FOMCの背景&結果
3/20FOMCは、非常に関心が寄せられた割りに無風に近い結果となりました。これは、ちょっとした驚きです。もう少しタカ派に向くかと思ったところ、タカ派色を消すというサプライズでした。強かったCPIやPPIについて、季節的(一時的)要因と片付け、とくにタカ派へ向く材料としていません。
注目されていたQTテーパリングも「近いうち始める」と述べるのみで、具体的には何も述べていません。
何より、去年12月に「2024年に3回の利下げ」を示唆した金利ドットプロットを、減らさずに維持しました。このため、2024年にあと6回あるFOMCうち3回で利下げが行われる公算となっています。1回目の利上げ時期が今後の論点になるでしょう。
下記linkは「事前予測」の記事です。事前予測がどれだけ合っていたか?答え合わせができます。重要なポイントは全て当たっていたと思いますし、ハト派へ傾くサプライズシナリオも想定できていました。満点に近いと思います。
FOMC結果
結果は、12/13FOMC(前回)と打って変わり、極めてタカ派のメッセージを発信しました。
事前予測にも書きましたが、確かに直近の経済データは強くファンダメンタルは良好でした。またスエズ運河など地政学リスクを踏まえると、インフレリスクも存在しています。
しかし、それでも低水準まで下がったPCEコアデフレータ(インフレ率)を踏まえると、目先の利下げはともかく、利下げ示唆をもう少し強くしても良かったとも感じます。FRBのインフレ恐怖症が再燃したという事でしょう。
ただ、「3月の利下げ可能性は低い」と述べた一方で、「利下げの必要性」には触れています。中期的な利下げを肯定もしていますから、必ずしもドル買い要因にはなりませんでした。ファンダメンタル分析では重要なポイントです。
FRB経済予測&金利ドットプロット
2024/3/20FOMCで発表されたデータです。
FRB経済予測 ()は前回9月の予測値
金利ドットプロット
FRB経済予測は、経済成長(GDP)が情報修正、失業率はやや下方修正、PCEコアデフレータが上方修正されています。インフレデータが上方修正された中、利下げ予定は維持されている矛盾があります。この矛盾をどう説明するか?今後の論点になるでしょう。
FRBは経済状況について、不透明感が強いと述べていますから、判断が難しいポイントでもあります。
金利ドットプロットは、2024年に3回の利下げ予想が保持されました。今回最大のサプライズでしょう。2025年の利下げ予想は1回少なくなりタカ派予想ですが、ひとりだけ極端な意見を持った人(超タカ派)がいるため平均値を押し上げています。ヘアカット値(上下から2人ずつ排除して求める)では、予定通りの利下げになる見通しです。
金利予測
3/20の金利予測 FOMC前
3/21の金利予測 FOMC後
FOMCを受けて、金利予測は次のように変化しています。一言にすると、早期利下げの確率が再上昇したと言えるでしょう。6/12FOMCの利下げ確率は急上昇。マーケットはハト派と捉えているのがよく分かります。
パウエルFRB議長
FRB声明文&パウエルFRB議長の会見内容の要旨です。
❏パウエルFRB議長
「FEDは引き続き二重の責務に真剣に焦点を当てる」
「インフレは大幅に緩和したが、依然として高すぎる」
「FEDは引き続き2%のインフレ目標にコミット」
「FEDの目標達成に対するリスクはよりバランスの取れた方向に向かう」
「成長見通し上方修正は、労働力供給を含めた指標を反映」
「移民が成長見通しを押し上げた」
「労働需要は依然、利用可能な労働者の供給を上回っている」
「長期的なインフレ期待は依然としてしっかりと安定しているようだ」
「政策金利はサイクルのピークに達する可能性が高い」
「今年のある時点で緩和を開始するのが適切」
「FEDは会合ごとに決定を下し続ける」
「FEDは本日バランスシートに関していかなる決定も下さなかった」
「バランスシートの縮小ペースをかなり近いうちに減速させるのが適切」
「経済状況は良い」
「インフレ鈍化で十分な進展続く」
「資産ランオフのペース減速、比較的早期開始が適切に」
「家賃上昇率の低下はインフレに反映されるが、いつになるかは不透明」
「商品価格の下落はそれほど早くないと予想」
「リスクは性急な利下げと、利下げ遅れの両サイドにある」
「インフレデータには季節的影響がある可能性」
「2%へのインフレ低下に向け平たんではない」
「2%へインフレ率が低下する指標をもっと確認したい」
「インフレ率の低下や雇用統計の弱さが利下げを促す可能性」
「金利が長期的に高くなるかどうかは分からない」
「金利は非常に低い水準には戻らない」
「長期金利がこれまで考えられていたより高くなるかどうかは分からない」
「長期的な金利水準見通しの変更は非常に小幅」
「昨年の低インフレのデータを裏付けるデータを探している」
「雇用が堅調であること自体は利下げを遅らせる理由にはならない」
「金融情勢が経済の重しとなっている」
「インフレ率は時々上下するが、緩やかに下がる」
「今年上半期のインフレ率が若干高くなるのは通常のことだ」
「FEDは自らの方針を堅持しなければならない」
やはり衝撃だったの「3月利下げの可能性が高いとは考えていない」の文言でしょう。これを受け、長期金利とドルは急騰し、株価は急落しています。
ドル相場見通し&論点
ドル/円見通し
Fundalia(ファンダリア)が考える、一般的なドル見通し(ドル/円基準)は『中長期的にドル安になる確率が上がった』となります。先ほども書きましたが、現在が山頂ですからあとは下り坂しかありません。つまり利下げを前提としたポジションが組みやすい相場観になったと言えます。
ただ、目先に阻害要因(主にインフレ高騰)が入り込んでいて、ドル安へ向かう流れを妨げています。この阻害が続くのか、止まるのか?これでトレンドは変化していくでしょう。
今しばらく円安ドル高は続きそうですが、あといくつか(円サイドの条件も含め)歯車が揃えば一気に円高へ相場観が動くでしょう。6月利下げ論を肯定するファンダメンタル情報が増えれば、ドルは自然と売られます。
FRB要人が「インフレを退治するにあたり、やるべきことがある」と言っているうちは、利下げに動いてきません。こうした文言が減っていく中で、利下げ確率はあがっていくでしょう。その時期が早くなるか、遅くなるか?これはパウエルFRB議長も分からないと言っています。
データの変化を確認するしかありません。
ただ、FOMCによって相場観についてはかなり整理がついた状況になったのは間違いありません。
リスク要因
徐々に利下げへ向かっていくのが基本路線ですが、これを阻害するリスクはいくつもあります。
1. アメリカのインフレ上昇が季節要因でなく、トレンドになる場合
2. 商業不動産が、金融危機に転化していくリスク
3. トランプ氏が大統領に近づくにつれ、彼の公約の影響で相場が動くリスク
主にこのようなものがあります。
報道などでよく確認して、考察しておきましょう。
記事は以上となります。
Fundalia(ファンダリア)
2024/3/21
ホームページへはこちらからどうぞ