(1)自然界に働く4つの力
物質が、クォーク、レプトンからできていること、そして、それを支配しているのが「電磁気力」、「強い力」、「弱い力」と呼ばれる4種類の力であることが分かりました。しかもこれらの力は全て力の粒子を交換することによって働くことが分かったのです。
■「電磁気力」は、電力や磁力のこと。ものを触るときにも電磁気力が働いています。私たちの体や物質は無数の原子からできていて、中心にある原子核の周りを電子が回っています。私たちが何かを触るとき、マイナスの電荷をもつ電子同士が反発していて、実際には手と物質の間にわずかな距離があるのです。
■物質を作る「強い力」、粒子を変化させる「弱い力」電磁気力は原子核(+)と電子(-)を結びつけて原子を作るときも働いています。この原子核の中には、陽子(+)と電荷ゼロの中性子があります。陽子が複数あるとき、反発しようとする電磁気力よりも強く働き、原子核がバラバラになってしまうのを防いでいるのが「強い力」です。この力は、クォークという素粒子を結びつけて、陽子や中性子を作るときにも働いています。その名の通りとても強い力ですが、働く距離が非常に短いので、日常の世界で感じることはありません。
「弱い力」は電磁気力よりも弱いため、こう名付けられました。この力も普段感じることはありませんが、原子核のベータ崩壊を起こすなど、さまざまな粒子を別の粒子に変化させる重要な役割を果たしています。
■力を伝える素粒子
これらの「力」は、素粒子が伝えています。電磁気力は「光子(光)」、強い力は「グルーオン」、弱い力は「Wボソン」と「Zボソン」です。(重力は「重力子」が伝えていると考えられていますが、まだ見つかっていません)。このような「力を伝える粒子」を物質粒子が投げ合うことで、力が働いているのです。「弱い力」が非常に弱いのは、『Wボソン』『Zボソン』が非常に重く(陽子80~90個分の重さ)、投げることが難しいため」と考えることができます。
(2)力の分化の経緯
素粒子の統一理論では、四つの力はプランクエネルギーと呼ばれる 10 19 GeV以上の超高エネルギーではもともと一つの力だったと想定されています。この力が宇宙の進むにつれてまず重力と大統一力(電磁気力、弱い力、強い力)に分かれ、次に 10 16 GeV程度で大統一力が電弱力と強い力に分かれ、100GeV程度で最終的に電弱力が弱い力と電磁気力に分かれて現在の宇宙にみられる4つの力となった。最初の力の分化の詳細についてはわかっていないようですが、大統一理論によると、強い力と電弱力の分化と弱い力と電磁気力の分化は、真空のヒッグス粒子が真空に凝縮して真空の相転移を起こすことが原因と考えられている。?
ビッグバンによって宇宙ができた直後、素粒子には質量がなく光速で飛び交っていたが、宇宙が膨張・冷却する過程で真空の性質が変化した。 この変化が真空の相転移で、ヒッグス粒子が凝縮して真空に満ちることで素粒子が動きにくくなったことにより質量をもつようになった。
(3)力の分化と自発的対称性の破れ
「自発的対称性の破れ」という現象があります。高エネルギーの状態では、高い対称性が実現しています。それはさながら、鉛筆を尖った芯を下にしてテーブルに立てて、手を離しても立っているようなものです。これは、垂直に立っているとすると、真っ直ぐに直立していて、前後左右、全ての方向に対称的です。不安定なハズですが、高エネルギーがそれを実現しています。四方八方から、支えが来てるようなものです。それが宇宙の初期状態で、四つの力が一つになって対称性が高いのです。しかし、エネルギーが下がってくると、鉛筆は傾いてきます。これで一つ、対称性が破れて重力が分離しました。次にエネルギーが下がると次々に対称性が下がり、力が分離していき、最終的に鉛筆は完全に倒れ、四つの力が分離しました。
じゃあ、これで本当に終わりでしょうか?実はまだ、対称性が下がるかもしれません。現在の真空は偽の真空で、さらにエネルギーが下がる可能性があるのです。宇宙のどこかでそれが起こると、全く状態の異なる異常な低エネルギー時空が起こった場所を中心に光速で拡がり、全宇宙に拡大するでしょう。その空間に包まれれば、現在知っている物質も空間も時間さえも、今とは全く異なる状態になってしまうということだそうです。