「指示をしても返事がない」「反応が薄い」──
そんな部下を見ると、つい「やる気がない」と感じてしまうものです。
しかし、そう“決めつけた瞬間”に、私たちは部下の本当の姿を見えなくしてしまいます。
今回の情熱課長は、まさにその壁にぶつかりました。
そこから抜け出すきっかけは、自分への“ひとつの問い”でした。
その問いによって、情熱課長が変わっていくストーリーをお届けします。
■やる気がないと「誰が」決めているのか?
情熱課長
吉田部長、最近ちょっと困っているんです。
ある部下が、指示しても思ったように反応しない。
どう見ても、やる気がないとしか思えないんですよ。
吉田部長
なるほど。そう感じるのも無理はないね。
でも、「やる気がない」と判断したのは、どんな“事実”からかな?
情熱課長
うーん……返事がない、仕事が遅い、ミスも多い……。
そんな感じです。
吉田部長
返事がないのは事実かもしれない。
でも“遅い”“多い”は、もしかすると情熱課長が決めていないかな?
それも、自分と比べていない?(笑)
情熱課長
うっ……そうかもしれません。でも、誰が見てもやる気がないと思います。
■決めつけると、それを“証明したくなる”
吉田部長
やる気のない部下だと決めつけると、人はどうしても“やる気のない証拠”を探してしまう。
そうなると、できているところに気づけなくなるんだ。
情熱課長
……やっているかもしれません(汗)。
■自分への問いで意識を変える
吉田部長
そこで考えてほしい。
「やる気がない」のではなく、
“部下の中で何が起きているのか?”
“何がそうさせているのか?”と。
情熱課長
うーん、そう言われると考えてなかったです。
もしかしたら、自信がないのかもしれません。
以前、ミスしたときにきつく注意したので……。
吉田部長
その気づき、すごく大事だよ。
「やる気がない」と決めつけると、どうしても“ダメ出し”の関わりになる。
でも「何がそうさせているのか?」と問いを立てると、
決めつけの意識が“関心”に変わるんだ。
情熱課長
なるほど……たしかに、決めつけていたのは自分のほうですね。
■自分の感情に気づく
吉田部長
そしてもう一つ、大切なのは“自分の感情”に気づくことだ。
「私の言う通りにやればいいのに」と思っていると、
知らず知らずのうちに、相手を否定してしまう。
でも、その感情に気づけたとき、人はニュートラルになれるんだ。
情熱課長
ニュートラル(冷静な状態)……なるほど。
それができたら、もっと部下の話を聞けそうです。
吉田部長
そうだね。ニュートラルな状態で、改めて“事実”を見つめてみよう。
「遅い」「ミスが多い」ではなく、具体的に何が起きているのか。
その事実を踏まえたうえで、「部下にどうなってほしいか」を考えるんだ。
情熱課長
そうですね……期日を守って、もう少し丁寧に仕事をしてほしい。
それに、自分から動いてくれるようになってほしいです。
吉田部長
いいね。どうなってほしいかが明確になると、
次は「そのために何をすればいいか」を一緒に話し合える。
情熱課長
……その話し合い、やっていなかったです。
■上司と部下の“認識を合わせて”前に進む
吉田部長
その話し合いで一番大事なのは、まず“認識を合わせる”こと。
起こった事実や上司の期待を伝えたうえで、
部下がどう認識しているかを確かめよう。
認識がずれていたら、どんな指導も空回りしてしまう。
情熱課長
認識を合わせることが大事なんですね。
吉田部長
そのうえで、「どうなりたい?」を一緒に言語化する。
そして、部下ができること・上司が協力できることを明確にしていこう。
情熱課長
そうか、一緒に考え、言語化するのか。
吉田部長
うん。そして進捗を確認しながら、
「調子はどう?」「いいね!」
「困っていることはない?」「協力できることは何?」と
声をかけ続けるんだ。
そうすれば、部下は少しずつ“やる気”を取り戻していく。
情熱課長
任せたから大丈夫、ではなく“見守りながら導く”ですね。
今日から早速、部下と話してみます!
■今回の質問
「やる気のない部下の中で、何が起きているのでしょうか?」
■まとめ
部下が動かない背景には、“やる気がない”のではなく、
“動けない理由”が隠れていることが多いものです。
決めつけを手放すと、見えてくるのは「何がそうさせているのか」という真実。
その視点を持てたとき、上司の関わり方が変わり、やる気が“湧く環境”が生まれます。
部下のやる気を引き出す第一歩は、上司の“見方を変えること”から。
その勇気こそ、リーダーの成長の証です。
次回に続けます。お楽しみに!
著書の紹介です!




