モース警部シリーズの長編第8作。過去の事件が記された書物から、その真相を推理。(終盤には動き回るけど) 船の乗客の女が死に、乗組員たちが有罪になる。女はわずかな金銭的負担で陸路を選ぶこともできたが、なぜそうしなかった? [???]
[1859年の事件に関わる人々]
ジョアナ・フランクス:殺された女
ダニエル・キャリック:ジョアナの父
F・T・ドナバン:ジョアナの最初の夫, 奇術師
チャールズ・フランクス:ジョアナの二番目の夫
ジャック・オールドフィールド:バーバラ・ブレイ号船長
アルフレッド・マッソン:同乗組員
ウォルター・タウンズ:同
トマス・ウットン:同
ウイルフリッド・デニストン:大佐
マクリーン:ジョン・ラドクリフ第二病院婦長
フィオナ・ウエルチ:同看護婦
アイリーン・スタントン:同
ウォルター・グリーナウェイ:患者
クリスティーン:ウォルターの娘, 図書館員
ストレンジ:主任警視
ルイス:部長刑事
モース:主任警部
胃潰瘍で入院したモース主任警部は、同室の患者の家族から一冊の本を渡された。それは「オックスフォード運河の殺人」という題名の薄い本で、過去のある事件についてのものだった。
その事件は、ジョアナという女が船旅の最中に殺害され、船員たちが死刑になったというものだが、モースはそれを読み進めるうちに、そこに様々な疑惑を持つようになった。
部下のルイスや、図書館員のクリスティーンを頼りに、モースは事件の真相解明に挑む。
※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。
ジョセフィン・テイ著「時の娘」に代表される形式の、過去の事件に挑む安楽椅子探偵もの。だが、元ネタはたぶん史実ではなく創作であり、さらに事件のスケールが小粒であるため、どうにも軽い。英国の権威あるゴールド・ダガー賞をついに受賞した作品ということだが、作者・デクスターの過去の作品と比べて、これのどこが良いのかさっぱりわからない。
歴史的な出来事についての解明なら、そのスケール感で誤魔化されるところはあるが、本作のような、オカルティックな謎もないありふれた小さな事件の、無機質な記録風な文章を読まされるのは退屈なだけ。事件記録を読む、モースの感想、再び事件記録を…テンポの悪さばかりが目に付く。
過去の事件を扱っているがゆえ、モースの周囲にはその当事者はおらず、関わるのは事件とは無関係な者ばかり。そのため、調査から証拠品集めに至るまでの過程がやたらと回りくどく、事件解決とは直接結び付かない描写の割合が非常に多くなっている。終盤もやけにダラダラと展開し、真相はズバッとすっきり提示されずに、延々と小出しされ、非常にキレが悪い。
最も駄目な点は、提示される謎に魅力がないことに尽きる。この形式の作品では、モースの推理の組み立てだけじゃつらい。
[1] モース、病院へ運び込まれる。
[2] モース、胃潰瘍により入院。
[3] ルイスのお見舞い。
[4] モース、ウイルフリッド・M・デニストン著「オックスフォード運河の殺人」など、3冊の本を受け取る。
[5] モース、「不公正な裁き」にうんざりし、「ブルーの招待状」に満足し、眠る。
[6] モース、「オックスフォード運河の殺人」を読み始める。
[7 オックスフォード運河の殺人 第一部 不品行な水夫たち] ジョアナ・フランクスの父のダニエル・キャリックは互助組合の代理業者で、かつては富裕な生活を送っていたが、ジョアナの悲劇的な死の数年前には困窮していた。ジョアナの最初の夫はF・T・ドナバン。“多芸多才なアイルランド人”という呼び名もあり、その職業の一つは奇術師だった。彼の死後、ジョアナは二度目の結婚をする。二番目の夫は馬丁のチャールズ・フランクス。ロンドンで働き口を見つけたチャールズはリバプールにいる妻を呼び寄せた。ジョアナはバーバラ・ブレイ号に乗り、運河を南下した。
[8] モース、第一部を読み終える。
[9] モース、点滴の管を外されて開放感を得る。
[10 オックスフォード運河の殺人 (承前) 第二部 立証された犯罪] ジョアナの死体が運河から見つかり、バーバラ・ブレイ号の4名の乗組員が逮捕される。強姦と窃盗については有罪立証されなかった。容疑は謀殺に絞られる。途中の水門で、ジョアナは乗組員たちについての苦情を申し立てていた。事務員は乗組員たちがひどく酔っ払い、気が荒くなっていたのを目撃しており、彼女に船の乗り換えを提案した。彼女はそれに従ったのか、少し下流で「ロンドンへ行く馬車、オックスフォードからバンベリーへ行く馬車」について尋ねている。彼女がナイフを研ぐ姿が目撃される。(後に、乗組員・マッソンの切り傷と関わっていると見做された) さらに下流の水門で、悲鳴を上げたジョアナと、乗組員たちの姿が目撃される。時折、彼女は船を下りて運河に沿った道を歩いていた。
[11] モース、ジョアナが「オックスフォードからバンベリーへ行く」馬車について尋ねた点に疑問を抱く。バンベリーからオックスフォードへ向かっている最中なのに、なぜそんなことを尋ねたのか?
