ギディオン・フェル博士シリーズの長編第1作。かつて魔女を絞首刑にした<魔女の隠れ家>に建てられた絞首台と監獄、そして絞首台からそのまま死体を落とすための大きな堀。当主が首を折って死ぬと伝えられる、監獄の長官の家系。長男は25歳の誕生日の晩に、一人で長官室に入る義務を負う。長官室の金庫の中身は、代々の当主しか知らない。先代は全身の骨を折って死亡。その事件性は不明。その跡継ぎであるマーティンが儀式の夜に、長官室のバルコニーの下で首を折って死んでいるのが見つかる。それと同時にいとこのハーバートが姿を消している。[???]

ドロシー・スタバース:スタバース家の娘
マーティン・スタバース:ドロシーの兄
ハーバート・スタバース:ドロシーのいとこ
ティモシー・スタバース:スタバース家の先代, 故人
アンソニー・スタバース:チャターハム監獄の初代長官, 故人
バッジ:スタバース家の執事
バンドル夫人:スタバース家の家政婦
マーサ:女中
ペイン:チャターハムの弁護士
テオドシア・ペイン:ペインの妻
トーマス・オードリー・ソーンダーズ:チャターハムの牧師
マークリー:チャターハムの医者
タッド・ランポール:アメリカの青年
ギディオン・フェル博士:辞書編纂家, 探偵
ベンジャミン・アーノルド卿:警察長
ジェニングス:警部



かつて魔女を絞首刑にする場所として使われていた<魔女の隠れ家>。そこには絞首台が建ち、監獄が併設され、囚人の逃亡防止と死体処理を兼ねて大きな井戸のようなものが掘られた。しかしそれが使われていたのももはや昔の話で、伝染病の流行をきっかけにそれは閉鎖された。しかしその土地・建物は監獄の長官の家系であるスタバース家の所有となっており、取り壊されることもなく、今もその姿を留めていた。

初代長官アンソニーは奇矯な人物であり、子孫たちにある義務を負わせていた。長男は25歳になった晩に、独りで長官室に篭り、金庫の中の物をその証として持ち帰らねばならないのである。

そしてマーティン・スタバースが25歳になった。


この地域では、スタバース家の代々の当主は首を折って死ぬという噂が囁かれていた。実際のところ、それがぴったり当てはまるのは監獄の初代長官アンソニーのみなのだが、マーティンの先代ティモシーが全身の骨を折って死んだことが――首は折らずに死んだのだが――その噂に拍車を掛けていた。そんなこともあり、マーティンは儀式の日が近づくに連れ、落ち着きを失いつつあった。

そんな彼を心配して、儀式の晩には近所のフェル博士宅に、ランポール青年とソーンダース牧師も集まり、彼らは監獄の長官室の窓を眺めていた。すると窓に明かりが灯った。順当に進めば午前0時にマーティンは長官室を出るはずだったが、明かりはその10分ほど前に消えた。異変を察したランポールとソーンダースは監獄へと走った。(フェル博士の脚では、その後ろ姿が離れて行くのを眺めるのが精一杯である)

そしてランポールは長官室のバルコニーの真下で、マーティンの死体を発見した。マーティンの首は折れていた。それはまるでアンソニー・スタバースの死に方を再現したかのようだった。


※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



ディクスン・カーの長編第6作にして、ギディオン・フェル博士の登場作。カーはほかにもアンリ・バンコランやマーチ大佐などの名探偵を創造しているが、彼の名探偵の代表と言えば、やはりこのフェル博士と、そしてもう一人、後にカーター・ディクスン名義で生み出されるヘンリー・メルヴェール(H・M)卿。

フェル博士の容貌は、作者が敬愛するG・K・チェスタトンをモデルにしていると言われている。

フェル博士はかつて国家の諜報活動にも関わっていたらしく、「英国じゅうの人間と親しく」、「ロンドン警視庁の高官ウィリアム・ロシター卿という後ろ盾がある」ので、地元の警官もおいそれと口出しできない。そのため、表向きの肩書きとしては民間人ながら、かなり好き勝手に事件を調べ回ることができる。

ちなみにこの「ウィリアム・ロシター」というのは、カーの長編第5作「毒のたわむれ」に登場する探偵パット・ロシターの父親らしい。そこにはバンコランの相棒ジェフ・マールも登場することから、バンコランとフェル博士は、互いに相まみえることはなくても同一の世界で活躍していたということになる。


