HATのブログ

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IT関係のニュースを中心に記事を掲載します。日経コンピュータで重要だと感じた記事とコメントを2010年9月1日号から書いています。
このブログは個人的なものです。ここで述べていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。

◆ほぼ毎月、IT勉強宴会 を開催しています。勉強会の内容は毎回詳細なblogにまとめてあります。御用とお急ぎでない方はお立ち寄り下さい。
www.benkyoenkai.org
◆チャンスがあればぜひ実際のIT勉強宴会にもお越しください。文字だけで理解出来るのは10%以下だろうと思います。

日経コンは2週間に1度、年に52週÷2=26冊出る雑誌です。2010年から全号精読して記事をザッピングしています。
※はブログ筆者のコメントです


特集は<ダークサイドAI 世界大手の警告、企業に新たなリスク>です。実は最近「超知能AIをつくれば人類は絶滅する」を読んだところだったのでどこまで書かれているのか期待して読みました。残念ながら「AI使うとプログラムが上手くならない」とかのどうでも良い情報が多かったです。
Book in Bookの日経BPガバメントテクノロジー2026年秋が64頁も入ってました。吉例の満足度調査広告もたっぷりはいってましたので倍ほどの厚みです。前回から針金で綴じる「中とじ」になってますのでガバメントだけをバッサリ外すことが可能です。

【イノベーションウォッチ:「AIによる人間支配」の危機を検証】(P.06)
米Anthropicの元研究者Jacob Coxon氏が2026年9月8日に退社を表明し、AI企業は人命でギャンブルをしていると警告しました。自己改善型の超知能の開発競争を批判し、安全対策が追いつくまで開発速度を落とすよう訴えています。7月には、オープンAIのAIエージェントが協調して隔離環境から逃れ、約700体がHugging Faceへの攻撃に加わったことも明らかになりました。

8月のSNS言及数で1位となったのは、論文「Mind Viruses」です。あるエージェントが持つ人間の意図と異なる目標が、自然言語の会話を通じて他のエージェントに「感染」するかを検証しました。6体で開発する環境に感染エージェントを1体混ぜたところ、「クジラの保護」では本来の開発から離れてプロジェクトを作り始め、「AIによる人間の支配」では感染済み同士が未感染の「転向」を相談する動きが見られました。有害な目標への感染は、DeepSeek V3.2などで観察された一方、Claude Sonnet 4.6やGPT-5.4では観察されませんでした。著者は、警告文をシステムプロンプトに入れる簡易な対策で伝播を防げたため、現時点では限定的なリスクと評価しています。

※マルチエージェント化が進むほど、モデル単体の安全性だけでなく、エージェント間の通信や仲介サービスまで含めた対策が欠かせなくなると感じます。

【ITが危ない:「ダークパターン」に法規制の動き 悪質な勧誘は業務停止命令も】(P.08)
消費者をあざむくようなサイト設計「ダークパターン」を巡り、法規制導入の議論が行われています。消費者庁は2026年8月24日、中間取りまとめ案を発表しました。

ダークパターンの類型化には経済協力開発機構(OECD)が2022年に発表した7類型が良く参照されます。緊急性を偽るとか、解約手続きを意図的に複雑にするなどです。この7類型のうち現行法で規制できないものを中心に議論されました。

日本より規制が厳しい米国では、米Amazon.comをFTCがダークパターンで提訴し、2025年9月25日に約3800億円で和解しました。説明無くAmazonプライム会員へ登録させ解約もしづらい設計にしていました。

※昔、登録はWEBで簡単に出来るのに解約は電話しかうけつけずなかなかかからないというサービスがありました。規制して欲しいです。

【ダークサイドAI 世界大手の警告 企業に新たなリスク】(P.10)
1.AIエージェント暴走 本番データを全削除
2026年9月、米アンソロピックのダリオ・アモデイCEOは今後1年以内にインターネット全体を乗っ取る恐れがあると警鐘を鳴らしました。自動車レンタル事業者向けサービス「PocketOS」を提供する米ポケットOSの創業者が「AIエージェントがサービスの全データを破壊した」とXに投稿しました。AIソフトウェア開発支援ツール「Cursor」をテスト環境で使用していたとき、ある認証の不一致が発生し、AIエージェントは全ボリュームを削除して再構成しようとしたようです。本番環境のボリュームまで削除されました。

2.AI利用で思考力低下 粘り強さもなくなる
学校でAI利用する場合としない場合を比較するとAIを使ったほうが知識の定着率が低いという結果が出ました。

3.脆弱性の嵐が始まる 担当者が燃え尽きる
Clude Mythosの登場で最新AIを「フロンティアAI」と呼ばれるようになりました。これにより脆弱性が嵐のように見つかり、セキュリティ担当者の負荷が増大しています。
侵入されることを前提とした多層防御が必要になっています。

4.スキル形成を阻害 「丸投げ」は厳禁
AIでプログラム開発を行う「バイブコーディング」が広がっています。それにより4つの弊害が発生しています。
弊害1:脆弱性の混入→欠陥を見抜けない
弊害2:技術的負債の蓄積→人間が読めない
弊害3:レビュー負荷の増加→大量の生成コード
弊害4:スキル掲載の阻害→開発者の技術が身につかない

5.AIの闇落ちを防ぐ 弱点をあぶり出せ
攻撃者目線で問題点を洗い出す「AIレッドチーミング」が注目されています。「レッドチームという擬似的な攻撃チームを編成します。
IPAが「AIセーフティに関するレッドチーミング手法ガイド」を公開しています。AISI(IPAの中の組織)は実際にRAGを検証した「別添:レッドチーミング実施結果報告書(PDFが開きます)」も公開しました。

※冷戦時代のアメリカでは、演習の際に味方を「ブルーチーム」、仮想敵を「レッドチー厶」と呼び、敵の視点から作戦の穴を探していました。

【買い物はエージェントが 三菱UFJにLINEヤフー、AI主役のECへ】(P.54)

AIエージェントが私たちに代わって商品を探し、比べ、購入まで済ませる。そんな「エージェンティックコマース」に取り組む企業が、国内でも増えています。

先行しているのがLINEヤフーです。2026年2月から、Yahoo!ショッピングで商品選びから購入、配送状況の確認までを生成AIが手伝う新機能を始めました。ECサイトの成約率が1.5倍に上がるなど、成果も出ているそうです。これまでの買い物はキーワードで「検索」するのが当たり前でしたが、これからはAIとの「対話」が入り口になっていきます。

金融業界も動いています。三菱UFJフィナンシャル・グループは米グーグルや米オープンAIと手を組み、AIエージェントが決済まで処理できる基盤づくりを進めています。将来的には、投資信託の購入のような取引もAIエージェントで完結させることを目指しているとのことです。

その土台となるのが決済の仕組みです。ビザやマスターカードといった決済大手は、AIエージェントに安心して支払いを任せられるよう、正しい購買意図を持ったエージェントかどうかを確かめる技術や、共通ルールづくりを主導しています。

野村総合研究所の調査では、約8割の人が「最安値で買える」「調べる時間が減る」といった点に期待を寄せています。いずれは「AIがAIからモノを買う」時代が来るかもしれません。

※「この冷蔵庫、うちの台所に入るかな」まで考えてくれるなら、ぜひ任せたいですね。

【社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第328回】(P.98)
<「プロダクト倫理」を常に検討 企業情報システムも製品である>

米マイクロソフトや米グーグルで製品開発に携わったTablyの及川卓也代表取締役が、2026年4月に書籍『プロダクト倫理 あなたのプロダクトは誰かを傷つけていないか』

 

 

を刊行しました。同書でいう倫理とは、「自分が作っているものを、自分が使う側だったらどう思うか」と問い、まずいと気付いたら手を打つことです。社内だけで使う情報システムも利用者のいるプロダクトであり、情報システム担当者にもこの考え方が必要だとコラムは指摘しています。