[12] モース、図書館員・クリスティーンに資料探しを依頼。
[13] クリスティーン、資料を持ってくる。
[14] 「ブルーの招待状」を読んでいることが婦長に知られ、モース、屈辱。
[15 オックスフォード運河の殺人 (承前) 第三部 長びいた裁判] 運河から引き揚げられた女の死体の顔は「変色し、損なわれた」状態だった。乗組員たちは、女は一度ならず身投げしたと知人に話していた。タウンズが金貨を盗もうとしているところをその所有者であるジョアナに見咎められたという、オールドフィールド船長の証言は作り話と見做された。ジョアナの夫・チャールズは死体の身元をジョアナと確認。泣きながら証人席に着いた彼は、もはや容疑者の顔を見る気力すらないほどだった。
[16] モース、些細な点も気になる。
[17] モース、裁判記録の調査を希望。
[18 オックスフォード運河の殺人 (承前) 第四部 決然たる判決] オールドフィールド、マッソン、タウンズ、有罪判決を受ける。
[19] 読了したモース、船員たちへの同情に傾きつつのを認める。
[20] 資料探し。
[21] ルイス、ジョアナの所持品を見つける。
[22] 船員たちは、ジョアナの死後も酒をあおり、彼女を罵り続けていた。
[23] ジョアナはわずかな追加料金で船を下りて別ルートも選べた。
[24] モース、ジョアナの靴のサイズを知りたい。
[25] 窃盗の告発が取り下げられた理由は、そこに未成年が関わっている可能性が濃厚なためらしい。ジョアナからチャールズ宛の手紙からは、ジョアナよりもチャールズのほうが神経衰弱していたような様子。船の二人勤務・二人休憩は厳格に実行されるものではなく、乗組員各人の都合による交代も多かった。事件当時のバーバラ・ブレイ号においても、オールドフィールドはバートン・トンネル通過という難しい仕事を、6ペンス支払ってタウンズに代わってもらった。旅の前半においては、ジョアナは船員たちと楽しそうに付き合っていた。船員たちはジョアナが飛び込み自殺したと言っている。
[26] 運河の死体の身元がジョアナであるという根拠は、夫の証言以外では、死体と船に残された靴とが照合されたこと。もしその靴がジョアナのものではなかったら?
