日経コンピュータ2024.02.22 | HATのブログ

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IT関係のニュースを中心に記事を掲載します。日経コンピュータで重要だと感じた記事とコメントを2010年9月1日号から書いています。
このブログは個人的なものです。ここで述べていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。

特集は<GX・脱炭素にITで挑む 立ちはだかるスコープ3を越える>です。脱炭素とか脱エンジンとかに共感出来ませんので特集は軽くだけザッピングします。

【編集長セレクト】(P.06)※IT登録だけで読める記事です
NTTの「IOWN Computer」開発 NEDOが400億円超を支援
 →NTT法改悪されると海外に技術移転されかねない
セキュリティーエンジニアに転職すると年収は約67万円増 IT職種の中で増加幅最大
 →ITコンサルやデータサイエンティストより上
グーグルが「Gemini Ultra」提供開始 Bardを廃止しサービス名も「Gemini」に統一
 →Ultraを搭載する対話型AI「Gemini Advanced」提供開始

GX・脱炭素にITで挑む 立ちはだかるスコープ3を越える】(P.10)
1.政府も市場も求める 供給網の把握が難題
 ・2022.04から東証プライム企業に排出量開示を推奨
 ・政府は2050年までにカーボンニュートラル宣言
2.25年までに準備を ITで排出量算定支援
・スコープ1~3があり、1,2は自社、3はサプライチェーン全体
・スコープ3に取り組む日本企業はまだ少ない。システムが必須
 →ベンチャーSaaSや大手SAP、NTTデータ、日立など
3.大いに関わるIT部門 機器の排出量把握も
・システム開発や運用の温暖化ガスを把握
・使用する電力の温暖化ガスを把握
4.加速する排出量削減 なぜスコープ3か?
PwCのコンサルティングの署名記事。特集の一角に載るということは担当記者さんが万歳したのでしょうか・・・

詐欺メール撲滅大作戦 グーグルお墨付きの対策を急げ】(P.28)
実在する大手の企業になりすまして送り付けられるフィッシング(詐欺)メールが増加しています。フィッシング対策協議会によると、2023年下期のフィッシングメールの報告件数は66.5万件。2020年の10倍になりました。

2023年10月に米グーグルと米ヤフーが新たなガイドラインを発表し、「送信ドメイン認証」という仕組みの導入を求めました。
 SPF:メールの送信元が正当かを確認
(Sender Policy Framework)
 DKIM:メールの電子署名で正当性を確認
(ディーキム:DomainKeys Identified Mail)
 DMARK:確認失敗した時に拒否するか指定
(ディーマーク:Domain-based Message Authentication,Reporting,and Conformance)

送信ドメイン認証はワクチンのようなものです。社会全体で導入しないと効果が限定的になります。日本企業でDMARKを導入済みの割合は13%でした。


最近はDMARKを補強する「BIMI(ビミ:Brand Indicators for Message Identification)」が出ました。BIMIで認証が成功するとFromアドレス部分にロゴが表示されます。ただ対応しているメールクライアントが限定的です。今後広がるでしょう。

※この記事は曖昧な説明が散見されて残念でした。「SPFはIPアドレスを用いて」という説明は間違いです。IPだけでなくドメイン認証もできます。<送信元を偽造しているわけだ>も意味不明でした。

NTT東西が固定電話をIP網に移行 100年以上続いた仕組みが一変】(P.58)
従来の固定電話サービスのネットワークは公衆交換電話網(PSTN)と呼ばれ、電話交換機で制御しています。交換機設備の部品不足などが原因で、PSTNを維持するのは2025年が限界とされています。

1月30日、最後まで残っていた東京23区などの1000万以上の回線がIP網に移行されました。これでNTT東西の固定電話網が全てIP網に切り替わりました。ただし0120からはじまる着信者課金などの一部は2025年までPSTN網が使われます。

自転とのずれを抑える「うるう秒」 IT企業の反対で実質廃止へ】(P.59)
協定世界時(UTC)と、地球の自転に基づく世界時(UT)が0.9秒以上にならないように数年に1度、「うるう秒」を挿入していました。初回の1972年7月1日からこれまで、計27回実施されています。

コンピュータが普及してはじめてのうるう秒は2012年。航空機予約が障害になるなどの影響がありました。続く2015年はOSのパッチを当てたり、グーグルは「20時間かけて1秒を少しずつ延ばす調整」でトラブルを防ぎました。

IT企業からの反対で、ずれの上限を0.9秒より大きくすることで1秒単位での調整をなくす方向で議論されています。一方ここ数年は地球の自転速度が上がり、UTCとUTのずれがほとんどなくなっているそうです。とはいえ長い期間で見ると自転速度は遅れていますので調整は必要でしょう。

防衛省がサイバー人材の育成を強化 陸自の通信学校を改組し専門家養成】(P.64)
政府は2020年末に安全保障関連3文書を改訂、総サイバー要員を約2万人育成する方針を示しました。その一環として、2024年3月、神奈川県にある陸上自衛隊通信学校を「陸上自衛隊システム通信・サイバー学校」として改組し、サイバー教育部を設置します。そこではIPAのITスキル標準のレベル3の行動IT人材を育てます。

