日経コンピュータ2024.05.02 | HATのブログ

HATのブログ

IT関係のニュースを中心に記事を掲載します。日経コンピュータで重要だと感じた記事とコメントを2010年9月1日号から書いています。
このブログは個人的なものです。ここで述べていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。

特集は<始動、物流DX 輸送網から待ち時間まで、2024年問題に勝つ>です。残業規制が厳しくなった2024年に向けて、ヤマト運輸さん中心としてどういう取り組みが成されているかの報告でした。
自民党は単価の安い移民(特定技能1号)で乗り切ろうとしているようですが、それだと国の形が変わる危険性が高いです。ITで出来る限り乗り切って欲しいです。
とは言えタイトルに「DX」を使うならどこがDXなのか明示して欲しいです。単なる効率化にしか見えません。

編集長セレクト】(P.06)
東京で日本版ライドシェア開始 ドライバーの応募殺到も車両は供給不足の半分まで
→4/8から開始。タクシー会社運営、料金はタクシーと同じ
OpenAIが東京でアジア発の拠点 日本語特化の「GPT-4」提供
→日本語のテキスト翻訳と要約が3倍速い「GPT-4」提供予定
改正NTT法が参院で可決・成立 NTTと競合3社がそれぞれコメント
→研究開示義務廃止、外国人役員規制を緩和

ITが危ない:社労夢で個情委が注意勧告 SaaS利用企業が「違法」の恐れ】(P.08)
<57万事業所が認識なく従業員データ委託>
社会保険労務士向けクラウド業務システム「社労夢(Shalom)」が2024年3月、ランサムウェア被害に遭い、運営するエムケイシステムが行政指導を受けました。
同時に個人情報保護委員会(個情委)は、約57万件もの事業所が認識の薄いまま従業員データをエムケイシステムに委託していたという事で、社労士事務所や企業にも注意喚起を公表しました。

個人情報保護法は企業などが個人データの取り扱いを外部に委託する場合、委託先を監督する義務を定めています。社労夢システムを使っていた社労士事務所2754件に注意喚起しました。

実地に監督することも面倒ですし監督される方も大変です。米国の基準「SOC(ServiceOrganizationControls)」に基づいた報告書(SOC2)を提出出来ないクラウドは絶対に使うべきではないという教訓だと思います。kintoneは確かまだ提出出来ていませんのでご注意下さい。(北米向けKintoneだけ提出済)

始動、物流DX 輸送網から待ち時間まで、2024年問題に勝つ】(P.10)
2024年4月、労働規制が厳しくなりました。
 ・ドライバーの時間外労働は年間960時間まで
 ・年間拘束時間上限が3516時間から3300時間に
それに各社システム的に対応しています。
1.ヤマト50年目の改革 是正勧告にも対応
(1) 物流ネットワークの構造改革
従来は全国79ヵ所の物流施設「ベース」間を幹線輸送(79x79=6241)
20ヵ所の「ハブ」を設置。営業所時点でハブ向けに仕分け
 →ベースからハブへ幹線輸送(79x20=1580
  長距離トラック1台当たりの積載量増加、省力化
(2) 営業所やベースの作業員への作業指示をデジタル化
従来は無線や電話を使っていましたが、端末を通じて指示可能
伝票を見て判断していましたが、スキャンで指示が出る
(3) ドライバーへの指示もデジタル化
トラックをどの荷下ろし場所(バース)に付けるか電話→端末
2.待ち時間を短縮へ 荷主も効率化を支援
日清食品HDは荷主の立場から、ドライバーの荷役やに待ち時間の短縮に向けてITを使った施策を行っています。「物流各社から選ばれる荷主」を目指しています。

これら以外にもAI搭載の荷積みロボットの実証や、倉庫業者を中心とした物流ネットワーク構築など様々な取り組むが始まっています。
3.共同化で積載率向上 AIで配送計画を作成
国土交通省の2022年度の調査では、トラックの積載効率は約40パーセントでした。国内を走るトラックは平均約60%が空いている状態です。
積載率を高める1つの方策として「共同配送」の取り組みが始まっています。他業種との共同配送が難しい化学品に特化した共同物流マッチングサービスなどの運用実証を行っています

ヤマト運輸のベース→ハブという取り組みは納得できますが、佐川急便・西濃運輸などの大手物流がどう考えているのかを取材して欲しかったです。他社は従来からハブ管理されているのかも知れません。

ドメイントラブル撲滅大作戦 事前対策で再取得の意欲をそぐ】(P.24)
自治体などが登録し運用していたドメインを廃止した直後に第三者に取得され、フィッシングなどの悪事に利用される事例が相次いでいます。

ドメインハイジャック>ドメイン登録会社(レジストラ)を変更するときに、確認メールを10日間無視すると承諾とみなされるという謎仕様のために乗っ取られるという被害が頻発しました。これについては日本の管理会社(JPRS)の規則を変更し、放置すると拒否になりましたので今後発生することはありません。
ドッペルゲンガードメイン>パンチミスなどで誤入力しやすいドメインを取得し悪事に使う。大手通販サイトでは似たドメインをあらかじめ登録しています。

ドメインを廃止する時は次の方法が推奨されています
第1段階:Webサイトでドメインを廃止すると告知
→リンクを貼っている外部Web運営者にリンクの削除を依頼する
第2段階:ドメインをしばらくの間保有する
→政府関係ドメインは廃止の案内から1年以上
第3段階:WebサーバまたはDNSへのアクセス数の確認
→充分少なくなったことを確認(多い時は10年待つ)

