まず、今回のようなFOMCに関する相場が、今後10回程度確保されるという認識が必要です。FRBは、2022年に7回の利上げを示唆(つまりあと6回)しました。また、この相場が繰り返されるという事です。それを踏まえて解説をお読みください。
〖声明文&パウエルFRB議長会見〗
◆米連邦公開市場委員会(FOMC)声明
「経済活動と雇用の指標は引き続き強化されている」
「ここ数カ月の雇用増加は力強く、失業率は大幅に低下した」
「パンデミック、エネルギー価格の上昇、価格圧力の拡大に関連する需給の不均衡を反映」
「インフレは引き続き上昇している」
「米国経済への影響は非常に不確実だが、短期的にはウクライナ侵攻と関連する出来事がインフレにさらなる上向きの圧力を生み出し、経済活動を圧迫する可能性がある」
「委員会はFF金利の目標範囲を0.25-0.50%に引き上げることを決定」
「目標範囲の継続的な引き上げが適切であると予想」
「今後の会合で米国債およびMBSの保有削減を開始すると予想」
「委員会の評価は、公衆衛生に関連する情報、労働市場の状況、インフレ圧力、インフレ期待、金融と世界の動向を含む幅広い情報を考慮する」
「ブラード米セントルイス連銀総裁は0.50%の利上げを主張」
◆パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長
「インフレは2%に戻ると予想」
「ウクライナ戦争は米貿易、供給への波及効果を生み出す可能性」
「リセッション確率は特に高まっていない」
「インフレは今年半ばまで高いと予想」
「原油の影響で短期的には上向きのインフレ圧力」
「経済は非常に強い」
「委員会は利上げとバランスシート縮小の時が来たことを認識」
「基本的な責務は物価安定を取り戻すこと」
「バランスシート政策についての発表は早ければ5月になる可能性」
声明文およびパウエルFRB議長会見から得た情報で、最も重要なポイントは3つあります。
「短期的にインフレ率は上昇する」(ドル買い要因)
「量的引締め(QT)が春の終わりにも始まる」(恐らくドル売り要因)
「かなり強きに利上げを実施する」(ドル買い要因)
ドル相場は、上記3つの論点によって今後は値動きしていくでしょう。その中でも重要なのが量的引締め(QT)の動きです。まだ織り込みが進んでいないことに加えて、強烈なリスク回避要因となる可能性があるでしょう。
〖量的引締め(QT)が始まるとどうなる?〗
量的引締め(QT)とは何なのか?そして相場にどう影響するのでしょうか?この点を考察します。まず、量的引締め(QT)がどういった効能を持っているか考えて見ましょう。
❶ 長期金利が上昇するため、ドルが買われやすい
❷ 住宅価格が下がるため、住宅市況が悪化する
❸ 住宅ローン金利が高騰するため、住宅市況が悪化する
❹ 金利高騰に耐えられず、株価が急落する
❺ インフレ率が下落に転じる(2022年後半)
主にこのような事態が想定されます。最も重要なのは長期金利の高騰です。長期金利の高騰自体はドル買い要因ですが、金利が急騰するならば景気にショックが走りリスク回避要因となるでしょう。このシナリオに至る可能性は十分にあります。
とくに住宅ローンを変動金利で組んだ消費者は、大きなダメージを受けることが予想されます。家を買って4000万円相当のローンを組み、単純計算で1%金利が上がったならば年40万円の負担増となり、30年で600万円の金利負担増となります。米国ではすでに住宅金利の高騰が始まっており1.5-2%上昇したとされます。ここからさらに1-2%上がるとなれば、当初想定より数千万円相当支払いが増えるでしょう。
消費に回るお金が少なるなり、あるいは延滞者・自己破産が増えていく計算になります。
企業も同じで、事業資金の借入金利が急騰する為、借り入れが難しくなるでしょう。業績悪化の要因となります。つまり、株価が急落する恐れがあります。2022年1月下旬に、大きな株価調整がありましたが、金利水準が早い速度で上昇すると、アレを上回る大規模調整を体験することになるでしょう。
ただし結果として、インフレ率の高騰は収まっていきます。
FRBの目標は「インフレ率と雇用の安定」であって、「株価の安定・上昇」ではありません。そういう事なのです。
〖量的引締め(QT)の開始が早まる可能性〗
FOMCでパウエルFRB議長が5月にも始める可能性を示唆しました。2月には、年後半に実施する予定と示唆していましたから、数カ月早まる事を考慮しなければなりません。これは織り込まれていませんから、そうした相場に今後なっていくでしょう。
【豆知識】量的引締め(QT)とは?
量的引締め(QT)は、保有資産の売却です。FRBはコロナショックを受け、月1200億㌦の国債・証券を買いまくりました。FRBの貸借対照表(B/S)には9兆㌦もの資産があるそうです。しかし、これらの資産をFRBが保有することは不自然な事(異常事態)です。ゆえに、FRBは保有資産を市中に売却したいと考えます。これがQTです。
よく比較されるテーパリングは、買い入れの額を減らす(B/Sは増え続ける)行為です。QTは資産を減らす行為です。
FRBが国債を売れば、国債価格(株価のようなもの)は当然下がります。一方、長期金利は上昇します。長期金利が上昇した時に相場がどうなっていくのか?これを知っておく必要があるでしょう。
リーマンショック後の量的引締め(QT)(2017/12~)では、米国株が大暴落していますから、当然今回も備える必要があります。当時、30%強の暴落と20%の暴落が1年の内に2回発生しました。
ダウ平均(月足) 囲み部分がQT期間
今回も当然ながら想定されます。
FRBはこの暴落が生じた状況を、間もなく始めるとFOMCで示唆したのです。
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