しあわせ検索エンジン -11ページ目

クロスファイア 〜最終章〜

センター試験。
大学入試。

プレッシャーに強いのか?
よほど自信があるのか?
バカなのか?

最後は正解だ…

猫は普段と特に変わらず、それらをこなしていた。

むしろオレのほうが不安でいっぱいだった。

猫は、
お目当ての工業大学に見事合格。

春から大学生だ。
当時、21歳。
少し遅れたくらいで、本来の道に戻っていく猫が少し羨ましかった。

オレは何も変わらない…

ひとつ決めていた事。
猫が大学に受かったら、この共同生活も終わりにすること。

普通の大学生活を送って欲しいと思った。

それを猫に話した時、別れ話と勘違いされて、思いっきり引っ叩たかれた…

次の日、会社で腫れた左の頬をどれだけからかわれたことか…

厳密にいうと、付き合ってたわけじゃない。
そんな話をしたこともない。
ただ一緒に住んでいた。

愛情?愛着?
みたいな感情も確かにあった。

猫の誤解が解けるまで、ちゃんと話したつもりだったけど、その後、3日間、猫はクチをきいてくれなかった…笑

オレの仕事が終わるのは深夜1時過ぎ。
朝まで仕事の付き合いで飲んでたりするのはいつものことだ…

大学生の生活時間とは合わない。

おまけにココから大学に通うのはなかなか大変に思えた。

猫をこの街から解放しようと思ったとき既にわかっていたこと…
最後はこの街で働くオレから解放すること…

その時が来たんだと思った。


やっと話をきいてくれた猫と一緒に部屋探し。

学園都市線で部屋を探す。
結局、新琴似になった。
もともと猫が住んでいた場所。

家賃も安いし駅から近い。
家財一式はオレの部屋から持っていった。

足りないものは入学祝いということで戻ってきた十万円で揃えた。

三月の中旬には準備が終わって、猫も新しいバイトを始めた。
麻生の居酒屋さん。

部屋の連帯保証人やら学校の身元引受人?やら何やらで、今後4年間、縁は続くことになるけど、それ以外はなるべく関わらないようにしようと思った。

三月の末。

猫とまた約束をする。

ススキノにはなるべく来ないこと。
思い描く学生生活を全うすること。
困った時には頼ること。


これで猫との共同生活が解消された。

学校が始まって、しばらくは毎日電話やメールで、その日の出来事を報告してきた。

それも、お互いの時間のすれ違いで次第に減っていった。

これで良かったんだ。

と、オレは自分に言い聞かせて、毎日、気になりながら生きてたのを覚えている。

四年で卒業するまで、何度か酔っ払って電話してきて、家まで送ってやったことがあった。

学生らしい学生生活だったように感じた。

就職は建築関係の事務で内定をもらったと聞いた。

オレがススキノの仕事を辞めて今の仕事に就くことになったとき、一度電話で話したのを最後に連絡もとらなくなった。

その間、お互いに自分の幸せを手にいれていたんだと、今、わかる。

結果的には、四年ぶりに会いにきた猫に無駄な下心がわく前に去っていってくれて良かった。

猫の結婚は嬉しいけれど、寂しくも感じた。
正直なところ羨ましくなった。

オレは仕事が変わっても、相変わらず、幸せは掴めないままだ…

終。



iPhoneからの投稿

クロスファイア 〜その四〜

それから一年がたって…

猫の料理は食べれるくらいまで成長した。

アタマのほうは、もともと良かったんだろう。
いや…そうとう頑張ったんだと思う。

オレから見ればあっさりだった。
大検とって、今年から大学入試だ。

工業系の大学に行きたいようだった。

猫のほうは、コンビニのバイトで入学金くらいはすでに貯まっていた。

オレのほうは、元金の減らない返済を続けていた…

それでも、家に帰ると誰かが必ず待っている生活に幸せを感じていた。
普通にいうところの同棲とは少し違った共同生活はそれなりに楽しかった。

夏がすぎて秋になろうという頃…
受験生には大事な時期。

家事の負担を減らしてやる。
掃除や洗濯は、なるべくオレがやるようにした。

涼しい夜に猫が思いつめた顔でオレに通帳を渡す。
残高 115万円と少し…

頑張ったな!
これだけ貯まってるなら、春までバイト辞めて勉強に集中してもいいんだぞ。



黙り込む猫。

しばらくして、

やっぱり大学は行かない…
これじゃ足りないけど少しでも借金返して!

少し考えて、

…ダメ!ムリ!

オレはその申し出を一蹴する。
ありがたい話だが、それだとオレが報われない。

この話はとりあえずオレが強引に終わらせて、猫はおとなしく受験勉強に励む。

確かに、いつまでも減らない借金を抱えて生きていくわけにはいかない。

どうすればいい?

