パーキンソン病の進行を遅くする方法はないか調べています

パーキンソン病診療ガイドライン2018の序

 

現在、パーキンソン病の進行を抑制する神経保護治療はなく、対処療法が中心

 

とあります。つまり、進行を抑制する治療は確立していません。

「現在、治療はない」のですが、研究者は「神経保護治療」を見つけようと日々研究しており、たくさんの論文が出ています。確立していないのですが、可能性はあるのです💪

 

どんな治療法が有望そうか、私の考えをまとめました。個人的な感想なので、保証はないです😋

 

最初に注意したいのは、「パーキンソン病の進行」と言う場合に、

 ①  パーキンソン病発症の原因である脳内のドパミン細胞の減少が進む

 ②  パーキンソン病の症状(例えば体の動かしにくさ)が進む

の2つの場合があります。パーキンソン病の進行と症状②(初期の運動症状について)でも書きました。

 

患者にとって、②「パーキンソン病の症状の進行を抑制する」治療は存在しています。

 

運動と服薬(レボドパ+ドパミンアゴニスト+MAO-B阻害薬+・・・)です。

よって、「パーキンソン病を発症すると、10年後には寝たきりになる」といわれていたのは過去のことです。

 

順天堂大の服部先生が著書「最新版 順天堂大学が教えるパーキンソン病の自宅療法」

 

 私はいつも患者さんに、「パーキンソン病になっても、基本的に15年は元気に自分の足で歩くことができますよ」とお話ししています。実際、私の患者さんの中には、15年どころか、25年経った今も元気に歩いている人もいるくらいです。

 

と書かれています💪

 

では、①の「パーキンソン病発症の原因である脳内のドパミン細胞の減少を遅くする」可能性のある治療(行為)は何でしょうか?

 

以下、私が調べた神経保護治療の可能性のあるものです。

最後の括弧内のA、B、C は私が勝手に効果の大きさを推測しているだけです。無視してください。

  1. (強度の高い)運動 [A]
  2.  睡眠 [A]
  3.  MAO-B 阻害薬 [B]
  4.  腸内環境の改善 [C]
  5.  ビタミンB2、B7等 [C]
  6.  その他1(糖尿病の治療薬GLP−1作動薬、高尿酸値?イノシン酸) [C]
  7.  その他2(霊芝、コエンザイムQ10、クレアチン、水素水、カフェイン、等々) [D]
1. 運動 
 たくさんの論文が出ています。いろいろな医学書でも説明があります。例えば、「パーキンソン病治療 Controversy」のI-4章「早期の運動療法に意義はあるか?」(市川 忠 [埼玉県総合リハビリテーションセンター])に
 
早期PDにおける運動療法により、症状進行抑制や薬剤増量抑制の効果が期待できるため、パーキンソン病では早期から運動療法の意義は高い。・・・・早期から運動療法を開始する必要性と科学的根拠を患者に十分説明し、運動療法に取り組むよう指導する。
 
運動療法により神経保護を期待するには、一定以上の運動負荷(筋力、持久力など)が必要
 
とあります。
運動療法でどのように神経保護が期待できるかと言うと、
 
抗炎症作用、ミトコンドリア機能改善、α-synuclein凝縮抑制、脳由来神経栄養因子発現上昇、細胞死の抑制などの機序が作動
 
とあります。
 
これらの結果は、急性パーキンソン病モデルマウスによる動物実験で実証されています。
 
それでは、人ではどうなのでしょうか? 
人での臨床研究では、運動によるパーキンソン病の進行抑制が、上で書いた
②  パーキンソン病の症状(例えば体の動かしにくさ)の進行抑制
でなくて、
①  パーキンソン病発症の原因である脳内のドパミン細胞の減少の進行抑制
と実証するのが難しく、効果があるだろうとの予測にとどまっています。
 
この実証のため、京大でビッグデータを使った解析で

パーキンソン病における運動習慣の長期効果を確認 –進行抑制に光明、活動の種類により異なる効果–

を発表しています。

 

また、論文「Intensive rehabilitation treatment in early Parkinson's disease: a randomized pilot study with a 2-year follow-up」では、運動していると薬(レボドパ)の増量が抑えれることから

①  パーキンソン病発症の原因である脳内のドパミン細胞の減少の進行抑制
と結論しています。ただし、この論文では運動は強度の高い運動がよいということと、MAO-B阻害薬を併用しています。
この論文を読むと、しっかり運動して、MAO-B阻害薬も飲もうとなりました☺️
 
