特集は<独自分析:知財で見る 生成AI各社の実力 オープンAI、秘密のベールを剥ぐ>です。秘密のベールとは、オープンAIが特許申請しないと言われていたのに調べてみると数件見つけたという話でした。残念ながら興味がないので軽く報告します。
【編集長セレクト】(P.06)
<アップルがiPhoneにマイナンバーカード機能搭載へ 2025年春後半から>
→Appleウォレットの身分証明書を米国外で初めて展開
<システム開発頓挫を巡る文化シャッターと日本IBMの裁判 双方が最高裁へ上告>
→一審、二審とも日本IBMが敗訴中。裁判所が正しそう
【ITが危ない:悪意の開発者がメンテナー権限 正規の有名ソフトにバックドア】(P.08)
<「ソフトウエアサプライチェーン攻撃」の脅威>
有名なOSS(オープンソフト)の圧縮ソフト「XZ Utils」にマルウエアの一種であるバックドアが仕込まれ、何と複数のLinuxマシンに危うくインストールされる所でした。このように正規ソフトにマルウエアが仕込まれる攻撃は「ソフトウエアサプライチェーン攻撃」と呼ばれます。
一部のLinuxのベータ版(不安定版)に組み込まれた時点で米マイクロソフトの開発者が発見して事なきを得ました。
バックドアを仕込んだ開発者(ジア・タン)は「XZ Utils」の開発に参加し、2年以上かけてメンテナーの信頼を得ました。正規のメンテナーの対応が遅かったことがあり、別の2名がメールでメンテナーを他の人に引き継ぐようにメールを出しました。そこでタン氏を共同メンテナーに指定。今回の事件に発展しました。メールを出した2名はその後メーリングリストから姿を消しました。タン氏と同一人物かグループメンバでしょう。
ソフトウエアサプライチェーン攻撃は防ぐことが出来ません。被害に遭う事を前提として不正な動きをしていないかログ監視が重要です。
【独自分析:知財で見る 生成AI各社の実力 オープンAI、秘密のベールを剥ぐ】(P.10)
1.出願件数1位はアドビ 人材に強みのサムスン
米国での生成AI関連特許の出願数トップはアドビ。2位はグーグル、3位はサムソンでした。2017年時点でグーグルのトップ発明者だったウ・ドンヒョク氏は2024年時点でサムスン電子に移籍していました。サムスン電子の出願数トップ5位までの5名はサムソン電子に在籍されているそうです。
2.中国が出願数で圧倒 日本は韓・欧に及ばず
生成AI関連特許の出願数で中国が米国や日本を圧倒しています。
中国:3万件、米国:1.2万件、韓国:4千件、
欧州1.4千件、日本1.4千件
3.オープンAIの特許判明 「コード生成」に布石
米オープンAIが米国で少なくとも6件の生成AI関連特許を取得していたことがわかりました。
4.Transformerが核 GPTやBERTも影響
論文の引用・被引用を分析したところ、グーグルの「Transformer」の論文が有名なLLMのほとんどに影響していることがわかりました。
【「めちゃコミ」の会社の秘密 情シス子会社転生物語】(P.22)
電子コミックストアは大手プラットフォーマーがひしめく激戦市場です。Kindle(Amazon)、LINEマンガ、楽天Kobo、コミックシーモア(NTT)・・・
そんな中で異彩を放つ存在が、「めちゃコミック」です。運営会社:アムタスは、大手化学メーカー帝人と日商岩井(現在の双日)の情報子会社が合併した会社であるインフォコムの100%子会社です。
2006年11月にめちゃコミ開始。ガラケーでも読めるように1画面に1コマ表示する形式で始まりました。
2009年にオリジナル作品の制作を開始
2013年にコンテンツの方針を大きく変え、大手出版社との協業も強化し一般向けコミックを充実
2014年からテレビCM開始。2017年違法サイトの「漫画村」閉鎖で市場急拡大。
最大の強みは、データ分析に基づく広告やマーケティングです。オリジナル作品の製作でもアクセス数などを分析し、主人公のタイプやストーリー展開など「刺さる訴求軸」を導き出し、作者に細かく言語化して伝えています。