それから、毎日のように一発逆転を考えるようになった。

12月。車の車検がくる。
通勤は徒歩。
買い物も車では行かない。

維持費を考えると手放すのが自然かな…

どんなタイミングで、それを思いついたかは覚えていない。

思いついたら、既に動いていた。

この手法は完全に違法なので、詳細は話せない…

要は車を使って三百万作った。

というか、実際には四百万作ってこの減らない借金から解放されて、ちゃんと減っていく借金に変えた。

毎月の支払い日に揃えた現金を持っていく。

とりあえず、利息分を払う…

簡単に完済させてくれるとは思えなかった。
喉がカラカラになりながら、引きつった声で、

今、完済するとしたら…
三百万、用意できたら終わりにできますか?


持てるだけの勇気を振り絞って聞く。


◯◯ちゃん…
あんた、真面目だよね…
毎月キッチリ払いにくるし…
だから、ダメ…

少し間をおいて、

コッチも取り立てに行かなくていい客は楽だから…
◯◯ちゃんは大事な客だからね。笑


人生終わってるな…なんて思いながら精一杯の絶望にひたる。

諦めきれずに、立ち上がれずにいると、


まぁ、△△さん(オレの会社の名)とこの人だから、手切れ一割。
今日中に用意したらアレ返してもいいかな…

明日には気は変わるから今日ならね。


絶望が希望に変わる。
まずはアレが本当に返ってくるか確認したかった。

丁重にお願いしたら、アレが出てきた。

間違いない。
オレが書いた借用書。
もう二度と書けない字で署名がしてある。

この借用書を手にしたまま、鞄から三百万と五十万ほどを差し出す。

相手は驚いた顔で、


もう持ってきてたんだ…
先に出せば良かったのに…

オレは、

これで、コレ貰って帰ってイイですか…

と言うと、

いま確認するから待って…

と言って金を数える。
数えながらチラチラとオレを見てる…
オレは下を向いて待つ。

うん。ちゃんとあるよ…
ちょっと多いね?笑
多い分はソレと交換ってのはどう?

と言ってオレの左胸を指差す。
心臓が止まるかと思った…
一瞬止まったような感覚だった。

この時の為に、昨日買ったばかりのボイスレコーダー…
気づかれないように、薄くて、音がしなくて、、、いろいろ慎重に選んで買ったヤツだった。

オレがソレを差し出すと、

三十万をオレにくれる。



オレが持ってココに来たのは三百五十万。
算数できないの?
なんて言ってたら、いまオレは生きてないと思う。笑

不思議な顔で相手を見ると、

お疲れさん。◯◯ちゃん。
寂しいな…これで終わりか。
猫ちゃん元気かい?
大学受かりそう?

誰にも言ってない。
オレと猫しかしらないハズだった。
なんで…
なんて、一瞬思ったけど、すぐに考えるのをやめた。
北の繁華街ススキノ。
そんな街だ…

…はい。

それだけ言って部屋を出る。
左手には借用書。
右手には希望。

鞄に残る三十万は彼らなりのご祝儀かな…

空を見上げたまま少し歩いて、ひとつ信号を渡った。
一気に解放された気分になって、猫のいる部屋に全力で走って帰る。

息を切らせて帰ってきたオレに驚きながらも猫は、

おかえり~!
どした?早すぎでしょ!
ごはんまだできてないよ…笑

なんて言ってたっけ…

オレはクシャクシャになった借用書を猫に渡して、

火!燃やせ!

?顏の猫に、

いいから燃やせ!

うしろめたさから従順だった猫を解放したかった。

火をつける前に確認して、コレが何かが猫にもわかったようだった。

ウソ!マジで!
すごいよっ◯◯ちゃん!
やったー!

ふたりで灰皿で燃える借用書を見ながら感傷にひたる…

借金がなくなったわけではないけど、この紙がなくなる意味をふたりで共有して、この一年と少しを振り返る。

この共同生活はお互いにとって辛いものではなかった…

だから、涙はなかった。

二年ぶりくらいに本当の笑みが出た…気がする。

ふたりでスーパードライの瓶を開けて乾杯する。

暗闇の中に光る一点を捕まえた気になれた夜だった。


続く…

次回、最終章。



iPhoneからの投稿

クロスファイア 〜その三〜

猫がいなくなって、少し寂しい気分で、また一週間ほどたった。

忘れかけた頃に、風俗店の店長から電話が鳴る…

◯◯ちゃんが可愛がってた子ウチに来てるけど、知ってるのか?

いえ…

一年近く毎週のように一緒に飲んでたりするとココの世界は狭い…

見られてる。

事情を聞くと、猫が付き合ってたホストが下手打って飛んで、猫がかぶることになったそうな…
自業自得だ。

この手の話にいちいち構ってたらススキノで仕事はできない。

残念だが手を出せる状況ではなさそうだった…
そもそも助けを求められたわけでもない。

少し気にしながら一週間ほどたって、オレが任されていた店に猫が現れた。
死んだ瞳でオレに助けを求める。

携帯も没収されて、監視つきで店が借りてる部屋と店を往復する毎日だと言う。

これで無関係ではなくなってしまった…
猫がここに来た時点でイヤな予感はあった。

とりあえず、終わったらココに…
オレの名刺の裏に店の名前を書いて渡す。
わかるか?

