クロスファイア 〜その三〜 | しあわせ検索エンジン

クロスファイア 〜その三〜

猫がいなくなって、少し寂しい気分で、また一週間ほどたった。

忘れかけた頃に、風俗店の店長から電話が鳴る…

◯◯ちゃんが可愛がってた子ウチに来てるけど、知ってるのか?

いえ…

一年近く毎週のように一緒に飲んでたりするとココの世界は狭い…

見られてる。

事情を聞くと、猫が付き合ってたホストが下手打って飛んで、猫がかぶることになったそうな…
自業自得だ。

この手の話にいちいち構ってたらススキノで仕事はできない。

残念だが手を出せる状況ではなさそうだった…
そもそも助けを求められたわけでもない。

少し気にしながら一週間ほどたって、オレが任されていた店に猫が現れた。
死んだ瞳でオレに助けを求める。

携帯も没収されて、監視つきで店が借りてる部屋と店を往復する毎日だと言う。

これで無関係ではなくなってしまった…
猫がここに来た時点でイヤな予感はあった。

とりあえず、終わったらココに…
オレの名刺の裏に店の名前を書いて渡す。
わかるか?

うなずく猫。瞳が少し生き返る。

何度か一緒に行っている。
オレにとって安全な店だ。

すでにオレと会ったことなどお見通しだろう。
オレは打てるだけの手は打って、深夜1時半、指定した店に向かう。

店に先回りされてるか、つけられているか、どちらかだろう…
正直わからなかった。

店に着くと猫が待っていた。
少し安心する。

間髪いれずに3人の男が店内に来てオレの肩に手をかける…

困るんだよ。◯◯さん。
ウチの女に手出されちゃ…
わかりますよね。

はい。

じゃあ、どうします?落とし前。


ってところで、ウチのケツ持ち登場。

ウチの旦那なんかしたん?
話聞いてやるだけでしょ?
ねっ。◯◯の旦那。

はい。

それが困るって言ってるのわかる?



押し問答が続いて、すでにオレはカヤの外。

結局この女どうしたいん?

あきれた感じで相手がいうと、

◯◯の旦那どうする?

フイに振られて、困惑すると…

聞こえてるか?どうする!

いきなりドスの効いた声に変わる。
わかっていたハズなのに肝が冷える。

助けたいかどうかや…
決めれや!



猫の顔が見れない。

コッチの1人がオレに耳打ちする。
三百払えます?

オレは首を横に振る…

じゃあ、三十は?

正直キツイ…でも、これ以上は…ムリだ…空気がそういってる。

三十万…人の心がそれで買えるなら安いもんだ。

首を縦に振る。

じゃあ、この女引き取るわ…
どうせたいした稼ぎもないでしょうよ。
いくら?

相手は慌てて電話で指示を仰ぐ、その電話むしり取って、コッチが話を進める。

見合った額で引き取ります。
…わかりました。

コッチは電話を返す。
相手は電話で確認をとると、何もなかったように店を出て行く。

一件落着…。
な、ワケがない。

次はコッチと。

とりあえず、三十な。

はい…

猫は店に預けて、コッチの方々と別の場所に行く。

結局いくらで話がついたかなんてオレごときの知るところでは無い。

三百万円の借用書。
もう逃げられない。
三十万は当面の利息ということだ。

利息の記載がない借用書なら法定利息以上の利息はつかない。
ただ三十万は先払い。
恩情だろう。オレは一応、客のところの社員だ。
通帳の二十万とキャッシングで三十万おろして、残りの二十万で身の振り方を考える。

釈放されて、猫を引取りにいくと、蒼ざめて震えている。

オレが来ても反応しない。

ママが首を振るので、カウンターの端っこに座ってビールを飲み続ける…

どのくらいの時間がたっただろう。
2時間?3時間?
もう、外は明るい。

軽く二十杯くらいは飲んだところで気持ち悪くなってトイレに行く。
こんな時は不思議と酔わない…

学生時代から吐くのは苦手だったので、吐きそうなのに吐けないで便器にしがみついていると、猫が後ろから抱きついてきて、

ごめんなさい!ごめんなさい!…

泣いている…

オレとコイツの苦しみを天秤にかければ、明らかにコイツのほうが苦しかったはずだ…
オレの苦しみはこれからだからな…
なんて思うと、可哀想になって抱きしめて、アタマを撫でる。

頑張ったな…お疲れさん。

いままで殺していた声が一気に解放されたように、泣き叫ぶ…

大丈夫。大丈夫だから…

強く抱きしめて言うけれど、収まらずに泣き叫ぶ…

後にも先にも人がこんな泣き方をするのを目の当たりにしたことがないし、もうしなくていい。

トイレを出てママを見ると目をつぶってうなずく…

そのまま、猫と店を出てしばらく歩く。

ジメジメして暑苦しかったのを覚えている。

左腕にしがみつく猫を引っ張って思うがままに歩く…

中島公園を過ぎだあたりで、逆に猫に引っ張られてホテルに入る。

久しぶりにふたりだけになった。

オレは、

女の特権だ!今、このままいなくなればチャラだぞ!自由だ!笑

出ていって欲しかったのかもしれない…
バカな女を助けた感傷にひたりたかったのかもしれない…

猫は離れようとはしなかった…

しばらくして冷静になって、今後の話をする。

お前逃げたほうがいいよ。
オレが払えなければ、アイツらまたお前のとこに行くよ…

猫は首を横にふる。

◯◯ちゃんが思うようにしていい…

キャラじゃない、しおらしいことを言う。

猫の瞳が生きてるのを確認して嬉しくなった…

まだ19歳の女がこんな人生を送っていいわけがない。

好きにしていいと言われて思いついたのが、コイツの人生を変えてやること…

じゃあ、お前、勉強しろ!
おまえ、高校中退だよな。
だったら大検とって大学行け!
できるまでオレの世話係な!

???な顏の猫…

オレだって?だった。
なんでそんなことを思ったのか…

いま思い返せば完全に思いつきだ。

状況的にうなずくしかなかった猫。

さっそく、会社が借りてる部屋に一緒に住むことにする。

約束ごと…

昼バイトして金を貯めること。
ススキノは何があっても出入禁止。
掃除、洗濯、炊事をすること。
最後に、勉強すること。

満面の笑みで約束を誓った猫…

でも、コイツの作るメシはマズかった…笑


続く…


この話はフィクションです…
信じる信じないは貴方の自由です。



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