親会社の帝人は本業の不振からインフォコムの売却を検討中だと公表しています。1000億円規模になると見られます。企業活動を「お金」でしか見ていないところが残念です。
【インタビュー:アシックス 富永 満之氏】(P.40)
<CDO・CIO、IT企業の経験を生かす ランナーとのつながりから変革生む>
IT企業を多く経験された社長が2024年1月に誕生しました。
1987:現アクセンチュア
1996:日本IBM →2009:Vice President、執行役員
2013:SAPジャパン 常務執行役員
2016:ワークスアプリケーションズ アメリカ社長
2018:アシックス
→2020:常務執行役員IT統括部長兼デジタル担当
2021:兼CDO・CIO
2024:1月 社長COO(最高執行責任者)、
3月代表取締役社長COO
直近の25年で、50%だった海外売上高の割合を80%以上に伸ばしました。従来は日本・米国・中国・欧州が主な市場でしたが、徐々にインドや中東でも利益を出し始めています。
会員サービスの「OneASICS」を展開しています。商品購入だけでなくその前後の時間も顧客とつながれるようになりまし。IT部門だけがデータを見ていてはダメです。販売会社の人たちも顧客データの価値をわかる必要があります。
全世界のIT要員は約700人体制。そのうち7割が海外です。SAPの財務管理システムの担当部署はオランダ。なぜなら日本人が米国や欧州に展開するのは言語面でも技術面でも大変なので、現地直属の現地法人を設置し全世界見ています。EC先進国の米国にECと手がける企業を作っています。
30年ほど前に仕事の関係で本社におじゃましたことがあります。その頃の売上ランキングは、ミズノ・デサント・アシックスでしたが、今やアシックスが断トツの1位になりました。とは言え世界の競合は巨大です。今後の益々の発展が楽しみです。
【Windowsが生成AI基盤に進化 エージェント開発で業務自動化へ】(P.46)
2024年5月21日から年次イベント「Microsoft Build 2024」を開催し生成AIに関する様々な新機能を発表しました。
・生成AIがデバイス上で稼働するパソコン「Copilot+PC」発表
→Acer,ASUS,DEL,HP,Lenovo,Samsung
・生成AIアプリ開発用のライブラリー「Windows Copilot Runtime]発表
→WIN32でGUIを容易に開発出来たのと同等の役割
・「生成AIエージェント」を開発する機能
→ユーザに代ってタスクを処理するエージェント機能
マイクロソフトがハードまで作って生成AIの開発環境を全面サポートするのが面白い戦略。
【VMwareライセンス変更で悲鳴 「最大20倍の値上げ」との声も】(P.48)
米ブロードコムによるVMware製品のライセンス変更の影響が続いています
・突然ライセンスの契約更改を迫られた
・実質年間1億円の値上げになるシステムもある
・一週間以内に応じない場合さらなる値上げに踏み切る
→反社の言い分ですね
5月6日には、AWSでVMware環境が利用できる「VMware Cloud on AWS」はブロードコムだけが販売するようになると発表されました。
日本のクラウド各社の対応は、6/14に報道されていました。AWS発表から1ヶ月も経つのに5社のうち2社が値上げ時期非回答という状況。相当混乱されているのがわかります。
【自治体手続きのマイナンバー利用 「9割超で利用率1割未満」の実態】(P.49)
会計検査院は、マイナンバーによる情報照会を使って効率化出来る手続きを調査し5月15日に発表しました。
・自治体の利用率が50%以上の手続き:2.6%
・利用率が10%未満の手続き:9割
・利用実績がゼロのもの:4割弱
会計検査院がマイナンバー利用が進まない理由を確認したところ次の2点でした。
1.自治体側のシステム対応が追いつかない
2.マイナンバーを使っても最新情報を参照出来ない
→国民健康保険の更新が遅い、一括照会ができないなど