[27] ジョアナは船を下り、男と会った。女の死体が用意されていた。計画を確認する。ジョアナは川に飛び込み、決して見つからないように注意して川から上がる。――モースの妄想は中断された。
[28] モースの退院が決まる。
[29] モース、退院。
[30] 死刑執行を免れたタウンズの、後日の証言。ジョアナは船員たちの渇望の的となり、オールドフィールドとマッソンはそのために殴り合いの喧嘩さえ行なった。一方はナイフを持ちだした。
[31] モースが医師から二週間の休養を命じられたと聞かされ、上司のストレンジは言葉に詰まる。
[32] モース、ジョアナ殺害事件は保険金詐欺と考える。
[33] 運河の死体についての医師のメモ。癖のある、判読しづらい文字が多い。「死体はまだ温かかった」と記述されている。
[34] モース、検死医・マックスにジョアナの着衣を見せる。
[35] モース、ドナバンの墓を掘り起こす。
[36] モース、ダニエル宛の手紙を読む。
[37] 病院でのクリスマス・パーティー。
[38] モース、ダービーにある、ジョアナの朽ち果てつつある生家を訪れる。
[39] 壁にジョアナの成長の跡が刻まれている。
[40] モースをダービーに残し、ルイスは引き上げる。
[エピローグ] ちょっとした綴り換え。
[1859年の事件に関わる人々]
ジョアナ・フランクス:殺された女
ダニエル・キャリック:ジョアナの父
F・T・ドナバン:ジョアナの最初の夫, 奇術師
チャールズ・フランクス:ジョアナの二番目の夫
ジャック・オールドフィールド:バーバラ・ブレイ号船長
アルフレッド・マッソン:同乗組員
ウォルター・タウンズ:同
トマス・ウットン:同
ウイルフリッド・デニストン:大佐
マクリーン:ジョン・ラドクリフ第二病院婦長
フィオナ・ウエルチ:同看護婦
アイリーン・スタントン:同
ウォルター・グリーナウェイ:患者
クリスティーン:ウォルターの娘, 図書館員
ストレンジ:主任警視
ルイス:部長刑事
モース:主任警部
胃潰瘍で入院したモース主任警部は、同室の患者の家族から一冊の本を渡された。それは「オックスフォード運河の殺人」という題名の薄い本で、過去のある事件についてのものだった。
その事件は、ジョアナという女が船旅の最中に殺害され、船員たちが死刑になったというものだが、モースはそれを読み進めるうちに、そこに様々な疑惑を持つようになった。
部下のルイスや、図書館員のクリスティーンを頼りに、モースは事件の真相解明に挑む。
※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。
ジョセフィン・テイ著「時の娘」に代表される形式の、過去の事件に挑む安楽椅子探偵もの。だが、元ネタはたぶん史実ではなく創作であり、さらに事件のスケールが小粒であるため、どうにも軽い。英国の権威あるゴールド・ダガー賞をついに受賞した作品ということだが、作者・デクスターの過去の作品と比べて、これのどこが良いのかさっぱりわからない。
歴史的な出来事についての解明なら、そのスケール感で誤魔化されるところはあるが、本作のような、オカルティックな謎もないありふれた小さな事件の、無機質な記録風な文章を読まされるのは退屈なだけ。事件記録を読む、モースの感想、再び事件記録を…テンポの悪さばかりが目に付く。
過去の事件を扱っているがゆえ、モースの周囲にはその当事者はおらず、関わるのは事件とは無関係な者ばかり。そのため、調査から証拠品集めに至るまでの過程がやたらと回りくどく、事件解決とは直接結び付かない描写の割合が非常に多くなっている。終盤もやけにダラダラと展開し、真相はズバッとすっきり提示されずに、延々と小出しされ、非常にキレが悪い。
最も駄目な点は、提示される謎に魅力がないことに尽きる。この形式の作品では、モースの推理の組み立てだけじゃつらい。
[1] モース、病院へ運び込まれる。
[2] モース、胃潰瘍により入院。
[3] ルイスのお見舞い。
[4] モース、ウイルフリッド・M・デニストン著「オックスフォード運河の殺人」など、3冊の本を受け取る。
[5] モース、「不公正な裁き」にうんざりし、「ブルーの招待状」に満足し、眠る。
[6] モース、「オックスフォード運河の殺人」を読み始める。
[7 オックスフォード運河の殺人 第一部 不品行な水夫たち] ジョアナ・フランクスの父のダニエル・キャリックは互助組合の代理業者で、かつては富裕な生活を送っていたが、ジョアナの悲劇的な死の数年前には困窮していた。ジョアナの最初の夫はF・T・ドナバン。“多芸多才なアイルランド人”という呼び名もあり、その職業の一つは奇術師だった。彼の死後、ジョアナは二度目の結婚をする。二番目の夫は馬丁のチャールズ・フランクス。ロンドンで働き口を見つけたチャールズはリバプールにいる妻を呼び寄せた。ジョアナはバーバラ・ブレイ号に乗り、運河を南下した。
[8] モース、第一部を読み終える。
[9] モース、点滴の管を外されて開放感を得る。
[10 オックスフォード運河の殺人 (承前) 第二部 立証された犯罪] ジョアナの死体が運河から見つかり、バーバラ・ブレイ号の4名の乗組員が逮捕される。強姦と窃盗については有罪立証されなかった。容疑は謀殺に絞られる。途中の水門で、ジョアナは乗組員たちについての苦情を申し立てていた。事務員は乗組員たちがひどく酔っ払い、気が荒くなっていたのを目撃しており、彼女に船の乗り換えを提案した。彼女はそれに従ったのか、少し下流で「ロンドンへ行く馬車、オックスフォードからバンベリーへ行く馬車」について尋ねている。彼女がナイフを研ぐ姿が目撃される。(後に、乗組員・マッソンの切り傷と関わっていると見做された) さらに下流の水門で、悲鳴を上げたジョアナと、乗組員たちの姿が目撃される。時折、彼女は船を下りて運河に沿った道を歩いていた。
[11] モース、ジョアナが「オックスフォードからバンベリーへ行く」馬車について尋ねた点に疑問を抱く。バンベリーからオックスフォードへ向かっている最中なのに、なぜそんなことを尋ねたのか?