最後は犯人の自白で事件の真相が明かされるというのは残念だが、本作にして、ようやく雰囲気に見合った内容になったという印象。これ以前のカーの作品は、雰囲気の割に内容はいまいちで、それがどうにももどかしかったのでw

記述の中に手掛かりを潜ませるのが上手いのはいつも通りで、犯人の視点で再読すれば、その言動にどれほどの焦りが込められていたのかよくわかるw 他人を心配するような言動も、実は犯人はそれを意図しておらず、まったくの保身からのものなのに、受け手が勝手に勘違いしていたりする。


マーティン殺害のトリックは目撃者の思い込みを利用したもの。定刻通りに窓に明かりが灯り、定刻通りにそれが消えれば、その時間帯にはマーティンは生存していたと見做され、犯人にアリバイができる。ところが時計が一つ狂っていたために、犯人は計画変更を迫られる――


本作は決して傑作ではないが、重くなりすぎない怪奇趣味に、トリックを用いた犯行、若い男女のちょっとしたラブ・ロマンスというカーらしい娯楽性が存分に発揮された、バランスの良い代表作の一つ。H・M卿シリーズに特に顕著なドタバタ喜劇もここでは抑えられているため、ファン以外にも取っ付きやすいと思われる。端役的な執事の活躍も、作品を複雑化させずにちょっとした華を添えているようで好ましい。



