旅行中の四人組の女、“未亡人”たち。その中の一人が服毒して死亡。その原因である薬は別の女から貰ったもの。毒はどちらの女を狙ったものなのか? 事件の裏に別の詐欺事件の影。[??]

ロビン・ニコル:主人公
シャーロット・バーバー:一人旅の娘
アマンダ・ハウレット:“未亡人”たち
ヘレン・バスウエル:同
キャロライン・マクフィー:同
デアドリー・ブレア:同
ジェイク・ハウレット:“未亡人”の夫たち
エドワード・バスウエル:同
アンガス・マクフィー:同
マイケル・クローリー:ヘレンの息子
キャメロン夫妻:ホテルの経営者
アンディ・マクニール:ホテルのポーター
ウォータストン:地方検察官
ネス:警視



休暇旅行中のロビン・ニコルはたまたま四人組の女――“未亡人”たち――と知り合った。彼女たちの中の一人、アマンダ・ハウレットには何か後ろ暗いところがありそうだった。

“未亡人”たちの中の一人、キャロライン・マクフィーは騙されやすく、何度も詐欺師に引っ掛かっているという。そんな彼女が服毒死した。

彼女は船は苦手らしく、酔い止めの薬を飲んでいた。そしてその薬も不足してしまい、ヘレン・バスウエルから薬を分けてもらっていた。

これは自殺なのか他殺なのか? もし他殺だとすれば、犯人はヘレン殺害を狙い、誤ってキャロラインを殺すことになってしまったのか? あるいは最初からキャロラインを狙った殺人?


※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



物語はロビン・ニコルの視点で進行する。偏見かもしれないが、四人の年配女性に囲まれた初対面の若いカップルのちょっとしたロマンスが、いかにも女流作家の手によるものという印象w じっくり腰を据えて推理するようなタイプではなく、軽々とストーリーは転がっていく、コージー・ミステリ。これは実に悲劇的な話であるのだが、読後にそのような印象はまったく残らず、実に爽やか。考え方によっては、その爽やかさが残酷ですらある。

事件が始まるまでに3分の1ほどのページが費やされるが、そこまではちょっとダルい。しかし最後まで読めば、無駄な場面はあまりなく、多くのデータが提示されている。もっともそのほとんどは本筋ではないレッド・ヘリング的な枝葉の話に関わるものなのだが。ハウレット夫妻の“悪事”などは完全に枝葉。枝葉を切り払ってしまえば、ヘレンがキャロラインに薬を分け与えることになった場面だけが残るw

「ヘレンがキャロラインに薬を分け与えたことはロビンとシャーロット、そして“未亡人”たちの皆が知っている。だから、もし殺人犯がその中にいるとしたら、そしてヘレンを狙っていたのだとしたら、その薬がキャロラインに渡ったのを放置しているはずがない」というのが本作の重要な点となっている。と言うか、その点だけが問題で、残りは装飾だw

この殺人事件は状況を見れば、ヘレンがキャロラインを狙ったのか、あるいは別の目的で所持していた毒物をうっかり渡してしまったと考えるのがもっともシンプルであろうが、作中ではその点があまり考慮されないのが不思議。

冷めた目で見ると、偶然が過ぎるように思える。写真の中のヘレンの夫エドワードが自分を騙した詐欺師であると気づいたキャロラインが殺されたのは、エドワードの意図によってではなく、そこに誤算が生じた結果の、たまたまの出来事。彼にとっては幸か不幸か、妻の殺害という目的は果たせなかったが、そのおかげで、彼にとって致命的となりかねない人物の口を塞いだことになる。

疑問点。もし狙い通りにヘレンを殺害した場合も、当然、その夫エドワードは島にやって来ることになっただろう。その場合はキャサリンが生存しているのだから、彼は彼女と顔を合わせることになる。写真で気づかれるくらいだから、直接顔を合わせたら確実にその正体はバレる。まさかその点をまったくエドワードが考慮していなかったとは考えづらい。殺人についてはアリバイがあるから、詐欺師とバレても構わないという計画だったなんてのも無茶過ぎるし。



