日経コンピュータ2024.03.07 | HATのブログ

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IT関係のニュースを中心に記事を掲載します。日経コンピュータで重要だと感じた記事とコメントを2010年9月1日号から書いています。
このブログは個人的なものです。ここで述べていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。

特集は<4万人で挑む 旭化成のDX>です。2020年4月から全社員にDX教育を行っている旭化成について詳細に解説されています。DXで利益が上がるのかはこれからでしょう。世の中を見ているとIT投資をしていない会社の方が儲かっているように思えます。

編集長セレクト】(P.06) ※全記事無料登録で読めます
オープンAIが最長1分の動画生成AI「Sora」発表 「AGI達成のマイルストーン」
→今はデザイナーや映画関係者だけにアクセスを許可
国際サイバー犯罪集団「ロックビット」摘発 メンバー2人を逮捕
→ポーランドとウクライナで逮捕。戦争中なのに・・・
職場における生成AIの利用割合は日本が最下位 ベリタスが11カ国で調査
→利用しているが、平均70%、日本38%でダントツ最下位

ITが危ない:マイナカード利用「認証アプリ」 プライバシーリスクに懸念の声】(P.08)
デジタル庁が2024年04月から提供予定の「デジタル認証アプリ」に、プライバシーリスクが指摘されています。マイナンバーカードに内蔵するICチップに搭載する電子証明書でオンラインで本人確認を行うものです。日立製作所が約4億円で落札し開発しています。
今までも同様のサービスは民間でも行っていますが、デジタル庁は無償で展開する予定ですので多くのサービスが利用するでしょう。国のサービスも民間のサービスも含めて、1人の個人に紐づいた利用状況がデジタル庁のサーバーに蓄積することが問題だと言われています

利用履歴が集まるだけなので心配しすぎではないでしょうか。簡単には外部に出せないように法整備されるかも知れませんが、DXとは逆方向です。

4万人で挑む 旭化成のDX データ武装、現場が舞台】(P.10)
DXに踏み出して8年の旭化成。詳細な経緯の報告です。他の企業が参考にするにはハードルが高いので簡単に報告します。
1.変わり始めて現場 結実する8年の奮闘
2011年に米国オバマ政権により材料開発にMIを活用する国家プロジェクトが発足しました。MIとはマテリアルズ・インフォマティクス、機械学習などを活用して材料開発の効率を高める取り組みの事です。この動きに危機感を覚えデジタル化にシフトされました。
2020年7月、日本IBMのCTOを勤めていた久世 和資(かずし)氏を招聘しDXを加速。各事業部に閉じたDXの動きを、全社施策にしました。
~2020年度:デジタル導入期:事業部で400のDX PJ
~2021年度:デジタル展開期:全社員にDX教育
~2023年度:デジタル創造期:DXによる経営改革
2024年度~:デジタルノーマル期:4万人デジタル人材化
2.性能2倍の製品も MIが支える研究開発
MIが成果を上げるとともにデータの活用が広がった
3.アドオンを半減 基幹刷新支えた門番
開発期間3年、ピーク時約500人が参画し基幹システム「SAP S/4HANA」が2023年4月に稼働を開始しました。前バージョンでは2400あったアドオンを1100本に削減。構想段階からSierでなくSAPにコンサルを頼みました。
4.現場がデータ分析 実り始めた人材育成
旭化成独自の自作教材で、5段階のレベルで教育しています。「旭化成DXオープンバッジ」と呼ばれる仕組みです。

【特集インタビュー:旭化成社長 工藤 幸四郎氏】
素材メーカーなので顧客企業や市場から遠くて何が起こっているのかという情報が入りづらい。デジタル変革により素材を中心にサービスやソリューションへとつなげプラットフォーム化することで収益性を高めます。
ゼロから基盤を作るために300億円の投資を予定しています。MI(マテリアルズ・インフォマティクス)によって研究開発の速度が上がり、他社との協業が進めやすくなりました。

私(筆者)は40年以上ITに関わってきました。一番の問題はIT投資が利益につながらない事です。「投資していなければもっと利益が減っていた」と言われるのかも知れませんが投資していない会社が連続して倒産する状況でなければ説得力を感じません。