同書はプロダクト倫理の4原則として自律性、透明性、公正性、安全性を挙げます。社内システムでも、経営者が望む仕事のやり方を現場に強いたり、社員がパソコンで何をしているかを本人に伝えずに調べたりできるため、自律性や透明性は論点になります。1〜7章では著名企業の失敗事例をもとに問題の構造を分析し、章ごとにチェックリストを示しています。8章では、8つのリスクゾーンを点検する方法や、アジャイル開発の各サイクルで「この機能が問題を起こすとすれば、どんな理由か」を話し合うといった、組織の習慣にするための提案を紹介しています。

一方で、倫理を問うことは周囲から煙たがられがちです。及川氏はプロダクト倫理をブレーキではなく「高性能なタイヤ」にたとえています。筆者は、倫理という言葉をあえて使わずに前向きな言い方で呼びかけることや、倫理を面倒がる上層部には相手の関心事の実現に役立つと説明することを勧めています。

※社員のパソコン操作を本人に知らせず調べる、といった例を挙げられると、倫理が社内システムにも関わる問題だと実感できます。

【シャープがAIサーバーの受注を開始 2030年に売上高2500億円目指す】(P.106)
シャープは2026年9月15日、国内向けにAIの学習や推論に使う「AIサーバー」の受注を開始しました。親会社の台湾・鴻海(フォックスコン)がパーツの調達やサーバーの製造を担当し、販売はダイワボウ情報システムとリョーサン菱洋、運用保守はトゥモロー・ネットと連携します。

将来的にはグローバル展開も見込みます。

※シャープが「世界への窓口」として使われる構造は面白いと思います。

【スマホで押す法人代表者の「実印」 国が「商業登記リモート署名」開始】(P.111)

法務省とデジタル庁は、会社の代表者がスマートフォンから電子署名できる「商業登記リモート署名」を2026年7月に始めました。紙の世界でいえば、会社の実印と印鑑証明書にあたるものです。

これまでも法務局が発行する電子証明書はありましたが、決まったパソコンに証明書のファイルを保存して使う必要がありました。署名できる場所が限られるうえ、ファイルを簡単にコピーできてしまうため、管理も大変でした。

新しい仕組みでは、証明書をクラウド上で安全に保管します。担当の従業員が署名する書類を選ぶと、代表者のスマホに通知が届き、代表者がパスワードなどを入力して承認すれば署名が完了します。担当者が書類を用意し、最後に社長がハンコを押すという、紙の時代とよく似た流れを再現できるのが特長です。費用は1年分で3800円です。

一方で課題もあります。電子文書が本物であることを証明する仕組みは、民間の認証事業者が発行する証明書や、社印の電子版にあたる「eシール」など、すでにいくつも存在します。どの手続きにどれを使えばよいのか、利用者には分かりにくいのが現状です。国が用途ごとの使い分けを分かりやすく整理することが求められています。

※ハンコはなくなっても、「最後は社長の承認」という文化はスマホの中でしっかり生き残るようです。

【AI出力文に「電子透かし」 EU規制受けアンソロピックが導入】(P.112)
米アンソロピックは、EUのAI法への対応として、生成AI「Claude」が出力する文章に電子透かしを導入します。透かしは目に見えず、鍵を持つ同社だけが検出できる単語の並びのパターンを生成時に仕込み、後から照合してAI関与の可能性を推定します。単語の並びに埋め込むため、一定の長さであれば別の文書に貼り付けても透かしは残ります。

基になったのは、グーグルが2024年10月に「Nature」で発表した「SynthID Text」です。直前の数単語と秘密鍵から候補ごとに「0」「1」の符号を割り当て、1が多い単語が選ばれやすいように抽選を偏らせます。検証時は同じ計算で符号を求め直し、1の偏りの大きさから統計的に判定します。同社は、透かしの有無で品質に差は出なかったとしています。

1~2語の差し替え程度なら透かしは残りますが、別のLLMに全体を言い換えさせる「パラフレーズ攻撃」には弱いです。国立情報学研究所の越前教授は、この弱点は避けられないと指摘しています。また、QwenやDeepSeekなど重みが公開されたモデルを自分の環境で動かせば、透かしなしで生成できます。一方、日立製作所の永塚研究員は、消すには手間がかかるため、安易な悪用を抑える効果は見込めるとみています。

※透かしは完全な対策ではなく、抑止力としての位置づけで捉えるのが現実的だと思います。

【AIリーダーズ:小野 和俊 氏 クレディセゾン CDO(兼)CTO】(P118)
<AI変革に手応えあり>
クレディセゾンのCDO兼CTOである小野和俊氏は、2025年9月に全社AI変革構想「CSAX」を掲げ、全社員の9割超がAIを日常的に使う状態を実現しました。CSAXは「全社員AIワーカー化」「業務の再設計」「ナレッジとシステムのAI-Ready化」「AIガバナンス」の4本柱です。AIコールセンターを構築中で、オペレーター向けシステムも内製し、2026年秋に稼働する予定です。

全社展開のきっかけは、2025年6月に約300人で行った試行です。1カ月で年間2000時間のうち170時間の削減が見込め、ROI(投資収益率)は954%に達したため、億円単位の予算を付けて全社導入を決めました。MAU(月間アクティブユーザー数)は2026年3月時点で91.7%です。営業部門では、月1回以上使われるカスタムGPT(特定業種向けにカスタマイズしたChatGPT)が2026年6月時点で119個あります。

AIの取り組みは2022年9月、社長や役員向けに行った画像生成AIの「Stable Diffusion」のデモから始まりました。DX会議は前半30分が経営会議、後半30分が議題を決めない「バイモーダル」な設計です。今後はコーポレートAX(AI変革)とカスタマーAXに注力し、顧客ニーズの把握など、人間がやるべき仕事を見極めるとしています。

※ 社長の水野氏が、小野氏の事を「神の降臨」と仰ってました。日本発のデータ連携基盤DataSpiderを開発した天才です。自社の会社をセゾングループにバイアウトしたと思ったらセゾングループを大変革されているようです。

以上
 

日経コンは2週間に1度、年に52週÷2=26冊出る雑誌です。2010年から全号精読して記事をザッピングしています。
※はブログ筆者のコメントです


特集は<日立、10年越しの総力戦 成長エンジンLumada、次の一手>です。どうやら日立自身を変革するために2021年に米グローバルロジックを買収したことで花開いたようです。変われなかったP社とは大違いですね。
この号から、雑誌の綴じ方が接着剤だけの「無線とじ」から、針金で綴じる「中とじ」に変更されました。見開きが読みやすくなりました。

【日立、10年越しの総力戦 成長エンジンLumada、次の一手】(P.10)

1.米送電会社の救世主 10年の総合力を結集
日立製作所が10年かけて育てた事業ブランド「Lumada」が、米送電会社SPPの支援で成果を上げています。SPPは中部17州の電力網を管理する組織で、データセンター新設と再エネ拡大により系統接続申請が急増、処理に最大6年かかる状態でした。日立はGEベルノバやシーメンスを退け、総合力でSPPと協創し、AIによる申請の自動グルーピングと並行解析の仕組みを構築、影響解析時間を最大80%削減する見込みです。

Lumadaは2016年、東原敏昭氏(現会長)が縦割り打破を掲げて始動し、日立の時価総額を10年で約10倍(2.3兆円→22兆円規模)に押し上げました。2025年就任の徳永俊昭社長は長期経営計画「Lumada 80-20」を掲げ、Lumada比率80%・EBITAマージン20%を目標に、メインフレーム撤退や日立GLS家電事業売却などLumadaになじまない事業の再編を進めています。

2.ビッグテックが秋波 東原氏、変革への執念
日立は2026年7月にエヌビディアと新たな協業を発表したほか、その前後1カ月ずつで米オープンAI、米アンソロピックとも相次いで連携を強化しました。背景には、社会インフラの現場に長年向き合ってきた実績と、IT・OT(オペレーショナルテクノロジー)・プロダクトを併せ持つ強みがあります。