[1] 空港。女が何かに怯えた様子。男「俺はまだ誰にも気づかれていない。これが片付くまで、絶対に気づかれないように気をつけるさ」 女「笑いごとじゃないでしょ。私たち、破滅するかもしれないのに」 ロビン・ニコル、飛行機に乗る。偶然にも隣席には先ほど目撃した女(アマンダ・ハウレット)。
[2] 島に到着。アマンダ、飛行機を降り、友人たちと再会。ヘレン・バスウエル、夫エドワードの写真をキャロライン・マクフィーに見せる。ヘレン「あまり写りは良くないのよ。写真を撮られるのを嫌がるから、こっそり撮ったんだけど」 キャロライン「んまあ、素敵な人じゃない!」 アマンダ「眼鏡がなきゃ何も見えないくせに。老眼鏡を掛けて、ちゃんと見なさいよ」 ロビン、またもや彼女たちを見かける。彼女たちは四人目の女――デアドリー・ブレア――と合流している。ロビン、シャーロット・バーバーと知り合う。
[3] ロビンは“未亡人”たちと知り合っている。彼女たちは本物の未亡人ではない。キャロラインは詐欺師に引っ掛かりやすい。キャロライン「ジェイク・ハウレットの本が映画になるの。それでジェイクとアマンダは大急ぎで海外に引っ越さなきゃならなかったのよ。そうしないとほとんど税金で取られちゃうから」 デアドリー「いいえ、私は結婚したことがないの。仲間外れになるのが嫌だっただけ」シャーロットは本物の未亡人。
[4] キャロライン「もううちに帰る分しか酔い止め残ってないんだから」 ヘレン「私のを飲む? マイケルが私に処方してくれる薬なの」
[5] デアドリーはロビンをキャロラインを引っ掛けようとしている詐欺師か、彼女を護るために送り込まれた探偵かと疑っていた。
[6] キャロライン、夫から電報があったと話し、急ぎ帰宅しようとしている。シャーロットも帰宅したいと言い出す。アマンダ「キャロラインはどうしたんだと思う?」 ヘレン「一昨日の夜に私の部屋に来たときはいつも通りだったわ」 デアドリー「もし、いつも通り詐欺の泥沼に嵌り込んだことを昨日、誰かに知らされて、今日はアンガス(・マクフィー)から電報で、全部知ってるから家に帰れって言われたなら筋が通るわね?」 悲鳴。キャロラインが自室で死んでいる。
[7] ヘレン「自殺じゃないわ。私のせい」 キャロラインが受け取った電報。「スグカエレ ゼンブ オミトオシダ アンガス」
[8] ロビン「バスウエル夫人はどこ?」 シャーロット「寝込んでる。マクフィー夫人が酔い止めの薬と間違えて毒を飲んでしまったっていう説が出てて。バスウエル夫人の話じゃ、アイオーナ島に行く前の晩に自分の薬を一錠あげたって言うんだけど、毒が入っていたのはその薬に違いないって。バスウエル夫人は誰かが自分に毒を飲まそうしたと思って、きっとそれで泣いてるのよ」
[9] シャーロットはアンガスの依頼でキャロラインを見張っていた。
[10] ロビン、アマンダとその夫がキャロラインを何度も引っ掛けている詐欺師一味ではないかという疑いを、彼女にぶつける。ロビンの追及に彼女は何か不安そうな反応を示したが、詐欺についてはさほど気にしていない様子。ウォータストン検察官「錠剤について、バスウエル夫人は、自分の錠剤の残りを全部、下水に流して、一錠も残ってないと言うんです。夫人はなぜか息子さんが毒を処方したと思い込んでいて、必至に庇ってるんです」
[11] デアドリー「私はよくこのちっちゃい機械(補聴器)にうんざりしてスイッチを切るの。たまに自分一人の世界に引き籠ると、ずいぶん心が休まるの」 ヘレンは財産家。彼女が死ぬと、その遺産は夫と息子に等分される。ロビン「とにかく彼女は恐れている。ご主人を、息子さんを。それでもクローリーを庇おうと必死みたいですが。地方検察官の話じゃ、バスウエル夫人は薬の残りを全部捨てた上で、普通の売薬だと言い張ったらしい。でも、バスウエル夫人は僕らに、あれはクローリーが処方した薬だと言ったんですから」 デアドリー「そう言ったの?」 ロビン「そう。そして、クローリーはバスウエル夫人がここに来る直前にそうしたことをあっさり認めてる」 デアドリー「それじゃ、ご主人がどうやって毒薬を仕込めたのか見当もつかないわね。もう旅行に行ってたんだから」 ロビン、アマンダが部屋に飾っていた写真の男を見かける。それが彼女の夫かと思っていたロビンは、それがエドワード・バスウエルと知り、驚く。
[12] ロビン「エドワード・バスウエルが奥さんを殺して遺産を取ろうとしたんだと思う。彼はハウレット夫人を共犯に抱き込んで、自分がゴルフ旅行に行っている間に、ハウレット夫人に奥さんの薬の筒に毒入りのやつを入れさせた。写真を僕に見られたのは大失敗だったんだよ」 シャーロット「いいえ、違うわ。あなたにわざと見せたのよ。ハウレット夫人が何の理由もなく、そんな写真をあなたに見せるなんて信じられない」 シャーロット「バスウエル夫人がマクフィー夫人に薬を渡したことは私たち全員が知ってるわよね?」 ロビン、マイケルを尾行。
[13] ロビン、ジェイク・ハウレットと会う。ジェイク「英国に住んでて税金を払うのは俺だから、今、ここにいるのが見つかると、税金を払わなけりゃならないんだ」 マイケルとジェイクは、ヘレンの再婚相手が、かつて妻殺しの容疑を掛けられたトーシルという人物であることを知り、その対応に腐心していた。
[14] ロビン「それじゃマクフィー夫人は、このホテルでコペンハーゲンの詐欺師を見つけたと思ったんじゃないかな?」 ロビンは、マクフィー夫人が酔い止めを分けてもらうためにバスウエル夫人と二階に上がってから起きたであろう光景を思い浮かべた。二人がバスウエル夫人の部屋に入った。マクフィー夫人は貰った薬を確かめようと眼鏡を掛けた。そのとき、エドワードの写真をちゃんと見てしまった。そこにあったのは自分をコペンハーゲンで騙した詐欺師の顔だった。どうしたらいいのかわからず、夫に相談しようと電話したが、あまりに込み入った話なので、上手く伝えられず、帰宅してじっくり話すことにする。急な帰宅の理由を他の“未亡人”たちに説明できるはずもなく、そのための適当な理由として、自分を呼び戻すような電報を打ってくれと夫に頼んだ。
[15] 行方不明のシャーロットは既に島を出ていた。警察が尾行している。ロビン「シャーロットは、バスウエル夫人がマクフィー夫人に酔い止めを渡すことは全員が知っていたんだから、このホテルで毒が入れられたはずはないと言ったんだ。違う人が毒を飲むのを、殺人者が傍観してるわけがないんだから。もちろん、最初から狙いがマクフィー夫人だったなら話は別だ…」 「たぶん、急に気づいたんだ。僕たち全員が知っていたという前提が、間違いだったと」 悲鳴。エドワード、服毒死。
[16] シャーロット、犯行現場を警察に押さえられる。
モース警部シリーズの長編第9作。ツアー客の一人である女がホテルの部屋で死に、貴重な装身具がハンドバッグごと盗まれる。案内人の一人の男の全裸死体が川から見つかる。[???]