うなずく猫。瞳が少し生き返る。

何度か一緒に行っている。
オレにとって安全な店だ。

すでにオレと会ったことなどお見通しだろう。
オレは打てるだけの手は打って、深夜1時半、指定した店に向かう。

店に先回りされてるか、つけられているか、どちらかだろう…
正直わからなかった。

店に着くと猫が待っていた。
少し安心する。

間髪いれずに3人の男が店内に来てオレの肩に手をかける…

困るんだよ。◯◯さん。
ウチの女に手出されちゃ…
わかりますよね。

はい。

じゃあ、どうします?落とし前。


ってところで、ウチのケツ持ち登場。

ウチの旦那なんかしたん?
話聞いてやるだけでしょ?
ねっ。◯◯の旦那。

はい。

それが困るって言ってるのわかる?



押し問答が続いて、すでにオレはカヤの外。

結局この女どうしたいん?

あきれた感じで相手がいうと、

◯◯の旦那どうする?

フイに振られて、困惑すると…

聞こえてるか?どうする!

いきなりドスの効いた声に変わる。
わかっていたハズなのに肝が冷える。

助けたいかどうかや…
決めれや!



猫の顔が見れない。

コッチの1人がオレに耳打ちする。
三百払えます?

オレは首を横に振る…

じゃあ、三十は?

正直キツイ…でも、これ以上は…ムリだ…空気がそういってる。

三十万…人の心がそれで買えるなら安いもんだ。

首を縦に振る。

じゃあ、この女引き取るわ…
どうせたいした稼ぎもないでしょうよ。
いくら?

相手は慌てて電話で指示を仰ぐ、その電話むしり取って、コッチが話を進める。

見合った額で引き取ります。
…わかりました。

コッチは電話を返す。
相手は電話で確認をとると、何もなかったように店を出て行く。

一件落着…。
な、ワケがない。

次はコッチと。

とりあえず、三十な。

はい…

猫は店に預けて、コッチの方々と別の場所に行く。

結局いくらで話がついたかなんてオレごときの知るところでは無い。

三百万円の借用書。
もう逃げられない。
三十万は当面の利息ということだ。

利息の記載がない借用書なら法定利息以上の利息はつかない。
ただ三十万は先払い。
恩情だろう。オレは一応、客のところの社員だ。
通帳の二十万とキャッシングで三十万おろして、残りの二十万で身の振り方を考える。

釈放されて、猫を引取りにいくと、蒼ざめて震えている。

オレが来ても反応しない。

ママが首を振るので、カウンターの端っこに座ってビールを飲み続ける…

どのくらいの時間がたっただろう。
2時間?3時間?
もう、外は明るい。

軽く二十杯くらいは飲んだところで気持ち悪くなってトイレに行く。
こんな時は不思議と酔わない…

学生時代から吐くのは苦手だったので、吐きそうなのに吐けないで便器にしがみついていると、猫が後ろから抱きついてきて、

ごめんなさい!ごめんなさい!…

泣いている…

オレとコイツの苦しみを天秤にかければ、明らかにコイツのほうが苦しかったはずだ…
オレの苦しみはこれからだからな…
なんて思うと、可哀想になって抱きしめて、アタマを撫でる。

頑張ったな…お疲れさん。

いままで殺していた声が一気に解放されたように、泣き叫ぶ…

大丈夫。大丈夫だから…

強く抱きしめて言うけれど、収まらずに泣き叫ぶ…

後にも先にも人がこんな泣き方をするのを目の当たりにしたことがないし、もうしなくていい。

トイレを出てママを見ると目をつぶってうなずく…

そのまま、猫と店を出てしばらく歩く。

ジメジメして暑苦しかったのを覚えている。

左腕にしがみつく猫を引っ張って思うがままに歩く…

中島公園を過ぎだあたりで、逆に猫に引っ張られてホテルに入る。

久しぶりにふたりだけになった。

オレは、

女の特権だ!今、このままいなくなればチャラだぞ!自由だ!笑

出ていって欲しかったのかもしれない…
バカな女を助けた感傷にひたりたかったのかもしれない…

猫は離れようとはしなかった…

しばらくして冷静になって、今後の話をする。

お前逃げたほうがいいよ。
オレが払えなければ、アイツらまたお前のとこに行くよ…

猫は首を横にふる。

◯◯ちゃんが思うようにしていい…

キャラじゃない、しおらしいことを言う。

猫の瞳が生きてるのを確認して嬉しくなった…

まだ19歳の女がこんな人生を送っていいわけがない。

好きにしていいと言われて思いついたのが、コイツの人生を変えてやること…

じゃあ、お前、勉強しろ!
おまえ、高校中退だよな。
だったら大検とって大学行け!
できるまでオレの世話係な!

???な顏の猫…

オレだって?だった。
なんでそんなことを思ったのか…

いま思い返せば完全に思いつきだ。

状況的にうなずくしかなかった猫。

さっそく、会社が借りてる部屋に一緒に住むことにする。

約束ごと…

昼バイトして金を貯めること。
ススキノは何があっても出入禁止。
掃除、洗濯、炊事をすること。
最後に、勉強すること。

満面の笑みで約束を誓った猫…

でも、コイツの作るメシはマズかった…笑


続く…


この話はフィクションです…
信じる信じないは貴方の自由です。



iPhoneからの投稿