鳴橋直弘著 日本のキイチゴ 2026年6月初版発行
キイチゴ分類の第一人者として知られる大学の恩師が、とうとう、ご自身の研究成果をまとめたキイチゴの本を出版されました。
これまで全ての日本のキイチゴを網羅した本はなかったから、植物分類学者として名をはせた恩師にとって、この本の出版は人生最大の使命であったことでしょう。やっとできましたね、鳴橋先生。ほんとうにおめでとうございます。
「日本のキイチゴ」では、現在日本で見られる野生種、変種、雑種だけでなはなく、帰化種や栽培種、それに未記録種も写真付き(一部の幻的なものは植物画)で載っています。ハンドブックほどの大きさで写真に多くのスペースが割かれていますが、情報量は膨大で、図鑑としての利用はもちろん、専門的な研究の基礎資料として有用です。
この本を観れば、分類困難で有名な日本のキイチゴの全体像を眺めた気になれます。伝わってくるのです。鳴橋先生の抱く日本のキイチゴの現状が。
ここで、本の概要を説明しましょう。
構成はシンプルで分かりやすいものになっています。前書き目次に続いてキイチゴを観るときの着眼点について解説があり、詳しくない人にもこの本の使い方が分かるようになっていて親切です。
その後にキイチゴの検索表があり、同定に利用できます。こうした検索表をキイチゴ属で作ることができるのは鳴橋先生以外にいないでしょう。この著作にしか載っていない貴重なものです。
検索表の次に野生種のページが始まりますが、どの写真もきれいで特徴を写しているだけでなく、自生している環境が分かるものになっていて、種の総合的な情報が得られるものが選ばれています。
種の説明は簡潔に短文でまとめられています。いずれも要点が凝縮されたような文章です。
現在確認できない一部の変種など、写真がないものについては、博物館に残されたタイプ標本が掲載されているという徹底ぶりです。
「ほんとうはモノグラフ(特定分類群の全種を網羅して分類学的に検討し、記載した総説論文)を出したかった。」、というのは鳴橋先生の弁。
しかし使う方にとっては、モノグラフの要素が凝縮されたものが、こうしてコンパクトにまとまっている方が便利で、ありがたいです。
鳴橋先生渾身の一冊である「日本のキイチゴ」は、大阪市立自然史博物館のオンラインショップで買うことができます。税込み2800円は内容の濃密さとこの本の価値を考えたら破格の安さです。
キイチゴに関わる研究をしている方にとっては必携です。なにしろ日本のキイチゴのほぼすべてが掲載されていますから。欲しい場合は急ぐべきです。6月中旬に発売されたものは速攻で売り切れており、今は補充されて、また購入できるようになっているものの、いつものように初版本が少ないので、またすぐソールドアウトするかもしれません。
もし必要なのに売り切れで買えない場合は、私から頼んでみるのでコメント欄に書いて教えてください。