シーラ・ウイリアムズ:ツアー・ガイド
シオドア・ケンプ:アッシュモーリアン博物館の職員
マリオン・ケンプ:シオドアの妻
セドリック・ダウンズ:中世史家
ルーシー・ダウンズ:セドリックの妻
ジョン・アシェンデン:ツアーの責任者
ジャネット・ロスコウ:ツアーのメンバー
エディ・ストラットン:同
ローラ・ストラットン:同
ハワード・ブラウン:同
シャーリー・ブラウン:同
サム・クロンキスト:同
ベラ・クロンキスト:同
フィル・オールドリッチ:同
ダグラス・ガスコイン:ホテルの支配人
シーリア・フリーマン:電話交換手
ロイ・ハルフォード:ホテルのボーイ長
マックス:警察医
ベル:主任警視
ストレンジ:主任警視
ルイス:部長刑事
モース:主任警部



ローラ・ストラットンは貴重な工芸品“ウルバーコートの留め具”をハンドバッグに入れて持ち歩き、ツアーに参加していた。彼女が米国から英国へとやって来たのは、それをアッシュモーリアン博物館に寄贈するためだった。

しかしそれは叶えられることはなかった。彼女はホテルの部屋で死亡し、工芸品はハンドバッグごと何処かへと消えてしまったのだ。モース主任警部は彼女の死を他殺と推測(希望)するのだが、彼が信頼を置いていない医師も、彼が信頼を寄せる医師も、どちらも彼女の死を自然死と見ていた。


しかしこれは単純な盗難事件でもなさそうだった。ツアー関係者の一人の全裸死体が川に浮かんだのである。こちらは他殺の疑いが濃厚だった。


※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



TVドラマシリーズの「モース警部」の原作が尽きてしまったため、それを補うためにコリン・デクスターは脚本をいくつか書いた。その中の一つをノベライズしたものが本作。そう聞かされれば納得で、場面転換で話を引き伸ばすばかりで――映像向きではあるのだろう――内容は薄い。

Aという人物がBを目撃。Bを問い質すと、BはCを目撃したことを告白。そんなパターンの繰り返し。まるで昔のRPGのように行ったり来たり。関係者は無意味にアリバイを偽装し、事件解決には繋がらずとも、モースはそれを崩さねばならない。

