開運童子のブログ -60ページ目

雨のあとに虹 その172

「このワインはおししいですね。」

久美子がワインを飲んで言うと

「僕は詳しい事は知らないけどそれは有名なワインらしいよ。」

俊之もワインを飲んで言った。

「すごく味わいがあっておいしいです。」

久美子は正直なところを言った。

「パスタでもワインがおいしく飲めるみたいだね。」

俊之は言った。

「カルボナーラと一緒だと凄くおいしい。」

久美子が言うと

「僕はあまり飲まないから知らなかったよ。」
俊之もカルボナーラを食べて言った。

「スープもあっさりしていておいしいね。」

久美子は言った。

「たまにはワインもおいしいね。」

俊之が言うと

「俊さんはあまり無理しなくても良いよ。」

久美子は言った。

「無理じゃないさ。」

俊之はワインを飲んで言った。

「それならいいけど。」

久美子が言うと

「久美ちゃんの成人式に記念になるものと思っていろいろ考えてね。」

俊之は言った。

「記念写真を撮ったからそれで充分よ。」

久美子が言うと

「クリスマスは品物だったけど今回は食事と決めてからね。」

俊之は言った。俊之は珍しく3杯目のワイングラスを口に持っていったのである。

静江は帰りが遅かった。一般のOLなら当たり前の時間に帰ってきたのだが一度も会社に就職した事もアルバイトさえした事がない純一には帰りが遅くなる事が理解出来なかったようである。

「少し帰りが遅いな。」

純一が言うと

「一度も社会に出た事がないあなたには何を言っても無駄でしょうね?」

静江は冷たく言った。千晴はふたりの会話を驚いて聞いていた。自分の母親にもこんなに強い部分があったのだと驚く千晴であった。

 俊之と陽子を乗せた社用車は田中の運転で高速を走っていた。総武鉄道が都心から100キロのところで終点になっているのをさらに100キロ延ばして200キロに延長する工事の視察であった。

「今日は順調に流れていますね。」

田中が言うと

「あと30分ほどで現地に着けると思います。」

陽子が言った。

「思ったより早かったね。」

俊之は言って時計を見た。俊之は朝から車で移動するのは久しぶりである。少しだけドライブ気分であったが仕事である。俊之の頭は凄いスピードで回っていた。陽子の携帯が鳴ると