2. 睡眠 
 脳には休息が必要で、睡眠が重要です。
 パーキンソン病に関係した論文を見つけたわけではないのですが、アルツハイマー病と関連を指摘する

 

と言う報告があります。

 

同様に、脳内の抗炎症作用、脳由来神経栄養因子上昇、細胞死の抑制に睡眠は重要で、神経保護につながると考えてます☺️

あくまでも、私の推測です。

 
3. MAO-B阻害薬 
MAO-B阻害薬(アジレクト)と言う記事を書きました。
ここで、MAO-B阻害薬の神経保護効果として、

既存のパーキンソン病症状改善薬にパーキンソン病の進行抑制につながる作用を発見

「モノアミンオキシダーゼ-B阻害薬に、パーキンソン病の原因となるαシヌクレインタンパク質を細胞外に排出する作用があることを発見しました。パーキンソン病の根本的な進行抑制治療に向けた応用が期待」

 

ランチョンセミナー「Modeling Parkinson's disease in a mouse model overexpressing monoamine oxidase B (MAO-B):towards exploring therapeutics.」

で、MAO-B遺伝子発現モデルマウスの試験ですが「MAO- Bを上昇させることにより、酸化ストレスが上昇し、次いでミトコンドリア複合体I活性が低下し、ドパ ミン神経の脱済へと全ることが考えられる。また、MAO-B 上昇後3~ 5日目にMAO-Bレベルを正常化させ、それに続く酸化ストレスの増加やミトコンドリア複合体の活性低下を抑制することによりそれ以降ドパミン神経の脱落へと進展しない ことが示されたことから(図11~13)、MAO- Bを介する酸化ストレスの産生を抑制することにより、その後の神経病態の進展を遅らせる 、または停止させることが可能と考えられる。したがって、MAO- B阻害剤をできるかぎり早期に使用することにより、それ以降の病気の進行を抑制できることを示している。

 

とあります。

実際、MAO-B阻害薬の進行抑制を調べた論文はたくさんあります。

ただし、人による臨床研究では、運動のところと同じで、MAO-B阻害薬は

②  パーキンソン病の症状(例えば体の動かしにくさ)の進行抑制

と考えることができるとあり、

①  パーキンソン病発症の原因である脳内のドパミン細胞の減少の進行抑制

は実証できていない状況です。
 
日本で、アジレクトやエクフィナのMAO-B阻害薬が出たのはここ5年くらいなので、もしかすると10年、20年後に、MAO-B阻害薬の長期的な進行抑制効果がわかるかもしれません☺️
 
4.  腸内環境の改善 + 5. ビタミン B2、B7等
脳内のドパミン細胞を死滅させる異常α-synucleinは腸から来るのではとの研究結果があります。
で分かりやすく解説されています。
それに続いて、パーキンソン病の患者さんでは腸でリボフラビン(ビタミン B2)とビオチン(ビタミン B7)が減少していることが関係しているかもとのことです。
 
6.  その他
 早期パーキンソン病へのGLP-1受容体作動薬、進行抑制効果を確認/NEJMと発表されています。他にも、血中尿酸値が高いとパーキンソン病発の生率が低いとあります。「尿酸とパーキンソン病」で
パーキンソン病では酸化ストレスが原因として挙げられており、尿酸は活性化酸素のscavengerとして作用すると推定される
とあります。ただし、尿酸値を上げるために、イノシン酸を投与した臨床研究では、進行抑制は実証できなかったそうです。
あと、実は私は尿酸値は高いのですが、パーキンソン病を発病しました😤

 

 他にも、霊芝、コエンザイムQ10、クレアチン、水素水、カフェイン、等々が可能性ありそうとありますが、どれも実証されていません。
 
最後に、パーキンソン病の進行を抑制する、進行を遅くするには何をすればいいのでしょうか?
これは、答えはないのですが、私は
  1. 運動
  2. 睡眠: 十分な睡眠時間確保、徹夜(夜更かし)しない
  3. MAO-B阻害薬(アジレクト)
  4. 腸環境を整える(+ビタミン B2、B7補充)
    1. ヤクルト1000
    2. ネイチャーメイド マルチビタミン

を実行しています。

ドパミン細胞死滅の原因が複数あるなら、上に書いた幾つかのことを同時に行うことが大事かなと思っています。

 

ただし、個人的には、運動が一番大事そうだと思ってます☺️

 

長文を読んでいただき、ありがとうございます🙇