モース警部シリーズの長編第9作。ツアー客の一人である女がホテルの部屋で死に、貴重な装身具がハンドバッグごと盗まれる。案内人の一人の男の全裸死体が川から見つかる。[???]

シーラ・ウイリアムズ:ツアー・ガイド
シオドア・ケンプ:アッシュモーリアン博物館の職員
マリオン・ケンプ:シオドアの妻
セドリック・ダウンズ:中世史家
ルーシー・ダウンズ:セドリックの妻
ジョン・アシェンデン:ツアーの責任者
ジャネット・ロスコウ:ツアーのメンバー
エディ・ストラットン:同
ローラ・ストラットン:同
ハワード・ブラウン:同
シャーリー・ブラウン:同
サム・クロンキスト:同
ベラ・クロンキスト:同
フィル・オールドリッチ:同
ダグラス・ガスコイン:ホテルの支配人
シーリア・フリーマン:電話交換手
ロイ・ハルフォード:ホテルのボーイ長
マックス:警察医
ベル:主任警視
ストレンジ:主任警視
ルイス:部長刑事
モース:主任警部



ローラ・ストラットンは貴重な工芸品“ウルバーコートの留め具”をハンドバッグに入れて持ち歩き、ツアーに参加していた。彼女が米国から英国へとやって来たのは、それをアッシュモーリアン博物館に寄贈するためだった。

しかしそれは叶えられることはなかった。彼女はホテルの部屋で死亡し、工芸品はハンドバッグごと何処かへと消えてしまったのだ。モース主任警部は彼女の死を他殺と推測(希望)するのだが、彼が信頼を置いていない医師も、彼が信頼を寄せる医師も、どちらも彼女の死を自然死と見ていた。


しかしこれは単純な盗難事件でもなさそうだった。ツアー関係者の一人の全裸死体が川に浮かんだのである。こちらは他殺の疑いが濃厚だった。


※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



TVドラマシリーズの「モース警部」の原作が尽きてしまったため、それを補うためにコリン・デクスターは脚本をいくつか書いた。その中の一つをノベライズしたものが本作。そう聞かされれば納得で、場面転換で話を引き伸ばすばかりで――映像向きではあるのだろう――内容は薄い。

Aという人物がBを目撃。Bを問い質すと、BはCを目撃したことを告白。そんなパターンの繰り返し。まるで昔のRPGのように行ったり来たり。関係者は無意味にアリバイを偽装し、事件解決には繋がらずとも、モースはそれを崩さねばならない。

