2.2インフレーションの経過 | ピアの窓

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宇宙が誕生したばかりの頃、宇宙を満たす物質の密度に僅かなゆらぎがあって、そのゆらぎが重力によって成長して銀河ができたというのが通説です。そうだとすると、その最初のゆらぎがどのようにして生まれたかが気になります。1980年、この問題の答えを与えることになるインフレーション理論が、

佐藤勝彦博士やアラン・グース博士らによって提唱されました。インフレーション理論は、この豊かな宇宙の構造が宇宙初期の量子ゆらぎからつくられたと予言しています。量子力学は素粒子などのミクロな世界を記述する理論です。決して消せないゆらぎがあります。それが量子ゆらぎです。この量子ゆらぎが宇宙膨張で引き延ばされて密度ゆらぎへ転化したというのです。

 

少し細かくインフレーションの過程をみていきます。

真空のエネルギーで膨張を始めた宇宙はブランク時間10のマイナス44秒後に第1回目の相転移を経験する。この時、重力と大統一力(電磁気力+強い力+弱い力)が分化した。この時の宇宙の温度は10の32乗Kもあった。

宇宙の膨張は続き、宇宙の温度が10の28乗Kまで冷えると第2回目の相転移が起こる。この時の宇宙年齢はまだ10のマイナス36秒後でしかない。

この相転移で強い力と(電磁気力+弱い力)が分化した。このときクォークとレプトンが誕生し、素粒子の世界が始まった。

第3回目の相転移は宇宙年齢が10のマイナス11乗秒後の頃、宇宙の温度が10の15乗Kに下がった頃に起こる。このとき、弱い力が電磁気力から分化した。宇宙の温度が 10の15乗Kより高かった時代には、電磁気力を媒介する光子と弱い力を媒介する ウイーク・ボソンは区別できない状態だったが、温度が10の15乗K以下になると両者は別なゲージ粒子として働き出す。そのため、宇宙の状態が変わり、相転移したのだ。かくして、4つの力が出揃った。

④その後、宇宙の温度が 10の11乗Kに下がったときに、クォークからハドロンが生成される。

この相転移はクォーク=ハドロン相転移と呼ばれる。

誕生後4回も相転移を経験したのである。しかし、もう一つ相転移が残っている。宇宙が指数関数的に膨張しインフレーションを引き起こした相転移である。

力の分化を引き起こす相転移は僭越を伴わないが、インフレーションを引き起こす相転移は僭越を伴い10のマイナス34乗秒後にビッグバーンを引き起こした。

このインフレーション理論は1981年に佐藤勝彦、アラングースが提案した理論です。

■インフレーションの結果

宇宙は138億年前に誕生しましたが、宇宙空間の膨張は光速より速く拡大し、今は地球から見ると465億光年(直径だと930億光年)と広がっています。このインフレーションにより宇宙は、曲率はゼロになり、平坦化され、量子ゆらぎが拡大され、星や銀河が形成された。

 

*インフレーションと真空のエネルギー

初め宇宙には真空のエネルギーはゼロに近かった。それが、真空のエネルギーによる宇宙の膨張により相転移が起こり、その結果、潜熱は発生して火の玉になっていく。そもそも真空のエネルギーは空間が膨張してもエネルギー密度に変化はなく、インフレーション後は光と空間内の物質に変化して真空のエネルギーは減少していく。

<参考:相転移>

相転移(そうてんい、英語: phase transition)とは、ある系の相(phase)が別の相へ変わることを指す。

相はある特徴を持った系の安定な状態の集合として定義される。一般には物質の状態(固体、液体、気体)の相互変化として理解されるが、同相の物質中の物性変化(結晶構造や密度、磁性など)や基底状態の変化に対しても用いられる。(Wikipediaより)