3.インフレーション理論の実証について
インフレーションがどのように起こるかを完全に説明出来る理論はまだ無いらしい。また、我々の世界が何次元で構成されているのか、詳しいことも未だ分かっていない。我々は、4次元時空(時間+空間3次元)よりも大きな時空間の中にいる可能性もあり、それも現代物理学で考えられる非常に興味深い内容である。素粒子論的宇宙論の立場ではインフレーションはインフラトンと呼ばれるスカラー場のポテンシャルエネルギー(宇宙が膨張してもエネルギー密度は変化しない)を用いて引き起こすと考えられています。
インフラトンとは、宇宙のインフレーションを引き起こした場のこと。インフラトンの揺らぎが今日の宇宙に見いだせる多様な構造を作り上げたと考えられている。インフラトンの正体ははっきりしていないが、ダークマター、ダークエネルギーとともに、その正体の解明は宇宙論において重要となると考えられている
■宇宙背景放射のゆらぎから実証
インフレーション時期には、宇宙はほぼ一定の膨張張率で加速膨張し、空間の2点間の距離は時間とともにに指数関数的に増大します.上記で述べたように標準的なインフレーション理論では,インフラトンと呼ばれるスカラー場のポテンシャルエネルギーによって膨張が引き起こされます。インフラトンが振動し始めると、この加速的な膨張は終わり、インフラトンのエネルギーが熱に転化されて、熱いビッグ・バン宇宙が生まれます.
このインフラトンは量子力学的にゆらいでいるため、場所ごとにインフレーションの終わる時間に僅かな違いが生じます。インフレーションが早く終わると、エネルギーが早くから減少するため、エネルギー密度が小さくなります。逆に、遅く終わるとエネルギー密度は大きくなります。このエネルギーのバラツキがどのように起きるかは素粒子の世界の法則で決まってしまいます。そして、そのばらつきは、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)に温度のゆらぎという形で刻み込まれるのです。実際に、このゆらぎは、1992年にCOBE衛星によって観測され、さらに2003年のWMAP衛星による観測で決定的となりました。インフレーション理論が大成功した証しです。すなわち、量子的ゆらぎを引き延ばすインフレーション理論で推測された強弱のゆらぎ大きさと位置が実測値と一致していたことで、広くインフレーション理論が認められるようになりました。
理論的には、観測できる最古の光だとされる「宇宙背景放射」に現れた特殊なパターン(模様)から、間接的に「インフレーションの痕跡」を見つけ出すことができると考えられています。宇宙誕生のときに発生した重力波が宇宙背景放射にぶつかり、そこに独特の渦巻き模様を作り出しているはずだというのです。渦巻き模様が見つかれば、強力なインフレーションの証拠となります。世界では、この痕跡を探そうという観測プロジェクトが10以上もあります。
■重力波の検出による実証
インフレーションほどの急膨張であれば、巨大な星の爆発など、質量を持った物体が運動するときに生じる時空の歪みを光速で伝える「重力波」が生じるはずです。しかし、地球に届く重力波は極めて微弱で観測は困難を伴います。
背景重力波となるものに,白色矮星の合体,宇宙初期の相転移,インフレーションなどを起源とする重力波がある.インフレーション起源の重力波は振動数によらないエネルギースペクトルをもち,宇宙背景放射(CMB)のゆらぎと矛盾しないために,観測的に非常に小さい値に制限されている。従って,現在の重力波観測装置では検出が難しいが,DECIGO や LISA などの宇宙重力波観測計画での検出が期待されています.