オープンAIが東京にアジア初拠点 日本語特化のAIモデルも提供へ】(P.46)
2024年4月15日に記者会見を開き、米オープンAIは東京に新オフィスを開設して活動を始めると発表しました。
 ・日本市場向けに「GPT-4」をカスタマイズ(翻訳3倍高速)
 ・企業や行政機関など法人顧客開拓に力を注ぐ
 ・大企業向けの「ChatGPT Enterprise」の提案を強化

社長にはAWSジャパンの前社長である長崎忠雄氏が就任しました。

NTTデータがテラスカイに出資 新株の条件は「営業利益25億超」】(P.47)
NTTデータとテラスカイは2024年4月12日に業務資本提携を発表しました。
1.NTTテクノクロスが保有するテラスカイ株を譲り受ける
2.市場で67万株程度を買い付ける
 →これらで15.97%を取得する
3.テラスカイは67万株の新株予約権を割り当てる
 →2027年2月期までに営業利益が25億円を超過した時行使
 →行使されると、持ち株比率は20.12%となる

2024年2月期の営業利益は5億2200万円でしたので、「25億円は、容易に達成できる目標ではない」と記事にはあります。ただ、2021年の営業利益は約22億円でしたのでそれほど無理な値ではないでしょう。

2024年も「うるう年」の障害発生 2月29日に4県警で免許証作成できず】(P.48)
2月29日、新潟県警・神奈川県警・岡山県警・愛媛県警の4県警で運転免許センターで免許書の発行が出来ない障害がありました。
不具合の原因について、「免許作成機のプログラムにおいて、うるう年を西暦で設定すべきところを和暦で設定していた」と回答がありました。

4県警の2021年~2023年の入札情報を調べたところ、免許作成システムは東芝製と推定出来るそうです。東芝広報部は「守秘義務」のため回答されませんでした。次回2028年で繰り返さないでください。

乱反射:不要な製品の購入を強いられる 米ヴイエムウェア買収で悪影響】(P.53)
2023年11月、米ブロードコムが米ヴイエムウェアを買収しました。その後の動きでヴイエムウェアの顧客が恐怖・疑念を持っています。このやり方を、FUD(Fear Uncertainty Doubt)と呼ぶそうです。
・買収後の2ヶ月でヴイエムウェアの従業員数千人を解雇
・世界6万5000社とのパートナープログラムを強制終了
  →再申請を強要
・パートナーの上位2000件の顧客をブロードコムの顧客に切替
・売り切りの永久ライセンス廃止を通告
・サブスクリプションが不要な製品とパッケージ
これらのため、ソフトウェア請求額が3~6倍に上昇した話や、ライセンス費用が十数倍に跳ね上がった例などがありました。

今後数か月以内に代替品の検討が始まるでしょう。ここまで酷い買収はあまり記憶がありません。

日経XTECH 2024年4月の好評記事】(P.56)
富士通製メインフレームが残り700台の衝撃、保守期限までの撤廃に求められる策
→2030年度末に撤退、2035年度末で保守終了。間に合うのか?
みずほ・三菱UFJ・住友生命ら金融大手が結集、「金融IT検定」を実施へ
→今回は初級、初年度1000人の応募を目標とします
画面ロックされたら「ESCキー長押し」、みんなに伝えてほしいサポート詐欺対策
→体験サイトはここ。ESC長押しして終了してください。

動かないコンピュータ:デジタル庁】(P.64)
<e-Govのガバクラ移行が大幅遅延 構築手法の途中変更が影響か>
デジタル庁が運用する政府ポータル「e-Gov」のシステム刷新プロジェクトが大幅に遅延しています。2023年1月にNECが約24億円で契約し開発していました。2024年2月下旬に新システムへの切替を予定していましたが、本番切替予定の約3週間前の2024年2月2日になり延期を発表しました。

理由は品質が悪すぎたためです。Web画面上でのテストは不具合だらけで実用レベルではない。APIの機能はテストそのものが完了しませんでした。

既存のe-Govを延命させると「運用費が月当たり数十億円」かかるそうです。

NECの言い訳は次の通りです。

1.旧システムの一部を流用する「リフト方式」で入札

2.デジタル庁内のガバメントクラウドチームからクラウドに最適化させる「シフト方式」を求めらた

3.仕方なくNECはそれに応じた

4.結果として業務ロジックなどをつくり直したため品質に問題を抱えた

変更を受けた限りは100%NECの責任です。延期で必要となる追加費用を税金で補填するのかNECが賠償するのか、話題にならないのでしょか?

社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第265回】(P.82)
20年以上前から変わらない 社長が知るべきITの本質
ITの本質を理解するための書籍「ITって、何?」(佐藤知一著、串田悠彰編)が2024年3月27日に発行されました。Kindleでは99円で買えます。

 

編者の串田氏は高等学校で情報処理の講義をすることになり、技術でなくITの本質を理解出来るように、佐藤氏のメールマガジンを再編集されて発行されました。

同書は自動車に乗って移動中の男女2人の対話形式で書かれています。全部で20章あり、女性が20の質問をし、ITの仕事(アナリスト)をしている男性が答えます。アナリストについて佐藤氏は「人間様の情報を、機械のロジックとデータにどうモデル化できるか、そのセンス」が問われると説明します。

9章「IT屋さんは実際の物事をどうデータに翻訳するの?」などデータモデリングの本質について数章かけて解説されています。お薦めします。

以上