日経コンピュータ2024.05.30 | HATのブログ

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IT関係のニュースを中心に記事を掲載します。日経コンピュータで重要だと感じた記事とコメントを2010年9月1日号から書いています。
このブログは個人的なものです。ここで述べていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。

特集は<常駐・SES・多重下請け全部やらない 異端の1兆円SI企業 大塚商会>です。「たのめーる」のダジャレCM
 新しいタブレットの色はたぶんレッド
 バインダーないなー。そうだ、頼めバインダー
この、たのめ~るが重要な役目を果たしていたようです。

編集長セレクト】(P.06)
富士通がモダナイズ支援サービスを日本導入 COBOLからJavaへ自動変換
→北米で2002年から行っているサービスを日本で提供
BIPROGYが信金向けにクラウド勘定系 日本マイクロソフトの「Azure」上で動作
→Azureとは珍しい。元がWindows上のパッケージだから?

ITが危ない「IBM版」Notes/Dominoサポート終了巡り混乱】(P.08)
米IBMが提供していたグループウェア「Notes/Domino」V9、V10のサポートが2024年6月1日で終了します。この情報をめぐり、ユーザ間で混乱が起きています。
実は「Notes/Domino」はインドIT大手HCLテクノロジーズに移管され、V11移行はサポートを継続します。

ところが「サポートが終了するタイミングでNotes/Dominoをリプレースしましょう」という宣伝文句を広めているベンダーが複数あるそうです。

最新のNotes/Dominoなら、Node.jsやJavaなどの開発言語が利用できるそうです。あわてず判断しましょう。

常駐・SES・多重下請け全部やらない 異端の1兆円SI企業 大塚商会】(P.10)
1.売上高は1兆円目前 3つの原動力で成長
20年間で従業員1人当たり売上高を2.1倍に伸ばしました。連結売上高:2.6倍、連結従業員数:23%増でした。3つの原動力で成長しました。
(1)科学的営業:顧客データに基づいて営業施策を立案
(2)労働分配率を見直し従業員のモチベーションアップ
(3)1つの企業に幅広い商材を売り込む「オフィスまるごと」戦略
2.訪問先はAIが登録 営業スタイル超進化
AIの指示に抵抗がない若手が営業成績を伸ばし全社に広がりました。予測モデルの開発には、米ドットデータのデータ分析ツール「dot Data」を2019年から活用しています。
・AI行先アシスト:訪問先、商材を判断し予定を自動登録
・商談プロセスアシスト:日報にアドバイス。成約アシスト
・関係性深化アシスト:関係を深める施策を提案
・導入後フォローアシスト:実行すべきフォロー内容を提案

顧客にとっての大塚商会の「入り口」は、オフィスサプライなどの通販事業である「たのめーる」です。200万件以上の登録口座があります。既存の複写機の顧客も含めて何を買っているかでITの需要を探り出し、業務システムパッケージやネットワーク製品の商談に発展させます。
3.人手に頼らず高成長 異例ずくめのSI戦略
連結売上高の64%をシステムインテグレーション(SI)が占めるSI企業です。ところが同業他社と異なり、技術者の「常駐」「SES」「多重下請け」のビジネスを全て行っていません。SESとは時間契約で派遣する形態です。

たよれーる らくらくシリーズ:導入したIT機器を大塚商会自身が運用する。中小企業の顧客の情報システム室になるサービス
・ActiveDirectoryサーバの管理:月額約6万円
・ファイアウォール:SOC(Security Operation Center)付き
・らくらくEDR:端末1台月額290円でPCの不審な動きを検知
・ITワンストップサポートデスク:1社当たり月額1,000円から

 

オフィスまるごと戦略:セキュリティ製品の導入の時にバックアップも販売するなど関連製品を次々と売り込む戦略。中小企業からすると安く信頼出来ます。

特集インタビュー:大塚商会社長 大塚裕司氏】(P.24)
どぶ板の踏み方が大手とは違う 中堅・中小企業向けで今後も成長
大塚氏は76年に横浜銀行、80年にリコーへの転職を経て81年に父・実氏が創業した大塚商会に入社。90年に退社しソフトハウスに転じましたが、92年に復帰。

大塚商会は、年商10億円未満の中小企業が顧客の8割。100億以上の大企業は5%を下回ります。日本全体の割合とほぼ近いです。中堅・中小企業向け市場で、販売とサポートを一体にしている組織体制は海外を含めて恐らく他にはないでしょう。


大手メーカーは市場の特性を理解出来なかったのでしょう。当社は「どぶ板」を多く踏みながら手間を必要とする中小企業向け市場で業務を効率化する仕組みづくりに取り組んできました。

経営改革や科学的営業は大塚裕司氏が基本的な概念やグランドデザインを描き、93年ごろからチームで議論しました。2003年に基幹系システムと連動する営業支援システムである「SPR」が稼働。2019年からAIを本格的に利用しています。

大塚商会のイメージが変わりました。大変面白い会社ですね。

オープンAIとグーグルが新AI 応答速度を改善し、料金は値下げ】(P.48)
一般ニュースでも大きく取り上げられていましたので皆さんご存じでしょう。オープンAI社のGPT、グーグルのGemiinです。
GPT-4o
発表:5/13 音声モードのレイテンシ0.32秒(320ms)
      (GPT3.5は2.8秒、GPT4は5.4秒)
コンテキストウィンドー: 12.8万トークン
Gemini 1.5Flash
発表:5/14 1文字当たりのレイテンシー1.5ms(英語)
      (Gemini1.5 Proは4.3ms)
コンテキストウィンドー:100万トークン