[12] モース、図書館員・クリスティーンに資料探しを依頼。
[13] クリスティーン、資料を持ってくる。
[14] 「ブルーの招待状」を読んでいることが婦長に知られ、モース、屈辱。
[15 オックスフォード運河の殺人 (承前) 第三部 長びいた裁判] 運河から引き揚げられた女の死体の顔は「変色し、損なわれた」状態だった。乗組員たちは、女は一度ならず身投げしたと知人に話していた。タウンズが金貨を盗もうとしているところをその所有者であるジョアナに見咎められたという、オールドフィールド船長の証言は作り話と見做された。ジョアナの夫・チャールズは死体の身元をジョアナと確認。泣きながら証人席に着いた彼は、もはや容疑者の顔を見る気力すらないほどだった。
[16] モース、些細な点も気になる。
[17] モース、裁判記録の調査を希望。
[18 オックスフォード運河の殺人 (承前) 第四部 決然たる判決] オールドフィールド、マッソン、タウンズ、有罪判決を受ける。
[19] 読了したモース、船員たちへの同情に傾きつつのを認める。
[20] 資料探し。
[21] ルイス、ジョアナの所持品を見つける。
[22] 船員たちは、ジョアナの死後も酒をあおり、彼女を罵り続けていた。
[23] ジョアナはわずかな追加料金で船を下りて別ルートも選べた。
[24] モース、ジョアナの靴のサイズを知りたい。
[25] 窃盗の告発が取り下げられた理由は、そこに未成年が関わっている可能性が濃厚なためらしい。ジョアナからチャールズ宛の手紙からは、ジョアナよりもチャールズのほうが神経衰弱していたような様子。船の二人勤務・二人休憩は厳格に実行されるものではなく、乗組員各人の都合による交代も多かった。事件当時のバーバラ・ブレイ号においても、オールドフィールドはバートン・トンネル通過という難しい仕事を、6ペンス支払ってタウンズに代わってもらった。旅の前半においては、ジョアナは船員たちと楽しそうに付き合っていた。船員たちはジョアナが飛び込み自殺したと言っている。
[26] 運河の死体の身元がジョアナであるという根拠は、夫の証言以外では、死体と船に残された靴とが照合されたこと。もしその靴がジョアナのものではなかったら?
[27] ジョアナは船を下り、男と会った。女の死体が用意されていた。計画を確認する。ジョアナは川に飛び込み、決して見つからないように注意して川から上がる。――モースの妄想は中断された。
[28] モースの退院が決まる。
[29] モース、退院。
[30] 死刑執行を免れたタウンズの、後日の証言。ジョアナは船員たちの渇望の的となり、オールドフィールドとマッソンはそのために殴り合いの喧嘩さえ行なった。一方はナイフを持ちだした。
[31] モースが医師から二週間の休養を命じられたと聞かされ、上司のストレンジは言葉に詰まる。
[32] モース、ジョアナ殺害事件は保険金詐欺と考える。
[33] 運河の死体についての医師のメモ。癖のある、判読しづらい文字が多い。「死体はまだ温かかった」と記述されている。
[34] モース、検死医・マックスにジョアナの着衣を見せる。
[35] モース、ドナバンの墓を掘り起こす。
[36] モース、ダニエル宛の手紙を読む。
[37] 病院でのクリスマス・パーティー。
[38] モース、ダービーにある、ジョアナの朽ち果てつつある生家を訪れる。
[39] 壁にジョアナの成長の跡が刻まれている。
[40] モースをダービーに残し、ルイスは引き上げる。
[エピローグ] ちょっとした綴り換え。