利用範囲が広がったのはまだ1年ほどですので目くじらを立てず徐々に広がるよう期待したいと思います。報告書はこれです。134頁もあります。図表2-1が上記割合の根拠です。
【無線LANルーターでボット感染急増 バッファロー製品18機種が対象】(P.50)
バッファロー製無線ルーターのボット感染が50以上で観測されました。感染すると、DDoS攻撃の踏み台として悪用されると考えられます。
対象機種は、WEX,WHR,WSR,WMRなどの型番です。防ぐには次の対策が必要だそうです。
(1)パスワードを工場出荷時のままにしない
(2)Internet側リモートアクセスを許可しない
これで対策出来るなら製品の問題ではないのでは?どんな製品でもInternet側から全パターンのパスワードを試されると入り込まれるでしょう。工場出荷パスワードが簡単すぎたということでしょうか
【日経XTECH 2024年5~6月の好評記事】(P.56)
<年度初めの那覇市役所を襲った全庁規模の通信まひ、原因はたった1本のLANケーブル>
→席替えで外されたLANケーブルを親切心で差したのが原因?
<フラッグシップモデルに相次ぐ異変、新機種から見える「八方塞がり」の国内スマホ市場>
→価格が高くなりすぎて最上位機種が出せない事態に
<データセンターが「迷惑施設」扱いに>
→千葉・東京で住宅近接と大規模化で反対運動
【ケーススタディー:中部薬品】(P.58)
<AI予測と発注で週1000時間削減 需要変動商品でも適正在庫を確保>
中部地方を中心にドラッグストア「V・drug」を展開する、バローホールティングス傘下の中部薬品はAI予測を取り入れた自動発注システムを導入し成果を上げています。
採用したのは、日立システムズの「需要予測型自動発注システム」です。商品の配置場所などの棚割り情報、特売情報、気象情報などを組合せて推奨発注量を提案します。2022年4月の要件定義から精度を検証し、2023年4月の先行稼働で実績を確認しながら7月に導入拡大しました。
日々の情報は基幹システムや周辺システムから「ASTERIA Warp」などを使ってデータの形式を整えて連携しました。今後物流倉庫での在庫最適化にもこの新システムを適用する予定です。
記事としては、PoCで使った評価軸(KPI)とその実績を見せて欲しかったと思います。導入を最終判断されたエリアマネージャの声も聞きたかったです。
【CIOが挑む:全日本空輸 執行役員グループCIO 加藤恭子氏】(P.62)
初配属がIT部門でした。IT部門出身の役員は初めてです。国内線旅客系の基幹システム、able-Dを国際線のクラウドシステム(スペインのアマデウス)と統合するプロジェクトを行っています。2026年度中の完遂を目指しています。able-Dの周辺には118のサブシステムがあります。接客に関わるシステムなどの内製に注力します。
【社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第268回】(P.82)
<マクドナルドがインフラ近代化 AIやIoTを全店に高速展開>
米マクドナルドは米グーグルと提携し、ITインフラストラクチャーを近代化すると発表しました。ブライアン・ライスCIOは<グーグルとの連携により私たちのサイズとスケールを生かし、類比内スピードで機能を構築、ソリューションを実装し、活用できる>と述べています。
2024年には数千件を対象にグーグルのAIやエッジ技術などを導入します。今回の提供で店舗の機器をつなぐ核となる技術としてグーグルは2024年2月23日に<Distributed Cloud Edgeサーバ>の一般提供を発表しました。
Edgeサーバーが店舗の機器の動きをモニタリングし、異常検知を自動化したりレジなし会計などの新しい体験を想定されます。
最近、バーガーキングやびっくりドンキーなど外食チェーン店はセルフレジが普通に置いてありますがマクドナルドは遅いなと感じていました。これから全世界で加速していくのでしょう。楽しみです。
以上