終盤のプレゼンテーションはモースが見事な“名探偵”振りを発揮。その雄弁さと迫力はなかなかのもの。プロットが弱いのが残念だw

事件の真相の半分近くは、実は第一部でほとんどズバリ明かされている。

ところでモースはしょっちゅう無実の人物を逮捕してる気がするが、これは警察内外で大きな問題にならないのだろうか?w



[第一部 1] シオドア・ケンプ、シーラ・ウイリアムズに飽き始めている。
[2] ジョン・アシェンデン、旧友ジミー・ボーデンを思い起こす。
[3] ツアーの一行、ホテルに到着。
[4] 疲労を訴えるローラ・ストラットン、真っ先に鍵を取り、部屋へと向かう。夫エディ・ストラットンはお茶を飲んでから部屋へ行くからと、錠を開けておくように伝える。
[5] ローラ、部屋に入り、ハンドバッグを置き、バスルームへ。
[6] ローラの死体が自室で見つかる。床の上に横たわっていた。冠状動脈血栓症。ハンドバックがなくなっている。
[7] 翌日のツアーの予定。途中で三つのグループに分かれる。シオドアの案内による、博物館見学。セドリック・ダウンズの案内による、建築設計と技術の話。シーラによる、“アリス・ツアー”。
[8] ローラのバッグともに、その中に入っていた“ウルバーコートの留め具”という、宝石を散りばめた歴史的工芸品もなくなっている。ローラが一人で部屋へと向かい、エディが彼女を発見するまでの時間帯は午後4時30分から5時15分。シーラ、アリバイを問われ、シオドアに訊くようにと返答。
[9] アシェンデンは午後4時45分頃は旧友ジミーの墓参りをしていた。シャーリ・ブラウンは午後5時10分にエディの腕を離し、二人はホテルに戻った。
[10] 警察医マックス、ローラの死因を冠状動脈血栓症と断言。他殺とというモースの見立てには不利な情勢。
[11] ウルバーコートの留め具がアッシュモーリアン博物館に寄贈されることになっており、それは、シオドアの念願だった。シオドアはアリバイについては言葉を濁す。
[12] シーラ、アシェンデンにアリバイを尋ねるが、その返答は曖昧。
[13] モース、事件の様々な可能性を考える。
[14] シオドアは2年前に自身の飲酒運転による交通事故で妻を下半身不随にしてしまった。相手の車の運転手(29歳既婚女性)は即死。事故の責任は明確にならず、シオドアは罰金刑と3年間の免停。
[15] ツアーの予定時刻が繰り上がる。
[16] ジンジャー・ボネッティから姉ジョージー・ボネッティへの手紙。
[17] セドリックは耳が悪く、補聴器を使用している。シオドアはロンドンでの用事により、ツアーの案内ができなくなる。
[18] アシェンデンがモードリン・カレッジを見物していたというアリバイは偽り。ルイス、ホテルを出るエディを見掛け、尾行。
[19] 若い恋人たちが川に浮いた死体を発見。
[第二部 20] 全裸死体となっていたのはシオドア。現場付近でツアーの予定表が見つかる。繰り上げられた時刻がボールペンで訂正されている。「7」の字の縦の棒に斜めの線が入っている。
[21] 泥酔したエディがタクシーでホテルに戻る。タクシー運転手によると、女に電話で依頼され、彼を送り届けた。
[22] モース、遺失物のツアーの予定表を見る。
[23] ルイス、マリオン・ケンプと面会。シオドアは7時20分にタクシーで出かけた。ロンドンから電話をかけてきた。ルイス、シオドアの死を彼女に伝える。
[24] モース、シーラと面会。シオドアの死を告げる。シーラ、ノース・オックスフォードで自転車に乗ったセドリックを目撃したことを証言。
[25] 「7」の字の縦の棒に斜めの線を入れる人物は限られる。
