日経コンピュータ2024.05.16 | HATのブログ

HATのブログ

IT関係のニュースを中心に記事を掲載します。日経コンピュータで重要だと感じた記事とコメントを2010年9月1日号から書いています。
このブログは個人的なものです。ここで述べていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。

特集は<中外製薬、攻防一体のDX>です。基幹システムなら興味があるのですがDXの話だけですのであまり興味が湧きませんでした。製薬は当たるも八卦の世界ですのでその回転を速くして確率をあげようとするのは当然です。実績が上がってから話題にして欲しいと思います。

編集長セレクト】(P.06)
KDDIが生成AI開発向け計算基盤を整備 経産省の助成を受け4年で1000億円投資
→AI創業企業のELYZAと協力
AWSが「Amazon Q」を一般公開 生成AIのアシスタントで生産性を80%向上
→AWSのクラウドサービスを熟知しAWS上での構築を支援する

中外製薬、攻防一体のDX 目指すは「世界のトップイノベーター」】(P.10)
中外製薬の奥田修社長はDXの成果として「自ら考えて、新しいことを始めるカルチャーができた」と語っています。
・デジタル活用を統括する組織を新設
 →従来のIT50人、デジタル戦略50人
・デジタル人材の育成
 →これまで200人近くの社員が参加
・2020年からデジタルイノベーションラボ
 3年で450件以上の事業アイデア発案
1.生成AIをフル活用 汎用・特化で使い分け
Azure OpenAI Serviceを使った「中外版ChatGPT」を2023年8月に全社店化。研究開発などに特化した生成AIサービスも提供しています。
2019年からDXを推進されていた志済聡子氏が3月31日付で退任され、後任にマイクロソフトでインダストリDXアドバイザリ本部長を務めていた鈴木貴雄氏が就任されました。本来ならこれから収益化する難しい場面での交代が心配です。
2.3種のクラウドを併用 運用コストは36%現
目的に応じて3種のクラウド(AWS,Azure、GCP)を使い分けています。
3.全社挙げて安全対策 訓練に社長も参加
DX推進と同時にサイバーセキュリティ対策にも力を入れています。
・ベースライン・・・規定を作成・順守し底上げ
・リスクベース・・・規定では対応出来ない個別のリスクを把握
委託業者を使い、SOC(セキュリティー・オペレーション・センター)には30人以上、CSIRT(コンピュータ・セキュリティ・インシデント・レスポンスチーム)は3名で運用しています。

みずほ、なるか4度目の正直】(P.28)
2002年と2011年の大規模システム障害を受け、2019年に3000億円かけた新基幹システム「MINORI」を稼働しました。ところがまた2021年の1年間でシステム障害を11回起こしました。
2021年11月に金融庁から受けた業務改善命令を受け、3ヶ月に1度業務改善計画やその進捗を報告してきました。2024年1月ようやく「定期報告を要しない」と通知を受けました。さてこの2年でどれだけ改善されたのかという特集です。

1.再起を図るみずほ 「展示室」に刻んだ原点
東京・大手町の本社ビル15Fに「システム障害にかかる展示室」を設置。その入口に木原社長の署名入りの石碑。冒頭の文
<2021年2月28日、日曜日の午後--あの日、私たちは、約5,000人のお客様を寒空の中、停止したATMの前で、何時間もお待たせする事態を引き起こしました>
銘文だと思います。弟の誠二氏は内閣官房副長官です。
2.生成AIも起用し備え エラー自動読解し処理
従来:エラー解析や対処を人手で実施
現状:運用管理システムでエラーの半分を自動化
2024年内:生成AIも組み込み約8割の自動処理を目指す

運用にAIを活用する前にもう一段透明性を高めて欲しいです。

システム開発の新潮流 モジュラーモノリス】(P.38)
一枚岩のようなアプリからなる従来型のシステムを「モノリス(monolith)」と呼びます。それに対してサービスを独立したアプリケーションとして構築する方式を「マイクロサービス(microservice)」と呼びます。

マイクロサービスで構築すると、<俊敏性><容易なデプロイ><再利用可能なコード><対象外製>などの利点があると言われています。米国の巨大IT企業が採用し大きな成果を上げていますが、マイクロサービスの導入があまりに難しいため疑問を持つ企業が出てきました。そこで台頭してきたのが「モジュラーモノリス」です。

