高校生物学習教材 体細胞分裂の核分裂 | はし3の独り言

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 高校生の頃、体細胞分裂のことが良く分からず、結局、暗記して終わったとても残念な思い出があります。当時は相同染色体もよく分かっていませんでした。

 

 教員となった今、当時の私と同じ生徒が教え子にいると、さらに残念なので、そうならないように作ったプリントです。

 

 

 体細胞分裂が分からない原因ははっきりしております。まず、分裂が始まっていない普段の染色体のイメージがないことです。

 

 その始めの状態が分かりづらいのが痛いところで、教科書の写真を見ても図を見ても、染色体がまだ凝縮していなくて、核膜に覆われ、核を形成して梅干しみたいです。

 

 結論から言いましょう。高校で勉強する体細胞分裂とは細胞が2つに増えることです。だから、核も分裂して増えたら元通りになるはずです。

 

 このプリントでは、体細胞分裂の理解で肝心な、「これから分裂をする細胞の染色体」を主人公にして説明から始めました。

 

 ピタゴラスイッチの「10本アニメ」のイメージで、どうぞ。

 

 

 我われと同じ真核生物の細胞を仮定します。この生物の遺伝情報ワンセット(ゲノム)を考え、4種類4本の染色体に分散して入っているとします。

 

 

 ゲノムに含まれる遺伝子には壊れているものも多くて、実際には、ゲノム一つだけでは生物体を完成させることができません。なので、真核生物はふつう細胞にゲノムを2つ持っています。

 

 つまり、同じ染色体を二本ずつ核の中に持つわけで、これを相同染色体と言います。

 

 この生物だと、ゲノム一つで4種類4本です。体細胞は2ゲノムもつので、4種類8本の染色体を含むわけです。染色体数はゲノムワンセットの染色体数をn本として、2n=8本と表します。

 

 

 図を見てください。染色体は8本ありますね。いいですね。実際には染色体はとても細くてとても長~いので、核の中でごちゃごちゃしていて、こんな風には見えませんけど、見えることにして描くとこうなったということです。

 

 通常の細胞は、まあこんなように描けて、今から分裂して増えた後は、またこの状態に戻ればオッケー

 

 

 さあ、分裂期を迎えた細胞の染色体を表現していきましょう。染色体はふだん、核膜という2重の膜に覆われて保護されています。なんといっても遺伝子を保持するのが仕事ですからね。大切にされているのです。

 

 

 体細胞分裂につきものの核分裂が起こる際には核膜があると邪魔になるので、準備が整ったら消失します。絵では「膜膜」になっておりますが、間違いで、「核膜」のことです。今気がつきました。ショックだ。

 

 体細胞分裂と言うからには核も増えるわけですから、分裂した後に元通りになるためには、あらかじめ染色体も複製しないといけません。

 

 

 この時期の染色体をこう描いていいか自信はないんですけど、理解のためにお許しください。ともかく染色体は自らの複製(コピー)をつくり、分裂に備えます。

 

 核膜の外にあたる細胞質基質には、有害な活性酸素があったりと危険がいっぱい。遺伝情報を守るためには、できれば核膜から出たくないというのが染色体の本音であると思われます。実際、分裂回数の多い細胞であるほど遺伝情報は傷つき、細胞の老化が進むそうです。

 

 

 そのため、分裂するにあたっては、徹底した準備を行い、もう、もともとあった染色体と複製が別れるばっかにしておきます。

 

 細くて長い染色体はなんども折りたたまれて凝縮し、光学顕微鏡で観察できるようになります。我われが観察できるのはこの時期の染色体だけなので、どうしても染色体のイメージは、複製を同伴したX(エックス)みたいな形をしたものになりますが、実際には核分裂の時にしか現れない特殊な形態です。

 

 ちなみに染色体数のカウントの仕方は業界ルールで、実際にはそれぞれ複製があるから8本の倍の16本分あっても、8本とすることになっています。割りばしと同じように数えます(割るまでは一膳です)。動原体という構造で繋がっているうちは一本とカウントしないと、平常時の染色体数を表現できません。

 

 

 染色体は、赤道面と言われる細胞中央平面に並んで、一気に両極に分かれます。徹底した準備の賜物ですね。紡錘糸が動原体に付着して両極に元々あった染色体と複製した染色体(どっちがどっちだか分かりませんけど)を分けていきます

 

 

 元の染色体と複製した染色体は、一斉に一気に分けられ、細胞の両端に分かれていきます。

 

 

 染色体にしてみれば冷や冷やだった核分裂も、これで終わりになります。核膜は小胞体から再生し、ぎゅうぎゅうに畳まれていた染色体は元通りに伸びて長くなって、もはや顕微鏡を使っても形が分からなくなります。

 

 染色体がどのくらい短く折りたたまれていたかをヒトの第8染色体を例にしていうと、実に50ミリメートルが5マイクロメートルにたたまれます。分かりやすく言えば、50メートルが5ミリにまで短くなるのと同じ縮率です。

 

 ミリ(mm)とかマイクロ(μm)など、長さの換算がすぐにできない人は、こちらをどうぞ。

 →細胞の大きさと形 ーミクロとナノを使いこなそうー

 ゲノムや相同染色体がよく分からなかった人はこちら。

 →高校生物 教材プリント -遺伝子とゲノムと相同染色体

 

 核の分裂が終わったら、細胞質が赤道面のあたりで仕切られ、体細胞分裂は終わりになります。