[26] 事件関係者に質問表の回答を記入させ、斜め線入りの「7」の筆者を捜す。自転車に乗っていた件をセドリックに問うと、補聴器の調子が悪かったので予備を家に取りに戻ったと回答。セドリックもある人物を目撃したと告げる。
[27] 斜め線の「7」の筆者、シオドアの死体発見現場付近の予定表の落とし主はハワード。セドリックがノース・オックスフォードで目撃したのはアシェンデン。
[28] シオドアの命を奪ったのは頭部への打撃。
[29] ウルバーコートの留め具には保険金が掛けられているが、その詳細をエディは知らない。シオドアが死んだ日の6時前後に、エディは列車内でフィル・オールドリッチを目撃。
[30] アシェンデン、シオドアからとされる電話は99%本人からのものだったと断言。電話交換手もそれを補完。
[31] モースとルイス、ダウンズ夫妻宅を訪問。セドリックは留守。ルーシーもこれから買い物に出かける予定。シオドアの死はアシェンデンからセドリック経由でルーシーも既に知っている。ルーシー、重そうなスーツケースを抱え、迎えに来たタクシーに乗って出かける。
[32] モース、シオドアの死体が川に投げ込まれた場所を考察。
[33] オールドリッチ、便箋に何かを書いている。騒ぐジャネット・ロスコウに対し、いつものように忍耐強く振舞っていたが、ついに彼女を大声で叱責する。それはシーラにとってはとても意外な光景。
[34] オールドリッチの供述書。1944年、夫のある女と関係を持ち、娘ができてしまう。女の夫は娘を自分の子として扱った。オールドリッチはその娘ピッパの消息を探していたが、ついにそれを掴み、娘と電話で話した。会うことになったが、彼女は待ち合わせ場所には現れなかった。そのときの帰りの列車で彼はエディに目撃された。
[35] 供述書の訂正は3ヶ所、誤字も2、3字。きちんとした文章を書く人物とモースも認める。
[36] ハワードは昔、エディと少し知り合いだった。ハワードは予定表を落としたことを認めた。その辺りでかつての恋人に会っていた。ハワード、アシェンデンを目撃したと供述。
[37] アシェンデン、競馬場へ行っていたと供述。外れ馬券をモースに渡す。
[38] ツアーはいまいち盛り上がらず。
[39] アシェンデンの馬券は外れではなく当たっていた。マリオン、自殺を企てる。
[40] ルイス、モースにカーテンの話をする。
[41] マリオン、死亡。モースの推理。シオドアはルーシーとの浮気現場をセドリックに見つかり、殺され、川に捨てられた。
[42] セドリック、逮捕される。
[43] モース、説明する。
[44] エディ、亡き妻を想う。
[45] セドリック、シオドアがマリオンに言い寄っていたこと、彼を殺害したいほど憎んだことを認める。しかし自宅にシオドアがいたことも、彼を殺害したことも認めず。
[46] ルーシー、車に跳ねられる。
[47] 不審な鍵の正体について、セドリックは告白。
[48] ルーシー、入院。
[第三部 49] バース観光。
[50] シオドア殺害時のエディのアリバイ成立。アシェンデン、アリバイ偽装について告白。エディ、妻の遺体とともに米国へ帰国。
[51] シオドアの電話の件について。
[52] バーバラ・モール博士の講演。
[53] モースの講演。
[54] 川から留め具は未だに発見されず。
[55] モースの講演の続き。
[56] エディを乗せた飛行機が再び英国へ向かっている。
[57] モース、犯人の名を明かす。
[58] 夫婦は揃って泣いた。
[59] 補足説明。
[60] 犯人の口は固い。
モース警部シリーズの長編第8作。過去の事件が記された書物から、その真相を推理。(終盤には動き回るけど) 船の乗客の女が死に、乗組員たちが有罪になる。女はわずかな金銭的負担で陸路を選ぶこともできたが、なぜそうしなかった? [???]

