みなさん こんにちは。
11月29日から12月1日まで、東京で日本肺癌学会が開催されました。
何回かに分けて、そのレポートを出していきます
今回は、光免疫療法の2回目。
アメリカ国立衛生研究所(NIH)の小林久隆先生の講演を、Sさんがレポートしてくれています。Sさんの渾身のレポート、ぜひ、読んでくださいませ。
1月26日東京・2月2日大阪
おしゃべり会の情報もついています~
【はじめに】
医学的には素人である筆者が、走り書きのメモと記憶を頼りに、わからないことはネット等で検索したりしながらまとめたレポートであり、細かい表現・言い回し等は、実際のご発言とは違う場合もあります。
また、筆者の聞き間違いや勘違い、知識不足のせいで、医学的に誤った記述が含まれている可能性もある事をご理解いただきますようお願いいたします。
【肺癌、その他への応用】
内視鏡に光ファイバーを通して光を当てることが可能。
マウスのお腹の中でも6mm径の細い内視鏡でやっているので、肺癌への応用は技術的に難しいものではない。
EGFRに限らず、他の抗原をターゲットにした抗体を使うことも可能である。
【Treg細胞を壊して免疫機能を強化】
がん細胞の周りには、免疫細胞ががんを攻撃するのを邪魔するTreg細胞(制御性T細胞)が多く集まっている。このTreg細胞の表面にあるCD25という抗原にくっつく抗体とIR700とを結合させた薬剤を使って、肺癌の細胞を2か所に埋め込んだマウスの、1か所のみに近赤外線を当てて、Treg細胞を壊していく。するとTreg細胞の邪魔がなくなり、免疫が強化されて、1日程で照射した方のがん細胞がなくなる。そして活性化された免疫細胞が全身を回って、近赤外線を当てなかった方のがん細胞も消えていった。
さらに、4か所埋め込んで1か所のみ照射した場合でも、4か所すべてのがん細胞が消えた。
肺癌と大腸癌という2種類の腫瘍を1匹のマウスに埋め込み、肺癌の細胞のみに照射した場合は、肺癌は消えるものの、大腸癌の細胞にはほとんど効かなかった。
このことから、この治療法では、かなり正確にがん細胞の顔つきを記憶して、遠隔転移している同種のがん細胞のみに作用することがわかった。
そのためダブルキャンサーには効かないが、自己免疫疾患のような副作用も少ないのではないかと考えられる。
CD25によってTreg細胞を壊すのと同時に、CD44という抗原にくっつく抗体を用いてがん細胞を壊すと治療効果が高まる。
両方同時に壊すということが大切で、一つずつやった時にはあまり効果が見られなかったがん細胞に対しても、同時にやれば効果がある例も多くあった。
また、CD44抗体を使って、Cancer Stem Cell(がん幹細胞)を壊すことも可能である。
マウスの実験においては、かなりの割合でがんを治すことができるようになってきており、これを臨床に応用していくのが今後の課題である。
【医療経済的視点】
小林先生のラボは、研究者・技術者合わせても10名弱で、高額な予算でなくても研究が進められるレベルであり、もしこの先実臨床の段階まで進んでも、とてもシンプルな治療法なので、医療経済的に見ても十分実現可能であると思われる。
【質疑応答】
①PDT(光線力学療法)では、この治療ほど免疫を強化する効果が出ていないが、何が違うのかという質問がありました。
小林先生自身もPDTについてはかなり比較研究されたそうで、非常に専門的なお答えだったので、詳しくは理解できなかったのですが、PDTとは細胞の壊れ方が違うようです。
「PDTは活性酸素によって色々な形で細胞を壊すのに対して、光免疫療法では、細胞膜だけを物理的に壊すので、中の分子やDNAがきれいな状態で出てくるからだと思われる」というような意味のことを答えられていたように思いますが、全然違っていたら申し訳ありません。
時間がかなり押していたこともあり、座長の楠本先生が「PDTも素晴らしいが、この治療はもっと素晴らしいということで。」と半ば強引に締められました。
②第2相試験で、自己免疫疾患などは見られなかったのかという質問。
「がん細胞をきれいに壊すと、中から出てくるDNAやたんぱく質も、ピュアな形で出てくるからだと思われるが、自己免疫疾患などは起こっていない。」とのことでした。
最後に座長の楠本先生が、「今日この会場にいるドクター達が協力して研究を重ね、10年後か20年後には肺癌で実用化させてくれることを期待します。この講演がそのきっかけになればうれしいです。」という言葉で終了となりました。
【感想】
上では触れてませんでしたが、ご講演の中で、三木谷氏から「単純すぎて面白くない治療法」と言われたのに対して、「確かに注射して光を当てるだけなので、科学的には面白くないかもしれないが、化学的にはエレガントである」と返したそうです。この治療に対する、小林先生の自信と誇りのあらわれではないかと感じました。
素人ながらにも、もし臨床応用が上手くいくとすれば、効果は高く、副作用は少なく、コストは低いという実に素晴らしい治療法だと感じました。もうすぐ始まる頭頚部がんの国際第3相試験で良い結果が出て、ぜひ標準治療になってほしいと思います。そして、楠本先生の仰っていた10年後・20年後ではなく、もっと早くに肺がんやその他のがんでも実用化されてほしいと切に願います。
この治療法以外にも、世界中の研究者が様々な治療法を研究していると思います。研究者や関係者の方の非常に多くの時間、努力、熱意、そして資金が費やされていること考えるととても感慨深く、尊敬と感謝の念を持たずにはいられません。将来がんが治る病気になる日もやってくるかもしれないという期待を抱きつつ、現在の自分自身の治療にしっかりと取り組んでいこうと改めて決意いたしました。
最後に、このような素晴らしいご講演を拝聴する機会を与えて下さった日本肺癌学会に、心より御礼申し上げます。ありがとうございました。
▼おしゃべり会 1月26日 東京!五反田です
今回の参加資格は、患者と家族のみです。
■申し込み(※WEBで参加する場合)
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSe9DlkBLBfJajWaAzq2d5lLVER6db9gcRxGiTgnznF19EdIgA/viewform
※WEBでの参加はテレビ電話システムを使用します。直接参加する場合と同じく、名前の入力が必要です。みなさんが、WEBを使って、おしゃべり会に参加するという形になります。(いわゆるWEBセミナーのような、一方通行ではありません。)もちろん、参加した方のみの限定です。
(大阪は直接参加のみです。WEBはありません)
申込フォームに、困りごとや、みんなどうしているの?と思うこと、書く欄を設けました。それをもとにして、みなさんでおしゃべりします~。