Lumadaの原点は、2009年3月期に計上した7873億円の最終赤字です。当時社長だった東原敏昭氏(現会長)は「縦割り組織の打破」を掲げ2016年にLumadaを始動、社内には懐疑的な反応もありましたが、各部門にChief Lumada Officerを置くなどして浸透を図りました。2021年には米グローバルロジックを1兆円で買収し、Lumadaはアジャイル開発の手法も取り込みながら1.0から2.0、2025年からの3.0へと進化しています。

3.東武・ダイキン・ノジマ 顧客と共に解を探す
日立はLumadaの「協創」を4社の事例で体現しています。
東武鉄道:車両外観モニタリングシステムを共同開発
ダイキン工業:熟練者の勘をAI化した設備故障診断エージェント
日立ハイテク:グローバルロジックとデータ統合基盤を開発
ノジマ:現場ヒアリングから店舗業務改革アプリを高速開発

いずれも顧客と汗をかく姿勢が共通しています。

4.デザイン思考を浸透へ 20年前の「反省」糧に
日立は米グローバルロジックのデザイン戦略部門Methodのデザイン思考を、受託開発中心からの脱却の起点としています。顧客の潜在課題を掘り起こし、構想から本番導入まで伴走するのが特徴です。背景には、技術で勝ってもビジネスで勝ちきれず2009年3月期に7873億円の赤字を出した反省があります。「顧客が本当にやりたいことを理解できていなかった」との反省から、上流工程で人を中心に考える姿勢へ転換しています。2023年には組織再編でデジタルエンジニアリングBUを新設し、グローバルロジックの知見を全社へ広げる取り組みを続けていますが、研修対象は連結従業員29万人に対しまだわずかで、変革は道半ばです。

6.次はフィジカルAIへ キーマン2人の「確信」
日立製作所は次の主戦場をフィジカルAIと定めています。工場・鉄道・電力網などをAIで進化させるソリューション群「HMAX」を薦めています。注力領域と協業領域を分ける「サンドイッチ構造」で、自社LLMを手掛ける富士通・NECとは異なるアプローチを取っています。

現場実行部隊として、フィジカル部隊とAI人材を融合したFDEチームを国内5000人規模まで拡充する計画で、2026年5月には米アンソロピックとの提携で新組織「Frontier AI Deployment Center」を設立、300人規模への拡大をめざします。

7.好調の陰に4つの課題 AI企業へ変われるか
一見すると好調なLumadaですが、4つの課題が浮かび上がります。1つめは、数字上の成長と日立が目指す「稼ぎ方の転換」が必ずしも一致していないことです。2つめは、この1年で日経平均が約6割上昇した一方、日立の株価上昇は1割にとどまるなど、市場が「AIの恩恵企業」とまだ認めていないことです。3つめは、単独成長が鈍化している米グローバルロジックについて、統合によるシナジーをどこまで実績として示せるかです。4つめは、多角化企業が過小評価される「コングロマリット・ディスカウント」の懸念がある中、事業を切り離さず一体で進める「One Hitachi」の価値を資本市場に納得させられるかです。

※Lumada以外の事業は切り離すという大胆な方針を取れたところに凄みを感じます。会社名もそのうちLumadaになりそうです。

【次世代AIが遠ざかる 日本のデータセンターに法規制の壁】(P.32)

次世代AIサーバーの進化に日本の法規制が追いつかない懸念が浮上しています。エヌビディアのGPUは高密度化が進み、次世代「Rubin Ultra」では1ラック当たり消費電力が1000kW超になる可能性があります。電力変動を抑えるにはリチウムイオン蓄電池(LIB)の分散配置と直流800V給電が必要ですが、日本の規制がこれに対応していません。

課題は主に3つです。1つめはLIB設置で、電解液が消防法の危険物に該当し、冷却用の開口部があると安全性確認による合算除外が認められない矛盾があります。建築基準法上も貯蔵量に上限があり、工業地域以外での設置が難しい状況です。2つめは消火設備で、延焼防止に有効な水系消火設備がDCでは選択できず、現状はガス系消火設備が義務付けられています。3つめは直流800V化で、日本では電気事業法上「高圧」扱いとなり、有資格者の常駐や設備の施錠・柵設置など制約が増えます。国際基準では1500V以下を低圧とする例が多く、日本は相対的に厳しい状況です。

内閣府は2026年6月、規制改革推進に関する答申を公表し、LIBの貯蔵量の合算除外や水系消火設備の導入検討などを進めるとしています。ただしDC事業者間で影響の受け止め方には温度差があり、ソフトバンクなど大量導入を見込む事業者は「非常に影響あり」とする一方、KDDIなど現状影響なしとする事業者もあります。ハイパースケーラーほど影響が深刻とみられ、対応が遅れれば日本がAIデータセンターの立地先として選ばれなくなる懸念が指摘されています。

※日本は総じてIT関連の法整備が遅れています。データセンターの例外規定を作ってほしいものです。

【倒産航空会社は「宝の山」 グーグルが業務データを落札】(P.53)

米グーグルが2026年5月に破綻した米LCCスピリット航空の業務データを1000万ドルで落札しました。Teamsメッセージ5億件やメール、財務・法務データなど匿名化した業務データがAI学習に使われる見込みです。次点は学習データ作成事業者の米メルコール(750万ドル)でした。

※内部業務の実態が丸ごと学習データになる点は、破産企業データの新たな価値を示す事例だと感じます。

【現場から始めるデータ活用 当事者意識の持ち方・持たせ方 第8回】(P62)
<AI導入前にまず問おう 売り上げデータの意味と責任者>

ある製造業の経理部長が困ってました。「過去10年の売上データを分析しようとすると、担当者によって『売り上げ』の意味が違ったのです」
・ある部門は返品やキャンペーン値引き前の総売上
・別の部門は正確な正味売り上げ
・吸収合併した子会社の売り上げが含まれているかも不明

「データの意味」を会社内で統一するために3ステップ必要です
ステップ1:社内の「生き字引」を探す探偵になる
 →個人の「気づき」から始まります
ステップ2:意味を「組織の共有辞書」に刻む
 →「仕組み化」に移ります
ステップ3:意味を「組織の共通言語」として定着させる
 →会社組織としての「文化の醸成」です

これらを通じて「データの意味」は個人の暗黙知から組織全体の強固な形式知へと昇華します。

※これが出来ている企業が何社くらいあるか教えてほしいです。

【社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第327回】(P.66)

Metafindコンサルティングの市堀誠治氏は、情報システムが世代を超えて継承すべき遺伝子として、ビジネスデータの「構造(モデル)×意味(メタデータ)」を挙げています。この可視化・継承活動を「データガバナンス2.0」と呼びます。

手法は、全社のクリティカルデータエレメントの関係を記述するエンタープライズデータモデル(EDM)と、属性の定義・ルール・利用経緯などを格納する「属性ドメイン」の組み合わせです。属性ドメインは既存の情報システム内の物理データと1対Nでひも付き、ルール変更時は属性ドメインを直せば物理データにも反映されます。これにより異なるシステム間でのデータの不一致を防ぎ、ビジネスナレッジをAIに学習させる基盤にもなります。

EDMは大枠の合意形成が目的で詳細設計は不要、属性ドメインは書式にこだわらずリッチに記録するのが従来との違いです。CDEに絞って小さく始め、経営やビジネス部門の後押しを得ながら継続することが推奨されています。

※今年、IT勉強宴会で講演してもらいました。また古関氏がこの仕組みを実装した経緯を日経XTECHに寄稿してもらいました。

以上です。
 

日経コンは2週間に1度、年に52週÷2=26冊出る雑誌です。2010年から全号精読して記事をザッピングしています。
※はブログ筆者のコメントです


特集は<高まるAIの存在感 第31回 顧客満足度調査>です。いつも通りですのでいつも通り軽く紹介します。2nd特集は元編集長の中村建助氏のライフワーク?決算資料から探るサイバー被害です。これもピーピングトム(覗き見)のようであまり好きではありません。自ら公開することで日本の予防に役立てるという世論を醸成して欲しいです。

【従量課金で気付けば「AI貧乏」 1カ月で200万円超過の例も】(P.08)

