主人公ランは刑務所から故郷へ戻ってくる。自身が服役した事件の真相は語らないまま再起を模索する。時は2008年、ランは北京オリンピックの国策に違和感を覚え、かつての夢とは距離を置いてしまう。彼はオリンピックを控えた安全確保策として、野良犬を捕獲する仕事に加わり、団地の物陰から出くわした黒犬と奇妙な繋がりを抱く。
引きと寄りの撮影・編集が巧い。広大な大地と産業が衰退した寂寥感を視覚的に訴えてくる。そんな過疎化を食い止めようとする政権の再開発事業、そしてオリンピック関連の運動がさらなる空虚感を漂わせている。朽ちたもの・汚いもの・生活圏にふさわしくないもの、それらが排除されると果たして良い生活が確立されるのか。私たちの命も高齢化が進むと排除されるのか、そんな恐怖を覚えてしまう。
ランの進む道はあるのか。挫折する覚悟で未知なる土地へ小さな命と共に前進し、世間がまとう時勢に抗うロック精神は寡黙に育まれていく。そんなラストカット、個人的に編集でもっと短く切れると感じるけど、エンドクレジットのピンク・フロイド「ザ・ウォール」の楽曲で許してしまう。前半、ランは自宅の部屋でお尻の傷を鏡で見るシーンで壁に「ザ・ウォール」のポスターが貼っていて、あれ?共産国でピンク・フロイド?ランはバンド活動をやっていてプログレッシブ系に傾倒してたのかな?皆既日食のシーンでピンク・フロイドの楽曲が流れた時にそんな妄想をしてしまう。ランが語らない過去を私たちが埋めていく、そこに多様な物語があり、全体主義のアンチテーゼへと結びつく。
舞台となるアジアの大国は、明るい未来よりも経済成長にかげりが見える報道が少なくない。それは日本も同様、日本はインバウンドに頼った景気や複数の街で進行する再開発事業、そして未だ運用できていない国策プロジェクトで誤魔化されている感じは否めない。政権が民に対して "分断" や "規制" をいの一番に謳うのであれば、遅かれ早かれ失墜の道を歩むだろう。国家の愚策に見切りをつけてランはコミュニティから飛び出す。身近な命を奪った罪を償い、小さな命を守ることを肝に銘じながら。
-----------------
ここまで読んで下さってありがとうございます。ブログランキングに参加しています。
もしよろしければ、↓下をクリックしてください。よろしくお願いします。
![]()
にほんブログ村