[1 灰色のコートをまとった娘] タッド・ランポール、フェル博士らと知り合う。
[2 おぞましく濡れそぼったもの] かつて魔女を縛り首にした場所として知られる<魔女の隠れ家>には絞首台がある。そしてそこに監獄が併設されており、囚人の逃亡防止と処刑後の死体の処分の手間の軽減(そのまま綱を切るだけでいい)も兼ねて、大きな井戸のようなものが掘られている。2代に渡ってスタバース家の当主が長官(典獄)を務めた後、伝染病によって監獄は閉鎖されたが、その建物と土地の所有権はスタバース家が保持している。スタバース家には相続についての義務が伝わっている。25歳を迎えた晩に、長男が監獄の長官室に入り、金庫を開け、それを証明する物を持ち帰らねばならない。金庫の中身は、後継者以外には決して口外してはならない。近隣では、スタバース家の当主は首を折って死ぬと言い伝えられている。(実際にはそれは初代長官アンソニーだけで、ティモシーは全身の骨を折って死んだが、首は折っていない)
[3 恐怖の顔] ティモシーは<魔女の隠れ家>の近くで、全身を骨折しているところを発見された。そのときはまだ息があり、屋敷に運び込まれた。そして彼は「倅への書き置き」を書いた。彼のもとを訪れた神父ソーンダーズによると、ティモシーはまるで気が触れているようなことを口走り、その内容を他言しないように釘を差したという。その後、ティモシーは娘ドロシーと二人きりで話し、次に弁護士ペインと話した。そのときにティモシーの臨終は近づき、皆が集まった。ティモシーは死の直前、ニヤッと笑うようにはっきりと「ハンカチーフ」と言った。ティモシーは決してそう言わなかったが、他殺の疑いは消えなかった。ティモシーが被害に遭った晩には、なぜか長官室の窓から明かりが漏れていた。アンソニーは詩作を好み、その作をからかう身内の者を憎んでいた。ランポール、マーティンとハーバートの会話を立ち聞きする。「暗号はGallows(絞首台)だぞ」
[4 黒い遺産] マーティンは長官室での儀式を控え、落ち着かぬ様子。
[5 死の試練] フェル博士宅。ここから長官室が見守れる。午後10時半。雷鳴が近づいている。フェル博士とランポール、長官室の窓にまだ明かりが灯っていないのを見る。ソーンダースが車でやって来る。マーティンが屋敷から出て、徒歩で監獄へと向かったと、ドロシーから電話。午後11時。予定通りに長官室に明かりが灯る。11時50分の少し前。長官室の明かりが消える。予定の0時よりも早い。異変を察し、ランポールは監獄へと向かって激しい雨の中を走り出し、ソーンダースもそれに習う。ランポールはこの辺りの道を知らないので、誤って<魔女の隠れ家>へと着いてしまう。長官室のバルコニーのほぼ真下で、マーティンの死体を見つける。
[6 早すぎた真夜中] それに先立ち、ハーバートは小さな鞄に荷物を詰め、オートバイでどこかへと出掛けていた。屋敷の金庫が開放されたままになっている。執事バッジ、屋敷の大時計が10分進んでいることに気づく。
[7 長官室で] マーティンの死体は首が折れ、ほかにも打撲痕がある。誰かに殴られたのか、墜落によるものか、どちらなのかは不明。死体発見の翌朝、長官室を調査。格闘の跡はない。バルコニーの窓は開いており、その下の床には吹き込んだ雨水が残っている。金庫は文字合わせと鍵による二重ロックのもの。文字板は「S」で止まっており、扉は開いた。中には何もない。
[8 “殺人装置の仕業では?”] 室内には人が隠れていたような形跡なし。マーティンが長官室に入り、隠れていた誰かに襲われた可能性は低い。ベンジャミン卿、機械的な“殺人装置”の可能性に言及。もしマーティンがランプを手にバルコニーまで来れば、フェル博士宅からもそれが確認できたはずだが、それはなかった。バルコニーの縁には親指大のすり減った跡がある。
[9 呪われた血] マーティンのポケットの中の時計はまだ動いている。マーティンの所持品の中に鍵がない。屋敷の金庫の組み合わせ文字を知っているのはドロシー、ペイン、ハーバート。マーティンはしばらく屋敷を離れていたので知らないはず。ティモシーが複写した、アンソニーの詩が見つかる。
[10 殺人の自伝] ドロシーの証言。「午後9時少し前に夕食を終え、マーティンはすぐに自室に篭った。ハーバートの所在は不明。10時40分頃、マーティンが家から出て行く気配に気づき、遠ざかる彼の背中を見た。フェル博士に電話し、マーティンが出発したことを告げた」 ドロシーが時刻を確認したのは大時計ではないので、正確な時刻と思われる。女中マーサの証言。「大時計が遅れているとハーバートに指摘され、9時25分から10分進ませた。他の時計も直そうとしたが、ちょうどマーティンに出会い、そんなことは放っとけと言われたので、他の時計はそのままになった」 長官室の金庫の中に書類(書かれた内容は不明)が入っていたことをペインが認める。フェル博士、それは「ティモシーが書いた、自身の殺害の真相」だったと主張。マーティンが受け取った鍵は四つ。長官室の扉の鍵、金庫の鍵、その中の鉄の箱の鍵、そしてバルコニーの扉の鍵。
[11 解けた呪い] フェル博士の推理。「ティモシーは自身を襲った犯人についての書類を書き、それを長官室の金庫に入れさせた。するとその真相はいずれ開陳されることになり、犯人にとっては時限爆弾に等しい。ティモシーはすぐに犯人の名を明かすのではなく、その人物を期限まで苦しめ続けた上で弾劾することを選んだ」 ソーンダース、死の直前のティモシーの言葉を明かす。「犯人は家族の中にいる」 そんな重大なことなら、ティモシーはソーンダースよりも自分に話すはずだと、ペインは納得しかねる様子。
[12 長官室の明かり] 長官室に明かり。それを見たランポールとドロシーは様子を見に行く。中にはフェル博士。
[13 バルコニーの秘密] アンソニーは綱を使ってバルコニーから井戸へと登り降りを繰り返し、そこに財宝を隠していた。そしてあるとき、綱が切れるか解けるかして、墜落死した。
[14 解かれた暗号詩] アンソニーの詩の暗号を解読。
[15 バッジの冒険] バッジ、休暇の帰り道で、<魔女の隠れ家>に明かりを見つけ、その様子を窺う。ランポールが何やら作業をしており、その傍らにドロシーの姿もある。ランポールはハーバートの死体を井戸から引き上げている。その近くに別の人影があり、その影は逃げ出した。バルコニーから「捕まえろ!」の声。潜んでいたバッジは事情はわからぬものの、悪いやつが逃げようとしているのだと判断し、その人物に飛びかかった。不審人物は発砲し、バッジは負傷し、倒れた。
[16 犯人はだれだ?] 不審人物は逃げてしまったものの、バッジの傷は命に関わるものではなかった。ハーバートの死体は頭を撃ち抜かれており、他殺と見られる。井戸から「T・S」のイニシャル入りのハンカチが見つかる。フェル博士たちは、列車でやって来る人物を出迎える。その顔を知っているはずなのに、なぜか見覚えがない者が一人。
[17 死神の入場] マーティンはバルコニーから投げ落とされたりはしなかった。
[18 告白] 犯人は告白書を記した。
アンリ・バンコラン・シリーズの長編第3作。バンコランのライバル、フォン・アルンハイム男爵登場。魔術師が列車から姿を消し、死体となって川に浮かぶ。彼の友人の名優が、彼から引き継いだ居城にて火を掛けられ、殺される。[???]