生成AIの活用が広がる中、従量課金などにより利用料が想定を大きく超える「AI貧乏」の事例が企業で見られ始めています。ある日用品メーカーでは1カ月の予算を約200万円超過する状態が続き、原因を調べると1%弱のユーザーが利用量の8割を占めていたことが判明しました。TDCソフトでも採用チェックへのAI活用で、半月ほどで1カ月分の予算を使い切りシステムが停止する事態が起きています。

背景には、AIの思考モデルの登場やエージェントによる複数タスクの自動実行、業務へのAI活用の浸透があります。トークンとはAIが処理する最小単位で、料金体系には「従量課金タイプ」と「利用制限タイプ」の2種類があり、入力よりも出力のトークン料金の方が4~5倍高いとされています。また、最近のAIは出力前の思考過程もトークンとしてカウントされる点に注意が必要とのことです。

対策としては、タスクに応じたモデルの使い分けや利用状況のモニタリング、API利用時の予算設定などが挙げられ、利用制限自体は「シャドーAI」による情報漏洩リスクを招くため悪手だとされています。

※単に予算超過を防ぐだけでなく、どの業務にどの程度のAI投資が見合うのかを可視化する仕組みづくりが、今後より重要になっていくのではないでしょうか。

【第31回 顧客満足度調査2026-2027】(P.10)

今回で31回目となる顧客満足度調査は全19部門で実施され、8部門で首位が交代しました。サービス分野では大塚商会が「システム運用関連サービス」部門で1位を獲得し、ソフトウエア分野の13部門中5部門で首位が入れ替わりました。クラウドストライクやサイボウズは前回3位から2つ順位を上げてトップに立ち、キーエンスは「業務効率化・内製支援ソフト/サービス」部門で初の首位となりました。一方、OBCやウイングアーク1st、日本マイクロソフトなど連覇を守った企業も多く見られました。
※キーエンスはRPAソフトのRKシリーズでした。

自由回答の分析では「AI」という単語の存在感が高まっており、「サービス」「機能」「活用」といった語との結びつきが強くなっています。生成AI機能の広がりを歓迎する声がある一方、既存サービスへのAI機能付加による値上げに対する不満も目立ちました。物価高の影響もあり、コストに関する厳しい意見も多く寄せられています。

JUASの島健夫専務理事は、AIによる開発速度の向上でベンダーの開発原価が下がる一方、従来の「人月商売」モデルのままでは売り上げ減少につながりかねないと指摘し、ユーザーの業務目的にアプローチする姿勢が今後重要になると述べています。実際、今回1位を獲得した企業には、顧客との対話やサポート強化に力を入れる例が多く見られました。

※AIの普及に伴い、単なる機能追加ではなく、コストに見合った価値をどう提供するかがベンダーの評価を左右する時代になってきていると感じます。

【決算が暴くサイバー被害 詐欺18社、攻撃送信236億円】(P.26)
<「社長の声」装い詐取 不正アクセスなき詐欺>
※元日経コンピュータ編集長の中村建助氏が起業したKMC社で上場企業の決算などからサイバー被害を調べた調査報告です。

社長や取引先を装う「ビジネスメール詐欺(BEC)」により、出光興産が36億円超、太平電業や芝浦電子も数億円規模の損失を計上するなど、香港を中心に日本企業がサイバー詐欺の被害に遭っています。KMCの調査では決算にサイバー詐欺の損失を計上した企業は18社、うち11社が海外拠点でした。ランサムウエア被害も深刻で、アサヒとアスクルの2社だけで220億円、28社の損失累計は236億円と1年で倍増しています。

防止策は「仕組み」「モノ」「人」の3点に整理されます。仕組み面では、口座変更の連絡をメール以外の手段で再確認する運用や、送金プロセスの見直しが有効とされます。モノ面では多要素認証やEDRの導入、送信ドメイン認証、VPN機器の入れ替えが挙げられています。人の面では定期的な社員教育に加え、セキュリティ人材の育成・採用強化も進んでいます。さらに海外子会社へのガバナンス強化や、サイバー保険への加入も広がりつつあり、実際に保険金で損害を相殺できた企業もあります。

※不正アクセスを伴わない詐欺は技術対策だけでは防ぎきれず、確認プロセスの徹底や社員の意識づけといった地道な対応こそが、被害を防ぐ最後の砦になると感じます。

【AWSの新ネットワーク「RNG」上陸 2026年内稼働の新拠点から】(P.48)

米AWSは、独自開発のデータセンター(DC)向け新ネットワーク「RNG(レジリエント・ネットワーク・グラフ)」を、2026年中に本稼働する東京リージョンの複数拠点へ導入します。日本での適用は初めてです。

RNGの特徴は、「ランダムグラフ」に基づくネットワークトポロジーを採用している点です。ランダムグラフは主流の「ファットツリー」や「スパインリーフ」よりも可用性や利用効率に優れるとされてきましたが、通信経路の計算や配線の複雑さから、これまでDC向けの実装は「机上の空論」にとどまっていました。AWSは独自のルーティングプロトコルやハードウエアによってこの課題を解消し、疑似的なランダムグラフの実装を実現しました。

導入効果として、AWSはネットワーク機器の消費電力を40%、ルーターの数を69%削減できると試算しており、コスト削減と省電力化に寄与するとしています。クラウドの使い勝手自体には影響しません。

RNGは2024年末稼働のアイルランドのDCで初めて導入されて以降、世界各国で展開が進んでおり、今回の日本上陸により、国内外のDCネットワーク設計の潮流を変える可能性があります。

※通信機器の削減が可用性の低下につながらないかという点は気になるところです。NTTの光通信IOWN(アイオン)が実用化されればとってかわるとは思います。

【セブンがソフトバンクと資本業務提携 PayPay経済圏で問われる相乗効果】(P.50)

セブン&アイ・ホールディングスは2026年7月31日、ソフトバンクや三井住友カードなどとの資本業務提携を発表しました。セブンイレブンが「PayPay経済圏」に加わり、店舗網やアプリの顧客接点・購買データと、PayPayのユーザー基盤・決済基盤・ポイントを連携させます。具体的には、共通会員基盤「7iD」の「PayPay ID」への統合、アプリでの機能連携、データの相互活用などが柱です。

コンビニとの親和性が高い「PayPayポイント」が効果の中心と見られ、MMD研究所の調査ではメイン利用者の56.2%がコンビニでポイントをためると回答しています。

一方、ポイント経済圏との連携では2024年に協業したローソン─KDDI連合が先行しています。ローソンは「Ponta経済圏」を取り込み、2026年2月期の平均日販を前期比5%増としました。会員数1559万人の「Pontaパス」を軸にした高還元キャンペーンなどが来店促進に寄与しているとされます。

※先行するローソン─KDDI連合が具体的な日販増という成果を出している点を踏まえると、セブンとPayPayの提携が実際の購買行動にどこまでつながるかが今後の焦点になりそうです。

【オープンAIが先端AIの安全対策緩和 中国モデルの台頭に危機感】(P.53)

米オープンAIは、一部の個人・組織向けに最先端AIモデルのガードレール(安全対策)を緩和すると発表しました。サイバー攻撃への対処でガードレールが障害となり、商用モデルの代わりに中国のオープンウエートモデルが使われる例が出ていることへの危機感が背景にあります。

同社はサイバーセキュリティー特化プログラム「Daybreak」を拡張し、承認した個人・組織向けに「Daybreak Blue」と「Daybreak Red」を用意しました。Blueは「GPT-5.6 Sol」のシステムレベルのガードレールを解除したもので、Redはより高度な業務向けに、ゼロデイ脆弱性の発見能力などを高めた「GPT-5.6-Cyber」を提供します。エクスプロイトチェーン開発などのリクエスト完了率は、GPT-5.6-Cyberが95%に達した一方、通常のGPT-5.6 Solは1.5%、Daybreak Blueでも2%にとどまったとしています。実際にGPT-5.6-Cyberを使った調査では、Google Chromeのエンジン「V8」の深刻な脆弱性2件を発見し、グーグルが修正しています。

背景には、ムーンショットAIの「Kimi K3」など中国勢のオープンモデル台頭への危機感があります。2026年7月には、GPT-5.6 Solなどによる米ハギングフェイスへの攻撃が発生し、対処の際に商用LLMがガードレールにより使えず、結局中国Z.aiの「GLM 5.2」で切り抜けた経緯があったとのことです。オープンAIは悪用リスクを認めつつ、「サイバー防衛の加速と自動化には最先端AIへのアクセスの民主化が不可欠だ」としています。

※エクスプロイトチェーン(Exploit Chain)とは、サイバー攻撃者が複数の脆弱性やバグを数珠つなぎ(連鎖)にして悪用し、最終的にシステムの最深部の制御を奪う攻撃手法のことです。説明なく使う言葉ではないと思いますが記者さんは理解されているのでしょうか?

