日経コンは2週間に1度、年に52週÷2=26冊出る雑誌です。2010年から全号精読して記事をザッピングしています。
※はブログ筆者のコメントです
特集は<JFEの不撓不屈 鉄作りを止めるな、基幹系刷新の全貌>です。JEFは2006年ごろから2011年にかけて、データモデリングをベースにした基幹システムの刷新を成功させています。記者さんはその事をご存じないのかも知れません。「ITによる業務変革の「正攻法」 JFEスチールの挑戦」(日経BP)
【ITが危ない:GitHub内部リポジトリーが標的 漏洩リスクは公開版の6倍に】(P.08)
GitHubのソースに書いた認証情報などが漏洩し、内部リポジトリーなどに不正アクセスされるという事件が多く発生しています。2026年5月に、クラウド会計ソフトのマネーフォワードとGitHub自身が「VS Code」から情報が漏洩したと相次いで発表されました。
ギットガーディアンが2026年3月に調査レポートによると、非公開の内部リポジトリーからの機密情報漏洩は、パブリックリポジトリーと比較して6倍ほど高いとのことです。内部リポジトリーだからという理由で厳格な運用を行っていないケースがあるためでしょう。またAI活用が広がったため、コミット量が多くなりセキュリティーが低くなること。NHI、「Non-Human Identity(非人間アイデンティティ)」が多くなり人の管理下から離れているケースもあります。
※外部公開しないソースなら、パスワードを直書きしている事が多いため漏れると被害が大きくなります。気をつけましょう。
【JFEの不撓不屈 鉄作りを止めるな、基幹系刷新の全貌】(P.10)
1.中断乗り越え完遂 製鉄業への熱い思い
JFEスチールは、全国6カ所の製鉄所・製造所を支える基幹システムを、5年2カ月かけて刷新完了しました。IBMと富士通のメインフレームで稼働していた約2億ステップのプログラムをクラウドへ移行するという、前例のない規模の挑戦でした。原動力となったのは、「鉄を作り続けるため、システムに縛られたくない」という西圭一郎専務執行役員の強い思いです。
当初2016年から福山地区を起点に進めていた旧プロジェクトは、業務要件から見直す「リビルド」方式を採用しましたが、テストの進捗から全機能完了までに14年を要すると判明し、2019年に中断を決断。社長が親会社であるJFEホールディングスへ頭を下げる事態となりました。
1年をかけて再検討した結果、機械的な言語変換による「リライト」方式へ転換し、2020年に再始動。特に難度の高かった福山地区は、独自言語や複雑なデータ構造を抱えながら、ベンダーに頼らず自社とグループ会社のみで移行を成し遂げました。
2.周到な準備と現場力 業務フローを基に判断
刷新プロジェクトを当初計画より2年前倒しで完了できた背景には、周到な準備と現場力がありました。まず全業務フローを洗い出し、それを基準に画面・帳票・アプリケーションの要否を判断。利用実態のない機能は思い切って廃止し、画面レイアウトは平均46%、帳票は59%、アプリケーションは27%を削減しました。
移行手法はスピードを最優先し「リライト」を選択、Javaへの変換率はほぼ100%に達しました。さらにテスト工程では、当初は全機能を網羅的に検証していましたが、進めるうちに顧客影響の少ない機能は簡易テストで済ませるといった「濃淡」をつける判断基準を確立。後続拠点にノウハウを展開したことで、投資額を当初比36%まで圧縮することに成功しました。
※記事には触れられていませんが、JFEスチールは2011年ごろにデータモデルを中心とした基幹システムの刷新を経験しています。その際に整理されたデータ構造やコード体系の蓄積が、今回のリライトが機械的な変換だけで高い成功率(変換エラーなし、変換率ほぼ100%)を実現できた土台になっていた可能性があります。記事は今回のプロジェクトを単純な機械的リライトとテストの積み重ねとして描いていますが、実際には過去の刷新資産の存在が背景にあったと考えられます。
3.刷新完了で本業加速 設備投資に5000億円
刷新完了後、JFEスチールは本業である製造設備への投資を加速させています。倉敷地区での革新電気炉建設(3294億円)や福山地区の新製造ライン(約700億円)など、発表済みの設備投資額は合計5000億円を超え、システムリフレッシュ費用(約1100億円)の5倍近くに達します。また、プロジェクトを通じて現場から集まり育った人材が、業務改善のノウハウを各拠点へ広げる役割を果たしています。業務フローを整理し改善につなげる手法も、製造現場にとどまらず営業部門など事務系業務へ展開され始めました。さらに、挑戦的プロジェクトを途中で立ち止まり継続可否を審査する制度を新設するなど、失敗を隠さず共有知とする文化づくりも進めています。培ったノウハウは「JFE Resolus」ブランドの下、外部企業への提供も見据えています。
※システム刷新費用が小さく見えますね。
【3大クラウド、AI徹底比較 エージェント数千体時代の競争軸】(P.40)
1.加熱する開発競争 焦点は管理基盤に