マイクロサービスのように複数のサービスを別のアプリとして完全に分離するのではなく、同じアプリの中をサービスごとにモジュールとして分割する方式です。サービスの独立性を高めるために、アプリ内部であっても標準インターフェース経由でしかサービスを呼び出せないようにします。

モノリシックアーキテクチャでモジュール分けしないシステムなんてあるのでしょうか?視点がずれているような気がします。

米ギットハブが開発自動化ツール AIが改修プラン提案、コードも生成】(P.48)
米ギットハブは2024年4月29日、「GitHub Copilot Workspace」の技術プレビュー版を提供開始しました。人間が提示したIssuesをAIが解釈し、課題解決にはどんな機能の追加が必要かを提示します。適用ボタンを押すと、必要な改修場所を提案した上でコードを生成します。

今後はWorkspace上の作業をチームで共有する機能や、エージェント機能の強化を目指すとのことです。

LINEヤフーの再発防止策に「ノー」 総務省が2度目の行政指導】(P.49)
LINEヤフーは2023年11月27日、第三者による不正アクセスによりユーザーの個人情報を含む情報漏洩があったと公表、2024年2月には追加の情報漏洩と再発防止策を発表しました。総務省は3月5日に行政指導を行ない、LINEヤフーは4月1日付で再発防止に向けた取組についての報告書を提出しました。

ところがその報告書の再発防止策が不十分だとして、2024年4月16日 2度目の行政指導を実施しました。7月1日までに新たな報告をするよう求めています。
記事にはありませんが、これに対して韓国政府が反発しています。困ったものです。

取引履歴で加盟店の資金繰り支援 PayPayや三井住友カードが提供】(P.54)
PayPay と、三井住友カードが相次いで中小加盟店向けの新サービスに乗り出しました。いずれも取引履歴データを基に予測した店舗の将来の売上に応じ、事前に資金を提供するサービスです。

カギになるのは、AIによる売上予測です。制度の高い予測モデルがつくれるかがポイントです。

日経XTECH2024年4~5月の好評記事】(P.58)
稼働が1年超遅れたグリコの基幹システム刷新、投資額は当社比1.6倍の342億円に
→冒頭の表がわかりやすい。良い記事です
ノーコードブームに未来はない
→kintoneはノーコードじゃないという記事。タイトルは煽り

ケーススタディ:ノジマ】(P.60)
来店客向けアプリで購入支援 位置情報機能をアジャイル開発
関東地方で展開する家電量販店のノジマは、日立グループのGlobalLogic Japanと協業し2022年6月から「DXプロジェクト」を開始しました。

店舗でヒヤリングし多くの議論を経て約20のアイデアが挙がりました。実現性などを考慮して4テーマ5案に絞り順次実現中。
2023年12月7日:全店舗展開
 商品棚に掲示したQRコードで顧客が注文可能
 アプリに店舗従業員を呼び出すボタンを付けた店舗マップ
2023年3月:2店舗で試行、夏ごろ全店展開予定
 店舗マップに来店客の位置をリアルタイムに表示する機能
 →Bluetoothビーコンで位置把握。カインズなどで導入済

今後は来店客が現在使用中の家電情報をアプリに登録するサービスを実装予定

値札の場所のQRで注文できるのは面白いですが、紙の注文札をなくせないなら在庫の調整が出来るのか心配になります。注文が入ると店員が走って行って注文札を下げるのでしょうか?

CIOが挑む:明治ホールディングス】(P.64)
明治乳業と明治製菓の合併など事業再編を進める明治HD。IT畑を長くあるきDX推進を託された新興役員グループDX戦略部の古賀猛文氏のインタビューです。

2022年4月:子会社で、デジタル推進部を新設。その下に攻めのDXのデジタル戦略部、守りのDXの情報システム部を設置
2024年4月:このデジタル推進部をまるごと明治HDに移管しグループDX戦略部と改名
2023年9月:育児記録アプリ「赤ちゃんノート」
 →粉ミルクのトップシェアの企業としての社会貢献の位置づけ
2023年10月:自社商品の取り扱い店舗を検索できるシステム
 →https://map.meiji.co.jp/  カールを探すと面白い