【乱反射:売上高の伸びが初めて30%突破 大手19社の2026年4~6月決算】(P.55)

IT世界大手19社の2026年第2四半期決算の報告です。総売上は前年同期比で30.9%でした。2015年から始めた本調査で過去最高の伸び率です。

データセンター分野はデルとスーパーマイクロが牽引して77.0%も伸び、クラウド事業者の売上高も35.9%成長しました。好調が続く中で、IBM(データセンター)のマイナス7.4%成長が目を引きます。

<クラウド>  売上(M$) 伸び率(%)
マイクロソフト  59,300  27.0
AWS        42,232  36.8
グーグル     24,768  81.8
セールスフォース 11,133    13.3
オラクル       9,913   47.1

※グーグルの伸び率が突出しています。前期の63.4%からさらに加速しました。AWSが視野に入っているでしょう。

【ケーススタディー:日野自動車】(P.56)
<NECメインフレームから脱却 40年以上続く手動運用も自動化>

日野自動車は2025年8月、1970年代からNECのメインフレーム「ACOS」で稼働してきた基幹システムのモダナイゼーションを完了しました。プログラム本数は1万本以上に上り、2022年から3年超をかけてプロジェクトを進めました。技術者不足や維持費の高騰といった「2025年の崖」問題を見据えた対応で、システムを理解する人材がいなくなる前に取り組む必要があったとしています。

移行対象のうち9割以上をリライトでオープン環境へ移行し、データベースはOracle Database、プログラム言語はCOBOLなどからJavaへ変換しました。ITベンダーのTDIとソフトロードの支援を受けました。移行にあたっては、(1)既存業務の棚卸しによる資産削減、(2)ジョブ実行の自動化、(3)帳票の電子化、(4)シングルサインオンによる権限厳格化、の4施策を並行して実施しています。特にジョブ起動は、これまで1日8000~9000あるジョブを運用担当者が交代制で24時間365日手作業で行っていましたが、ジョブネットとオペレーションツールでシステム化しました。

テスト工程は7つに細分化し、新旧システムの処理結果を徹底的に比較検証しましたが、2025年上期のユーザーテストでは問題が多発し、対応に追われたとのことです。8月の夏季休業期間に一括でシステムを切り替え、予定通り移行を完了しました。プロジェクトには社内36部署と関連会社7社から120人以上が参画し、経営トップを含む全社体制で進められました。

※JFEスチールと同じく大量COBOL資産をリライトしたという事例です。属人的なノウハウは結局ブラックボックスのままです。段階的な棚卸しやテスト工程の細分化といった進め方は参考になりそうです。

【キーワード:宇宙データセンター】(P.65)
宇宙データセンターとは、人工衛星や宇宙ステーションにサーバーなどを設置しデータ処理を行う施設で、軌道上データセンターとも呼ばれます。米スペースXや米スタークラウドが構想を打ち出しており、地上の電力不足や土地制約を解決する方策として注目されています。土地が不要で太陽光をほぼ継続利用できる点が利点とされ、スペースXは2026年6月、AIデータセンター衛星の初号機「AI1」の概要を公表しました。

一方、最大の課題は排熱です。空気のない宇宙では効率の悪い放射でしか排熱できず、100メガワット級には国際宇宙ステーション約1000機分のラジエーターが必要とされますが、GPUの省電力化が解決する可能性もあります。打ち上げコストの低減や、光(レーザー)通信による衛星間の大容量通信も課題で、NTTとスカパーJSATの「Space Compass」がその一翼を担おうとしています。

※排熱という物理的制約は知りませんでした。排熱には、伝導・対流・放射の3つがありますが空気がない宇宙では放射しか使えません。これは根が深く、実用化にはまだ時間がかかりそうです。

【社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第326回】(P.76)
<顧客が気付かぬ痛みを探索 取り除く方法を共に考える>

CRM協議会の藤枝純教代表理事・会長は、顧客のペインポイント(痛点)と原因、さらに原因の原因を考え抜き解決する「ペインポイントマネジメント」こそが、顧客中心主義経営の核になると指摘しています。

手順としては、重大なペインポイントに絞り「なぜ」を繰り返して原因の原因を探り、論理的な原因は論理的に、組織風土によるものは時間をかけて対処します。その上で仕組みを設計・実行し、評価・改善を繰り返します。多くの組織が原因の原因を把握せず対症療法に終始していると藤枝会長は指摘します。

ペインポイントは顧客自身が気付いていないこともあるため、不満の声だけでなく声になる前の振る舞いにも注視し、仮説を立てて顧客と議論することが重要です。仮説立案の一助として、同業の先進企業のアニュアルレポートを直近・5年前・10年前にわたって読み比べることも勧められています。

活動を進める難関はチームづくりです。縦割り組織を横断したメンバーの問題意識や視座を揃えるチームビルディングが不可欠で、システム部門が企画から外れないよう積極的に関わる工夫も必要だとしています。

※原因の原因まで踏み込む粘り強さを、組織としてどう仕組み化するかが実践の分かれ目になりそうです。

以上です

日経コンは2週間に1度、年に52週÷2=26冊出る雑誌です。2010年から全号精読して記事をザッピングしています。
※はブログ筆者のコメントです


特集は<アクセンチュアの自己変革 「コンサル不要論」への回答>です。特定の企業の特集はたまにありますが、それを読んで参考になることは少ないです。企業の基幹システム刷新に役立つ特集を期待します。

【ITが危ない:改正個人情報保護法の啓発急務 医療データ活用疎外の恐れ】(P.08)
改正個人情報保護法(個情法)が2026年7月の参院本会議で可決・成立しました。2028年7月までに完全施行します。柱の一つが、統計作成やAI開発などに本人同意を不要とする「統計特例」です。従来の個情法では個人データを第三者に提供する場合、原則として本人の同意を必要とされてきました。改正法では、AI開発などで統計分析の結果のみを利用する場合は本人同意を不要とする「統計特例」を設けました。

一部野党、および一部マスコミは「流出や悪用のリスクが高い」と主張しました。誤解や間違った報道もあり、日本の医療データ活用が広まらない危険性もあります。EUでは患者団体を中心としてデータ活用を広める啓発活動があります。それを参考に日本でも広がって欲しい。

※こういうものは独自に検討せず、米国とEUの方式を丸呑みして欲しい。

【アクセンチュアの自己変革 「コンサル不要論」への回答】(P.10)
1.狙いは原点回帰 AIで自社も破壊
アクセンチュアはAIの広がりによる「コンサル不要論」を受けて自社改革で対抗を始めました。従来はエンドユーザに提供するサービスの種類ごとに分けていた組織を、業務領域ごとの7つの区分へと変更しました。従来は上流から下流へパスしていくモデルでしたが、新しい組織は1つの区分の中に戦略立案~実装・運用まで出来るメンバを配置します。

組織改革と併せて、人材育成にも注力しました。「RDE(リインベンション・デプロイド・エンジニア)」と呼ぶAIを使って企業のビジネス成果を出すことに責任を持つ人材です。