JRA情報システム 知られざる裏側】(P.28)
日本中央競馬会(JRA)の情報システムの解説です。大変興味深かったです。
1.3兆円支えるIT投資 電話もネットも先取り
売得金(馬券の発売金から返還金を差し引いた額)が約3兆円です。そのうち85%が電話・インターネット経由の販売でした。競馬のテラ銭(控除額)は25%ですから売上は3.5兆円ですね。
 1976年 電話投票正式運用開始
 1991年 電話回線で投票の「PAT方式」試行開始
 2002年 インターネット投票「IPAT」運用開始
 2018年 キャッシュレス投票サービス「UMECA投票」開始
 2023年 競走馬の「トラッキングシステム」本格導入
こう見ると最先端のITを導入していることがわかります。
2.毎時660万件の性能 急務は脱・汎用機
馬券販売やオッズ、配当金を処理する基幹システム「トータリゼータシステム」のセンターシステムは富士通製のメインフレーム上でCOBOL言語。東日本DCと西日本DCでデュアル運用しています。ピーク性能は1時間当たり660万件。レスポンス性能は電話投票で3秒、投票照会で1秒と定められています。1秒間になおすと約1700件の処理。1件0.5msですからすごいですね。

コロナになり想定外に会員が増え処理が逼迫しました。富士通がメインフレームから撤退を表明ているためオープン化を行っています。
3.暴れ馬もGPSで捕捉 10年越しの3つの挑戦
競走馬が着用するゼッケンの左右のポケットにGPSを入れる事で競争中の馬の位置をリアルに表示する「トラッキングシステム」を10年前から試行しています。1つが故障しても大丈夫なように2つ入れています。3つの課題がありました。
GPSの精度が悪かった
アンテナを競技場に複数立てる必要があった
観客のスマホ増加による通信回線の逼迫

これらを解決し、2024年9月に全競技場へ導入完了の予定です

パドックアイ」が2023年8月にリリースされました。パドックの映像をAIが解析し馬ごとに分割する機能です。2024年中に全レースへと対象を広げます。この画像を元に馬の関節を検出して歩行時の態勢などをAIで解析し仕上がりの状態を指標化しようとされています。

パドックアイが進化すれば馬の好不調もAIで判断できるかも知れません。それと成績との関係を機械学習できそうです。

パートナー満足度調査2024 人材不足下で新需要に応える】(P.46)
売りやすさを代理店やSI企業に尋ねたランキング。良い製品でなく売りやすいという基準です。1位獲得企業は次の通り。
サーバー:デル・テクノロジーズ
法人向けPC:Dynabook
クラウド基盤サービス(IaaS,PaaS):日本マイクロソフト
ネットワーク機器:ヤマハ
セキュリティー・脅威対策製品/サービス:フォーティネットジャパン
クライアント管理・統合運用管理ソフト/サービス:Sky
クラウド情報系サービス:サイボウズ
基幹系ソフト/サービス:オービックビジネスコンサルタント
(新)業務効率化・内製支援ソフト/サービス:サイボウズ

日本IT技術者の年収は世界26位 IT分野の学生はG7で唯一の減少】(P.58)
人材派遣会社のヒューマンリソシアの調査「2023年度版データで見る世界のITエンジニアレポート
」からの記事です。
日本のITエンジニア数は世界4位(米国、インド、中国)ですが、給与は72カ国中26位になり中国にも抜かされました。2022年度版は20位でした。

原本にあたったのですが2023年度版の給与グラフは見つかりませんでした。公開が遅れているだけでしょう

「Gmalガイドライン」適用開始 送信ドメイン認証の対応率が急上昇】(P.60)
世の中のメルマガがGmailガイドラインにどれだけ従っているかの調査結果です。日経コンピュータ2024.01.25では69社のガイドラインを調査されました。このうち2月1日~9日に受信した51社のメルマガについて調査されました。3/7版と対象メルマガを合わせた数字も書かれていました。
                    1/25            3/7
  ドメイン認証に対応合格: 36/69    34/51      49/51
  ワンクリック登録解除合格:20/69    14/51       21/51