レベル4以上のさらに高度な人材については、非常勤国家公務員などとして外部要員の登用や民間との連携強化を進めています。

この動きと並行して、セキュリティクリアランス法制度を成立させて欲しいです。それなしにサイバー要員と言われても・・・

乱反射:大手18社の2023年4Q決算 売上高は7.8%増、1桁成長に】(P.65)
企業向けIT世界大手18社の2023年第4四半期決算の報告です。データセンター、ソフトウエア、サービス、クラウドの4分野合計について、第3四半期は2桁増でしたが、1桁成長に留まりました。過去3年で最低の成長だそうです。

<クラウド>  売上(M$) 伸び率(%)
マイクロソフト  33,700  24.4
AWS        24.204  13.2
グーグル       9,192  25.7
セールスフォース   8,720  11.3

AWSとセールスフォースの伸び率はこのレベルで安定していますね。

日経XTECH 2024年01月~02月の好評記事】(P.68)
1位と3位は特集されていた記事でしたので2位だけ載せます
どうして充電が遅いUSBケーブルがあるの?見分ける方法はある?
 →「明記してない場合は見分けられない。」何やそれ(笑)

ケーススタディ:TOPPANホールディングス】(P.70)
S/4HANAで基幹系をモダナイ 寝耳に水の会社再編で稼働前倒し
旧「凸版印刷」がTOPPANに社名変更したことはTV-CMでしつこいほど聞いていました。その1900年創業のTOPPANが2024年4月までに20社のグループ会社に独SAPのERPを展開します。主要3社の基幹系システムは2023年10月までに刷新を終わりました。既存システムからの移行に約160億円かかりました。

従来システムはスクラッチ開発の約1万7000の機能。それをSaaS版のS/4HANAに乗せ換えるにあたり次の3つの方針を徹底しました。
1.内製化
複雑化して既存システムの機能を短期間で標準化するなど、外部コンサルティングから「無謀な計画」と言われましたが自前主義で内製で乗り切った
2.Fit to Standard
Fit & Gapで475件のアドオンが必要との結果となったが、標準化や業務改革で対応可能な部分は作らず、29件に絞った。
しかもその中で19件は「SAP BTP(SAP Business Technology Platform)」を使用することで、S/4HANA側は互換性を損ねない「クリーンコア」を維持した。ただ、SAP BTPは国内での活用事例がほぼなく「技術的に最も苦労した」そうです。
3.期日順守
2023年10月本番予定で進めていましたが、2021年11月にグループ再編を発表。そのため急遽3ヶ月前倒しとし、2023年4月にトッパンフォーム、2023年7月に凸版印刷と図書印刷でS/4HANAによる新システムをカットオーバー。業務部門は3ヶ月という短期間でS/4HANAの機能を理解し、安定させた状態で10月に再編成後の会社に引き継ぎました。

Fit to Standardが良いと言う記事ですが、ちゃんとFit &Gapをされているところがミソです。現状ビジネスの分析をせずに入れてるわけではありません。SAP BTPは調べると概念(ブランド)ですのでその中の何を使ったかがポイントですね。
深堀する価値のある事例だと思います。SAPのどのモジュールをどう使ったかなど追加取材して報告して欲しいです。

動かないコンピュータ:神奈川県教育委員会】(P.76)
ネット出願にGmailが使えないトラブル 原因特定の難航で復旧に1か月
2024年1月、約5万人が使う神奈川県の公立高校入試の出願システムでトラブルが発生。受験生がGmailのアドレスを使うとメールが届かなくなりました。この障害は新聞でも報道されました。

01/04 本番稼働
01/09 冬休み明けで多数登録したところトラブルが明らかに
01/10 県教委がトラブルを公表
→業者(システム研究所)に対応依頼。DNS変更やメールサーバをAmazon SESからリンク社のベアメールに切り替えるなど対応
01/19 トラブルが全て解消したと発表
01/24 出願開始日にトラブルが再発
→Gmailの生徒に県教委がメルアドを貸し出し対応
02/07 解消を発表「ベンダーの設定不備」
→Googleにも確認し解消したことを確認

設定不備の内容については明らかにされていません。神奈川県は税金で運用しているのですからこのトラブルの経験は公共のものです。全てを公表する義務があるように思います。

社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第260回】(P.94)
新たな価値を創造する「ビジネスアナリシス」
企業がDXに取り組むためにどうすればよいか。企業情報化協会が開いた第18回デジタル業務改革/BPMフォーマム2023の講演の中で横塚裕志氏の言葉です。


<デジタルを使って新たな価値を創造するにはUnlock(従来の常識を超えること)ができるビジネスアナリストがいなければならない

横塚氏は東京海上日動システムズ社長から現在はDBICの共同代表などを務められています。日経コンピュータでも何度も連載をされていました。

1.組織内でビジネスアナリストを育成し実践
 →業務見直しや再構築の支援をスタート
2.ビジネスアナリストが組織に定着したらプロチームを作る
 →戦略立案、デザイン、アジャイル開発などのチーム

プロのチームに権限を委譲しないと価値創造は出来ないとのことです。DBICではULOCK QUESTというプログラムをされているようです。DXを自社で実践したいと思われている方は動画を見ると参考になると思います。

以上