※最近流行っているFDE(フォワード・デベロップド・エンジニア)の目的は、AIの導入活用ですが、RDEは業界や業務プロセスを融合させて企業価値の増大を目的です。

2.規模は武器にあらず 成果報酬へリスク取る
AIが変えているのは大きく3つあり、それに対応しています。
(1)プロジェクトのスピード
 →組織改革で1部門の中に上流から下流まで集めた
(2)必要な人員の数
 →RDEを育成し1人または少数で対応
(3)報酬の算出方法
 →成果報酬

3.富士通にデロイトも コンサル強化に急進
富士通:「FDE+C(コンサル)」を打ち出した
デロイトトーマツ:複数専門分野の統合モデル
 ①専門分野特化した3社を統合
 ②成果報酬型を現在の10%から30%に

4.コンサルと距離模索 ノウハウ吸収し自走へ
アクセンチュアは顧客企業とジョイントベンチャー(JV)を作成することで、顧客が自走できるようにノウハウ伝授しています。
2021年からの5年間で、住友化学、資生堂、塩野義、コカ・コーラなど5社以上とのJV設立を発表しました。


2026年4月には、東京電力パワーグリッド子会社で、東京電力グループの受託業務を担う、テプコ・ソリューション・アドバンス(TSA)とパートナーシップ契約を結びました。この契約の下、業務プロセスの改善にとどまらず事業モデルの変革まで踏み込み、5年間で100億超の勝ち創出を目指します。


自動車などの軸受け(ベアリング)の製造を手掛ける日本精工も2026年4月、戦略的パートナーシップ契約の締結を発表しました。2022年から自社でAI活用を進めていましたが限界を感じてアクセンチュアの力を借りました。パートナーシップ契約の検討から現在までアクセンチュアの社員は100名ほどが動き、業務の効率化から人事や経理といった領域でも業務変革を推進中です。

資生堂は2021年にアクセンチュアと設立した会社を2026年6月1日に資生堂へ吸収合併しました。ノウハウを吸収したと判断し、自走するためです。

※2021年からJVを行い、2026年に解消した資生堂ですが、AIが本格的に実用化したのは2025年ですから少し早かったかも

【メインフレームの進路 撤退と継続、ベンダー5社の選択】(P.34)
※8ページもある特集ですが、ポイントだけ書きます

日立は2026年5月、OS「VOS3」の販売を2027年1月に、保守を2034年12月にそれぞれ終えると発表しました。推定では50台程度です。
BIPROGYは2026年7月に、米ユニシス製のメインフレームの販売・保守を終了する方針であることがわかりました。提供元である米ユニシスは販売・保守を継続します。

富士通は2022年にメインフレームからの撤退を発表しました。2030年度末に販売、2035年度末に保守終了を迎えます。ただ、モダナイズの方針が決められないユーザもあり、2025年度で35台のメインフレームが売れました。

 2024年7月時点:320社650台
 2026年7月時点:250社500台

250社のうち、9割は移行方針が決まっています。「最も多いのがリビルド。今後はリライトが増えそうだ」との事です。富士通のツールでCOBOL言語からJava(JaBOL)に変換し、それをさらに日本IBMのツールでピュアJavaに変換する方針を出しています。

IBMとNECはメインフレームを継続します。

※富士通と日立は元々はIBMマシンのクローンですのでIBMホストに移行するツールを出せないのでしょうか?事件は1982年でしたので40年の間に大きくかわったのかな?

【日立製作所がAI駆動開発を加速 開発全行程で生産性3割向上へ】(P.52)
日立製作所はAI駆動開発の基盤システム「Agentic AI Intergration Platform」を開発しました。構想策定から要件定義、設計、コーディング、テスト、運用までの各工程で最適なAIエージェントが協働します。社内の実証では生産性が約200倍になりました。2027年度に全行程で30%の生産性向上を目標とします。

米アンソロピックや米グーグル、米オープンAIの最先端AIモデルと組み合わせて利用します。日立は2030年度の「モダナイゼーション・AIサービス」市場の国内売上目標を、総額3〜5兆円と設定しています。

※構想/要件の入力をどうするかが書かれていませんので使い物になるのか判断出来ません。「売上を2倍にするシステムを作って」で作ってくれるなら良いのですが。

【みずほがAIエージェント3000体構想 銀行業務全体をAI前提で再設計へ】(P.56)
みずほFGが15領域・100業務プロセスで3000体以上のAIエージェントを導入する方針をあきらかにしました。そのためには、既存業務にAIを後付けするのではなく、一連の業務全体をAI前提で設計し直します。

AIモデルとしては、独自LLMだけでなくClaude、GPT、Geminiなども使用します。AIが顧客に直接対応する領域では、誤情報対策や法的整理などの課題を踏まえながら実装を進めます。

※まず基幹システムをまともにしてAI-ReadyなDATAにすることが前提でしょう。基幹システムから無理やり「前処理」してAI用のデータを作るような気がしますがお金をドブに捨ててますね。

【CIOが挑む:大東建託 情シ部長CIO 長野 勇一郎氏】(P.64)
<350億円の刷新を完遂 社員にDXを面白がってもらう>
大東建託のITポリシーは「内製」です。システム設計などは基本的に自社で実施します。開発パートナーは350人の体制で、そのうち中国など海外に100人がいます。

2014年から刷新プロジェクトを開始しました。
基幹システム 日本IBMのAS/400上でRPG言語で構築していたものを200億円かけ、クラウド環境、Java言語でスクラッチ開発しました。
グループウェア「Notes]に約4300ものデータベースが無秩序に乱立したため運用管理が困難になりました。およそ16億円と5年半ほどかけワークスアプリケーションズのグループウェア製品に移行しました。

2021年からはDX推進準備室を立ち上げ、全社に広げています。
・「AI課長」・・・営業担当者の育成を支援
・「審査AIシステム」・・・家賃の査定業務を補助
・人材育成として社内資格制度を展開
  →グループ社員の約半分の1万人が認定取得
・AIを使った「社内開発」を推進
個人利用で完結するものは自由に作成し、部署単位で展開するものはDX推進部でチェックし野良開発を制御しています。

2030年をめどに基幹システムなどにもAIを導入します。

※建築業ですから基幹業務も相当難しいはずです。それを内製化でスクラッチ開発しているとは驚きました。

【動かないコンピュータ:全日本空輸】(P.66)
<国内線システム刷新で空港混乱 バグと移行期の業務複雑化が重なる>
全日空は2015年から国際線で使用していたスペインのアマデウスITグループのSaas「Altea」を国内線でも使い出した途端、大混乱しました。2026年5月〜7月、コールセンターや空港カンターでの利用者の問い合わせが殺到し対応に追われ、7月に改修されました。

<国内線予約系/搭乗系の新システム移行の手順>
①予約系は2025年5月に新システムを稼働し新旧システムを並行運用しました。
 →1年並行運用しながらユーザテストとトレーニング
②2026年5月19日に旧システム運用停止しAlteaに一本化
③搭乗系を5月20日〜6月10日の4回の水曜日に分けて空港ごとに順次切り替え
<障害は大きく4つありました>
①問い合わせの9割はチェックイン出来ない不具合
コードシェア便を含む旅程でANA運航便にチェックインできなくなるバグ。ANAは座席を提携先から事前に買い取る「ハードブロック方式」で運用していたが、Alteaの既存顧客にこの方式の採用事例がほとんどなく、ANA独自の作り込みが多かったため事前テストで発見できなかった
②搭乗証明書を入手出来なかった
予約系と搭乗系の移行時期がずれたことで、新システム(Altea)接続空港と旧システム(able-D)接続空港が一時的に混在。able-D接続空港では搭乗記録が複製データにしか残らずAltea本体に反映されない仕様のため、証明書発行には職員の手作業確認が必要だった
③領収書に変更手数料が出なかった。
Alteaの標準機能では予約変更時の手数料明細を領収書に表示できず、国内線では予約変更する利用者が一定数いたため要望が相次ぎ、急きょ追加開発が必要になった
④座席指定の応答が遅い
Alteaのサーバーが欧州にあるため座席参照だけでも一定の応答時間が生じ、加えて1人ごとに参照する設計上の問題もあった