「川嶋です。」

陽子は言った。

「立花です。」

立花が言うと外の景色に目を向けた時に

「立花本部長からです。」

陽子が言って携帯を俊之に渡してくれた。

「高村です。」

俊之が言うと

「お疲れ様です。」

立花が精悍な声で言った。

「お疲れ様です。」

俊之が言うと

「現地の責任者には高村さんが視察に行かれる事を話しておきました。」

立花は言った。

「ありがとう。」

俊之が短く言うと

「連中は一癖ある連中ですからガツンと言っておきましたよ。」

立花は言った。

「いつもすまないね。」

俊之が言うと

「横に川嶋さんが居るから大丈夫だと思いますけどね。」

立花は言った。

「そんなに凄いの?」

俊之はと陽子に悟られないよう言うと

「見た目と違って怒らせたら薬師寺さんより恐いですよ。」

と立花は半分冗談を交えて言った。

「これからは僕も気をつけるよ。」

俊之も冗談を交えて言った。

電話が終わった俊之に

「立花さんは私の事を何か言いませんでしたか?」

陽子が言うと

「何も言っていないよ。」

俊之は言った。

「私を怒らせると恐いとでも言ったでしょ?」

陽子が言うと

「言っていないよ。」

俊之は言った。

「立花さんはいつも変な事を言から許せない。」

陽子が言うと田中は社用車のスピードを緩めた。現地はすぐ近くであった。

雨のあとに虹 その171

「やっと確信に近づいてきたみたいね。」

春香は電話の向こうで翔太に言った。

「ビデオを入手すれば詳細すぐに解ると思います。」

翔太は言った。

「お疲れ様でした。」

春香が言うと

「入江麗子さんは三友商事の貴志に言われて斉藤弘子に接点を持った事が解りました。」

翔太は言った。

「貴志さんは三友商事の課長だったわね。」

春香が言うと

「高村さんがロンドンに赴任して間もない頃に高村さんと春香さんの写真を榊原から見せられた麗子さんに斉藤弘子は相談にのる約束でお金を支払いました。」

翔太は言った。

「まるで詐欺師ね。」

春香が言うと

「何もしない斉藤弘子と話合いをするために麗子さんは斉藤弘子のマンションに行きました。」

翔太は言った。

「麗子さんと斉藤弘子さんのマンションは隣り合わせに立っていたわね。」

春香が言うと

「それで麗子さんが転落死した時には自分のマンションから落ちと思われていましたがはっきりしませんでした。」

翔太は言った。

「それで人によって見解が違ったのね。」

春香が言うと

「斉藤弘子が麗子さんを突き飛ばした事で麗子さんは身体のバランスを崩して転落をしたようです。」

翔太は言った。

「それは気の毒だったわ。」

春香が言うと

「偶然にもその場面を当時小学生だった及川友宣が撮っていたのです。」

翔太は言った。

「及川友宣と言う人は笹川さんが捕まえた婦女暴行魔だったわね?」

春香が言うと

「世の中は広いようで狭いですよ。」

翔太は言った。

「及川という人によくたどり着いたわね?」

春香が言うと

「当時からオタクだった及川だったが中学に入ってから純一の畑でバイトをしました。」

翔太は言った。

「高村さんの義理の弟さんね。」

春香が言うと

「純一と気が合って親しくなった及川は自宅に来た純一にそのビデオを見せてしまいました。」

翔太は言った。

「よくあるパターンね。」

春香が言うと

「純一は何らかの方法で及川からビデオを譲り受けて斉藤弘子を脅迫する事によって金銭を受取っていたようです。」

翔太は言った。

「高村さんはロンドンに赴任中で情報を入手できなかったわけね。」

春香が言うと

「いずれ石井純一にも接触してみます。」

翔太は言った。

「そうしてください。」

春香が言うと

「斉藤弘子は裏道会と繋がっていますから早めに接触します。」

翔太は言った。

「あの暴力団の裏道会ですか?」

春香が言うと

「そうです。」

翔太は言った。

「物騒ね。」

春香が言うと

「石井純一に何かが起こる前に決着をつけますよ。」

翔太は落着いて言ったが内心はあせりもあったのである。

雨のあとに虹 その170

「お待たせ致しました。」

久美子は珈琲を出して言った。

「次のお客様はこちらへどうぞ。」

ひとみは言うとタイミングよく処理をした。

「パスタのお客様お待たせしました。」

久美子が言ってパスタを持って歩いて行った。

「ポイントカードをお持ちですか?」

小百合が言った。混雑していてもすばやくこなす事が出来ようになったのは少しずつ従業員たちが慣れてきたからであった。

「堀川さんは先に休憩に入ってね。」

ひとみが言うと

「次に休憩に入ります。」

久美子は言った。

「バタバタしていてすみません。」

駅前の雑踏で俊之は桑田の姿を見つけて駆け寄って来て言った。

「気にしないでください。」

桑田は言った。

「5分遅刻しましたね。」

俊之が言うと

「今日は別な方面の話を聞きたいだけです。」

桑田は手短に言った。

「別の話とは何でしょうか?」

俊之が言うと

「高村さんの小学校や中学の時にはどんなお子さんだったのですか?」

桑田は言った。ひとつずつ質問が始まっていた。

 純一は周囲を見回していた。純一は自宅裏にある畑で仕事をしている事が多い。季節ごとに花を生産して取引先に出荷する事で収入を得ていた。数人のパートやアルバイトを雇って畑で作業をする純一であったが半年くらいは経営が苦しく生産どころではなかったのだ。資金繰りに奔走したあとに畑から戻る途中で人の気配が強くなった。誰かに見られているような気配を感じる純一であったが玄関の前まで来るとその気配が消えてしまうのだ。玄関から畑までのわずかの時間にそれがあるのだった。

「ただいま。」

純一は言って玄関を入った。

「お帰りなさい。」

千晴が言った。

「今日は学校じゃなかったのか?」

純一が言うと

「インフルエンザが流行して学級閉鎖になったのよ。」

千晴は言った。

「ところで静江は?」

純一が言うと

「仕事だと思うよ。」

千晴は言った。

「帰りが遅いな。」

純一が言うと

「時間通りに終わるとは限らないそうだよ。」

千晴は言った。

「そうか。」

純一は言った。

 久美子が改札口を出て来るのを俊之はすぐに見つけた。先に右手を上げた俊之は笑みを浮かべて久美子を見た。久美子も俊之を見て

「私の方が遅刻しちゃったね。」

と言いながら微笑んだ。

「少しくらい構わないよ。」

俊之は言った。

「お腹空いたでしょ?」

久美子が言うと

「空いたね。」

俊之は言った。

「どこか空いているお店にでも入りましょう。」

久美子が言うと

「向こうのにおしゃれな店があるよ。」

俊之がイタリアンレストランを示して言った。