ワンクリック登録解除は2024年6月から適用になりますのでまだ未対応が多いです。

20年近く利用したドメインが人の手に レジストラ移管を使ったハイジャック】(P.62)
20年近く前に取得したドメインが、不正に管理会社を移管され3ヶ月経ってももとってこないという事件が発生しています。
複雑なので簡単に状況を説明します。
1.GMOデジロックが運営しているバリュードメインを通じて、カナダの会社が運営する「eNom」でドメインを取得し運営されていました
2.GMOデジロックから「移管しましたか?」というメールを受信しました
3.調べると2023/11/07時点でシンガポールのGNAME.COMに移管されていました

GMOデジロックから、eNom,GNAME.COMに連絡しましたがいまだに戻されていません。どうやらeNomが不正管理を認めていないためにGNAMEは動けないとのことです。

怖すぎますね。ネットだけで実体がないものの扱いについてハッキングされると戻すことが大変なのですね。

日経XTECH 2024年2月の好評記事】(P.68)
「もうかるのか」と小学生並みの経営幹部、算数経営の成れの果て
谷島の情識。江戸時代が明治時代になるくらいの大変化
新OSで進化したApple Watch、デザインの見直しで使い勝手が大きく向上
→私にとっては必需品のAppleWatchの進化
WindowsのOneDriveを利用するなら設定変更で「お節介」を軽減、不要なら削除
→OSにMSアカウントログインする時のノウハウ

極限正論:若者はSIerの意味が分からない ITベンダーがご用聞きに堕した訳】(P.76)
■エスアイアーって何ですか?
若者に尋ねられて驚きました<SIerとはシステムインテグレーターのことで、様々なハードウエアやソフトウエアなどを組み合わせてシステムを作るのが本来の仕事、富士通やNTTデータがそれにあたる>と答えました。
■えっ、富士通やNTTデータをSIerと言って良いのですか?
そもそもSIerは1990年代のメインフレームからオープン系のサーバーなどへの移行期に登場しました。様々なサーバやOS、ミドルウエアなどを組み合わせて顧客ごとに最適なサービスを提供するものでした。
ところが今はテッパンの組み合わせを提案するだけになり、付加価値に乏しいご用聞き商売になっています。
■SIorとして再生できるか
インテグレータは本当はIntegratorですから真の「SIor」として様々な技術を組み合わせて提供出来るようになって欲しい

読み物として面白かったです。

実践DX、クラウドで始めるデータマネジメント 第13回】(P.86)
データガバナンスへの注目が高まっています。多様なデータを多くの社員が活用するようになると統制をかける必要が出てきます。良くある例はデータ分析システムの乱立です。統制をかけずにバラバラに構築すると似たようなシステムが出来る事があります。

データガバナンスに利用できるツールとして「Immuta」があります。利用者とデータベースの間に入りデータセキュリティとコントロールを担います。

少し調べましたがまだ日本での事例がほぼないようです。国ごとに情報保護のルールが異なるときに解消してくれるなら使う価値は大きいと思います。これからのツールでしょう。

社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第261回】(P.90)
<ITインフラを速く強くする モダナイゼーションを急げ>
2024年2月9日、キンドリル(IBMのサービス部門が独立した会社)の発表会で<2024年7つのテックトレンド予測>を聞きました。そこではテクノロジー動向を7点挙げていました。いずれも、IT基盤のモダナイゼーション(近代化)に関わるものでした。このブログでは3つだけ取り上げます
■AI導入の重要な要素としてデータガバナンスが浮上
→適切に整理されたデータの整備
■よりスマートなクラウド戦略により、企業はコスト上昇に対応
→スマートクラウドの実現に向けて、スキルを高める
■AI活用によるデバイスの急増に伴い重要性を増すデータ保護とレイテンシー低減
→まずはネットワークのモダナイゼーションが重要

情報システム部長はIT基盤の近代化に関して経営陣を説き伏せる必要があります。次の2点で説得しては如何でしょうか。
1.社員のエンゲージメントを進める
→「会社に貢献したい」という意欲を上げる
2.今までの出費を抑えられる可能性がある
→近代化しない限りコストは下がらない

以上