[1859年の事件に関わる人々]
ジョアナ・フランクス:殺された女
ダニエル・キャリック:ジョアナの父
F・T・ドナバン:ジョアナの最初の夫, 奇術師
チャールズ・フランクス:ジョアナの二番目の夫
ジャック・オールドフィールド:バーバラ・ブレイ号船長
アルフレッド・マッソン:同乗組員
ウォルター・タウンズ:同
トマス・ウットン:同

ウイルフリッド・デニストン:大佐
マクリーン:ジョン・ラドクリフ第二病院婦長
フィオナ・ウエルチ:同看護婦
アイリーン・スタントン:同
ウォルター・グリーナウェイ:患者
クリスティーン:ウォルターの娘, 図書館員

ストレンジ:主任警視
ルイス:部長刑事
モース:主任警部



胃潰瘍で入院したモース主任警部は、同室の患者の家族から一冊の本を渡された。それは「オックスフォード運河の殺人」という題名の薄い本で、過去のある事件についてのものだった。

その事件は、ジョアナという女が船旅の最中に殺害され、船員たちが死刑になったというものだが、モースはそれを読み進めるうちに、そこに様々な疑惑を持つようになった。

部下のルイスや、図書館員のクリスティーンを頼りに、モースは事件の真相解明に挑む。


※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



ジョセフィン・テイ著「時の娘」に代表される形式の、過去の事件に挑む安楽椅子探偵もの。だが、元ネタはたぶん史実ではなく創作であり、さらに事件のスケールが小粒であるため、どうにも軽い。英国の権威あるゴールド・ダガー賞をついに受賞した作品ということだが、作者・デクスターの過去の作品と比べて、これのどこが良いのかさっぱりわからない。

歴史的な出来事についての解明なら、そのスケール感で誤魔化されるところはあるが、本作のような、オカルティックな謎もないありふれた小さな事件の、無機質な記録風な文章を読まされるのは退屈なだけ。事件記録を読む、モースの感想、再び事件記録を…テンポの悪さばかりが目に付く。

過去の事件を扱っているがゆえ、モースの周囲にはその当事者はおらず、関わるのは事件とは無関係な者ばかり。そのため、調査から証拠品集めに至るまでの過程がやたらと回りくどく、事件解決とは直接結び付かない描写の割合が非常に多くなっている。終盤もやけにダラダラと展開し、真相はズバッとすっきり提示されずに、延々と小出しされ、非常にキレが悪い。

