは、もちろんそれらの曲も披露された。さすがに全曲とはいかないが、メドレー形式ではなく各曲ごとにフル・コーラス歌われるところに、このアニメにおける音楽の重要性が示されていた。
加えて、主要キャラクター4名にはそれぞれのイメージ・カラーがあり、持ち歌を披露する声優が交代する度、観客はそれぞれの色のサイリウムを持ち換えて振っていた。私はと言えば、入場の前に物販で購入した赤いサイリウム1本のみだったので、少し心許ない。
ラストは、4人で歌うエンディング・テーマ『ハミングガール』。他の曲でもそうだが、アイドルのような振り付けがあり、とくにこの曲は4人の動きを合わせるため入念なリハーサルが施されたそうだ。開演の遅れもそれが理由らしい。
演奏終了後、感極まって泣きじゃくる声優も。【トオル】役の悠木碧だ。「観客の表情をしっかり見ておきたくて初めてコンタクトを入れた」とも語っていた。そんな悠木はこの日、初めて人前で歌い踊ったとのことだが、まったく気にならなかった。パフォーマンス自体の良さもさることながら、たんに声を当てるだけにとどまらない声優という職業のハードルの高さと、それを難なくこなしてしまう彼女たちの実力とプロ根性に感服した次第である(相変わらず名前は覚えられないが……)。
3時間に及ぶ長丁場のイベントが、ようやく終わったかと思いきや、会場全体からアンコールの声が。まだ退出するわけにはいかないようだ。ううむ、終電が気になって仕方がない……再開までの時間が苛だたしく過ぎていく。
じらすかのように3分ほどの時間が経った後、ステージ後方のスクリーンにアニメが映し出される。OVAとして発表される続編を告知するものだ。番組終了から数ヶ月も経った中途半端なタイミングでイベントを開催した意味が、ようやく理解できた。
そして司会者に導かれ、会場で販売されていた水色の特製Tシャツ(主要キャラクター4名をシンボライズしたイラスト入り。先述のサイリウムにも同じイラストが入っていた)に着替えた6名の声優と河野が登場。ふたたび『MOURNING ARCH』。基本的には河野の独唱だが、サビを全員で歌うスペシャル仕様だ。
炸裂するパイロと共に銀テープが飛び交う中、華々しくイベントは幕を下ろした。客席では三三七拍子も上がったが、余韻に浸る間もなく駆け足で信濃町駅へと向かう。幸い終電には間に合い、私の長い一日も終わった。