メイルジャア:魔術師, 髑髏城の持ち主
マイロン・アリソン:髑髏城の対岸に別荘を持つ英国の名優
アガサ・アリソン:マイロンの妹, “侯爵夫人”
ジェローム・ドオネイ:ベルギーの大富豪
イソベル・ドオネイ:ジェロームの妻
サリイ・レイン:別荘の客, 画家
エミール・ルヴァセール:同, ヴァイオリニスト
ダンスタン卿:同
フリッツ:運転手
ホフマン:アリソン家の執事
フリーダ:女中
バウワー:髑髏城の番人
ブライアン・ガリヴァン:新聞記者
アンリ・バンコラン:パリの探偵
ジェフリイ・マール:バンコランの友人, 作家
ジーグムンド・フォン・アルンハイム男爵:ベルリン警察主任警部
コンラッド警部:コブレンツの警察署長



大魔術師として知られたメイルジャアが列車の中から忽然と姿を消し、そして死体となって線路沿いの川から発見されてから数年が過ぎた。すると今度は、彼の親友であったマイロン・アリソンが死んだ。メイルジャアから引き継いだ髑髏城で、銃弾を受け火を掛けられて死んだ。

それから数日後、アリソンが死んだときから行方不明のままだった城の番人が、死体となって城の一室に出現した。


※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



列車からの人間消失、古城で焼かれた男…と、怪奇的な事件だが、冷静に状況を判断してみると、その表面的な事象すら怪奇でも何でもない。第一の事件は本人にその気があれば列車から脱出するのは簡単だし、第二の事件も単に焼け死んだ場所が古城だっただけの話。シリーズ中でも怪奇趣味が濃厚な作品と言われるが、怪奇っぽいのは雰囲気だけだw

アリソンが城に渡った経路や、突然に出現したバウワーの死体の謎も、その真相は結局は隠し通路によるものという陳腐なもの。しかも城の中の隠し通路の存在についてはすぐに明かされており、この辺りは読者の頭を悩ます謎でも何でもない。

見所はバンコランとライバルのフォン・アルンハイムとの対決。そしてフォン・アルンハイムに花を持たせる形で、バンコランが真相を隠匿するどんでん返しくらいか。前作の最後で冷酷な面を見せたバンコランが意外な一面を覗かせる。


メイルジャアは、フォン・アルンハイムの推理通りに城に幽閉されていた。ドオネイたちの元々の計画では、メイルジャアをすぐに殺すつもりだったらしいが、だったら何のために替え玉の死体を使ったのかよくわからない。幽閉したりせずにすぐに殺して、その死体を川に投げ込んだほうが余計な手間は省けたと思うのだが。

殺人の形跡を見破られることを恐れて、自然死の死体を利用したという解釈もできるが、犯人はその死体の顔を潰したりといった様々な細工を行なっている。そんなことするくらいだったら、素直にメイルジャアの頭に鈍器で一撃を加えて、水に投げ込めばいいのでは。

事件から時間が経ち、人目を惹かなくなってから殺すつもりだったという、もっともらしい説明がされているが、それはかなり苦しい。幽閉したメイルジャアの世話を続けるほうが、一思いに殺してしまうよりもよっぽど危険だろう。

メイルジャアを生かしておけば、万が一幽閉がバレたとしても、冗談だったと誤魔化せる保険だったというのもいかがなものか。いずれは人目を惹かなくなり、殺しても発覚の危険性が低くなるというのは確かにそうであろうが、それは決してゼロになるわけでもなく、リスクに見合ったリターンは望めない。