グーグル、AWS、マイクロソフトの3社は、AIモデルやAIエージェントの品ぞろえを競う段階から、数千体規模のAIエージェントを統合的に管理する基盤(Google:Gemini Enterprise Agent Platform、MS:Agent 365、AWS:Bedrock)の整備へと競争軸を移しています。導入検討時は、単体エージェントの性能だけでなく、管理・統制のしやすさを重視すべき局面です。
2.半導体にAIモデルも 異次元の投資合戦
Google Cloud:半導体からAIエージェントまで自社で垂直統合する路線です。学習用と推論用でTPUを分離し、推論性能とコストを最適化しています。既存でGoogleサービス群を使う企業や、セキュリティー・ガバナンス機能(Agent Identity等)を重視する開発者に向いています。
AWS:自前の強力なAIモデルは持たず、OpenAIやAnthropicなど外部の有力モデルをBedrock経由で幅広く使える「マルチベンダー窓口」型です。特定モデルに縛られたくない、エンジニア層の厚さや情報量を重視する開発者に適しています。
Microsoft:Microsoft 365などの既存業務データ活用に強みがあり、Web IQ・Work IQ・Fabric IQ・Foundry IQという4つの「頭脳」でコンテキストを整理する設計です。Word/Excel等をすでに使っている組織で、業務データを絡めたAIエージェント運用をしたい場合に適していますが、価格の高さは考慮点です。
3.パートナー企業が告白 企業のAI活用支援を
日本のパートナー企業の評価をまとめると、技術選定の実務的な判断材料が見えてきます。
AWSは国内のエンジニア数・情報量が多く、Bedrock経由でAnthropicのClaudeを使う企業が多いのが実情です。契約や支払い処理を一本化したい場合や、特定ベンダーとの直接契約を避けたい場合にメリットがあります。
Google Cloudは「AIファースト」設計でAIがデータにアクセスしやすく、管理基盤のセキュリティー・ガバナンス機能が強い一方、サービス自体は後発でエンジニア層はAWSほど厚くありません。
マイクロソフトは既存のMicrosoft 365ユーザーとの親和性が高く、業務プロセス全体を見直す変革に踏み込みやすい反面、価格上昇への懸念が指摘されています。
※技術者としては、①社内の既存システムとの親和性、②契約・支払いの実務、③エンジニア人材の確保しやすさ、の3点を軸に選定するのが実践的といえます。
【ニチレイの東西両センターで障害 不正アクセスの影響を避けられず】(P.60)
ニチレイは不正アクセスによるシステム障害を2026年7月13日に発表しました。冷凍食品の生産・出荷や冷蔵倉庫の入出庫業務に支障が出て、井村屋やテーブルマークなど取引先にも影響が波及。同社はDR対策として東西2拠点に基幹システムを構築していましたが、両拠点が同一ネットワークに接続していたため、不正アクセスの影響を双方で受けた可能性があります。復旧は7月24日でした。
【米先端AIに肉薄する中国「Kimi K3」 性能向上の鍵は2つの機構刷新】(P.65)
中国のAI新興企業ムーンショットAIは、最新モデル「Kimi K3」を公開しました。パラメーター数は2兆8000億で、オープンモデルとして世界最大級です。総合性能では米国勢に及ばないとしつつも、コーディング性能や長期タスク遂行の指標では首位を主張し、「DeepSeekショック」再来を懸念する声も出ています。
性能向上の鍵は2つの機構刷新にあります。1つは、過去の全トークンを見返す代わりに履歴の要約を逐次更新して計算負荷を抑える「Kimi Delta Attention(KDA)」で、KVキャッシュを最大75%削減し、デコード速度を最大6倍に高めました。もう1つは、各層が過去の層の出力から必要な情報を動的に選び取る「Attention Residuals(AttnRes)」です。従来の残差接続では層が深いほど各層の寄与が薄まる無駄がありましたが、これを解消しました。これら2つの効果により、前世代のKimi K2比で約2.5倍のスケーリング効率を実現したとしています。
一方、オープンモデルであるため開発元による統制が及びにくく、サイバー攻撃への悪用を懸念する声もあります。国内省庁幹部は、統制された高性能モデルを使えない攻撃者でもKimi K3には触れられるとして、これを用いたペネトレーションテストの必要性を指摘しており、米中のAI覇権争いだけでなく企業のサイバー防衛体制も転換点を迎えていると言えます。
※「キミケースリー」は私の周りでも相当使われてそうです。
【AIリーダーズ:フリー共同創業者 CAIO 横路 隆氏】(P.76)
<AIが使いやすいSaaSへ>
フリーの横路隆氏は、2026年1月にCTOからCAIO(最高AI責任者)へ就任しました。生成AIの進化を体感し、全社変革の必要性を強く伝えるための判断だったといいます。2026年7月にはCAIO直下に新組織AIBPを設置。AIエージェントを業務にどう配置し、効果を出しているかをモニタリングする役割で、人件費とトークン費の配分を判断するためのトークンマネジメントにも着手しています。