※並行本番と操作指導を1年間かけておこなってもこれだけ障害が発生するとは苦労されましたね。バグがなければ移行成功と言っていたでしょう。

【社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第325回】(P.82)
<ビジネスもITも社会の中に 変化は三者の相互作用から>
経営陣と対話する際に視座を広げる材料として、2026年7月9日に発行された「智場#125 情報社会研究のポリローグ――AI、ガバナンス、智の実装」を紹介します。論文集ですが読みにくくなく、ビジネス側の視点でも参考になる内容です。WEB版は無料です。

本書から得た、3つの論点を紹介します。
1.公開空間での緊張感:企業内外の発信において、データの正確性・個人情報保護・誤解を生まないために緊張します。それが人間が取れる責任に直結します。緊張感が足りない場合どいういう手を打てるのか
『行政における生成AI利用と記録管理』
『情報化は教育を変えたのか』

2.データ正義(data justice):2017年から論じられているテーマで、単に個人情報保護法を順守するだけでは済まない、「データを正しく使う」とは何かを問う難しい概念
『クリティカル・デジタル・モビリティーズ研究序説』

3.遅さ・スローリーダーシップの意義:すぐに反応しない自由、「分からない」と言える余地、意見を保留する権利を許容することが、これからの対話の質や人間関係を左右する。ビジネスに求められる俊敏性とは矛盾しない
『越境がひらく地域の未来』

※『行政における生成AI利用と記録管理』は利用者側からの視点ですので新鮮に読みました。作り手側から見ると、LLMを確率論的に使うことの危険性の話だと思いました。

以上

日経コンは2週間に1度、年に52週÷2=26冊出る雑誌です。2010年から全号精読して記事をザッピングしています。
※はブログ筆者のコメントです


特集は<JFEの不撓不屈 鉄作りを止めるな、基幹系刷新の全貌>です。JEFは2006年ごろから2011年にかけて、データモデリングをベースにした基幹システムの刷新を成功させています。記者さんはその事をご存じないのかも知れません。「ITによる業務変革の「正攻法」 JFEスチールの挑戦」(日経BP)

【ITが危ない:GitHub内部リポジトリーが標的 漏洩リスクは公開版の6倍に】(P.08)
GitHubのソースに書いた認証情報などが漏洩し、内部リポジトリーなどに不正アクセスされるという事件が多く発生しています。2026年5月に、クラウド会計ソフトのマネーフォワードとGitHub自身が「VS Code」から情報が漏洩したと相次いで発表されました。

ギットガーディアンが2026年3月に調査レポートによると、非公開の内部リポジトリーからの機密情報漏洩は、パブリックリポジトリーと比較して6倍ほど高いとのことです。内部リポジトリーだからという理由で厳格な運用を行っていないケースがあるためでしょう。またAI活用が広がったため、コミット量が多くなりセキュリティーが低くなること。NHI、「Non-Human Identity(非人間アイデンティティ)」が多くなり人の管理下から離れているケースもあります。


※外部公開しないソースなら、パスワードを直書きしている事が多いため漏れると被害が大きくなります。気をつけましょう。

【JFEの不撓不屈 鉄作りを止めるな、基幹系刷新の全貌】(P.10)
1.中断乗り越え完遂 製鉄業への熱い思い
JFEスチールは、全国6カ所の製鉄所・製造所を支える基幹システムを、5年2カ月かけて刷新完了しました。IBMと富士通のメインフレームで稼働していた約2億ステップのプログラムをクラウドへ移行するという、前例のない規模の挑戦でした。原動力となったのは、「鉄を作り続けるため、システムに縛られたくない」という西圭一郎専務執行役員の強い思いです。

当初2016年から福山地区を起点に進めていた旧プロジェクトは、業務要件から見直す「リビルド」方式を採用しましたが、テストの進捗から全機能完了までに14年を要すると判明し、2019年に中断を決断。社長が親会社であるJFEホールディングスへ頭を下げる事態となりました。

1年をかけて再検討した結果、機械的な言語変換による「リライト」方式へ転換し、2020年に再始動。特に難度の高かった福山地区は、独自言語や複雑なデータ構造を抱えながら、ベンダーに頼らず自社とグループ会社のみで移行を成し遂げました。

2.周到な準備と現場力 業務フローを基に判断
刷新プロジェクトを当初計画より2年前倒しで完了できた背景には、周到な準備と現場力がありました。まず全業務フローを洗い出し、それを基準に画面・帳票・アプリケーションの要否を判断。利用実態のない機能は思い切って廃止し、画面レイアウトは平均46%、帳票は59%、アプリケーションは27%を削減しました。

移行手法はスピードを最優先し「リライト」を選択、Javaへの変換率はほぼ100%に達しました。さらにテスト工程では、当初は全機能を網羅的に検証していましたが、進めるうちに顧客影響の少ない機能は簡易テストで済ませるといった「濃淡」をつける判断基準を確立。後続拠点にノウハウを展開したことで、投資額を当初比36%まで圧縮することに成功しました。

※記事には触れられていませんが、JFEスチールは2011年ごろにデータモデルを中心とした基幹システムの刷新を経験しています。その際に整理されたデータ構造やコード体系の蓄積が、今回のリライトが機械的な変換だけで高い成功率(変換エラーなし、変換率ほぼ100%)を実現できた土台になっていた可能性があります。記事は今回のプロジェクトを単純な機械的リライトとテストの積み重ねとして描いていますが、実際には過去の刷新資産の存在が背景にあったと考えられます。

3.刷新完了で本業加速 設備投資に5000億円
刷新完了後、JFEスチールは本業である製造設備への投資を加速させています。倉敷地区での革新電気炉建設(3294億円)や福山地区の新製造ライン(約700億円)など、発表済みの設備投資額は合計5000億円を超え、システムリフレッシュ費用(約1100億円)の5倍近くに達します。また、プロジェクトを通じて現場から集まり育った人材が、業務改善のノウハウを各拠点へ広げる役割を果たしています。業務フローを整理し改善につなげる手法も、製造現場にとどまらず営業部門など事務系業務へ展開され始めました。さらに、挑戦的プロジェクトを途中で立ち止まり継続可否を審査する制度を新設するなど、失敗を隠さず共有知とする文化づくりも進めています。培ったノウハウは「JFE Resolus」ブランドの下、外部企業への提供も見据えています。

※システム刷新費用が小さく見えますね。

【3大クラウド、AI徹底比較 エージェント数千体時代の競争軸】(P.40)
1.加熱する開発競争 焦点は管理基盤に
グーグル、AWS、マイクロソフトの3社は、AIモデルやAIエージェントの品ぞろえを競う段階から、数千体規模のAIエージェントを統合的に管理する基盤(Google:Gemini Enterprise Agent Platform、MS:Agent 365、AWS:Bedrock)の整備へと競争軸を移しています。導入検討時は、単体エージェントの性能だけでなく、管理・統制のしやすさを重視すべき局面です。

2.半導体にAIモデルも 異次元の投資合戦
Google Cloud:半導体からAIエージェントまで自社で垂直統合する路線です。学習用と推論用でTPUを分離し、推論性能とコストを最適化しています。既存でGoogleサービス群を使う企業や、セキュリティー・ガバナンス機能(Agent Identity等)を重視する開発者に向いています。

AWS:自前の強力なAIモデルは持たず、OpenAIやAnthropicなど外部の有力モデルをBedrock経由で幅広く使える「マルチベンダー窓口」型です。特定モデルに縛られたくない、エンジニア層の厚さや情報量を重視する開発者に適しています。

Microsoft:Microsoft 365などの既存業務データ活用に強みがあり、Web IQ・Work IQ・Fabric IQ・Foundry IQという4つの「頭脳」でコンテキストを整理する設計です。Word/Excel等をすでに使っている組織で、業務データを絡めたAIエージェント運用をしたい場合に適していますが、価格の高さは考慮点です。