終盤のプレゼンテーションはモースが見事な“名探偵”振りを発揮。その雄弁さと迫力はなかなかのもの。プロットが弱いのが残念だw

事件の真相の半分近くは、実は第一部でほとんどズバリ明かされている。

ところでモースはしょっちゅう無実の人物を逮捕してる気がするが、これは警察内外で大きな問題にならないのだろうか?w



[第一部 1] シオドア・ケンプ、シーラ・ウイリアムズに飽き始めている。
[2] ジョン・アシェンデン、旧友ジミー・ボーデンを思い起こす。
[3] ツアーの一行、ホテルに到着。
[4] 疲労を訴えるローラ・ストラットン、真っ先に鍵を取り、部屋へと向かう。夫エディ・ストラットンはお茶を飲んでから部屋へ行くからと、錠を開けておくように伝える。
[5] ローラ、部屋に入り、ハンドバッグを置き、バスルームへ。
[6] ローラの死体が自室で見つかる。床の上に横たわっていた。冠状動脈血栓症。ハンドバックがなくなっている。
[7] 翌日のツアーの予定。途中で三つのグループに分かれる。シオドアの案内による、博物館見学。セドリック・ダウンズの案内による、建築設計と技術の話。シーラによる、“アリス・ツアー”。
[8] ローラのバッグともに、その中に入っていた“ウルバーコートの留め具”という、宝石を散りばめた歴史的工芸品もなくなっている。ローラが一人で部屋へと向かい、エディが彼女を発見するまでの時間帯は午後4時30分から5時15分。シーラ、アリバイを問われ、シオドアに訊くようにと返答。
[9] アシェンデンは午後4時45分頃は旧友ジミーの墓参りをしていた。シャーリ・ブラウンは午後5時10分にエディの腕を離し、二人はホテルに戻った。
[10] 警察医マックス、ローラの死因を冠状動脈血栓症と断言。他殺とというモースの見立てには不利な情勢。
[11] ウルバーコートの留め具がアッシュモーリアン博物館に寄贈されることになっており、それは、シオドアの念願だった。シオドアはアリバイについては言葉を濁す。
[12] シーラ、アシェンデンにアリバイを尋ねるが、その返答は曖昧。
[13] モース、事件の様々な可能性を考える。
[14] シオドアは2年前に自身の飲酒運転による交通事故で妻を下半身不随にしてしまった。相手の車の運転手(29歳既婚女性)は即死。事故の責任は明確にならず、シオドアは罰金刑と3年間の免停。
[15] ツアーの予定時刻が繰り上がる。
[16] ジンジャー・ボネッティから姉ジョージー・ボネッティへの手紙。
[17] セドリックは耳が悪く、補聴器を使用している。シオドアはロンドンでの用事により、ツアーの案内ができなくなる。
[18] アシェンデンがモードリン・カレッジを見物していたというアリバイは偽り。ルイス、ホテルを出るエディを見掛け、尾行。
[19] 若い恋人たちが川に浮いた死体を発見。
[第二部 20] 全裸死体となっていたのはシオドア。現場付近でツアーの予定表が見つかる。繰り上げられた時刻がボールペンで訂正されている。「7」の字の縦の棒に斜めの線が入っている。
[21] 泥酔したエディがタクシーでホテルに戻る。タクシー運転手によると、女に電話で依頼され、彼を送り届けた。
[22] モース、遺失物のツアーの予定表を見る。
[23] ルイス、マリオン・ケンプと面会。シオドアは7時20分にタクシーで出かけた。ロンドンから電話をかけてきた。ルイス、シオドアの死を彼女に伝える。
[24] モース、シーラと面会。シオドアの死を告げる。シーラ、ノース・オックスフォードで自転車に乗ったセドリックを目撃したことを証言。
[25] 「7」の字の縦の棒に斜めの線を入れる人物は限られる。
[26] 事件関係者に質問表の回答を記入させ、斜め線入りの「7」の筆者を捜す。自転車に乗っていた件をセドリックに問うと、補聴器の調子が悪かったので予備を家に取りに戻ったと回答。セドリックもある人物を目撃したと告げる。
[27] 斜め線の「7」の筆者、シオドアの死体発見現場付近の予定表の落とし主はハワード。セドリックがノース・オックスフォードで目撃したのはアシェンデン。
[28] シオドアの命を奪ったのは頭部への打撃。
[29] ウルバーコートの留め具には保険金が掛けられているが、その詳細をエディは知らない。シオドアが死んだ日の6時前後に、エディは列車内でフィル・オールドリッチを目撃。
[30] アシェンデン、シオドアからとされる電話は99%本人からのものだったと断言。電話交換手もそれを補完。
[31] モースとルイス、ダウンズ夫妻宅を訪問。セドリックは留守。ルーシーもこれから買い物に出かける予定。シオドアの死はアシェンデンからセドリック経由でルーシーも既に知っている。ルーシー、重そうなスーツケースを抱え、迎えに来たタクシーに乗って出かける。
[32] モース、シオドアの死体が川に投げ込まれた場所を考察。
[33] オールドリッチ、便箋に何かを書いている。騒ぐジャネット・ロスコウに対し、いつものように忍耐強く振舞っていたが、ついに彼女を大声で叱責する。それはシーラにとってはとても意外な光景。
[34] オールドリッチの供述書。1944年、夫のある女と関係を持ち、娘ができてしまう。女の夫は娘を自分の子として扱った。オールドリッチはその娘ピッパの消息を探していたが、ついにそれを掴み、娘と電話で話した。会うことになったが、彼女は待ち合わせ場所には現れなかった。そのときの帰りの列車で彼はエディに目撃された。
[35] 供述書の訂正は3ヶ所、誤字も2、3字。きちんとした文章を書く人物とモースも認める。
[36] ハワードは昔、エディと少し知り合いだった。ハワードは予定表を落としたことを認めた。その辺りでかつての恋人に会っていた。ハワード、アシェンデンを目撃したと供述。
[37] アシェンデン、競馬場へ行っていたと供述。外れ馬券をモースに渡す。
[38] ツアーはいまいち盛り上がらず。
[39] アシェンデンの馬券は外れではなく当たっていた。マリオン、自殺を企てる。
[40] ルイス、モースにカーテンの話をする。
[41] マリオン、死亡。モースの推理。シオドアはルーシーとの浮気現場をセドリックに見つかり、殺され、川に捨てられた。
[42] セドリック、逮捕される。
[43] モース、説明する。
[44] エディ、亡き妻を想う。
[45] セドリック、シオドアがマリオンに言い寄っていたこと、彼を殺害したいほど憎んだことを認める。しかし自宅にシオドアがいたことも、彼を殺害したことも認めず。
[46] ルーシー、車に跳ねられる。
[47] 不審な鍵の正体について、セドリックは告白。
[48] ルーシー、入院。
[第三部 49] バース観光。
[50] シオドア殺害時のエディのアリバイ成立。アシェンデン、アリバイ偽装について告白。エディ、妻の遺体とともに米国へ帰国。
[51] シオドアの電話の件について。
[52] バーバラ・モール博士の講演。
[53] モースの講演。
[54] 川から留め具は未だに発見されず。
[55] モースの講演の続き。
[56] エディを乗せた飛行機が再び英国へ向かっている。
[57] モース、犯人の名を明かす。
[58] 夫婦は揃って泣いた。
[59] 補足説明。
[60] 犯人の口は固い。