メインフレームをAWSに移行するプロジェクトが2024年6月で完了する。メインフレームの完全撤退が完了します。

古賀氏は1987年明治乳業入社の生え抜きです。最近落下傘CIOが多い中で珍しい人事。是非業績を上げて欲しいと思います。

動かないコンピュータ:江崎グリコ】(P.66)
「プッチンプリン」をはじめとする江崎グリコのチルド製品が店頭から姿を消しました。企業からの発表前に有価証券報告書等から状況を探る記事です。2019年着手の基幹システムです。

2024年4月3日デロイトトーマツなどのチームが、SAP/HANAへの移行作業を実施。システム障害で全国の物流センターで出庫業務が送れ遅配や欠配が発生
14日:一部業務で出荷を停止。チルド製品の出荷も停止。
18日:品目を絞り再開。再びトラブル発生(データ不整合)
19日:再び出荷を停止 →5月中旬の再開を目指すと公表
5月1日:再開時期の延期を発表

有価証券報告書からプロジェクトの状況を探ります
2021年12月期有報:2022年12月本番予定。215億円
2022年12月期有報:完了時期未定に変更
2023年12月期有報:投資予定342億円に増加。2024年3月本番予定

チルド食品以外の常温や冷凍商品は在庫を多く持てる事から、データを修正しながら出荷を継続しているとの事です。在庫を持てる商品に関しては夜間処理などで在庫を確定することが多いですが、チルド製品はリアル在庫管理が必要ですので生産管理から出荷まで一貫した業務となり難しいです。SAP/HANAはそれが出来る事が売りだったのですが大変残念な状況です。

復旧後再度特集して欲しいと思います。出来ればデロイトトーマツ側からの説明も欲しいです。守秘義務上難しいかも知れませんが、貴重な経験・体験を後続のために開示してください。

極論正論:製造業でシステム障害が相次ぐ 事業を揺るがす事態の裏事情】(P.70)
江崎グリコだけでなく、3月30日にはHOYAで重大なシステム事故が発生していました。原因は「第三者によるサイバー攻撃」だそうです。

従来システム事故というと、システムがないと業務がはじまらない金融や証券などがほとんどでした。製造業はシステム障害が発生しても局所的な影響で済んでいました。ところが2000年以降、IT部門が工場内のシステムも担当するようになり、システム障害が多大な影響を与えるようになりました。

工場の中で設備を制御するOT(Operational Technology)は今のところ、まだIT部門の対象外ですが、インターネットに接続しIoTなどを指向するようになっています。製造業のシステム管理体制は抜本的な見直しの時期と言えるでしょう。

この視点からは気づきませんでしたが確かにサプライチェーン一貫システムがシステム障害の影響範囲を大きくしているのだと思います。

新連載:「スキル可視化」が開く IT業界の未来】(P.80)
人材不足の正体は 人と仕事のミスマッチ
三菱総合研究所の大内久幸氏の新連載です。「IT業界に特化して、IT人材のスキルをどう仕事にマッチさせ適材適所を実現すれば良いのか」というテーマです。

初回は、日本全体の労働市場について考察されます。
1.労働供給の変化:シニア退出、新卒流入、露道参加率向上
2.労働需要の変化:経済活動維持に必要となる労働両区、生成AIを含むDXによる雇用栄養、GX(グリーントランスフォーメーション)による雇用影響、経済安全保障

2035年には190万人が不足する見通しです。このギャップを埋めるためには人材シフトが避けて通れません。次回はスキル可視化がテーマです。

ちょっと視点が大上段すぎてどこまで役立つ提言を出されるのか心配になります。

社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第266回】(P.84)
テスラのロボタクシーに見るエンタープライズシステムの今
「テスラのロボタクシーは8月8日にお目見えする”Tesla Robotaxi unveil on 8/8”」とイーロンマスクがX(旧twitter)に投稿しました。

マスク氏が発言したことを総合すると次の構想でしょう。
・テスラ車を買った所有者は自分が使っていない時はロボタクシーとして他の利用者にテスラを提供し、対価を得る事が出来る
・テスラ車は所有者の車庫から利用者が求める場所まで自動走行し、利用者を目的地まで運んだ後車庫に戻ってくる
・必要があればテスラの施設で充電する

大変興味深い取り組みですが、無人運転技術すらまだ承認が取れていないテスラで実現するかは疑問です。ただ、こういう「夢」を語る経営者が少なくなってきた事は事実です。

以上