強いて説明を付ければ、最初からメイルジャアを幽閉し続けるつもりだったアリソンが、その真意を隠したままドオネイを説得するために作った適当な方便というところか。


フォン・アルンハイムはバンコランのライバルと言うよりは、完全に引き立て役だねぇ。



[1 ライン川の死] ドオネイ、バンコランに事件捜査を依頼する。大魔術師メイルジャアが、彼だけが乗る列車の一等車室から消え、数日後に線路沿いの川に死体となって浮いていた。彼の居城・髑髏城を引き継いた名優アリソンは銃撃された上に火を点けられて死んだ。川から揚がった死体はメイルジャアのものではない疑いあり。
[2 踊る死人] マール、髑髏城の対岸にあるアリソンの別荘への途上でガリヴァンと知り合う。前に出発していたバンコランとドオネイは、その途中で自動車事故に遭っていた。アガサ、アリソン殺害事件当夜の話をする。アリソンはモーターボートで髑髏城へ行こうとサリイを誘っていた(ようにアガサには見えた)。アガサ、モーターボートが水上を走る音を聞いた。階下の部屋からは、ルヴァセールのヴァイオリンの音が聞こえていた。アガサ自身はフリーダを相手にポーカーをしていた。激しい悲鳴を聞いた。髑髏城を見ると、炎に包まれた人間が飛び出してきて、力尽きたように墜落した。
[3 たいまつと月光] それからホフマンとフリッツが様子を見に髑髏城へと向かった。モーターボートは髑髏城側にあったので、手漕ぎボートを使った。アリソンが停泊したにしては、モーターボートの停泊の仕方がおかしい。彼らが城への丘を登っているときに、誰かがモーターボートを使って別荘へと戻った。事件以来、髑髏城から番人のバウワーが姿を消しまま。バンコラン、自動車事故について、ドオネイが彼を殺そうとして引き起こされたものとマールに告げる。
[4 おおかみ憑きの恐怖] 古城の幽霊見物でもしようというルヴァセールの軽口に、アリソンは強く反応を示し、顔面蒼白で手が震えていた。その場はドオネイとサリイが取り繕った。バンコラン、サリイの話をすべて信じてはいない。
[5 夜のヴァイオリン] ダンスタン卿とサリイは何か嘘をついている様子。事件当夜のルヴァセール、事件の少し後に、ドオネイ夫妻の部屋のほうへと向かう人影を見た。ドオネイは睡眠薬を飲み、眠っていたと証言。その妻イソベルも眠っていて、騒ぎを聞いて目覚めたと証言。
[6 フォン・アルンハイム男爵登場] バンコラン、アリソンの部屋を調査。書斎、寝室、浴室と続いており、書斎と寝室の間には小さな仕切り部屋がある。仕切り部屋には乾いた大量に泥が落ちている。アリソンが死んだときに履いていた靴は、晩餐のときにも履いていたとは思えないもの。晩餐用の靴は見つからない。泥まみれのオーバーコートが見つかる。そのポケットの中には事件で使われたものらしき拳銃。フォン・アルンハイム男爵、到着。
[7 錆びついたピストル] 髑髏城の一室にてバウワーの死体が見つかる。事件直後に調べたときにはそれはなかった。バンコラン、男爵の推理を推量。「メイルジャアの死体は偽者で、彼はまだ生きている。メイルジャアは、彼への復讐を企てるアリソンとドオネイから逃れたかった」 バンコランと男爵の一致した推理。「拳銃を用いた犯人は、手は小さいが、力の強い人物」
[8 塔上の死体] 城の調査。アリソンは撃たれた後、誰かに担がれて階段を運び降ろされた。
[9 五彩のガラス窓] かつてメイルジャアの仕事部屋だった部屋。手入れされた手錠に鎖。古新聞が一束。バウワーの死体には2発の銃弾が撃ち込まれている。死体は別の場所から移動された痕跡。城の壁の中に隠し階段を見つける。
[10 恋に迷う] ダンスタン卿とイソベルは不義密通を重ねていた。事件当夜も彼らは密会していた。ルヴァセールが見た人影は、急ぎ部屋に戻ろうとしていたイソベル。
[11 ビールと魔術] 城で見つけた古新聞には、アリソンの劇評なども載っている。メイルジャアについて、ガリヴァンから話を訊く。メイルジャアには正式な妻があり、金髪で美しい愛人もいた。愛人は既に死んでいるが、彼女との間に子を持っている。
[12 生きていたたいまつ] ガリヴァンによると、メイルジャアはアリソンの演技の拙さを鋭く指摘したりすることがあり、表面上は親友であった彼らはお互いに敵意を抱いていた。アリソンは「青銅のひげ」という戯曲に挑戦したがっていた。その主人公は最後に火刑に処せられる役。アリソンの最期と一致している。
[13 ダンスタン卿の告白――ドオネイの立ち聞き] 事件当夜、ダンスタン卿はイソベルを連れ、モーターボートで髑髏城側へと渡った。もちろんそこにアリソンはいなかった。つまりもしアリソンが髑髏城へ行くのにボートを使っていれば、手漕ぎのものは後にホフマンたちが使用しているので、どちらかのボートを別荘側に戻した人物がいるはず。ダンスタンたちは、何か重そうな物を引きずった男が地中から出てくるのを見ていた。マール、川の下を抜ける秘密の地下道の存在に気づく。
[14 髑髏城への道] 妻イソベルとダンスタンとの不義を知ったドオネイ、あっさりと彼女と離婚することと、彼らの再婚を承諾。秘密の地下道の出入口の一つは、アリソンの仕切り部屋にある。
[15 もつれあった網目] ルヴァセール、レコードを用いたアリバイ・トリックを否定。
[16 古城の晩餐] 男爵に責め上げられたドオネイ、心臓発作で死亡。マール、メイルジャアの写真を見て、彼と一緒に写っている黒髪の美女が、知っている誰かと似ているように思える。ダンスタンが目撃した地中から出て来た人物は、赤毛で長髪の男。
[17 犯人の正体は?] 男爵の推理。「アリソンとドオネイはメイルジャアを憎んでいた。彼らはメイルジャアを城に幽閉し、メイルジャアに成り済ましたアリソンが列車に乗り、窓から脱出した。川に浮かんだ死体は、彼らが別の死体を偽装したもの。ドオネイは世間の注目が事件から離れたらすぐにメイルジャアを殺すつもりだったが、より憎しみの強いアリソンは彼を殺害したとドオネイに告げ、実際には彼を生かしたまま城に幽閉し続け、嬲りものにしていた。隙を突いて虜囚の身から逃れた彼は、その場にいたバウワーを殺し、そしてアリソンに復讐した」 男爵、メイルジャアを連れて来る。彼の体は病に冒され、その命は保って数日。
[18 フォン・アルンハイムは笑う] ドオネイは椅子に座っているメイルジャアを見て、そのショックで死んだ。
[19 バンコランは笑う] バンコラン、証拠隠滅を告白。
迷犬ルパン・シリーズ。元々三毛猫ホームズのパロディで、今回は当の三毛猫ホームズとの共演。オペラ公演の舞台上で毒矢を背に受け殺害された女優。(∪^ω^)わんわんお! (「・ω・)「にゃおー [??]