3.パートナー企業が告白 企業のAI活用支援を
日本のパートナー企業の評価をまとめると、技術選定の実務的な判断材料が見えてきます。
AWSは国内のエンジニア数・情報量が多く、Bedrock経由でAnthropicのClaudeを使う企業が多いのが実情です。契約や支払い処理を一本化したい場合や、特定ベンダーとの直接契約を避けたい場合にメリットがあります。
Google Cloudは「AIファースト」設計でAIがデータにアクセスしやすく、管理基盤のセキュリティー・ガバナンス機能が強い一方、サービス自体は後発でエンジニア層はAWSほど厚くありません。
マイクロソフトは既存のMicrosoft 365ユーザーとの親和性が高く、業務プロセス全体を見直す変革に踏み込みやすい反面、価格上昇への懸念が指摘されています。

※技術者としては、①社内の既存システムとの親和性、②契約・支払いの実務、③エンジニア人材の確保しやすさ、の3点を軸に選定するのが実践的といえます。

【ニチレイの東西両センターで障害 不正アクセスの影響を避けられず】(P.60)
ニチレイは不正アクセスによるシステム障害を2026年7月13日に発表しました。冷凍食品の生産・出荷や冷蔵倉庫の入出庫業務に支障が出て、井村屋やテーブルマークなど取引先にも影響が波及。同社はDR対策として東西2拠点に基幹システムを構築していましたが、両拠点が同一ネットワークに接続していたため、不正アクセスの影響を双方で受けた可能性があります。復旧は7月24日でした。

【米先端AIに肉薄する中国「Kimi K3」 性能向上の鍵は2つの機構刷新】(P.65)
中国のAI新興企業ムーンショットAIは、最新モデル「Kimi K3」を公開しました。パラメーター数は2兆8000億で、オープンモデルとして世界最大級です。総合性能では米国勢に及ばないとしつつも、コーディング性能や長期タスク遂行の指標では首位を主張し、「DeepSeekショック」再来を懸念する声も出ています。

性能向上の鍵は2つの機構刷新にあります。1つは、過去の全トークンを見返す代わりに履歴の要約を逐次更新して計算負荷を抑える「Kimi Delta Attention(KDA)」で、KVキャッシュを最大75%削減し、デコード速度を最大6倍に高めました。もう1つは、各層が過去の層の出力から必要な情報を動的に選び取る「Attention Residuals(AttnRes)」です。従来の残差接続では層が深いほど各層の寄与が薄まる無駄がありましたが、これを解消しました。これら2つの効果により、前世代のKimi K2比で約2.5倍のスケーリング効率を実現したとしています。

一方、オープンモデルであるため開発元による統制が及びにくく、サイバー攻撃への悪用を懸念する声もあります。国内省庁幹部は、統制された高性能モデルを使えない攻撃者でもKimi K3には触れられるとして、これを用いたペネトレーションテストの必要性を指摘しており、米中のAI覇権争いだけでなく企業のサイバー防衛体制も転換点を迎えていると言えます。

※「キミケースリー」は私の周りでも相当使われてそうです。

【AIリーダーズ:フリー共同創業者 CAIO 横路 隆氏】(P.76)
<AIが使いやすいSaaSへ>

フリーの横路隆氏は、2026年1月にCTOからCAIO(最高AI責任者)へ就任しました。生成AIの進化を体感し、全社変革の必要性を強く伝えるための判断だったといいます。2026年7月にはCAIO直下に新組織AIBPを設置。AIエージェントを業務にどう配置し、効果を出しているかをモニタリングする役割で、人件費とトークン費の配分を判断するためのトークンマネジメントにも着手しています。

エンジニアが書くコードの約6割はすでにAIが担っており、人間がAIに的確な指示を出せるかが開発のボトルネックになりつつあります。マーケティング動画の制作費も、外部委託で月数百万円かかっていたものが、AIエージェント活用で1日1万円規模に激減しました。

同社は「人が使う(Done by You)」から「AIエージェントが仕事を代行する(Done for You)」へのビジネスモデル転換を掲げ、外部AIエージェント向けのMCPサーバーをOSSとして公開したほか、月次決算や給与計算を自動化する「freee AIアシスタント」もリリースしています。営業活動でも、顧客データにAIエージェントがアクセスし次のアクションを提案する仕組みづくりを進めています。

※SaaSは確実にAI競争になっています。利用者からすると楽しみですが中の人にとっては死活問題でしょう。

【動かないコンピュータ:弁護士ドットコム】(P.78)
<デジタル庁などが仕様に疑義 マイナ署名関連の一部機能を停止>
弁護士ドットコムの電子契約サービス「クラウドサイン」で、マイナンバーカード署名付きファイルのダウンロード機能に問題が発覚しました。ダウンロードしたPDFに電子証明書の失効情報が含まれていたことが判明し、デジタル庁と総務省が公的個人認証(JPKI)法の趣旨に照らして疑義があると判断。同社は2026年6月17日に同機能の提供を停止しました。

同社は2025年4月に日本初のこの機能を提供開始した経緯があり、国際標準規格「PAdES」に準拠した長期署名(LTV)フォーマットを実現するため失効情報を含めていたと説明しています。しかしJPKI法は失効情報の外部提供を厳しく制限しており、行政機関などに限定して「オンライン証明書状態確認プロトコル(OCSP)」や「執行リスト(CRL)」へのアクセスを認める仕組みのため、今回の仕様は法の趣旨に反すると判断されました。

専門家は、OCSPの利用をここまで制限するのはJPKI法以外に例がなく、国際標準のPKI仕様とは異なると指摘。マイナンバーカードの前身である住民基本台帳カード時代の民業圧迫防止という背景が今も規制として残っている状況で、法改正の必要性を訴えています。今回の機能停止は、マイナンバーカードを国際標準に沿った電子署名基盤とするか、独自制度を維持するかという、JPKI法見直しの契機になる可能性があります。

※個人情報保護規程もそうですが、日本独自は止めてほしい。

【社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第324回】(P.92)
<AI利用やDXは世界中で失敗 日本の強みを生かせば成功へ>

ITを使った事業改革は世界的に失敗が目立ちますが、日本企業には成功できる条件があるという主張が紹介されています。出典はCognizant Technology Solutions日本法人が2026年6月から7月にかけて公開した5回シリーズのブログ記事です。

第1回では、改革の多くが価値を生まない根本原因として「設計思想の不在」を指摘します。顧客や従業員にどんな体験をしてもらうかという「体験設計」が欠けているため、目的が曖昧になったり、評価指標が技術偏重になったり、新旧システムが統合されなかったりする問題が起きるといいます。

第2回・第3回は失敗の具体例と対策です。業務効率は上がったのに顧客体験の評価が下がった例や、AIエージェントによる自動化は実現したもののガバナンスが不備だった例を挙げ、「リスクに比例した監視」「撤回可能性を中核に据える」など5つの設計原則を示します。

第4回は、CEOが経営会議で問うべき質問を5点提示。「IT投資は効率化に向かっているか、価値創造に向かっているか」といった観点が挙げられています。

最も興味深いのが番外編の第5回です。日本企業の強みとして「品質への執着」「長期的な顧客関係」「現場知の体系化」「信頼を重んじる文化」を挙げ、これらを生かす処方箋を3点提示しています。①速さより強さを重視する意思決定、②品質会議や顧客満足度委員会などの既存の会議体にITガバナンスの議題を組み込む、③顧客満足度や品質指標など既存の経営指標を「体験設計の質を測る指標」として再定義する、というものです。

日本企業には、こうした意思決定のスタイルや会議体、指標がすでに存在しているため、そこにITを追加するだけでよいという発想です。AIやDXの話を「他人事」と捉えがちな組織でも、品質や顧客信頼の話であれば経営層から現場まで関心を持ちやすいという指摘は、社内での改革の切り出し方を考える上で参考になりそうです。ただし前提となる「長期視点・品質志向・信頼の文化」が実際には崩れている組織もあり得るため、まずは自社にその土台が本当にあるかを見極めることが重要だと言えます。

※このブログは初めて読みましたが相当深い話が書かれています。お時間を見つけて読まれてはいかがでしょう?

以上