エンジニアが書くコードの約6割はすでにAIが担っており、人間がAIに的確な指示を出せるかが開発のボトルネックになりつつあります。マーケティング動画の制作費も、外部委託で月数百万円かかっていたものが、AIエージェント活用で1日1万円規模に激減しました。
同社は「人が使う(Done by You)」から「AIエージェントが仕事を代行する(Done for You)」へのビジネスモデル転換を掲げ、外部AIエージェント向けのMCPサーバーをOSSとして公開したほか、月次決算や給与計算を自動化する「freee AIアシスタント」もリリースしています。営業活動でも、顧客データにAIエージェントがアクセスし次のアクションを提案する仕組みづくりを進めています。
※SaaSは確実にAI競争になっています。利用者からすると楽しみですが中の人にとっては死活問題でしょう。
【動かないコンピュータ:弁護士ドットコム】(P.78)
<デジタル庁などが仕様に疑義 マイナ署名関連の一部機能を停止>
弁護士ドットコムの電子契約サービス「クラウドサイン」で、マイナンバーカード署名付きファイルのダウンロード機能に問題が発覚しました。ダウンロードしたPDFに電子証明書の失効情報が含まれていたことが判明し、デジタル庁と総務省が公的個人認証(JPKI)法の趣旨に照らして疑義があると判断。同社は2026年6月17日に同機能の提供を停止しました。
同社は2025年4月に日本初のこの機能を提供開始した経緯があり、国際標準規格「PAdES」に準拠した長期署名(LTV)フォーマットを実現するため失効情報を含めていたと説明しています。しかしJPKI法は失効情報の外部提供を厳しく制限しており、行政機関などに限定して「オンライン証明書状態確認プロトコル(OCSP)」や「執行リスト(CRL)」へのアクセスを認める仕組みのため、今回の仕様は法の趣旨に反すると判断されました。
専門家は、OCSPの利用をここまで制限するのはJPKI法以外に例がなく、国際標準のPKI仕様とは異なると指摘。マイナンバーカードの前身である住民基本台帳カード時代の民業圧迫防止という背景が今も規制として残っている状況で、法改正の必要性を訴えています。今回の機能停止は、マイナンバーカードを国際標準に沿った電子署名基盤とするか、独自制度を維持するかという、JPKI法見直しの契機になる可能性があります。
※個人情報保護規程もそうですが、日本独自は止めてほしい。
【社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第324回】(P.92)
<AI利用やDXは世界中で失敗 日本の強みを生かせば成功へ>
ITを使った事業改革は世界的に失敗が目立ちますが、日本企業には成功できる条件があるという主張が紹介されています。出典はCognizant Technology Solutions日本法人が2026年6月から7月にかけて公開した5回シリーズのブログ記事です。
第1回では、改革の多くが価値を生まない根本原因として「設計思想の不在」を指摘します。顧客や従業員にどんな体験をしてもらうかという「体験設計」が欠けているため、目的が曖昧になったり、評価指標が技術偏重になったり、新旧システムが統合されなかったりする問題が起きるといいます。
第2回・第3回は失敗の具体例と対策です。業務効率は上がったのに顧客体験の評価が下がった例や、AIエージェントによる自動化は実現したもののガバナンスが不備だった例を挙げ、「リスクに比例した監視」「撤回可能性を中核に据える」など5つの設計原則を示します。
第4回は、CEOが経営会議で問うべき質問を5点提示。「IT投資は効率化に向かっているか、価値創造に向かっているか」といった観点が挙げられています。
最も興味深いのが番外編の第5回です。日本企業の強みとして「品質への執着」「長期的な顧客関係」「現場知の体系化」「信頼を重んじる文化」を挙げ、これらを生かす処方箋を3点提示しています。①速さより強さを重視する意思決定、②品質会議や顧客満足度委員会などの既存の会議体にITガバナンスの議題を組み込む、③顧客満足度や品質指標など既存の経営指標を「体験設計の質を測る指標」として再定義する、というものです。
日本企業には、こうした意思決定のスタイルや会議体、指標がすでに存在しているため、そこにITを追加するだけでよいという発想です。AIやDXの話を「他人事」と捉えがちな組織でも、品質や顧客信頼の話であれば経営層から現場まで関心を持ちやすいという指摘は、社内での改革の切り出し方を考える上で参考になりそうです。ただし前提となる「長期視点・品質志向・信頼の文化」が実際には崩れている組織もあり得るため、まずは自社にその土台が本当にあるかを見極めることが重要だと言えます。
※このブログは初めて読みましたが相当深い話が書かれています。お時間を見つけて読まれてはいかがでしょう?
以上