ルパン:雄犬
サファイア:雌犬, ルパンと仲良し
川澄ラン:女優, ルパンとサファイアの飼い主
川澄健:ランの弟
小暮美々子:健のガールフレンド
朝日正義:警視庁捜査一課の刑事, ランの家に下宿
根岸吾一:健の同級生
貝塚アユミ:同

ホームズ:三毛猫
片山義太郎:警視庁捜査一課の刑事, ホームズの飼い主
片山晴美:義太郎の妹
石津:目黒署の刑事
児島光枝:義太郎の叔母

花房毬絵:オペラ女優
花房洋一郎:演出家, 毬絵の夫
花房ミツ:洋一郎の前妻
ポー:毬絵の飼い猫

御薗高也:台本作家
皆川豊:演出助手
竹田:AD
坂口:照明係
本山:テレビ番組のプロデューサー
文月みちや:タレント兼作家
関:文月の担当マネージャー
服部透:音楽家

水上:刑事
雅子:<結城>の店員
滝沢:<結城>の常連客



恋多き主演女優・花房毬絵が公演中の舞台上で殺された。彼女の背中には毒矢。ほとんど即死と思われる。

観客もスタッフも毬絵の一挙手一投足を見ていたが、誰も矢が刺さる瞬間を目撃していない。しかし観客席正面を向いて倒れた毬絵の背中に矢が刺さっているのだから、犯人は彼女の背後、セットに開けられた小さな窓から矢を放ったと考えるのが自然である。

それを裏付けるように、セット裏には誰かがいたような痕跡があった。


※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



赤川次郎の三毛猫ホームズのパロディとして始まった、迷犬ルパン・シリーズが本家と共演。本家よりもドタバタ度が強く、設定の忠実再現度にも甘さがあるが、雰囲気は楽しめるw

