やっぱり映画が好き -9ページ目

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

1970年代のブラジル政権は反体制派の人びとを逮捕拘束する。この事実を過去のものとしてでなく、将来に起こり得る不条理としてどうすれば権力の監視を行使できるのかが問われてくる。

 

この史実に巻き込まれた一家の物語は、気丈な母親と動揺する子供たちの姿を通して生きていく術を模索する。逮捕後行方がわからなくなる父親の安否を突き止めようとする状況に誤情報が家族を撹乱させる。メディアが権力を監視しない独裁の暴挙は、弱者の尊厳をいとも容易く蹂躙する。

 

老年を迎えた母親の感情と家族全員の笑顔を絶やさない姿勢が権力者への抵抗につながっていく。そこへ有無も言わさぬクライマックスの場面が圧巻であり見事に引き寄せられる。

 

だけど正論振りかざして権力に抗っても勝ち目ないよね。だったら従順な態度とった方が楽じゃん。んんん、そうかな?本当にそうだろうか。権力が暴走すると、いわれの無い罪を着せられるかもしれない。例えば、最近報道で見聞きする "スパイ防止法" とやら。日本の新政権が制定する気満々なんだけど、政府に異論を唱える人を排除する目的ではないかと危惧されるこの法案は看過出来ない。やがて今作 "アイム・スティル・ヒア" と同様の悲劇がまかり通る。それほど危険な国になろうとしている。これは陰謀論の類じゃないよ。

 

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全15話にわたって救急医療室の1日が描かれる。医療従事者の事情や思惑、そして目前で即断を迫られる救急対応が交錯する物語構成は時間の流れを感じさせない。U-NEXTにて配信中。

 

同僚に対する感謝の言葉やハラスメントが当事者だけでなく私たちの感情を揺さぶってくる。悔恨や感慨深さは繰り返しよぎり、自省や保身を具現化する。メンタルが崩壊寸前まで追い込まれる医療の現場に平穏は無く、助けを求める患者を矢継ぎ早に対応する時間が過ぎていく。良く出来た脚本。医療現場の面々は私たちの生活には欠かせない存在、普段はお世話にならないけど命の防波堤である。

 

群像劇として登場人物たちのいでたちや表情がイイ。特にメル・キング(テイラー・ディアデン)が絶妙。(下写真の女性)

ネットで調べると、あの名作ドラマ「ブレイキング・バッド」主演のブライアン・クランストンの実娘!これには驚いた。

 

主演のノア・ワイリー(ロビー役)は、医療ドラマの金字塔「ER」のカーター先生役で有名になったが、その後は活躍の場を見出せてなかった。今作でエミー賞の主演男優賞受賞する再起を果たす。リアルタイムで「ER」で観ていた人は私も含めて "(役名は違えど)経験積んで逞しくなったねぇ" と、おっちゃんおばちゃん目線で見守ってしまう。まるで病院の待合室でだべってる年寄りの井戸端会議、こういう面もテレビドラマの楽しみ方なんだろうね。シーズン2があるようなので、病気怪我に気をつけて健康維持で待ってます。

 

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主人公ランは刑務所から故郷へ戻ってくる。自身が服役した事件の真相は語らないまま再起を模索する。時は2008年、ランは北京オリンピックの国策に違和感を覚え、かつての夢とは距離を置いてしまう。彼はオリンピックを控えた安全確保策として、野良犬を捕獲する仕事に加わり、団地の物陰から出くわした黒犬と奇妙な繋がりを抱く。

 

引きと寄りの撮影・編集が巧い。広大な大地と産業が衰退した寂寥感を視覚的に訴えてくる。そんな過疎化を食い止めようとする政権の再開発事業、そしてオリンピック関連の運動がさらなる空虚感を漂わせている。朽ちたもの・汚いもの・生活圏にふさわしくないもの、それらが排除されると果たして良い生活が確立されるのか。私たちの命も高齢化が進むと排除されるのか、そんな恐怖を覚えてしまう。

 

ランの進む道はあるのか。挫折する覚悟で未知なる土地へ小さな命と共に前進し、世間がまとう時勢に抗うロック精神は寡黙に育まれていく。そんなラストカット、個人的に編集でもっと短く切れると感じるけど、エンドクレジットのピンク・フロイド「ザ・ウォール」の楽曲で許してしまう。前半、ランは自宅の部屋でお尻の傷を鏡で見るシーンで壁に「ザ・ウォール」のポスターが貼っていて、あれ?共産国でピンク・フロイド?ランはバンド活動をやっていてプログレッシブ系に傾倒してたのかな?皆既日食のシーンでピンク・フロイドの楽曲が流れた時にそんな妄想をしてしまう。ランが語らない過去を私たちが埋めていく、そこに多様な物語があり、全体主義のアンチテーゼへと結びつく。

 

舞台となるアジアの大国は、明るい未来よりも経済成長にかげりが見える報道が少なくない。それは日本も同様、日本はインバウンドに頼った景気や複数の街で進行する再開発事業、そして未だ運用できていない国策プロジェクトで誤魔化されている感じは否めない。政権が民に対して "分断" や "規制" をいの一番に謳うのであれば、遅かれ早かれ失墜の道を歩むだろう。国家の愚策に見切りをつけてランはコミュニティから飛び出す。身近な命を奪った罪を償い、小さな命を守ることを肝に銘じながら。

 

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