無料のchatGPTでもログインの時指定するとGPT-4oを使用することが出来ます。「坂の多い長崎ですが、上り坂と下り坂はどちらが多いですか?」と尋ねると、3.5だと、上り坂の方が多いと答えますが、4oだと同じと答えてくれます。

NTTデータG新社長に佐々木氏 順風下の「3方針」で課題克服なるか】(P.50)
NTTデータグループは、2024年6月18日付でNTTデータの社長佐々木裕氏に、グループの社長を兼務させると発表しました。NTTグループは成長傾向にあり、3方針を打ち出しました。
1.戦略的な投資:2025年度迄に国内M&Aに1000億円投資
2.NTT-Gの総合力発揮:通信事業者配下の強みで世界を戦う
3.顧客の成果を重視:コンサル力、エンジニアリング力強化

課題は国内の人材不足です。そのため、システム会社ジャステックの買収やクラウドのシステム構築会社テラスカイへの出資など手を打っています。どちらも東証一部上場企業です。

乱反射:大手18社の2024年1~3月決算 売上高、2期連続7%台の成長】(P.55)
企業向けIT世界大手18社の2024年第1四半期決算の報告です。前回の4Qで2桁成長から7.8%成長に鈍化し「過去3年で最低の成長」だったのですが、1Qはさらに0.8ポイント下がり7.0%増となりました。
<クラウド>  売上(M$) 伸び率(%)
マイクロソフト  35,100  23.2
AWS         25,037  17.2
グーグル       9,574  28.4
セールスフォース   9,287  10.8

セールスフォースのマーク・ベニオフCEOは決算電話会議で「AIはテクノロジー史上最も重要だが、まだ嘘つきで誤った情報や幻覚(ハルシネーション)を作り出す」と話したそうです。この正直さがセールスフォースの特徴です。

日経XTECH2024年5月の好評記事】(P.58)
「S/4HANA」への切り替えでトラブルの江崎グリコ、1か月経過も商品の出荷停止続く
→在庫が合わないので乳業全4工場で製造を止めたそうです
富士通「PROBANK」の顧客がゼロに、清水銀行と西京銀行の新システム移行で
→開発が難航し9ヶ月遅れで稼働。約20年動けば立派でしょう。

挑戦者:曽根岡 侑也氏 ELYZA CEO】(P.64)
KDDIと資本業務提携を締結し、AIの社会実装と事業の海外展開を目指す
2018年にELYZAを設立。当初から自然言語処理AIで勝負するつもりでしたが、起業を相談した人には反対されました。ところが創業の翌年米グーグルが自然言語処理モデルのBERTを発表しパラダイムシフトが起きました。

ELYZAは特定分野だけを学習させる特化型のモデルで成果を上げてきました。ところが2022年11月、ChatGPTの登場。汎用的なモデルでも遜色ない性能を出したため取引を打ち切る顧客も出てきました。

その後700億パラメータの日本語環境の汎用のLLMを生み出しました。KDDIとの戦略提携では、KDDIのグループ会社が蓄積するデータや販売網を活用します。

KDDIとの提携のニュースは聞いていました。楽しみなスタートアップですね。

極限正論:ソニー、ソフトバンクが成功事例 変革なき「わが社のDX」を正せ】(P.70)
DXという言葉が軽く使われ過ぎているというコラムです。
<報道するメディアの「言葉の乱れ」もひどいものだ。例えば「DXを活用して」などといった表現が頻繁に登場するから嘆かわしいことである>


本来DXという限りはビジネス構造の変革を伴う必要があります。その代表例はソニーとソフトバンクです。
ソニー:かつて家電メーカーでしたが今ではデジタルコンテンツを主力業務
ソフトバンク:元はパソコンソフトの流通業が、今やインターネット企業

個人的にはDXというバズワードはそろそろ死語になって欲しいです。SIS(Strategic Information System)という言葉を復活してはどうでしょう?

社長の疑問に答えるIT専門家の対話術 第267回】(P.84)
改めて自動化に取り組もう 難題を選ぶほど効果が出る
コンピュータの黎明期は1台数億円以上しましたが、システム投資は今よりは積極果敢でした。それは投資対効果が明確だったということも理由の1つでしょう。
投資対効果を明言しやすいのは<人がやっていたことをシステムにやらせる自動化>でしょう。デシジョンマネジメントあるいはデジタルディシジョニングと呼ばれる自動化手法を紹介します。

電気自動車向けにバッテリー(リチウムイオン電池)を製造するメーカーの事例です。顧客である自動車メーカーの要求に基づき特定車両用のバッテリーを納めます。そのための設計業務としてはセルの大きさ、容量、数量、レイアウトの決定から納期と価格見積もりがあります。この設計の自動化のために、米スパークリングロジックのSMARTSを使い、設計業務の判断を自動化するシステムを開発しました。


判断の自動化のために、データモデルやデータ、デシジョンフロー、ルールを用意します。これらを総称して「デシジョンアセット」と呼びます。特許や商標、ブランドと同様の無形資産とも言えます。担当者個人が表計算ソフトに自分で集めたデータを入れて判断するようでは内部統制においても問題があるでしょう。

以上