しかし楽しめるのはその雰囲気だけで、ミステリ部分の内容は残念な出来。軽い読み物としては、この程度のものもありなんじゃないかとも思うけど、期待して読むようなものじゃない。

あ、でも文庫本で260ページほどだけど文字組が大きめで会話も多いのですぐに読み終わる…って、これは褒め言葉にはならないかw でも実際に僕は、いつの間にやらそれをありがたく感じるようになってしまいましたw 読んでる作品がつまんないとかそういうのじゃなくて、さっさと読み終えて、たくさんの作品を読みたい気持ちも強い。


閑話休題で本作は、被害者の背後に即死レベルの毒矢が刺さっていたので、警察はセットの裏に隠れていた人物(文月みちや)を犯人として追うというもの。当然ながら警察の最初の推測は間違っていますw

真相は意外なものであった。毬絵は正面を向いているときに倒れたが、実は矢を受けたのはその1~2分前。常人なら即死レベルの毒を受けた彼女だったが、超人的なプロ根性の精神力でそれに耐え、演技を続けたのだ(…)。

「彼女は並の人間じゃない。大勢の男を手玉にとったエネルギーだけでも普通とは言えん。(中略) 死んでもいい、このステージをまっとうしよう! そう覚悟したんじゃなかったか?」 「それならわかります!」

どうツッコんでいいかわからないよ…w


作中では被害者は即死と見ていいと書かれているし、その大前提で捜査も進められている。なのにこれはあまりにもな真相。犯人がセリに隠れていたという推測は、被害者の体の向きを理由に序盤であっさりと却下されている。それを最後にひっくり返すこと自体はいいのだが(実際そうであろうと読者の大半は予想しているはず)、さすがにこれはひどい。しょせんパロディと言えばそれまでなのだが。

「しょせんパロディ」と捉えて、深くツッコむべきではないのだろうが、とりあえず被害者が超人的な力によって、即死せずに演技を続けたというのは認めるとしよう。だが予測してたのならともかく、不意に背中に矢が刺さっても反射的な反応すらしないというのはどうだろう。何があろうとも決められた動きを続けるというのは、素晴らしい演技とも思えないが…。


捜査の進め方にもおかしな点が。他の人物のアリバイはチェックするのに、なぜか真犯人のアリバイについてだけは一切触れない。(だから、なおのこと読者には真犯人はバレバレ) 真相がわかってから、彼の行動については特に触れられなかった理由が、まるで読者向けの言い訳のように語られる。読者の目を逸らすなり、アリバイ・トリックなり、そこは作者もちょっとは工夫しようよと言いたい。


些細なことだがもう一つ。第二章に「のちに服部老人はくりかえし、その夜のことを人に語ったそうだ」という記述がある。そして第五章には「ぎりぎりで朝日の見舞いが間に合った」などの記述があり、老人は事件解決後、数日と保たずに亡くなっていると推測される。この二つの部分を合わせると、老人は朝日と過ごした時間についての話を、死の直前の数日間に何度も語ったのであろう。

であれば、「くりかえし、その夜のことを人に語った」のは確かに間違ってはいない。が、その表現がなんとなく座りが悪い。また、死の直前の短期間で、語り草になるほどその話を繰り返すだろうかという気もする。

地の文の一部に、登場人物でも“神”でもない、あまりにあからさまな作者自身の視座が透けて見えると、そこだけ妙に浮いているように思える。感覚的には、漫画の中にいきなり作者自身がキャラとして登場するみたいな? ギャグ漫画ならいいんだ、ギャグ漫画なら…w