最も駄目な点は、提示される謎に魅力がないことに尽きる。この形式の作品では、モースの推理の組み立てだけじゃつらい。



[1] モース、病院へ運び込まれる。
[2] モース、胃潰瘍により入院。
[3] ルイスのお見舞い。
[4] モース、ウイルフリッド・M・デニストン著「オックスフォード運河の殺人」など、3冊の本を受け取る。
[5] モース、「不公正な裁き」にうんざりし、「ブルーの招待状」に満足し、眠る。
[6] モース、「オックスフォード運河の殺人」を読み始める。
[7 オックスフォード運河の殺人 第一部 不品行な水夫たち] ジョアナ・フランクスの父のダニエル・キャリックは互助組合の代理業者で、かつては富裕な生活を送っていたが、ジョアナの悲劇的な死の数年前には困窮していた。ジョアナの最初の夫はF・T・ドナバン。“多芸多才なアイルランド人”という呼び名もあり、その職業の一つは奇術師だった。彼の死後、ジョアナは二度目の結婚をする。二番目の夫は馬丁のチャールズ・フランクス。ロンドンで働き口を見つけたチャールズはリバプールにいる妻を呼び寄せた。ジョアナはバーバラ・ブレイ号に乗り、運河を南下した。
[8] モース、第一部を読み終える。
[9] モース、点滴の管を外されて開放感を得る。
[10 オックスフォード運河の殺人 (承前) 第二部 立証された犯罪] ジョアナの死体が運河から見つかり、バーバラ・ブレイ号の4名の乗組員が逮捕される。強姦と窃盗については有罪立証されなかった。容疑は謀殺に絞られる。途中の水門で、ジョアナは乗組員たちについての苦情を申し立てていた。事務員は乗組員たちがひどく酔っ払い、気が荒くなっていたのを目撃しており、彼女に船の乗り換えを提案した。彼女はそれに従ったのか、少し下流で「ロンドンへ行く馬車、オックスフォードからバンベリーへ行く馬車」について尋ねている。彼女がナイフを研ぐ姿が目撃される。(後に、乗組員・マッソンの切り傷と関わっていると見做された) さらに下流の水門で、悲鳴を上げたジョアナと、乗組員たちの姿が目撃される。時折、彼女は船を下りて運河に沿った道を歩いていた。
[11] モース、ジョアナが「オックスフォードからバンベリーへ行く」馬車について尋ねた点に疑問を抱く。バンベリーからオックスフォードへ向かっている最中なのに、なぜそんなことを尋ねたのか?
[12] モース、図書館員・クリスティーンに資料探しを依頼。
[13] クリスティーン、資料を持ってくる。
[14] 「ブルーの招待状」を読んでいることが婦長に知られ、モース、屈辱。
[15 オックスフォード運河の殺人 (承前) 第三部 長びいた裁判] 運河から引き揚げられた女の死体の顔は「変色し、損なわれた」状態だった。乗組員たちは、女は一度ならず身投げしたと知人に話していた。タウンズが金貨を盗もうとしているところをその所有者であるジョアナに見咎められたという、オールドフィールド船長の証言は作り話と見做された。ジョアナの夫・チャールズは死体の身元をジョアナと確認。泣きながら証人席に着いた彼は、もはや容疑者の顔を見る気力すらないほどだった。
[16] モース、些細な点も気になる。
[17] モース、裁判記録の調査を希望。
[18 オックスフォード運河の殺人 (承前) 第四部 決然たる判決] オールドフィールド、マッソン、タウンズ、有罪判決を受ける。
[19] 読了したモース、船員たちへの同情に傾きつつのを認める。
[20] 資料探し。
[21] ルイス、ジョアナの所持品を見つける。
[22] 船員たちは、ジョアナの死後も酒をあおり、彼女を罵り続けていた。
[23] ジョアナはわずかな追加料金で船を下りて別ルートも選べた。
[24] モース、ジョアナの靴のサイズを知りたい。
[25] 窃盗の告発が取り下げられた理由は、そこに未成年が関わっている可能性が濃厚なためらしい。ジョアナからチャールズ宛の手紙からは、ジョアナよりもチャールズのほうが神経衰弱していたような様子。船の二人勤務・二人休憩は厳格に実行されるものではなく、乗組員各人の都合による交代も多かった。事件当時のバーバラ・ブレイ号においても、オールドフィールドはバートン・トンネル通過という難しい仕事を、6ペンス支払ってタウンズに代わってもらった。旅の前半においては、ジョアナは船員たちと楽しそうに付き合っていた。船員たちはジョアナが飛び込み自殺したと言っている。
[26] 運河の死体の身元がジョアナであるという根拠は、夫の証言以外では、死体と船に残された靴とが照合されたこと。もしその靴がジョアナのものではなかったら?
[27] ジョアナは船を下り、男と会った。女の死体が用意されていた。計画を確認する。ジョアナは川に飛び込み、決して見つからないように注意して川から上がる。――モースの妄想は中断された。
[28] モースの退院が決まる。
[29] モース、退院。
[30] 死刑執行を免れたタウンズの、後日の証言。ジョアナは船員たちの渇望の的となり、オールドフィールドとマッソンはそのために殴り合いの喧嘩さえ行なった。一方はナイフを持ちだした。
[31] モースが医師から二週間の休養を命じられたと聞かされ、上司のストレンジは言葉に詰まる。
[32] モース、ジョアナ殺害事件は保険金詐欺と考える。
[33] 運河の死体についての医師のメモ。癖のある、判読しづらい文字が多い。「死体はまだ温かかった」と記述されている。
[34] モース、検死医・マックスにジョアナの着衣を見せる。
[35] モース、ドナバンの墓を掘り起こす。
[36] モース、ダニエル宛の手紙を読む。
[37] 病院でのクリスマス・パーティー。
[38] モース、ダービーにある、ジョアナの朽ち果てつつある生家を訪れる。
[39] 壁にジョアナの成長の跡が刻まれている。
[40] モースをダービーに残し、ルイスは引き上げる。
[エピローグ] ちょっとした綴り換え。