[第一章 あらそいとめぐりあい 1] 迷犬ルパンと三毛猫ホームズの出会い。
[第一章 あらそいとめぐりあい 2] オペラ「生者と死者」公演中に主演女優・花房毬絵が死亡。背中に矢が刺さっている。殺人事件。
[第一章 あらそいとめぐりあい 3] <ワット電器>にて、大騒動。
[第一章 あらそいとめぐりあい 4] 毬絵は舞台の真ん中で正面を向いたときに倒れた。そのとき、彼女の真後ろにいたのは皆川、竹田。彼らに不審な動きはなかったと、坂口が証言。
[第二章 シラカバとプラタナス 1] 舞台には岩のハリボテ。そこには奈落に出入り可能なセリがある。もし誰かがそこから矢を放ったら、毬絵の背中ではなく脇腹に当たったはず。御薗は毬絵と大喧嘩しており、公演に立ち会わずに近くのホテルにいたと主張するが、それを立証できず。
[第二章 シラカバとプラタナス 2] 蓼科高原の別荘にて、朝日刑事、休暇中。服部と出会う。
[第二章 シラカバとプラタナス 3] 毬絵は既婚者だが、依然として恋多き女。その相手として御薗、皆川、本山、文月らの名前が挙がっている。その中で文月だけはどこかへ休暇に出かけており、行方不明。
[第二章 シラカバとプラタナス 4] 毬絵が死んだとき、本山は副調整室にいたというアリバイ主張しているが、それを確認できる者がいない。
[第二章 シラカバとプラタナス 5] 毬絵の背後には石段の絵が描かれており、大人が背伸びすれば届くくらいの位置に、開閉する小さな門があった。そこから毬絵の背中に矢を放つことは可能。その裏には、床に靴跡があり、手袋のものらしき毛糸が残り、タバコの吸い殻が落ちていた。文月の指紋も見つかり、タバコの吸い殻も彼のものである可能性が高い。
[第二章 シラカバとプラタナス 6] 蓼科の別荘にて。隣家の住人はまるで隠れ潜んでいるような様子。
[第三章 たくらみとおどろき 1] 毬絵を刺した矢にはトリカブト毒が塗られていた。その毒性の強さからして、毬絵はほぼ即死と見られる。死の寸前の毬絵は、ちょうど死神に誘われて生者から死者へと移行する場面であり、鬼気迫る表情を浮かべ、壮絶な歌を聴かせていた。本山はアリバイは証明できないが、彼なら殺人にもっと都合の良い場所に毬絵をおびき出すことも容易であり、さらに利き手の人差し指を負傷していたので正確に矢を投げることも困難ということで、犯人の可能性は低い。皆川が自宅から不審な脱出を図ったため、彼の容疑が濃厚になった。
[第三章 たくらみとおどろき 2] 蓼科の別荘にて。隣家の周囲に不審人物がうろついており、朝日が様子を見に行くと、その人物は車で立ち去った。朝日はその隣家の住人に警察への連絡を提案するが、相手はそれを断った。朝日はその隣人が文月であることに気づく。
[第三章 たくらみとおどろき 3] ホームズ一家、ルパン党、それぞれ蓼科へと向かう。
[第三章 たくらみとおどろき 4] アユミは「生者と死者」を録音していた。そのテープを服部が聴く。毬絵が死ぬ1分ほど前の部分に、音楽家の彼の耳にはセットが動いたような雑音が聞こえる。洋一郎の演出にしては、彼女の歌がストレートで単調すぎると指摘する。アユミたちは一旦服部と別れるが、服部がもう一度テープを聴きたいということで、アユミがそれを届けに行く。
[第三章 たくらみとおどろき 5] アユミと服部が姿を消す。服部の家の玄関の扉は開けっ放し。室内には口の付けられていないコーヒーカップが二つ。荒らされた跡はない。文月も姿を消していた。
[第四章 よろこびとくいちがい 1] ラン、文月を見つけ、彼を尾行し始める。
[第四章 よろこびとくいちがい 2] 文月、ランに気づき、彼女を連れ去る。
[第四章 よろこびとくいちがい 3] 皆川、アユミを人質に取り、服部から録音テープの隠し場所を訊き出そうとする。
[第四章 よろこびとくいちがい 4] 文月、毬絵からの手紙の指示で、彼女の演技を観るためにセット裏にいたと話す。そこには毬絵を自筆はなく、犯人による偽手紙の可能性が高い。文月は逃亡しているのではなく、犯人を追跡しているのだという。
[第四章 よろこびとくいちがい 5] 皆川の身柄を確保。
[第四章 よろこびとくいちがい 6] 毬絵は毒矢を受けてなおプロ根性で演技し続けていた。つまり矢が背中に刺さったのは、彼女が正面を向く以前。
[第五章 さよならとこんにちは 1] 毬絵をわざわざ舞台上で殺害した動機は未だに不明。
[第五章 さよならとこんにちは 2] 洋一郎と文月が接触。
[第五章 さよならとこんにちは 3] セット裏のほうに毬絵が背を向けたとき、既に彼女の背に矢が刺さっていたことを、そこにいた文月は見ていた。
[第五章 さよならとこんにちは 4] 水堀に落ちた文月、引き揚げられる。
[第五章 さよならとこんにちは 5] 服部、死亡。